国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/11/29

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)11月29日(月曜日)貳
       第976号 
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● 本日より産経新聞で拙論「孫文に裏切られた日本人」(全6回)の連載開始!
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<<今週の寄贈本>>

?八木秀次『女性天皇容認論を排す』(清流出版)
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 最近の論文と講演記録を集大成した、八木秀次氏の三冊目の評論集だが、本書の執筆動機を八木さんは、次のように率直に書かれている。
 「我々は祖先から子孫へと繋がる時間軸の中間点にいるに過ぎない」。ところが一部の日本人は「あたかも一世代で完結するかのように(短慮に)振る舞い、国家を私有物のように扱っていはしないか。この歴史ある祖国を傷つけることなく、次の世代に譲り渡したい」とする篤い祖国への思いから、語り継ぐべき重要なことを徹底的に語り継ごうという決意である。
 八木さんはこうも言っている。
「私は天下の馬鹿者を自認しようと思う」。
 だから八木さんは敢えて愚直な姿勢を堅持し、「馬鹿者」を自覚しつつも、戦後思潮史を画期する知識人たちの熱血の運動、「新しい歴史教科書をつくる会」の三代目会長を引き受けられた。初代西尾幹二、二代目田中英道の各氏の志を嗣ぎ、来年の教科書採択へ向けて勇躍前進の境遇にある。
 過日、櫻井よしこ氏は八木秀次さんを讃えながら「現代の若武者」と比喩された。戦国の世の若武者は、もっともいまの八木さんより遙かに若かったが、そういう問題ではない。若々しい、破邪顕正の精神が重大なのである。
 さて本書のテーマは幾つかの重要な議論に別れているが、じつは分岐しているようで地下では「拉致」も「ジェンダーフリー」も「憲法」も、すべての議論が繋がっている。要するに「祖先から子孫へ繋がる時間軸の中間点」という歴史認識からうまれてくる議論、それは日本のほんものの継続性を死守せんとする歴史的使命感からくる中核的議論だ。
 本書の題名に冠された論文でもある「女性天皇容認論を排す」の項目(本書64p)で、八木さんは「皇位はすべて男系で継承されてきた」としつつ、多くの事例を掲げ、八人十代の女性天皇は「女系」ではなく「男系の女子」であったことを明示されている。
 すなわち女性天皇は本命である男系の男児が成長するまでの“中継ぎ役”であり、女性天皇が即位後にお産みになったお子さまが天皇になられた例はない。過去の皇統断絶危機の際には男系の傍系から天皇となられており、皇位は直系による継承ではなく、あくまで男系による継承である、とされる。
その基本的理由は「天皇たるゆえんが神武天皇の血の継承」に他ならないからだと日本歴史のもっとも重要な中核を衝いている。
 「神武天皇の血の継承」。
なんという三島由紀夫的コトバ、保田輿重郎的語彙であろうか。
 評者(宮崎)がいまひとつ瞠目して読んだ箇所は「孤立によって“強さ”を獲得した聖徳太子」の項目(247p)である。
 ここでは八木さんは故村松剛氏の『世界史の中の日本』(PHP研究所)を敷衍しながら、聖徳太子が隋の皇帝におくった「日出るところの天子、日没するところの天子に書をおくる。恙なきや」とした、孤立を恐れず、戦争も恐れず、画期的な外交をやってのけた聖徳太子の決断とその歴史観と情報力のすごさを、力をこめた筆致で展開されている。
 久々に読後感が晴れ晴れとなった書である。


