国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/12/14

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)12月14日(火曜日) ?
      第988号  臨時増刊
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<<台湾総選挙取材日記>>

(某月某日)午後一時前に台北桃園空港着。EG(日本アジア航空)201便は三分の二ほどの乗客だろうか。朝、東京駅発の「成田エクスプレス」に乗るため五時半に起きて、しかしその前夜は飲み過ぎだったため飛行機のなかで二時間近く眠った。どこでも寝られるのは最近の特技。
 台北空港から市内までタクシーで40分。定宿の国賓大飯店は満員のため、仁愛路のハワードプラザホテルへ旅装を解く。このホテル、11年前に村松剛さんと一緒に泊まったことがある。当時は一流ホテルだが、いまもビジネスホテルとしては最上級の由。インターネットで予約したので一泊一万三千円朝飯付き。
 ほかに日本人記者が40人ほど、いろいろなホテルに分宿しているそうな。各社の論説委員も直前まで台北に滞在していたと電話で新聞局の係りが言った。
 寒い師走の東京から常夏の台北、下着まで汗をかいたので、急いでシャワーをあびてから天津街の行政院新聞局へ。プレス登録をすませ、プレスカードの発給を受ける。
係りの女性が「宮崎先生の論文の翻訳が『新新聞』(台湾の週刊誌)にでています」と言うのでコピィをとってもらった。
新聞局の建物前に百人ほどのデモ隊。テレビも全社そろってカメラをまわしているが、この十年間、台湾でデモなぞはすっかりおなじみの風景となった。横目にながめてタクシーを拾う。なんのデモかもよくわからない。
じつはその日の正午前後に台北駅前で三回爆発があった。「台湾独立」への警告という脅迫文が届き、テロ警戒の最中だった。3発の爆弾で車両が火災、しかし死傷はなかった。おそらくこの事件は日本につたえられまい、と思いながら写真を撮ってから急いでホテルへ戻る。友人がピックアップに来るからである。
 夕食はまとめての宴席となった。
 「美しい日本語を守る会」の陳絢暉先生が呼びかけてくださって、ちょうど台北にいた伊原吉之助先生やら大手新聞台北支局長のS氏、たまたま台湾旅行中で、その晩、小生と呑むことになっていた上野晴夫(元香港和光証券支店長)とルポライターの山本徳造氏など賑やかな晩餐会。合計十五人ほど。
 伊原先生から中南部の選挙戦の模様を克明に伺う。与党は苦戦中だという。
 とくに民進党、団結連盟がおなじ選挙区で立候補しているため身内の票の取り合いが熾烈だという。
二次会は南京東路へ川岸を替えて、とあるスナック。ここで地元実業家のSE氏と落ち合う。といっても午後九時半。なんとSE氏も東京から帰ったばかりで、しかも同じEG便に乗っていたというではないか!お互いに目が真っ赤、疲れが溜まっていることがわかり、演歌を二三曲つづ唸って十時半には店をでた。小生はともかく四半世紀の知己でもあるSE氏は昭和8年生まれの先輩、台湾大学では周英明氏と同級だった。
 蘇州や東完で四万人ほどの工員を雇っている。労務上の苦労話を伺えたのは有益だった。


(某月某日)朝一番の取材先は偶然ながら小生が宿泊のホテル四階。午前十時半から親民党の宋楚諭主席が記者会見をするというので四階の会議室へ。ところが副主席の張昭雄(元医師)が代理で英語のスピーチ。それからQ&Aとなり、小生の隣席にいた清水・朝日新聞台北前支局長が得意の北京語で質問をしていた。ほかに日本からの記者は二人、ニューヨークタイムズ以下、欧米の記者にまじってフィリピンの記者が質問を食い下がった。
 張副主席が「うまくすれば親民党は41議席とれる」と豪語、思わず吹き出しそうになる(結果は44議席から34議席へと激減させ、宋楚諭の政治力に大きな陰りがでた)。
 はねてから昼休みの間隙をぬって国父記念館へ。調べたい事実があったので。暑い日で、歩いているうちに疲れ果てる。裏の喫茶店で一休み、ブルーマウンテンが500円。
(台北も物価が高くなったなぁ)。
 ホテルでシャワーを浴び終わるやY氏が来訪。二時間ほど議論した後、淡水へクルマを飛ばす。食事のあと、Yさんの淡水の自宅で論戦のつづき。
 投票日前夜なので各派、「最後のお願い」の日である。途中の石門では民進党が最後の集会をやっている所為かクルマが混雑している。40分の道のりが一時間近くかかった。
 テレビでは李登輝さんの娘が台湾団結連盟の最後の集会で演説している。画面を見る限り、参加者に活気がない。
 なんとなく不安な気分に襲われた。


