国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2005/02/16

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)2月17日(木曜日)弐
通巻 第1040号  臨時増刊
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ハリリ暗殺の背後にいるシリアを米国は間接批判
 テロリストが再びベイルートを恐怖の拠点とするのか
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 嘗てレバノンの首都ベイルートは「地中海のパリ」と呼ばれるほど美しい町並み、国債金融センターでもあった。フェニキアの末裔がすむ商業の都として栄えた。
 宗教各派の絶妙のバランスのもとに成立したレバノンが血なまぐさい内戦の戦場と化したのはアラファトの率いるパレスチナ戦闘集団の基地化が原因だった。


 ▲大シリア主義はレバノンを属領とみている
 
 76年にシリアはレバノンに軍をすすめ、この地をイスラエル攻撃へむかうテロリスト「ハマス」「ヒズボラ」の出撃拠点とした。

 70年代から89年まで十五年に亘ったレバノン内戦は、10万人の尊い生命を奪った。
 内戦でベイルートは瓦礫(がれき)の山と化し、テロリストの巣窟となった。悪が栄えた。
 レバノンの独立を阻むシリアが一方的に軍を駐留させ続けた。シリアの歴史認識では「大シリア」の一地方がレバノンという位置づけである。イスラム過激派のテロリスト各派はシリアの支援のもと、堂々とベイルートに事務所を構えた。レバノンの主権はないがしろにされた。

 廃墟と化したベイルートを再び地中海のパリとして再建させるためにラフィク・ハリリが乗り込んできたのは1992年だった。

 ハリリはレバノン南部シドンの丘でレモン栽培の農家に育った。商業カレッジに学んだが学費が続かず、二十一歳のときに日雇い教師としてサウジアラビアに渡った。
 この地サウジアラビアで王室に近づき、土建業者として大成功をおさめた。
 その蓄財プロセスはビンラディンの父親と似ている。
 しかしハリリとビンラディンが異なるのは過激思想にかぶれず、爆弾闘争に走らず、祖国の再建、経済の活性化こそが人々を幸せに導くとする信念だった。

 またファハド国王(当時は皇太子)の信任が厚く、サウジ各地に六つの王宮を建てたのもハリリだった。

 やがてハリリは世界の富豪となり、つい最近もワシントンDCに16エーカーもの広大な敷地を購入、豪邸を建てた。パリにも豪邸、シラク大統領とも親しい。


 ▲祖国の再建にかけたハリリ

 ともかくレバノンの廃墟を見て、ハリリは立ち上がった。
 92年以来、合計五回十年に渡って首相を務めた。国民の人気は高く、ハリリは「シェイク(お頭)」と呼ばれた。

 レバノンのような人種モザイク宗教混在国家ではキリスト教マロン派から大統領、スンニ派から首相、シーア派から「国会議長」が選ばれるシステムとなっている。このほかに土着遊牧民のドルーズがいて、シリアに寄ったり、離れたりする。

 2月14日、バレンタインの朝、ベイルートの中心部で大爆発があり、ハリリ前首相と側近10人が死亡した。 
 この爆発はハリリ暗殺を狙ったもので、大手銀行「HSBC」など付近は金融街でもあり、多くの建物が大破するほどの破壊力をともなった。
 ハリリが中心となって再建した美しきベイルートの中心街、オフィス街がまたまた硝煙のただよう廃墟と化した。

 無名の「勝利と聖戦」を名乗るグループが、カタールの衛星テレビ「アル・ジャジーラ」に犯行声明を送りつけた。この組織は未確認のテロリストだが、多くの西側観測筋は背後にシリアの影を認めている。

 シリアから見れば、ハリリはあまりにサウジ寄りであり、フランス寄りであり、疎ましい政治的存在だった。しかもハリリは2000年の国民議会選挙で大勝し首相に返り咲いた。この間、ハリリは新聞とテレビ局の経営にも力を知れ、奨学金制度を創設し、そのハリリ財団からは海外に三万人が留学した。
 
しかしレバノンを属領視しているシリアの軍撤退問題および憲法改正問題でシリア軍の駐留をみとめる親シリア派のラフード大統領との対立が苛烈になっていった。
 04年にハリリは首相を辞職したが、次の国会選挙(05年5月)で首相返り咲きが確実視されていた。

 シリアの独裁者=アサド大統領とラフード(レバノン)大統領は、ハリリ前首相の殺害を聞いて、「恐るべき犯罪行為だ」と非難したそうな。


 ▲米国はシリア制裁を強化へ

 さて米国だが、最近もライス国務長官が「圧政の拠点」としてシリアを名指し批判した。昨年五月以来、米国はシリアへの経済制裁を実施している。

 医薬品と食糧をのぞく輸出禁止、シリア米国間のフライトの禁止、さらにはテロリストと関連のあるシリアの在米資産の凍結措置に財務省は動いていた矢先だった。
 ホワイトハウスは正面からシリアを批判し、スコビー駐シリア大使を召還するとした。

 米政府は、約1万4000人ものシリア軍のレバノン駐留が地域の不安定をつくりだした直接原因であり、昨年9月に採択された国連安全保障理事会決議に基づき「レバノンからの即時撤退」をシリアに求めた。
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創刊日:2001-08-18  
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