?西村幸祐『反日の構造』(PHP研究所)
  ◇
 中国のサッカー場で「反日ブーイング」がおきた。韓国、北朝鮮では年中行事化している「反日」。
 極めて奇妙なのは、韓国も中国も、それならとぐろを巻くほどの反日の坩堝かと言えばそうではなく、彼らの「反日」が、むしろ日本に跳ね返って、日本のマスコミという「一方的な拡声器」ががなりたてるために「教科書」も「靖国」も「拉致問題」も、まともな論理からずれてしまったという現実だ。
要は「危機の本質を自覚できないこと自体が、最大の危機」であるのだが、そればかりか、「その<反日トライアングル>に攻撃の武器を供給し、援助し続けているのが日本」というのが「反日の構造」だと著者の西村さんは解明されている。
しかし、その背後で煽っているのは、いったい誰?
「反日の真犯人」探しの旅、という副次的性格を本書はもつ。
 むしろ日本国内に日本という国家を食いつぶそうとしている妖怪がいる、NHKにも、官公庁にも、大新聞にも、テレビ局の中枢にも。彼らを野放しにした結果、日本は亡国の危機に立たされたと西村さんは鋭く焦点を「伏魔殿」のお化け達にあててゆく。
 西村さん、わざわざ憂国忌の会場に本書を持参して下さった。発売前日である。
 小生としても早く読まなければいけないと考えながら、憂国忌の後、墓前報告祭を多摩霊園で有志相集って済ませた。これも例年の行事で、事件後は一年に四回行っていた。過去十五年ほどは毎年一回。多摩霊園には従って数十回は通っている。
 さて、多摩霊園へ向かう電車のなかで半分ほど読み進む。
 北朝鮮拉致を長い間、「テロ」と認定しなかった政府と、日本の妖怪マスコミが如何なる論調を張ったか、本書は丁寧に追跡している。
中国の反日キャーンペーンは江沢民が組織化した。
天安門事件で世界に孤立しそうになった中国、支配が根本から揺さぶられ、壊滅の危機を感じた共産党が自らの悪政、失政を「日本が悪い、日本が悪い」と巧妙に問題をすり替えて「かれらの」危機を回避する梃子に「反日」を利用したことなどが克明に叙せられている。
また、このような中国の言い分、北京の政治宣伝を咀嚼もしないで報道する大手マスコミの偏向に対して「2チャンネル」が閉塞思考空間に風穴をあける作用をもたらしたと、新メディアの言論空間の意義に焦点を当てている箇所は新鮮だった(なにしろ小生、2チャンネルを見たことがないのだが、或る読者が毎日のように2チャンネルで目立つ意見をダイジェストして送って下さるので最近概要は把握している)。
 多摩霊園における三島由紀夫墓参からの帰りに後半を読んだ。
 朝日新聞とNHK、TBSがいかように真実をねじ曲げ、意図的な報道を行ったかを克明に追っている。これは日本における謀略報道の解析記録にもなっている。
 さて最終章を開いていささか驚いた。
反日運動のトレース作業とは直接関係のない、イラクで「殉職」した奥大使と井ノ上氏のことがでてくるからだ。
 どんな関係があるのか?と訝りつつ読み進むと「誰が決断をするかという主体を探しあぐねている間に、奥、井ノ上両氏が殺されたのではないかという絶望」、「国家意思を持てない国家。持てたとしても、その国家意思の薄弱さは目に余るものがある」と、本質を喝破され、それから先の文章が本書の大団円に流れ込む設定になっていたからだ。
 日本が致命的に欠乏させた「決断」と「名誉」の問題。
 それをライシャワーの教え子だったズウィック監督が「ラスト・サムライ」という映画にした。映画「ラスト・サムライ」に隠されたテーマこそは、昭和45年11月25日に割腹自決を遂げた三島由紀夫の最後の檄文のアナロジーではないか、と西村さんは書き込んでいる。
 はたと思い当たった。
西村さんがわざわざ憂国忌の当日に、この本の見本をもって会場に駆けつけてくれた本当の理由が!
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(おしらせ1)小誌は12月9日から14日まで台湾総選挙取材のため休刊します。また12月1日号は地方講演のため休刊の予定です。
(おしらせ2)憂国忌、写真入り報告を下記サイトに。↓
http://www.nippon-nn.net/mishima/35th/
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(読者の声1)貴誌の「読者の声」を拝見しておりますと、「太平洋戦争」前夜の各国の情報戦や謀略への関心が高まっていますね。”南京大虐殺”の発端も、米国のジャーナリストが米国市民の注意を日中戦争に引きつけ、米国を戦争にに引きずりこむ意図の元に、敢えてセンセーショナルな記事を書いたものだそうですが、何とこれと同じ謀略が日露戦争前夜の北京を舞台に起り、それが東京、ペテルブルグ、ロンドン、ベルリン、パリ、ワシントンと波及しています。
特に日本に対し、背後で戦争を煽ったのは英国だった。
当時、英国は南ア戦争で苦戦中で手が一杯で、ロシアの満州併呑を押さえきれなかった。英国の窮状に乗じて、ロシアは満州はおろか、蒙古、北支、朝鮮にまで触手を伸ばした。日本は英国の代理戦争、誰もが日本が勝つとは思っていなかったが、南ア戦争終結迄の間の東アジアの防衛に役立てばよい。日本は英国にとって精々がグルカ兵よりはマシな程度の存在だった訳です。
それと戦争は先進国に特需ブームをもたらす、だから大歓迎な訳です。戦争が終結したのもロシアが敗北すると国内に暴動が起り、或いはヨーロッパの政治軍事均衡にひびが入る。喧嘩はこの辺で中止だと、行司達が言い出した結果なんですね。
「日露戦争を演出した男モリソン」(上下)ウッドハウス暎子著、新潮文庫を読んでください。これを読むと正に歴史は繰り返す、と思うばかり。
統計学では過去のデータを分析して将来予測をするのと同じように、歴史を学ぶことは、現代を分析し未来を予測する最も有効な手法です。
ところで当時から北京・上海は魑魅魍魎の妖怪が暗躍する世界だった。これが毛沢東の出現で消滅したかのように思えたのですが、でも妖怪は生き残った。やはり中国4千年の権謀術数の限りを尽くした遺伝子は消えないのでしょうね。どのような手を打ってくるか、見物ではありませんか。 
(MI生)


