国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/03/29

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)3月30日(水曜日)
通巻第1076号  
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台湾実業界、与党に衝撃を与えた許文龍「ひとつの中国」発言の真意は?
 中国に脅迫されて、完全に「人質」化した台湾企業の進出工場。
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 許文龍氏といえば「大緑商人」。ながらく李登輝前総統とともに「台湾の独立」を正々堂々と主張してきた。独立運動の蔭の実力者だった。

 一方で先見性に富んだ名経営者として高く評価され、日経のアジア経営者賞にも輝く。
 苦労のすえに台南で始めたプラスチック加工が、IT時代にあたり、精密部品から液晶パネルまで生産する世界的企業「奇美集団」はいまや台湾第六位のマンモス、従業員一万。大陸にも三つの大工場と運行会社を経営し、その影響力は世界的とさえ言える。
 なぜ大陸へ出たかと言えばABS樹脂で世界一の同社(年間130万噸)のユーザーの多くが大陸へ工場を建てたからである。樹脂を台南で生産して輸送していてはコストがあわない。
江沢民の出身地・江蘇省楊州にも工場をたてた。楊州は鑑真和尚の拠点大明寺もある。

 衝撃は3月26日早朝だった。
台湾の新聞に許文龍氏の「意見広告」が「公開状」として掲載されたのだ。
そこには台湾独立の立場を捨て「一つの中国」であり、「台湾独立を主張し続けることは両岸に戦争をもたらし、台湾人民を災禍に陥れる危険性がある」と書かれていた。

 3月26日といえば、中国の反国家分裂法を非難する台湾百万人集会の、その日。
 陳水扁総統もデモに参加し、李登輝前総統もデモ隊の先頭に立った。世界のメディアが、この台湾の怒りを報道した。だから許文龍氏の「転向声明」は深い衝撃と悲しみをともなって多くの人に迎えられた。筆者もまた深い切なさ、台湾の悲哀を感じてならなかった。

 もちろん、許文龍の文言を額面通り受け取る台湾人はひとりもいないだろう。李登輝氏はテレビで「友人はみな、許文龍さんの心理を理解している」と発言している。
 恐喝されて、渋々書いたことは明白であり、しかも前日から許氏自身は海にヨットを浮かべて世間との接触を断った。

 許文龍氏の「奇美集団」は蘇洲など大陸に四つの会社を経営し、当初は順調だった。
 だがユーザーのためとはいえ大陸進出に引きずり込まれてしまったと気がついたのは三年ほど前である。工場長が冤罪で懲役十年といわれ、その事件がたたって昨年六月に許氏は、奇美集団の会長ポストを降りた。
個人的にのみ独立運動に加担すれば、(北京は)企業経営は切り離して考えるだろうとする思惑は、しかし裏目に出た。


 ▲次なるターゲットは日本企業大幹部への「買弁」工作ではないのか

 その後も中国共産党は執拗に同社の営業を妨害し、融資している銀行にも取引先にも巧妙で老獪な圧力を加え、そのうえユーザーである日本、台湾企業へ圧力をかけた。
原材料輸入の差し押さえ、不必要な税務査察が何回も何回もなされ、あげくはデッチあげの罪をきせて経営幹部の取り調べ(厭がらせによる心理作戦は白色テロも赤色テロも同じ)、許文龍はこの間、総統府顧問の辞退を二回にわたって陳水扁総統に申し入れていた。

 事情通に聴くと、許氏の側近が中国当局に不意に拘束され、人質のかたちで許への脅迫が繰り返されたという。すなわち反国家分裂法に賛同し、デモ当日に「台湾独立は無益」とする声明を出せ、云々とする脅迫恐喝恫喝である。

 許はたとえ偽装であれ「公開状」というかたちで「中国はひとつ」と発表せざるを得ない立場に追い込まれた。
テレビを呼んでの記者会見を避け、意見広告も小さな新聞に打ったというささやかな抵抗も、ひとつの信号を台湾の民衆に送りたかったからであろう。

 李登輝前総統も呂秀漣現副総統も「台湾企業の大陸進出はいずれ人質化する」と、その危険性を何度となく唱えてきた。しかし台湾プラスチックの王永慶も、エバグリーンの張栄発も、「台湾」の独立を言わなくなり、中国大陸へのビジネスにのめり込んだ。許文龍は最後まで愚直なる美学をまもろうとした。

 もって他山の石となす、という格言を我々はしみじみと銘記しなければなるまい。

すでに富士ゼロックスの小林某も、日本IBMの北格某も北京詣でのあとで「小泉首相は靖国神社参拝をやめろ」とする北京の買弁派になりさがって多くの日本人から軽蔑された。
しかし北京買弁の風潮は、つぎにトヨタ、本田などに飛び火するだろう。
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