国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

全て表示する >

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/04/25

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)4月25日(月曜日)貳
通巻第1106号 増刊号
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
「反日デモ」は当面、抑え込まれたが、反政府感情は燻り続ける
 「プロメテウス」と「超限戦」
************************************

 中国で週末の「反日デモ」はどうやら抑え込まれた。公安当局が戦術を変更したからである。

 さて中国軍人のなかの”跳ねっ返り組”が書いた『超限戦』が話題を読んだのはかの「9・11テロ事件」の直後だった。米国がやられたときシャンペンを抜いて「やっほー」と叫んで、喜びを表した中国人が相当いたことを当時の米国メディアが上海で衝撃的に目撃し、にがにがしく記事にした。

 冒頭の「超限戦」は、これからの戦争は奇襲的テロを含み、ネットワーク上の指令系統の麻痺などが主軸におかれた現代テクノロジー型の戦争観で、核兵器も細菌兵器もときと場合によっては用いよとする仁義なき闘いのマニュアルである。

 筆者は十年前にインターネットが戦争の道具として駆使された場合の危険性を警告する意味も込めて、『中国台湾・電脳大戦』(講談社)という未来小説を書いた。
 要するにペンタゴン中枢のコンピュータ・ネットワークに一秒間に十万回以上の攻撃を掛ければ、米国の軍事指揮系統が麻痺する。
その間隙を縫って中国は台湾へミサイルを発射するというシュミレーションだ。
 
日本国内では(平和惚けだから仕方がありませんが)まったく話題にもならず、ところが真っ先に翻訳したいと言ってきたのは台湾だった。

 危機意識が違うのである。

  中国の歴史的な体質はどうかと言えば、皇帝と傭兵と奴隷で成り立ってきたシナ文明のもとでは、支配者にとって国民は「牧」である。情報は知らせない、都合のよいように奴隷として使える範囲内の教育をする。つまり「飼育」だ。江沢民の飼育によって哀れな「江沢民チルドラン」と「反日カルト」が輩出したが、文革世代はかれらを冷ややかに見ていたことを前にも書いた。

 すでに「反日暴動」を煽動したインターネットは、中国では公安省(国家公安部)の思いのままの統制下にあり、言論は恣意的な、或いは共産党の命令通りの謀略による世論形成がなされている。
  「言論の自由」なんぞ有り様もない。

 それは果てしなく恐ろしく、情報操作によって、たとえば日本の国連常任理事国入りに反対する署名が三千万を超えて「国連常任委反対」がさも全体の世論だと偽ることも出来るのだ。
「インターネット・リフレンダム」(TIME)だ。

 しかしながら技術は日進月歩どころか秒速分歩である。インターネットの情報空間をいつまでも中国公安省(国家公安部)が抑え込んで、政府の思い通りの情報操作展開を維持できるだろうか?

 「中国のインターネットのフィルタリングは世界一」と米国専門家が折り紙をつけた(「コンピュータ・ニュース」、05年4月20日付け)ほどに、その情報操作、管理ぶりはいまのところは凄まじい。

 気に入らないサイトを勝手に破壊したり、改竄したり、ひどいのはダライラマ猊下の顔が長髪ひげ面に書き換えられたり、日本の官庁、靖国神社、大手企業のHPは軒並み襲撃され改竄された。
 こうしたおそるべき情報操作の武器で国民を精神の奴隷にもしてしまったのだ。むかし、「ちゃんころ」という侮蔑表現があったが、あれは清国の奴隷(清国奴)をあらわすチンクォヌを聞き違えた日本軍が「チャンコロ」と誤用した。この文脈では「情報統制の奴隷」となって現代中国の若者は「党奴隷」である。


 ▲共産主義ではなく「共産党主義」

 イデオロギーとしての共産主義が掻き消えてしまった中国は危険なナショナリズムの国際政治ゲームを得意とするようになった。「拝金主義」はイデオロギー足りえず、代替思想が中華思想、しかし根幹にある支配の原理は「共産党主義」である(拙著『中国財閥の正体』(扶桑社)を参照)。

