国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/03/17

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)3月17日(木曜日)貳
通巻第1067号 増刊号
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  香港行政長官交代の背景に暗闘
  江沢民ら“上海派”は、胡・温執行部に出し抜かれていた
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 香港特別行政区の董建華・行政長官が突如、辞任を表明したのは二月である。
 表面的には「健康上の問題」が理由とされた。

 董建華は父親の代に上海でそだち、1940年代に香港へ移住。正確には寧波閥だが、海運業を中心に手広くビジネスで成功し、江沢民と父親が親しかった関係で初代長官に選ばれた。

 江沢民時代に中央で香港問題を担当したのは江沢民と曾慶紅で、もとより香港における商業権利を上海派が独占するために知り合いを長官としたのだ。依怙贔屓人事と批判された。

 97年就任以降、董の行政手腕は最悪に近く香港住民からも悪評さくさく、とくに2003年のSARS流行期間中には「対応が悪すぎる」として市民が騒いだ。
 香港基本法改正でも市民50万人がデモ行進を敢行した。
 「一国二制度が五十年間約束された。高度の自治が香港にあるはずなのに北京の言いなりになるとは何事か」と香港の知識人学生が批判を繰り返した。
 
 さて、この突如の「降板」は、胡錦濤と温家宝が仕組んだ「上海派追い落とし」の政治劇の連鎖のなかでおきた。
 前年の全人代では江沢民がしゃあしゃあと先頭を切って入場した。しかし国家軍事委員会主席も手放すことが決定的となるや否や、胡は江沢民への追従笑いを止めて、自派を片っ端から要職へつけた。党の軍事委員会にも胡派の扶植を開始した。

 経済閣僚には「無錫閥」(呉儀ら)、地方の省長、副省長クラスには出身母体「共産青年団」から次々と有力幹部を抜擢した。

 胡は昨年12月に香港へ赴き、公衆の面前で董の行政手腕を批判し、面子を失わせしめた。辞任へ追い込む伏線は、このとき既に敷かれていたのだ。

  全人代は江沢民が完全引退の儀式でもあり、当人はとうとう会場にも姿を見せなかった。あげくに香港の子分も失脚、しずかな「クーデター」と言えなくもないだろう。

 中国政府は3月13日になって董建華の香港行政長官辞任を承認し、ナンバー2の曽蔭権(ドナルド・ツァン)政務官を長官代行に任命した。
 かわりに董に用意されたポストは「政治協商会議」の副主席。要するに飾りのポストである。(なんたって副主席は20人もいるもんね)。

 曽蔭権長官代行は「新行政長官の選挙を7月10日に実施する」とした。
 曾はイギリス仕込み、ロンドンで教育を受け、じつは胡錦濤にかなり近い。行政の遣り方はロンドン的に見えて、けっして北京をおこらせる方法はとらない。次期長官は確実である。つまりは「香港も胡ラインの利益圏になる」わけだ。
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(読者の声)貴誌第1065号に「全人代報道の影に隠れたが、警職法にあたる警察規定を改悪していた」との記載があります。
これは全人代で警察に無条件に身分証明書を随時検査する権限を与えるべきだ」という提案がなされたという3月10日のニュースに基づいて書かれたのでしょうか。(全人代関連で警察関連のニュースは他には無かったと思いますので)。
もしそうならば、『改悪していた』という貴誌の記載は間違っていると思います。当該ニュースは、中国共産党上海市委員会副秘書長の陳旭という人大代表(この人は上海の華東政法学院を卒業した由で一応法律を学んでおり、出世を目指した一種のパフォーマンスと考えてよいと思う)が、警察に前提条件無しで身分証明書を随時検査する権限を与えるよう法律を改正すべきであるという提案を全人代に提出したというものでした。
 提案の理由は、警察の身分証明書検査権限は現行では、違法犯罪の容疑者に限定されているため、農民の都市への大量流入により都市部にあふれる乞食、ホームレス、夜行型人種等の身元確認を容易にするべく警官による身分証明書検査権限を強化しようというもの。
陳旭の地位から考えて、この理由説明はもっともらしく聞こえます。
ただし警察がこのような権限を持てば、貴誌の記載通りで、誰でも身分証明書検査という名目で逮捕することが可能となります。更に、検査した上で適当な理由をつけて逮捕をちらつかせて、今回は特別許すとして金銭を巻き上げる権限を警察にもたせることにもつながります。(権限なしでも盛んにやっていることだが)
 話は戻りますが、要するに、今回のニュースは提案がなされたというものであって、決して法律の改正が行われたというものではありません。
今回の全人代ではこの種の提案が991件提出された(しかも法律案を作成して添付したものが512件もあった)そうです。これらの提案については全人代常務委員会が審査を行い、法改正の必要性を認めれば、順次審議にかけることになります。従い、必ずしも法改正につながるとは限りません。
 米国から人権問題を厳しく指摘されている中国としては、警察に身分証明書を随時無条件で検査する権限を与える法改正を行うことは相当に難しい検討課題となるものと思います。
ただ貴誌が言われている令状無しの捜査や不審人物の検挙は今でも公安警察が堂々とやっておりますし、国家安全部(地方は国家安全局)は治外法権で人権無視のやりたい放題です。しかし国家安全部(局)については、あとのたたりが恐ろしく、誰もこれに問題を提起することが出来ないのが実態です。
       (商社員)


(宮崎正弘のコメント)この情報は或る中国のソウスから電話ではいってきたもので、情報提供者の主観が明らかに混ざっていましたね。いずれにしても民主派からみれば、共産党が決めるあらゆる法律は「改悪」と見ております。
 ともかく御指摘、まことに有り難う御座いました。駐在記者はもちろんですが、全人代を取材した日本人記者の多くがまだ北京におり、小生は詳しい後追い分析をまだやっておりません。
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(サイト情報)3月14日から21日までのライス国務長官のアジア歴訪について、下記の国務省IIPのサイトでスピーチや会談の様子がまとめられている。
?Secretary Rice's Trip to South Asia, East Asia
http://usinfo.state.gov/eap/east_asia_pacific/rice_trip_march2005.html
?Map of Secretary Rice's Trip to South Asia, East Asia March 14-21, 2005
http://usinfo.state.gov/eap/east_asia_pacific/rice_trip_march_2005/rice_trip_march_2005_map.html
?次期駐日米国大使の指名を受けているシーファー氏の指名承認公聴会。
http://japan.usembassy.gov/e/p/tp-20050316-04.html
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●宮崎正弘のロングセラーズ●
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/index.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後(改訂版)』(並木書房、1575円)
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円) 
   (御注文と宅配便発送は下記でも取り扱います)
http://esearch.rakuten.co.jp/rms/sd/esearch/vc?sitem=%B5%DC%BA%EA%C0%B5%B9%B0&sv=30
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(休刊予告)3月20日から25日まで台湾取材のため小誌は休刊です。◎
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◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
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