国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/03/18

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)3月18日(金曜日)貳
通巻第1069号 
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ヨーロッパ・ヒューマニズムの偽善
 中国へ武器供与を再開する「死の商人」が本当の姿ではないのか
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 ロシアは中東へ武器を大量に売って、テロリズムを煽った。いまも武器だけはせっせと売っている。イランの各開発はロシアの技術が主流である。

 嘗て世界を荒らしたテロリストの大半はロシアで訓練を受けた。
「反米」「反ユダヤ」がスローガンだった。70年代のモスクワには「海外留学生」という名のテロリスト養成訓練特殊施設があった。
 
 そのロシアが「テロリストの温床」という汚名から抜け出して、ひょっとして西側の一因になるかという淡い期待が一時的にはあったが、思わぬ石油とガスの恩恵を受けて経済的に立ち直り、シロビキ(旧KGB)のプーチンが再びロシアを暗黒独裁国家に引き戻そうとしている。
 ロシアから民主主義の希望は日々希薄になっている。
 
 一方でロシアは大量の武器を中国へ売却し、最新鋭駆逐艦、ミサイル巡洋艦、はてはジェット戦闘機のライセンス生産まで許可した。中国は最大の顧客となった。現在の台湾海峡の安全を脅かす物理的脅威は大半がロシア製である。
 
 中国は日本に軍国主義復活の兆しありなどと悪辣な政治宣伝を繰り返す一方でベトナム、カンボジアを戦場と化し、武器を大量に供与し、地雷をそこら中に敷設させる支援をした。
 多くのカンボジア、ベトナム国民が地雷に触れて生命を落とした。これら中国製地雷は日本の援助で除去作業が続けられた。
 他方で中国は中東、アフリカ諸国へ武器を供与して石油鉱区の開発と交換する「死の商人」的な外交が得意になった。

 大東亜戦争は日本がアジアを覚醒させ、ようやくアジア諸国は欧米列強の植民地支配から独立できた。
 インド、セイロン、ビルマは英国から。カンボジア、ベトナムはフランスから、インドネシアはオランダから。そしてフィリピンは米国から独立した。アジア諸国はおおいに日本に感謝した。
 欧米は当然ながら日本を怨んだ。大東亜戦争が日本の敗北に終わって四年後、シナ大陸は共産党が支配することとなった。
 毛沢東もまた「日本のおかげで政権をとれた」と日本に感謝の言葉を吐いた。

 筆者はふと脈絡はないが、谷崎潤一郎のシナ大陸見学記の一説を思い出した。
 文豪・谷崎は1926年に上海に足を運んで『上海交遊記』を残した。上海は外国租界で殷賑を極めていたが、資本は外国ばかりで、シナ人がさげずまれていた。ナショナリズムが燃え、日本からの留学帰りの文学青年らを政治に走らせていた。
 文中で郭という青年の談話を借りて谷崎は当時の上海を次のように活写した。

 「現在のシナは独立国ではないんです。日本はカネを借りて来て自分でそれを使うんです。我々の国では外国人が勝手にやってきて、我々の利益も習慣も無視して、彼ら自らこのくにの地面に都会を作り、工場を建てるんです。そうしてわれわれはそれを見ながら、どうすることもできないで、踏みにじられて行くんです。このわれわれの絶望的な、自滅するのをじーッと待っているような心持ちは、決して単なる政治問題や経済問題ではなりません」。

 この心境、いまの上海人の心理の奥底に眠る潜在的なナショナリズムと酷似してはいないのか。かれらが北京の軍事優先という遣り方に賛同しているとは思えない。
 中国は軍人が国の根幹を決め、ビジネスマン、国際人の多い上海は経済力があっても、国際主義からの発言力ができない。

 さて90年のマルタ会議でヨーロッパの冷戦は終わった。
 戦争の脅威は向こう半世紀以上はないであろう。NATOは事実上形骸化し、ワルシャワ条約機構は解体し、かわってEU緊急展開軍、CIS緊急展開軍ができた。

 しかしアジアには北朝鮮と台湾海峡をめぐっての冷戦が依然として燻り、いや状況次第では熱戦の火蓋が切られる可能性がある。南アジアにおいてもインド、パキスタン。。。。

  米国の武器産業は世界中に顧客がいる上、日本と台湾は高価な武器システムを購入せざるを得ない。これを手をこまねいて見ておれなくなったのが欧州の軍需産業だった。
 市場は十三億の民、高度成長の中国である。高価な武器を購入できる購買力もある。

