国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/04/28

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)4月28日(木曜日)
通巻第1113号  
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 ルカシェンコ独裁のベラルーシが「次の民主革命」を支援する米国の標的
   一方で米軍駐留のキルギスに大胆に接近する中国の脅威
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 いささか旧聞に属するが、ライス米国務長官は4月20日にリトアニアを訪問し、首都ビリニュスで記者会見を開催している。
 ここで「旧ソ連圏のベラルーシ政権は交代の時が来た」と挑発的な発言をした。

 強権政治を続ける独裁者、ルカシェンコ政権の打倒を公然と主張したのも同然、内政干渉に当たるかどうかは別として、これは野党支援を通じてベラルーシ政権の転覆に本腰を入れる姿勢を示したと同義である。
 
 ライス国務長官の趣旨は「ベラルーシは『中欧最後の独裁国家』であり、北朝鮮、イランと並ぶ「ならず者国家」の位置づけ。
 なぜならウクライナ、グルジアおよびキルギスで親米、反ロシアの色彩を鮮明にした政権が誕生したからである。

 ベラルーシはロシアと同じスラブ系で、旧ソ連に属した。91年8月に(ソ連から)独立。同12月に独立国家共同体(CIS)創設協定を締結した。
 その後、独裁者ルカシェンコが94年にロシアとの関係強化を掲げて大統領に。さらに96年には大統領の任期を延長し、2001年に再選、04年10月には国民投票により憲法の3選禁止規定を削除するという非民主的措置をとった。
 さらにルカシェンコはロシアに再度、接近し、軍事力支援を依頼し、ロシア軍の駐留拡大をもとめて独裁体制の強化をはかっている。

 1990年のソビエト崩壊直後、ソルジェニーツィンは「スラブの団結」を説いて、「ベラルーシ、ウクライナ、ロシア」の三つのスラブ系が団結すれば「強いロシア」が再生できるとした。だがウクライナが西側寄りに姿勢を変え、モスクワとしては残るスラブ国家唯一の盟友はベラルーシしかない、ルカシェンコが独裁かどうかは、プーチンにとって問題ではない。

 
▲親日国家キルギスにもイスラム原理主義が猖獗を極めた
 
 旧ソ連イスラム圏、中央アジアのキルギスでも政変が起きた。
 赤ら顔の学者で愛嬌のある禿頭、旧ソ連時代末期から14年間も続いたアカエフ政権が瓦解したのだ。
 グルジア、ウクライナに継いでの政変である。

 アカエフがアカデミズムの世界から冷戦崩壊とともに期待をされて登場した当時は、清廉なイメージが強く、また学者出身の木訥な風貌は独特な人気があった。日本に少なくとも二回(それ以上)来ていて、日本記者クラブでの記者会見には小生もでた記憶がある。
 だが、かれもまた側近に囲まれ、いつしか「裸の王様」となり、支持者のみを優遇して政権の私物化を進めた。

 そのうえ大統領は先の議会選で娘と息子を当選させ、二人に近い人物に権力を移譲して事実上の「院政」に移行しようとしていた矢先だった。
西側から「チューリップ革命」と呼ばれるアカエフ追放(3月24日)のあとから発見された大統領の日記には大統領一族が支配する企業や海外からの援助の金額や、汚職の根源と思われる記録が次々と明るみにでた。

また驚くべきことに六年前の日本人技術者四人の誘拐事件のおりに日本政府がゲリラに払った身代金300萬ドルをアカエフ大統領一派が着服していた形跡があるともいう(『週刊新潮』、05年4月28日号)。
 要するにキルギス政変はソ連型の権威主義的体制がいかに国民から乖離した独裁政治であるかを露呈した。

 3月25日、キルギス臨時議会が招集され、野党のカドゥイルベコフ議員が突如、大統領代行に就任した。
 ロシアのプーチン政権にとっては危険な事態との認識であり、「ロシアの平和維持部隊をキルギスへ派遣せよ」と議会でロシア右翼の大物ジリノフスキーが吠えた。

 キルギスでは、当初、ロシア型のOMONが鎮圧に当たった。OMONと言えば、かの1990年のバルト三国独立争乱の末期に、ソ連型の共産党リーダーらが密かにデモ鎮圧に投入した秘密工作部隊である。