(某月某日)投票日。朝一番で近くの投票所の取材を済ませ、11時から中国時報の中国大陸専門家らとフランス料亭へ。台北にいるのに、最近の台湾の人達はフランス料理をことのほか好むのは何故だろう?
 中国の軍の人脈分析について話し合ったが中味は別の機会に譲る。
 昼はダブってのアポイントとなっている。国賓ホテルでは蔡昆燦氏主催のパーティをやっている。こちらへは一時間遅れて顔を出したが、周英明、金美齢夫妻を中心に多士済々が集まっている。二十五人が一卓を囲む宴席というのも壮観である。佐賀からわざわざ選挙支援に駆けつけた松永又次夫妻、久米哲次さん親娘。名著『台湾独立運動私記』の宗像隆幸氏ら。
 「老台北」こと蔡さんが言った。
「宮崎さん、いわゆる“国父”、孫文のことを書かれましたね。知ってますか、孫文は一銭しか損をしていないことを」。
 例によって蔡さん、まじめな風貌なので、小生「はぁ?」と返答。
 「だってそうでしょう。孫逸仙(そんいっせん)だから」。いつものユーモア、今日も絶妙の冴えである。会がはねて、宗像さんの部屋でウィスキーをいただきながら、選挙予想のつづき。
 いったんホテルへもどり、方々へ電話取材。夕方からは三民路の上海料理で、再び久米さんたちと合流。これまた30人ちかい会合(というより宴席)になる。投票先の台南からクルマを飛ばして戻ってきた久米さんの友人たち(全員が日本語を喋る老人たち)、なにか同窓会的風景。
 そのあと、またまた南京東路のスナックへ繰り出し、そこで初めて国民党勝利を知って興ざめた。熱血漢の久米さんは怒り出した。ホテルへもどって、テレビの開票速報をかけっぱなしにして、あちこちへ電話しまくる。落胆しているひとが多い。
 そのうちテレビを掛けっぱなしで寝ていた。


(某月某日)八時半まで寝てしまった。飛び起きて近くのコンビニへ走る。新聞を全紙購入するためである。自由時報、リンゴ日報、連合報、中国時報、民生報、台湾日報、経済日報、TAIPEI TIMES、チャイナポストなどなど。飛行機の出発の時間までに全紙を読み通し、主要記事の切り抜き、ほかの紙面は捨てる。部屋に二つあるゴミ箱が新聞で満員。手もインクで真っ黒になった。(毎日そうしていたが。。。。)。
 国民党が勝ったせいか町は静か、今回は暴動が起きそうにない。国民党本部の風景も取材したかったが時間が来た。
 嗚呼、やっぱり三泊四日程度では広汎な取材はできないなぁ、と反省しつつ、飛行場ではNHKの顔見知りの記者などと一緒になった。成田へついて上野へ向かうスカイライナーでは、知り合いのNと邂逅、かれはフィリピンの帰りというので、隣のひとの席を替わってもらって、フィリピン事情を聞いているうちに京成上野駅着となった。
 強行軍で今回も疲れ果てた。
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(読者の声1)台湾取材からお帰りなさい。予定では14日までと聴いておりましたが、与党の敗戦で、繰り上げられたのでしょうか。
  選挙はまことに残念な結果になりましたが、本番は3年後の総統選挙とそれに続く立法院選挙だと考えます。今の選挙で勝ってもいいのですが、06年の独立宣言では北京オリンピックまでに年数がありすぎて、武力介入をしてくる可能性もあります。07年の暮れから翌春の総統選挙後なら五輪直前で動けないでしょうから、と(理由をつけて)慰めています。
         (HS生、豊橋)


(宮崎正弘のコメント)13日に急遽、ラジオ番組が入ったため12日の深夜に帰国しました。その竹村健一さんとの番組でも言いましたが、「結果的に与党は得票を延ばしており、真に負けたのは“中華思想”“統一”を掲げて庶民から乖離してしまった親民党」です。国民党はテクニカルな選挙上手で、選挙区割りをうまくやった戦術効果ですが、外省人の危機意識がそうさせた。久しぶりに連戦の満面の笑顔をニュース画面に見ましたよ。
 がっかり組も多いかも知れませんが、これで民進党、08年総統選挙、団結出来るだろうと思います。


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(読者の声2)987号で台湾選挙報告の簡潔な文章のなかに「或る選挙プロ曰く『今度は与党が負けてよかった。なぜならこれで2008年総統は野党が負けるから』と冗談ともつかない分析」と書かれておりますが、私も個人的には与党が過半に達せず、よかったと思っています。
得票率が伸びていれば、与党が候補者を乱立していなければ、中選挙区に対応した戦術をとっていれば、と反省はいろいろあるでしょう。台湾にとって大事なのは米との関係です。
陳水扁氏を批判するのに「英語が満足に話せない」というものがあります。陳総統の本当の英語力は知りませんが、陳総統になってからの米台関係はしっくりいかずギクシャクとしています。
対米関係をうまくやってくれという声が台湾内部から挙がっています。
議会で過半数をとっていたら陳流唯我独尊政策をとり続け、米の反感を呼ぶことになったでしょうから、これでちょうどいいのです。中国に対するに、米の力を頼むことが上策、必策です。米との親密化を図ってほしいものです。
        (NH生、丸の内)


(宮崎正弘のコメント)宮沢喜一元首相は英語をパーフェクトに操りますが、日米関係は宮沢政権で劇的に好転したことはなかった。中曽根さんのように普通の英語力でも、ロンヤス関係は築けた。陳水扁が「英語を喋れる、喋れない」が、台湾で問題になるのは、立方委員の大半が米国帰り、しかも博士号保持者ですから、かれらの優越感、名状しがたい「エリート意識」からの批判で、それは庶民に対していかほどの効果もありません。
 問題は後節です。かれの独走と迷走が問題なのです。ものいわぬ大衆の直感は、やはり対米関係がぎくしゃくし始めたことへの恐れ、その心理的な、なにものかが消極的な独立支援組を棄権させてしまった。予想投票率から6%も、実際の投票率は下降し、組織力の国民党が議席を確保できた、というのが真相に近いでしょうね。
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『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)ほか
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