 1989年6月4日の天安門前広場における大虐殺を、最も激しい言葉で罵ったのはフランス。ついでドイツ、オランダ、スペイン。直後に李鵬が訪欧した時は各地で李鵬に卵がぶつけられた。中国は最大級の罵詈雑言で欧州に扱われた。ミッテラン大統領夫人が先頭に立ち、イブ・モンタンら多くの欧州の著名人らは「自由中国」のラジオ局を支援し、そのチャーター船の資金まであつめた。
 「人権」「ヒューマニズム」が謳われ、多くの中国からの亡命者を、とくにフランスは受け入れた。

 あれから16年が経った。中国の人権弾圧は89年当時とまったく変わっていない。
 しかるに「いまの中国は嘗ての状況から著しく改善された」(シラク仏大統領)として、独仏は中国に武器を売り込む姿勢を強めた。「死の商人」の顔が欧州に戻った。
 嘗て阿片でシナ大陸をむさぼりつくした欧州の「資本家」「利権屋」と政治が絡み合うとき、偽善が政治世界を覆う。

 米国は欧州の武器供与再開を批判するが、あまり説得力がない。戦前、シナ大陸を阿片で猖獗させ利益をむさぼった欧米の一員であり、しかも米国はほかの国へ武器を供与している。同じ穴の狢ではないか、というわけだ。かくして偽善はいつも世界に蔓延る。
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<<今週の書棚>>

ボニー・アンジェロ、山村宜子訳『ファースト・マザーズ』(清流出版)
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 大統領になった男たちの母親は一体、どういう女性であったか? いまの日本人なら「いかなる英才教育をしたか?」が関心の的であろう。
 浩瀚な本書、実に606ぺージもある。
登場する大統領はFDRこと、フランクリン・デラノ・ルーズベルト、原爆投下を決定したハリー・トルーマン、戦争の英雄ドワイライト・アイゼンハワー、カリスマとなったJFK、ベトナム戦争泥沼のLBJことリンドン・B・ジョンソン、リチャード王朝を築いたニクソン、ぱっとしなかったが善意の人ジェラルド・フォード、平和部隊の母親で知られたジミー・カーター、保守革命のロナルド・レーガン、現大統領の父親ジョージ・ブッシュ、三回も四回も離婚歴の母をもったクリントン、そして現在のジョージ・ブッシュ二世。以上十二人の大統領の母親たちである。現大統領の母バーバラは「肝っ玉かあさん」として国民に人気が高い。
小生、どれも興味があるが、逐一紹介してもきりがないので一人だけ。
つまりFDRの母親である。なぜ興味があるか。それはFDRが何故,日本を敵視し、中国を味方だと錯覚したか、その歴史の謎を解明するヒントが隠されているからだ。

▲ FDRの母親の父は中国の麻薬で財を築いた

 フランクリン・デラノ・ルーズベルトの「デラノ」は母親がセーラ・デラノであり、その父親はウォレン・デラノ。その先祖を辿ると17世紀にプリマスに植民したフィリップ・ドゥ・ノワエ一族(貴族)に行き着く。
フィリップ家は、のちのデラノと改名する。
 ルーズベルト家は「織物業に始まり、不動産と西印度諸島の砂糖貿易で数倍に(財産が)増え、さらに鉄道によって拡大した」という貴族の家系。デラノ家も貿易でさかえた家柄である。
 大事な点はこれからだ。
 「セーラが子供の頃、父は地球の反対側の香港に住んでいた」。
 何のために?
 かれが当時、香港で「商っていたのは茶、絹、中国の様々な美しい品々、そして阿片である。ウォレンが『名誉ある合法的なビジネス』と正当化する魅力的な商売に、多くの英米商人が関わっていた。厳密な法律的解釈からすれば合法的ではあったかもしれないが、名誉については疑問だ」と著者のアンジェロはきっぱりと言う。
 「デラノ一家は阿片は南北戦争の負傷兵達に必要だったと説明するだろう。戦争の負傷者と何百万人もの中国の阿片常用者が、たちまちウォレンの財産を恢復させてくれた。大家族のひとりだったセーラが後年100万ドル以上を遺産相続した」。
 これで納得できました。さんざん中国を食い物にして太ったのだ。デラノを父にもったセーラは父親コンプレックスの側面があり、父ほど歳のちがうジェイムズと結婚し、フランクリンをうんだ。フランクリンに英才貴族教育を励行したのも、中国礼賛を吹き込んだのもセーラだった。FDRの潜在心理のなかにいつしか反日がすりこまれていた。
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 <<宮崎正弘のロングセラーズ>>
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/index.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円) 
   (御注文と宅配便発送は下記でも取り扱います)
http://esearch.rakuten.co.jp/rms/sd/esearch/vc?sitem=%B5%DC%BA%EA%C0%B5%B9%B0&sv=30
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(休刊予告)台湾取材のため小誌は20日から26日頃まで休刊となります。◎
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