国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/03/28

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)3月28日(月曜日)
通巻第1074号  
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 台湾の若い世代の反応は比較的落ち着いていた
  国会で粛美琴、蔡英文ら有力議員会見記
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 台湾へ向かう中華航空は満席だった。
 最近、いかに人々の出入りが激しく、お互いの交流が深いかを象徴する。

 まずは二人の女性議員に面会した。
 粛美琴女史はジュリア・ロバーツ似の美貌の才媛。台湾立法委員(国会議員)二期目である。 父親がアメリカ人、母親が台湾籍。神戸に生まれ、米国へ移住。その米国籍を捨ててまでも五年前に台湾国会(比例区)に挑んで当選を果たした。昨年師走は小選挙区へ廻って、台北市の激戦区から立候補、国民党に競り勝った。
 
 2000年の総統選挙のおり、彼女は民進党の対外スポークスウーマンを努めていた。外国から台湾に集結したジャーナリスト三百八十人を相手に流暢な英語で受け答えした。
 筆者がこのとき質問したのは、
 「嘗て民進党は台湾独立を党是とした。いまや台湾独立を言わなくなったのに、何故これほど熱狂的な国民の支持を集めることが可能なのか? 台湾政治における顕著な潮流の変化とは何か?」。
 彼女は明確に「事実上、台湾は独立している。国民はリアリストであり、民進党の現実的政策に共鳴しているから」と答えた。

 さて、今回は同女史と議員会館で会見した。同席は高山正之、花岡信昭、藤井厳喜の各氏で、いずれも政治評論に健筆を振るう”うるさ型”の面々。
 秘書たちは皆、若い。ボランティアを含めて数人が忙しそうに走り回り、議員室は狭いので同フロアの会議室へ移動した。

 開口一番、筆者の質問は「最近、日本語を習っているそうですが、理由は?」。
 二年前、おなじ議員会館でやはり日本留学(宇都宮大学)の唐碧蛾女史と会ったとき、実は一緒に昼を誘ったことがあるが、粛女史とは多忙ですれ違いになった。
 そのとき唐委員が「彼女も日本語を習い始めたわよ」と教えられていたからだ。
 粛美琴は「神戸生まれだからが原因ではありません。実は交換プログラムで岐阜の郡上八幡に六週間、ホームスティした経験もあり、日本は地理的にもアジアの鍵となる隣人だからです」。


 ▲多層な移民社会には新しいアジェンダが必要

 本題に移った。
「台湾は移民社会。それは人種的意味も含めて欧米文化が流入し、日本文化が嘗ては輸入されていて、これらが中国的伝統文化に被さって多層な文化伝統をもつ社会を形成した」
 この発言には若干の解説が必要であろう。 李登輝前総統が最近発言しているなかに「新時代台湾人」という新タームがある。
 民主化とともに台湾の国際舞台への挑戦などを通じて、議会と政権のねじれ現象という「民主化の内戦時代」となった台湾。
 その諸矛盾を克服する「新時代台湾人」というアイデンティテイの形成が急務という議論を意識しての同女史の発言である。

 台北滞在中に、台湾大学正門前で反国家分裂法反対を叫んで座り込んでいた学生達の掲げていた旗に「台湾民族主義」が大書されていた。筆者が学生達に聴くとそういう質問自体が意外をいう顔つきをした。
 これを黄昭堂(台湾建国独立連盟主席)に問うたところ「台湾に住む人々が台湾民族を形成しており、国民党さえ、民意の動向に敏感になっている」との説明があった。台湾民族主義は、したがって文化人類学的解釈ではなく、台湾人意識と捉えていいだろう。

 再び粛美琴女史の発言に戻る。 
「台湾の戦略的要衝としての価値は文化的経済的なものに加え、兵站マネージメントが必要です。つまり後方支援の下部構造を構築し、これら新社会的要素を台湾に整合させてゆく必要がある。大陸との交渉で、大陸側は面子を重んじ、台湾側は原理原則重視。(状況は古い概念で固定している)だから新しいプログラムが必要であり、それには新しい言語でのアジェンダ構築が必要と思います」(要するに両岸関係の次の交渉には過去の「江沢民八原則」、陳水扁の「四つのNO」のパラダイムを超える新しい概念が必要だと強調している)。
 
 ーー具体的には?
 「FTAの推進、経済産業のますますの発展のための政策と(日米間との)緊密な情報の交換です」(日本と台湾との早期のFTA締結も視野に入れた発言)。日本との交流を絶やさないため近く愛知万博にも来るという。


 ▲われわれは北京よりもっとリアリストよ

 次に蔡英文女史に会った。
 彼女は李登輝時代(99年7月)に「台湾と中国は特殊な国と国との関係」(所謂『二国論』)と発言し、世界的センセーションを呼ぶことになった李発言の起草者といわれ、その後、陳水扁第一期政権で大陸委員会主任(閣僚級)を努めた。陳水扁の「一辺一国」論の起草者とも言われ、事実上の大陸政策の中心にいた。政策立案の枢要な箇所にあって活躍した学者出身の才媛である。