(宮崎正弘のコメント)モリソンの前掲書は十年ほど前にでたものですが、先頃、新潮文庫に収録され、入手しやすくなりました。こういう視点から日露戦争を眺めやると、目から鱗の部分が浮かび上がってきます。日本の歴史家にはなかったか、軽視されてきた視点ですから。

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(読者の声2)昨日付け貴誌に「朝日新聞のF」とあり、(TBSの)筑紫某と比較されていました。Fは明らかに船橋洋一氏を指しますが、名指しされないのは先生の奥ゆかしさからくる配慮? それとも別の意図がおありですか?
        (NY生、川崎市)


(宮崎正弘のコメント)嘗て福田恒存氏は「Sの妨害によって『中央公論』に論文を書けなくなった」云々と書かれ、論壇に静かな波紋をよびました。「S」は、おりから防衛論争を展開されていた相手の猪木正道氏を「せいどう」とよませた「S」だろう、と多くの人が解釈しましたが、結局は司馬遼太郎の「S」でした。
かといって小生は、船橋氏を「F」と書くことによって、含みを持たせたわけではなく、故意に匿名イニシャルと使った方が効果的な場合もあるからです。
Fは『内部』『通貨烈々』の著者ですから、誰がどうよんでも船橋さんを指します。かれは朝日新聞の社内政治でもみくちゃのまま、言論人としての自覚を失いつつある。産経の古森義久氏とは、天と地の差がつきつつある。ですが、初期の『内部』の衝撃的な登場は新鮮でした。まだ力量がある言論人として、すこしは残れる可能性がある人と読んでいます。あとは本人が社内の偽善、欺瞞といかに闘い真実を書くか、という決意と実績になりますが。
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◎宮崎正弘の新刊本◎
 全国の書店で12月1日発売!(都内の大型書店では明日から)。
 ○「ドル陥落」のシナリオなど100の未来予想図
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/saisinkan/index.html
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◎宮崎正弘のロングセラー◎
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)ほか
http://www.bk1.jp/author/110000964320000.html
↑このサイトからも上記の本の注文が可能です(1500円以上は送料無料)。
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