 中国では政府の方針が突如変われば”日貨排斥”をよびかけたウェッブは閉鎖され、愛国ネットの「デモ参加呼びかけ」の文章は削除される。朝令暮改という語彙は中国語から日本に輸入された。

 外国のニュース・メディアへのアクセスが不能、国内でも都合の悪いサイトは公安当局の基準で自由に削除される。したがって中国のインターネット網はLAN(ローカルエーリア・ネットワーク)でしかないが、他人のインターネット日記やブログの操作さえ世界的に攻撃が可能という現状は当面続くであろう。

 しかしこの中国側の優位はいつまで持つか。

 というのも携帯電話という、もうひとつの武器の存在を勘案しなければならないからである。
 05年4月2日から17日にかけて中国各地での反日デモ、暴力沙汰は主としてインターネットによって呼びかけられたが、実際には途中から携帯電話によって野次馬と失業者が集まり、付和雷同組が予想外の暴力行使にでた(たとえば上海を例に取るとインターネットで集合場所とされた人民広場に集まったのは僅か300名程度。それが南京路へのデモ行進途中から携帯電話で「面白そう」と勧誘された付和雷同が次々と参加して、領事館へ着く頃には「今日は石をなげてもいいみたい」とばかり、二万人と膨れあがっていたように)。


 ▲農民暴動は携帯電話というプロメテゥス

 農村で起きている大規模な叛乱、失業者の暴動、民族対立はすべてインターネットではなく携帯電話による動員だった。
 この携帯電話の情報空間は、中国国内ですでに三億三千万台も普及した以上、公安省(国家公安部)による完全統制はもはや不可能、まして衛星中継の携帯電話は傍聴、盗聴が不可能である。

 反日デモ最中の4月10日に北京で突如組織された数千人の退役軍人のデモ、数年前に突如、中南海に二万人が座り込んだ法輪功のデモなどは事前に情報がなく、制御出来なかった。
民衆は携帯電話という政府が統制する範疇を超える”表現する武器”を手にした。或る批評家はこれを「プロメテゥス」に喩えた。
 
 一部地域でテレビ電波のハイジャックがおきたように、いずれインターネットも、公安部の統制を突き破るソフトを開発し、近未来には反政府活動家、民主活動家らの組織が統制網を突破して新しい行動を起こすであろう。

 かくて火之神=プロメテウスは将来の叛乱の武器を中国国民に与えたもうた。
         ◎ ○ ◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
(読者の声1)最近病みつきのように貴誌を愛読しております。友人にも転送しておりますが、新聞に出ない分析は目から鱗のことばかり、それに昨日付けの欧米論調の紹介など、国際情報がマスコミより早いのも、友人にすすめがいがあります。『WILL』にも論文をかかれるとか、いまから楽しみです。
       (HO生、山梨)   


(宮崎正弘のコメント)明日(26日)発売の『WILL』は、中国韓国批判の特集で渡辺昇一、古森義久、黄文雄の各氏の論文に挟まって、小生も「こんな中国へ進出した日本企業の命運」という文章を書いております。ご期待あれ。

   ◆
(編集部からお願い)最近、とみに多くの御投稿を頂きます。インターネット時代、迅速な反応と情報の交換が大事なときがあります。時宜にかなったポレミックを優先しておりますので、せっかくお寄せいただいても?あまりに長い論文調のもの、?激越すぎる内容、?細かすぎてマニアックな御質問、?売名的な論文、?タイミングがはずれすぎているものなどは採用しかねますので御了解ください。ただしすべての御投稿は精密に拝読しております。
    ◇ ◇ ◇
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
             ♪
     <<宮崎正弘のロングセラーズ>>
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/index.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円) 
 (宅配便による注文は下記サイトでも取り扱っています)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-form/ref=s_b_rs/250-2645852-0546630
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
小誌の購読は下記で登録できます(↓無料)
http://www.melma.com/mag/06/m00045206/a00000060.html
(↑この左欄をクリックされると過去4年分の小誌バックナンバーが閲覧可能)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(C)有限会社・宮崎正弘事務所2001〜2005 転送自由 転載は出典明記のこと
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-08-18  
最終発行日:  
発行周期:ほぼ日刊  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。