 蔡英文は昨師走の総選挙で比例区から立候補して当選。一部には2008年民進党副総統候補に議せられている有力者だ。
 筆者は「反国家分裂法は最初予想された内容より表現内容に過激さがないことが目立つように思えるが。。」と水を向けた。
 「そうですね。あのドラフトは予想より柔らか。でも事前発表から三ヶ月、北京は外国の反応を見ていた。諸外国の反応ぶりを計測しながら共産党の内部権力の基盤固めをしてきたのよ」。

 北京が「反国家分裂法」なるものを全人代で制定するとアナウンスしたのが昨師走だった。
 陳水扁与党が総選挙で過半数を得られなかった直後である。
 その後、「事前情報を得られなかった台湾情報機関の不手際」(李登輝前総統)とする批判もあったが、「現状維持を変更するいかなる試みにも反対」と米国が痛烈な批判を展開した。
 
 くわえて二月には日米が「共通戦略目標」を謳って台湾防衛を示唆するに及び、北京はトーンを急速に落とした。
 とはいうものの成立を見送るのではなく「宣言」に類いするようなステーツメントを、しゃにむに全人代で上程し最終日に可決した経緯となる。

 蔡英文が続ける。
 「過去十年の台湾の民主化により台湾の将来は台湾人が決めるという選択肢を(反国家分裂法が)むしろ拡大した。確かに中国も(経済的には)強大になったが、台湾人のアイデンティテイがそれよりも急速に強固になった」。

 ーーあなたは大陸との交渉の当事者であり大陸政策立案の中心にいた。これから両岸関係はどうなると思いますか?
 「それほど悲観的でもありませんし、我々は水面下で交渉を続けているのですよ。もちろん表舞台のAPECの場もあれば、米国経由での接触もあります。反分裂法をこの時期に成立させたという(日米を敵に回しての)胡錦濤の動機は、権力闘争の過程で派閥バランス上、必要だったことが大きい。とくに引退した江沢民の上海閥と胡の出身母胎である共青団とのバランスです」。
 
 ーーでは王道函に替わって、いま北京側で台湾政策の中心人物は誰ですか?
 「賈慶林だと認識しています」

 賈は江沢民派で現在、政治局序列四位、政協会議主席。元福建省長時代には夫人がスキャンダルの元締めと騒がれ失脚寸前に陥ったが、江沢民が夫人との離婚を勧めて難局を逃れた。もし賈が台湾問題の責任者とするならば江沢民路線継承色が強い。
 だが蔡英文も別れ際に再度言った。「我々は(北京より)もっとリアリストよ」。


 ▲台湾と中国との軍事対立のゆくえ

 筆者は前日に会った“台湾独立運動の兄”ともいわれる辜寛敏の言葉を急に思い出した。
「中国との戦争は考えられない。もし起これば? 歓迎ですよ。アセアンに近寄った中国はそれまでのゲリラ支援を捨てた。この政策転換によりアジアとの交流は拡大した。そのアジア諸国が再び不審を募らせる反国家分裂法を全人代が可決したことは中国の危機意識のあらわれなのです」と辜が静かな口調で大胆な論理を展開したのだった。
 
 だが多くの台湾独立志向の人々は辜の「戦争がない」という予測には反対している。
「反国家分裂法は日本への警告でもあり、もし台湾が共産化すれば、中国の基地化、中国の不沈空母に台湾がなるのですよ。これは地政学的に言っても、日米の戦略に立ちはだかる最大の脅威でしょう」(黄昭堂)というように、日本への軍事的な期待も敏感に出てきている。

 台湾ではしかしながら、72年の日華断交、76年蒋介石の死去、96年のミサイル危機の際に見られたような財産をもっての海外逃亡もなく、株式市場の暴落もなく、じつに平穏だった。
 中国の恐喝ともいえる反国家分裂法を前にして百万人デモが整然と行われるほどに台湾の民主化は成熟していた。民主主義は強い!

(注 粛美琴の「粛」には草冠。唐碧蛾の「蛾」は「女編」。王道函の「王」と「函」はさんずい。)
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(読者の声)愛知地球博の中国館についてですが、この施設が日本の建築基準に合致しておらず、どこも請負に引き受けてがが居らず急遽シナから労働者やら大工を呼び寄せて突貫工事をしたとの噂がございます。
外務省やら管轄省庁は全てシナさまのおやりになることで、黙って見てみぬふりをしておられるようでございます。万が一開催中に東海地震でもくればもろくも崩壊し、見学者の大惨事が起こるとは必至でございますので、皆様におかれましては建物の中はおろか、お近くに寄られないほうが無難と思うのでございます。シナさまには一欠けらの良心もモラルもないことから、この噂の信憑性はきわめて高いと判断するのでございます。  (駅弁大学教授)
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