国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/05/06

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)5月6日(金曜日)
通巻第1115号 ●登録読者5350名を更新! 
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ようやく日本の特許制度の不備が解消へ
 何でもかんでもの公開は「スパイ天国」=ニッポンの象徴だった
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  まずは次の報道の意味を十分に咀嚼する必要がある。

 「政府は特許出願前の発明を登録・証明する新制度を創設する。企業が申請した発明について特許庁が内容と日付を証明し、データを非公開で保管する仕組み。現行の特許出願制度と併せ、特許紛争など知的財産をめぐるリスクに企業が対応しやすくするのが目的だ。六月にまとめる『知的財産推進計画2005』に盛り込んだうえで特許法改正の検討作業に着手し、2010年までの実現を目指す。
 現在の日本は特許出願前の発明を証明・保護する制度がないため、特許侵害の訴えや使用差し止め請求を恐れて企業が特許を出願しておくケースが多い。新制度は防衛目的の出願をなくすのが目的で、不必要な出願を減らすことで技術情報などが盗用されることを防ぎ、特許審査のスピードを速める狙いもある」(『日本経済新聞』、5月4日付け)。

 この日本経済新聞の解説では不十分かつ、あまりに商業主義一辺倒である。

 日本のハイテクを堂々と盗みだす外国企業、政府のスパイは、特許公開広報によって、べつに労せずとも合法的にハイテク情報を入手できた。帰りの飛行機のなかで翻訳し、本国への手柄としたはなしもレフチェンコ証言では紹介された。

 日本の特許制度の欠陥はゆゆしき問題である。
 すべての申請された特許は十八ヶ月後に広報で公開される。だれでもそれを購読閲覧が可能。

  一方で個人情報を厳格化する法律が施行され、最近は病院でも患者の名前を呼ばず、受付番号をアナウンスするように「改良」された。
 
 ともかく日本企業の特許部および法務対策本部などは、自社が発明した画期的特許をわざわざ公開して敵や競合企業から真似されないために、その周辺技術をことごとく登録して本丸を隠すという高度のテクニックを特許申請に用いてきた。

 なぜか。日本には防衛に直結するハイテクを非公開とする制度がなかったからだ。正確にいうとGHQ指令により法改正がなされて、すべての特許が公開されるシステムとされた(詳細は拙著『日米先端特許戦争』(ダイヤモンド社刊)を参照)。 

 米国には防衛特許を非公開とする制度があり、先発明主義であり、なんとしても自国技術を守り、敵国に高度技術が渡らない工夫を重ねてきた。これをサブマリン特許とも言い、突如、日本企業が米国から訴えられた多くのケースは、この制度の違いに起因するところも大きかった。

 もうすこし論議を見守る必要があるが、基本的に法改正の方向は正しい。
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(再録コーナー)

 『李登輝先生の武士道とミシマ』
                     宮崎正弘


  台北郊外、大渓は南南西へ40キロ。李登輝前総統の別荘がある。
 小糠雨が降ってきた。行く途中に慈湖がある。この地方は「石門水庫」でガイドブックに出ているから、こちらの名前が日本では有名かも知れない。風光明媚で、せっ江省寧波郊外に拓ける泰化県の山並み、川の流れに似ている。

蒋介石の故郷に似ているので、生前に土地を購入した。75年に死去、蒋介石の仮陵墓はここにある。
 周囲には蒋公銅像公園があって蒋介石の銅像を二百体ほど集めて飾ってある。
 感無量である。台湾全土に10万体もあった蒋介石の銅像が静かに下ろされ、壊され、そのなかで秀逸な彫刻作品が静かに同所に集められたからだ。これぞ最大のブラックユーモア?

 筆者が銅像公園を見学した日はあいにくの雨で、蒋介石像はどれも濡れていた。毛沢東に敗れた蒋介石の無念の泪か、それとも彼の武断政治に泣いた人々の泪か?
 その虚しく見える銅像を見ながら筆者は台湾との個人的関わりを振り返った。最初の台湾取材は1972年だった。それまでは台湾バナナ、自民党のロビィくらいしか台湾への認識がなかった。当時、田中角栄の拙速外交による「日華断交」に腹を立てて、何か日本人の一個人として出来ることはないかと台北を訪問したのだった。

