国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/12/02

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)12月2日(木曜日)
       第980号 
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ウクライナ、東西分裂の危機は去らず
   欧米が舞台裏で画策した野党候補らは内閣不信任案を可決。
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 1995年初夏、ウクライナの首都・キエフでオペラを観劇したことがある。
 ベテランのロシア語通訳が「えっ。ウクライナ語はロシア語と近親性があると思っていたが、全然わからない」と唸った。

 演目は「椿姫」だったので、有名なストーリーはおおまかに掴めたが、詳細のセリフはちんぷんかんぷん。
 なんとなく概念上は知っていたつもりでも、キエフとモスクワとの文化的距離はそれほど巨大なのか、と改めて感動した。

 幕間にドイツなどではシャンペンやビールを飲んで高らかな談笑風景をみたが、キエフでのオペラの幕間に人々は黙々と珈琲を飲むくらいだった。

 キエフでもう一つ意外感に打たれたのは、スラブ民族特有の「祖国ソビエト」という帰属認識が希薄だったこと。たまたまクリントン米大統領(当時)がキエフ訪問と重なった。 キエフ市内は歓迎一色だった。筆者が宿泊した高級ホテルはワシントンからSPが先乗りして厳重な警戒を敷く準備に追われていた。
 
 バアでSPらと偶然隣り合わせたので、いろいろと語らったが、かれらはウクライナの政治的背景もロシアの歴史もまるで知らず(当然だろう)、日本流の駄洒落に喩えると「うっ。暗いな」(ウクライナ)的な、無意味な話を繰り返して笑い転げていた。

  そのウクライナが混沌の極みに達し、大統領選挙は国を真二つに割いた。

  与党は親ロシア路線のクチマ大統領継承組だが、ウクライナ領土の西側半分(ロシア人が多い)を抑えた。
 ところが野党は親西欧、親米路線でウクライナの東側を抑え、どちらの候補も「勝った、勝った」と叫んだ。
 相手を不正投票の結果と罵りあい、一触即発、殺伐たる雰囲気となり、国内は騒然、「すわっ! 内戦の一歩手前か」という状況である。

  ロシアは秘密警察と特殊部隊を派遣して密かに与党候補を応援してきた。プーチンは国際選挙監視団の意見を無視して、早々と与党候補の勝利を喧伝した。


 ▲米国は第二のグルジア化を狙った

 ブッシュ米大統領はウクライナ大統領選の決選投票について記者会見でわざわざ言及し、「不正投票だという指摘が多い。選挙の結果は正当性が疑わしい。国際社会は注意深く見ており、ウクライナ政府の信頼性が保てる形で解決することを期待したい」と相当、内政干渉的な発言を行った。
 米国にとってはグルジア、セルビアを親欧米派政権に転覆させたように、ウクライナの脱ロシア化を狙っているのは疑いを入れないところである。

 野党ユーシェンコ陣営は選挙無効を訴え、町中ではデモを敢行した。ところが議会では選挙やり直しが否決され、中央選管が12月1日にヤヌコビッチ当選を確定させた。
 「クチマ政権にだまされた。対話から手を引く」とし、ストライキ続行を訴えた。
 東西ウラライナ分裂の危機はひとまず去ったかに思われたが、なお流動的、12月1日に国会は内閣不信任案を可決した。

 ウクライナがロシアに近寄る政策を示せば示すほどにウクライナの西半分の国民が、欧米に反射的に近寄ろうとする。その真因は奈辺にあるのか?

 キエフ公国は九世紀に成立しており、ロシアの源流と言える。
 ところが辺境でしかなかったモスクワ公国が元(チンギスハーン)と図ってロシア統一の主導権を握ったときに、主導的地位から転落した。「タタールの頸城」はモスクワには光明をもたらしたのだ。

 爾来、ウクライナにとってモスクワは敵であり、同じスラブ民族と言っても歴史的経緯から怨念が歴史的に蓄積されていた。
 だがウクライナの東側は、革命後、ロシア語が通じるモスクワ圏内に取り込まれ、対比的にウクライナ西側は純粋ロシア文化を守るかたちとなった。

 即ち旧キエフ公国の文化圏は宗教的に言えばローマ・カソリックであり、ポーランドやリトアニアに文化的同一性を抱き、モスクワ公国のロシア正教には親しみがないのである。

  第一次世界大戦でウクライナ独立運動は掻き消され、革命後の1922年、ウクライナは最初のソビエト連邦の構成国家となった。
 第二次大戦を通じて、ヒトラーが国土を蹂躙したため「祖国ソビエト」という意識がウクライナ・ナショナリズムより前面にでた。

 1990年のソビエト崩壊直後、ソルジェニーツィンは「スラブの団結」を説いて、「ベラルーシ、ウクライナ、ロシア」の三つのスラブ系が団結すれば「強いロシア」が再生できるとした。
 この時点で再びウクライナ・ナショナリズムは後退した。