 アカエフ大統領一行はカザフへ亡命、ロシア外務省は「法の枠に戻ることを望む」と声明し平静を装った。ついで大統領一派はモスクワへ亡命した。

 となれば次は?
 カザフを私物化するナゼルバエフ、ウズベクを蹂躙するカリモフ、トルクメニスタンの独裁者で”中央アジアの金正日”といわれるニヤーゾフの御三家は依然として健在ではあるが。。。。

 それにしても、このアカエフ政権の突然の崩壊は、長期化した政権それ自体の腐敗が主因である。
 とくに地縁血縁社会のキルギスでは北部出身のアカエフ大統領が一族ならびに北部出身者を優遇したため、南部が反旗を翻すのは当然の流れとなった。
 キルギス北部はいまもロシア語のほうがキルギス語より普遍的であり、旧ソ連型官僚主義、南部はイスラム系が強い。
 この構造は或る近未来予測をしやすくしている。
即ちウクライナも東部はロシアを支持し、西部は反ロシア・親米欧路線で、選挙ともなると票が豁然とわかれたように。
 
 さて「民主革命」以後、キルギスは本当の政治的安定を得たか?

 軍事施設をキリギスは米軍に貸与しており、軍事空港を自由に使わせてきた。一回の着陸に7000ドルを米国はキルギスに支払い、くわえてスペイン兵が百名駐屯している。いずれも、911テロ直後からアフガニスタン攻撃に際してアカエフ政権が米国に協力したからである。
  対抗して米軍の駐屯するマナス空港から僅か30キロのカント空軍基地にロシア軍の駐留を許可した。これには抗議デモがおきた。

 キルギス民主化に慌てているのはプーチンばかりではない。
じつは北京も気が気ではないのだ。中国は同国への直通道路が繋がっており、米国およびロシアの影響力を牽制し、金鉱利権を漁ってきた。同国のGDPの40%は金である。
 海外への債務がふくらみつづけ、19億ドル。ちなみに同国のGDPは20億ドル。

 「上海経済協力機構」(通称「上海シックス」)を通じて中国はキルギスへの経済援助を約束し、02年8月には97萬ドルの武器援助を実行している。
 さらにキルギス政府は中国との国境地帯のうち367平方マイルを中国に売却割譲した。このスキャンダルもアカエフの特権乱用と批判された。もっとも2002年五月に隣のタジキスタンも中国へ386平方マイルの土地を売却し、それぞれは長年の領土問題を解決したし、「壌土した地域は無人地帯だ」と開き直った。

 中国はこの上で鉱脈開発と鉱石製錬設備の投資を約束し、いずれ米軍が撤退する日に備えている。
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(休刊予告)小誌は明日4月29日より5月6日までの連休中休刊です! なお宮崎は本日よりミャンマーへ取材に行きます。●
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(読者の声1)堺屋太一は「元寇は蒙古軍の日本侵略計画ではない」とNHK「そのとき歴史は動いた」で言って、顰蹙を買っているが(・・・・・木村治美 産経新聞「正論」 4月23日  「堺屋太一氏がなにかにおもねるひとだとは知らなかった。日本はたいへんな人物に経済のカジ取りを任せていたものだと背筋が寒くなった」・・・)、ほんとのところはどうなのか? こんなことは専門研究者なら議論の余地のない問題ではないのか?
 歴史観以前の史実の問題ついて躓いていては、どうにもならない。史実の把握から狂っていては埒が明かない。「伊藤博文暗殺」は史実であり、それが良かったのか悪かったのか、それは立場や史観の問題である。
堺屋太一はあたかも 「伊藤博文自殺説」か「日本人諜報部員による暗殺説」を振りかざしているように見える。
 しかも NHKという巨大メディやで千万単位の人にそれを吹き込む・・・・・・この事件は追求されねばならない。
  それにしても堺屋太一という人は、拉致問題とか人権擁護法とかVAWWとか潜水艦とか工作船とかの、国家主権にかかわるクリティカルな問題には一切発言していない。芸術家に政治を論ぜよという話ではない。
  発言内容で人間を判断することも大事だが、何に沈黙した(いている)かで判断することもそれ以上に大事な場合がある。企業では 評価は 「作為」 「不作為」で行うべきであるとする議論は長年存在する。
    (TK生、世田谷)