 さて李登輝総統と最初にお目にかかったのは「アジア・オープン・フォーラム」の台中市での会合だった。
これは日本と台湾の絆を定期的な学術文化交流でおこなおうと民間外交の積み上げを目的に組織されたもので、台湾側代表は李登輝総統や後半からは許文龍氏ら。日本側は最初から中嶋峰雄氏や亀井正夫氏(住友電工)ら。会は毎年、日本と台湾の相互に催され、台湾での会議に李総統は皆出席、台南、台北の会場でも会えた。

 単独初会見は竹村健一夫妻とご一緒した総統府でのテレビ取材だった。
 その直後に李登輝総統が書かれた『台湾の主張』出版記念会をテレビ中継で台北と結んで開催しようということになり、日本の有名人400人を「発起人」に依頼した。現職総統ゆえに日本政府はビザの発給が出来ない。そこで最初からテレビ中継というスタイルの出版記念会だったが、会場のオークラには1500人。大成功だった。ちなみに事務局は月刊日本。

 総統を引かれ、淡水に設立されたシンクタンク「群策会」のオフィスでは、二年後に片岡鉄哉、井尻千男、藤井厳喜の各氏らを交えてお目にかかった。こんかいは冒頭に紹介したように、大渓の別荘で懇談し昼飯をともにする機会に恵まれた。

 戦後の日本人が見失った武士道を体現するカリスマは、物腰こそ穏やかだが、愛国的熱情がほとばしり、反共産主義への信念は確固たるものがあった。

 北京の反国家分裂法は「中国権力闘争の過程でおきたことである」と強く分析された
 李登輝氏は「中国文化には、”誠”と”死ぬこと”が、どこにもない。則私去天の現世利益ばかりだ。わたしは死の武士道から”則天去私”の”私でない私”の社会を見出した。これを実践しなければならない」という持論を展開された。

 対比的に日本は「戦後60年の忍耐に期間を経て、今後アジアでますます大きな存在感を締める国になるだろう」とも言う(『VOICE』、05年3月号所載「日本の印象ー私のセンチメンタル・ジャーニー」)。
 李登輝前総統の解釈する武士道はクリスチャンとしての国際常識の礼節であり、新渡戸稲造の説いた武士道の哲学に近い。筆者はこの点から質問を始めた。

 「武士道解釈には新渡戸先生のものもあれば、葉隠れもあり三島由紀夫的武士道もあります。ところで三島さんについてどう思いますか?」

 兼ねてから抱いてきた設問である。数年前にも許文龍氏に同じ質問をしたことがあるが、キョトンとしていた。

 拙著のどこかに挿入したが、許文龍氏は軍歌を好まれず、童謡・唱歌の類いを自身でバイオリンを弾かれる。哲学は老荘、だから三島的憂国の行為には距離があるのだろうか、訝しく思ったときにハタと思いだした。

 三島事件は1970年。あの頃、台湾には日本の情報は殆ど入っていなかった。映画の輸入まで禁止され、日本語は使ってはならず、日本の新聞は御法度。雑誌週刊誌はもちろんである。従って世界に流れた一方的な三島事件の解釈が、切腹という彼らから見れば奇譚に属することと軍国主義の復活などとするデマとが織りまざった、歪曲された報道しかなかった。
したがって三島事件の真相も、三島作品の評価もまるで伝わっていない。

 そこで筆者は話を切り替えた。
 「日本には戦後、英雄がいなくなりました。多くの日本人は自信を失い、精神は混迷の淵を彷徨った。精神的にも貧困な状況に武士道、日本精神を鼓舞する閣下が台湾から登場され、多くの日本人がそこに理想的な日本人像を見た。つまり戦後英雄不在時代の疑似の英雄として日本では広く迎えられていると私は解釈していますが、ご自身はどういう解析をされていますか?」

 李登輝総統はすこし考え込まれたあと、こう言われた。
 「指導者には五つの条件があります。第一は深い信仰です。第二は無私の精神です。「天下為公」というわたしの政治信念は揺るぎません。権力に執着しない。第三に私情に流されることがあってはならない。第四に公私混同をしない。たとえ父親の伝手をたよられても私ははねつけ、身をつねに清楚にと心がけてきた。第五がつねに国民とともにあれ、演出されたカリスマやマキャベリストになってはならない、ということです」。

 迂回的表現だが、この指導者像こそは、現代日本のみならず世界の政治指導者に求められている。その信念を体現する李登輝氏ゆえに広く世界から尊敬を集める気がしてならなかった。
 (この文章は『月刊日本』五月号より転載しました)
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