 だがバルカン半島のごとき民族のモザイク、宗教の二分化による怨念の沈殿がいつボスニアやアルバニアやセルビアのごとき民族戦争としてウクライナが爆発するか。再度、擾乱に至る余地は残る。

 ウクライナの近未来は決して明るくない。
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(読者の声1)先頃、米国で成立した「北朝鮮人権法」。これはブッシュ政権の作品のように言っていますが、実は議会が昨年来、「アアでもない。こうでもない」とこねくり回して上下両院満場一致で可決したもので、可決後、ブッシュ大統領のサインが取れるかどうかという議論もありました。小泉の郵政改革とはパターンがまったく違います。
  ところで『産経新聞』に連載中の宮崎さんの「孫文論」(「孫文に裏切られて日本人」)はよくできています。みなに吹聴しています。
  靖国問題などで歴史に学べ などと抜かされたら、孫文は有力な武器になります。孫文は それほどt立派な人物ではなかったようですね。孫文に裏切られた日本人の無念を噛みしめねばなりません。
         (TK生、世田谷)


(宮崎正弘のコメント)孫文が「法螺吹き男爵」の如し、と最初に教えてくれたのは畏友・の黄文雄氏です。ところが、戦後教育を受けた台湾で、な、なんと黄さんは「国父を侮辱している」と若い世代の一部から批判がおこった。猛烈な批判。それも親が日本語世代の親日派の家庭からさえ起きたのです。
小生がその話を聞いたとき「さもありなん」と思いました。歴史教育の「洗脳」というのは本当にひどいものです。日本の若い世代の歴史知らずを目撃しても、それは言えますから。
 さて孫文は支援に奔走する日本人に巨大なる期待を持たさせ、望外のカネを集める術においてはオズの魔法使いのごとく天才的でした。日本は彼の言う「満蒙独立」の法螺話に浮かれて、大陸にのめりこんでしまった側面がある。それは事実であり、一面の真理でしょう。
産経新聞の拙文は、わずかの枚数のなかで、これらを十分に書き込んだとはとても言えませんが、いずれ、大幅に書き足して単行本にしたいと考えております。
さてじつに多くの読者から孫文論への反応がありました。なかには熊楠先生と孫文の晩年の関係に関しての質問もありました。
 孫文、やはり神話の人に成りましたね。先日も広州の中山記念館で、えっと感心したのは外国人観光客の夥しさでした。広州で、二十五年まえの観光地といえば、この中山記念館しかなかったのに、いまでも国有観光会社のガイドに拠っている外国ツアーは、この法螺話記念館に立ち寄ることになっているようです。
この点だけは四半世紀、まったく中国は基本路線を変更しておりませんね。


   ♪
(読者の声2)「大東亜戦争を回顧する〜若い世代への語りかけ」。南方戦線で戦った台湾出身者の活躍など)を語り継ぐ会です。
 ・12月8日(水) 14:00〜16:30
 ・靖国神社内 靖国会館2階「田安の間」にて
 ・参加費用:1000円/学生500円
 ・発言者:もと陸・海軍関係者、高橋正二氏、掘江正夫氏など多数
 ・事前の出欠の手続きは不要です。参加希望者は直接、会場へいらしてください。
  開戦記念日に、戦争を体験した世代から若い世代への語りかけをしたいと思っております。一方的な講演ではなく、若い人たちからの質疑応答に重点をおきます。主に南方戦線で戦った台湾出身者の活躍について話をします。山本五十六司令長官戦死の島のビデオ上映もいたします。当日は「あけぼの会」主宰者の門脇朝秀氏著作の『祖国はるか』(定価・2400円)の販売もいたします。質問などは以下のメールにて承ります。
   shanshanmeimei@hotmail.com
          (あけぼの会)
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(お知らせ1)明日12月3日(金曜日)午後一時から四時まで、ラジオ日本「ミッキー安川のズバリ勝負」に宮崎正弘が生出演します(関西方面の方は午後三時まで)。領海侵犯から靖国問題まで中国の内政干渉、主権侵害を分析批判。およそ二時間。
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(お知らせ2)同明日12月3日午後11時から「チャンネル櫻」に宮崎が出演します。宮崎の出番は11時30分ごろから12時ごろまで。台湾総選挙を中心に潮まさと氏と。
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(お知らせ3)拙論「孫文に裏切られた日本人たち」を産経新聞に好評連載中! 12月4日まで。
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◎宮崎正弘の新刊本◎
忽ち再版! 
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/index.html
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◎宮崎正弘のロングセラー◎
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)ほか
http://www.bk1.jp/author/110000964320000.html
↑このサイトからも上記の本の注文が可能です(1500円以上は送料無料)。
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