(宮崎正弘のコメント)境屋さんの本を殆ど読んだことがないのでコメントの仕様がないですね。経済企画庁長官になったとき、「資産公開」があって七億円余の預金をお持ちでした。「それをベースに経済活性化のアイディアを国民から広く募集し、300万円だか500万円ほどの懸賞金もつけた『境屋太一賞』を設けて、その基金になされば」と小生は何かのメディアに提言したことがあります。


   ♪
(読者の声2)先年、ポルポトの暴虐を逃れたカンボジア系米国移民のTVルポを観て、心底感動したことがあります。亡命した親たちは、子供たちに無用な憎しみを植付けひねくれた暗い性格の人間に育ててしまうことを恐れて、同胞から受けた謂われ無き非道について、子供たちに一切教えなかったというのです。
憎しみも恨みも自分だけで背負って墓場にもっていこうというのです。私はこれほど深い慈愛に満ちた親心というものがあるのだと、その親たちと、彼らを育んだカンボジアの文化に深い畏敬の念をもちました。
 このたび(有難くも中国政府の許可をもらって)中国の歴史教科書について日本も物申すそうで、何が飛び出すか楽しみにしておりますが、そこで思うのは、議論のスタンスです。
「日本人として」いうのは当然ですが、できうれば、かのカンボジア難民の顰に習い、より志を高く持ち「人類の名において」物申すだけの気概をもってほしいと思います。 
 中国共産党や韓国政府がうら若い億千万の国民に植え付けた日本への憎しみ、当事者でないだけに消し去る術もないネガティブな感情、、、。
これは日本人に対してである以上に、そのような洗脳を受け、やり場無き憤りと悲しみを生涯に亙って植え付けられた当の億千万の民に対する「人道上の大罪」以外の何物でもありません。同じ人間として許されざる罪である、という批判のスタンスが是非必要だと思います。
 これに関連して、最近憂慮していることがあります。中国共産党や一連のハネッ返り中国人を軽蔑するあまり、同じ次元に落ち込んだ低劣な言説をなす日本人が増えているように思えてならないのです。在留邦人のブログなどを注意深く読むと、上海のデモ隊に向かって「こんなことして何になるんだ!」と怒号する老いた中国人などが散見されたらしく、彼の地の住民は、流連荒亡の歴史で鍛え抜かれた面従腹背のアナーキストですから、さもありなんと思います。仕事の議論などでも、日本人なら顔を紅潮させる場面ですら、どこか平然とした余裕を感じる人が多く、よくも悪くも独特の懐の深さについては、素直に他山の石とすべきとすら思います。
 「騙されたから騙し返せ」的な議論は自らを貶めるものです。本当に言葉(と心)を届けるべき相手は誰なのか、それをよくよく絞って考えれば絶対に出てこない発想だと思います。私が言葉を届けたいと思うのは、彼の地で家族のために辛苦に耐えつつ報われない無数の無辜の民であり、圧政を逃れ亡命した民主活動家であり、彼らと心を同じうする多くの精神的亡命者の数々です。
 批判は絶対にすべきです。しかし、それがもし「人類」の名において、民主・自由といった普遍的(いろいろ欠陥はありますが、ここ当面はこれ以上の政治体制は見当たらないという意味において普遍的な)理念に照らしてなされるものでないとすれば、日本の批判は世界の軽蔑を招くことにしかならない、そう危惧します。
   (かろかろ 熊本)


(宮崎正弘のコメント)こういう大所高所からの、人間の善意による発言は貴重です。ですが善意の通じない相手には、どれだけ繰り返しても効果があがらないことも事実です。悪はいずれ滅びるでしょうが、その前に善意の人々がどれほどか犠牲になる。
 ふりかかる火の粉はやはり振り払う必要があります。
 感情的な中国批判はご指摘のように意味が薄い。それよりももっと高尚で、しかも巧妙な中国批判をどうやるべきか。国民が英知をだしあうときが来たようです。
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(編集部より)「読者の声」に投稿をいただいても掲載は5月6日以降になります。予めご了解ください。
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     <<宮崎正弘のロングセラーズ>>
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/index.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円) 
 (宅配便による注文は下記サイトでも取り扱っています)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-form/ref=s_b_rs/250-2645852-0546630
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◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
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