国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/11/13

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)11月14日(日曜日)臨時増刊
          第957号 
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アラファトが「オスロ合意」以後、国際社会から集めた金は55億ドル
 スイス銀行は隠匿口座の存在を否定したが、40億ドルが行方不明だ
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前にも書いたようにアラブ社会では、アラファトの死後、政治的安定がパレスチナにやってくるか、どうか、よりもアラファトのカネの行方に関心がある。独裁者は銀行口座をついに夫人にも明かさなかったのだ。

 英紙「ガーディアン」(11月13日付け)はこう書いた。
 「アラファトは異教徒で裕福な銀行家の娘と婚姻関係を結んだ事実を18ヶ月にわたって隠した。スーハ夫人は(イスラムに改宗したものの)95年以来パリの豪邸にくらしており、その贅沢ぶり、はちゃめちゃな買い物ぶりに多くのパレスチナ人が怒りをもった。死の直前に彼女が病院を訪問したとき、カネの秘密をコントロールしにやって来たと考えた。」

 事実とすれば、アラファトはパレスチナの民衆からも、心から尊敬されていなかったのではないのか。

 多くの西側の新聞も「アラファトの権力の秘密はカネの力だった」と容赦ない批判を浴びせている。
英雄と美化しているのは日本のメディアだけではないだろうか。

 前掲「ガーディアン」が続ける。
 「スーハ夫人には毎月10萬ドルが送金されていたが、昨年、フランス当局は彼女にマネー・ロンダリングの疑いを掛けた。フランスの検事当局が問題としたのは、スイスから彼女の二つの口座に2002年七月から03年七月にかけて送金された1140萬ドルについてである。」

嘗て米紙『フォーブス』は、アラファトは世界で六番目の富豪、その個人資産は三億ドルと報じたことがある。

 1979年以来、アラブ諸国がPLOに寄付した金額は年額2億5000萬ドル。ほかにサダム・フセインがアラファトに個人的にあたえた額が1億5000萬ドルだろう、と情報筋が言う。

 「そればかりかアラファトが経営した企業やパレスチナ住民からの税収が1995年から2002年まででも九億ドルあるうえ、これらは皮肉なことにテルアビブのレウミ銀行で管理されていた」(敵の銀行が一番安心というわけ?)。

 12日付けAPによれば「真っ先に疑惑の目が向けられたスイスではミッシェレン・カーミー・レイ外務大臣が記者会見をわざわざ開き、『該当する口座を発見できなかった』とした」。

 エルサレム・ポスト紙(11月11日付け)は、
「アラファトは多くの口座に分散した資金の秘密を、死後の世界へ運んだ。これはパレスチナ民衆にとっての悲劇であり、およそ60億ドルという見積もりもある」。

現金を銀行に預けるだけではなく航空会社、バナナ栽培、ハイテク企業の経営および株式投資に振り向けられ、その複雑な財産運用の秘密をすべて知悉した側近は居ない。砂漠の民は誰も信じない、と昔から言われたが、まさにアラブの格言通り、独裁者は誰も信用していなかったのだ。
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アラファトの死に歓声をあげて喜んだパレスチナの派閥がある(↓)
http://www.haaretzdaily.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=500568&displayTypeCd=1&sideCd=1&contrassID=2

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(今週の寄贈本)

?西尾幹二著『日本人は何に躓いていたのか』(青春出版社)
 このところの西尾さんの旺盛な執筆活動、そのエネルギーには舌を巻かされ、目を瞠らされ、これほどの量産をこなしながらも文章の質を確保されているという希有の衝撃がつづく。ニーチェ研究から「新しい歴史教科書をつくる会」名誉会長としての八面六臂。そして時事問題から経済政策までの深い関心。
 ひとりの人間がいくつの仕事を同時にこなせるのか、ニーチェの果たし得なかった未踏の世界へ挑戦されているのか等とつい余計なことばかり考えてしまう。
 さて本書は時局評論を装いながら、じつは重厚な思想書なのである。
 「六カ国協議で一番焦点になっているのは、実は北朝鮮ではなくて日本だということを日本人は自覚しているのでしょうか」
 「核ミサイルの長距離化と輸出さえ押さえ込めば、アメリカにとって北朝鮮などはどうでも良いのです」
 こういう警句がいたるところにちりばめられている。
 本書の隠された味付けは「日本がふたたび活性化し“勝つ国家”に生まれ変わる条件」とは何かを探し求めているところにある。懸命な読者ならすぐに気がつかれるように経済の政策が対米追従であることが日本に「第二の敗戦」をもたらしたとする分析である。日本的経営を恥じたところから日本経済の転落もまた始まった。だから最近流行のアメリカ帰りの経済理論はいい加減にしてもらいたい、と示唆されている。
つまり、「国家意識の欠如、愛国心の欠落、民族文化を前提としてものを考えていく自然な感情からの離反が、教育や外交、あるいは安全保障だけではなく、経済問題にも深く関係している」(本書302ページ)
 そして「日米構造協議から日本の没落が始まった」と結論され、「前川リポートは敗北主義」と大胆に総括されている。
 前川レポートを高く評価したのは米国のボルカーFRB議長(当時)らで、つぎの平岩レポートは米国が歯牙にも掛けなかったほど、日本の独創性尊重がうたわれていた。(脱線ながら当時、小生は米国の対日要求は「日本を米国の経済植民地」「法律植民地」にする狙いがあるのか、として『拝啓ブッシュ大統領殿、日本人はNOです』とか『平岩レポートのただしい読み方』など矢継ぎ早に上梓したが、逆に日本の体制保守論壇から反論を受けた)。
あの時代、たしかに保守の分裂が起きていた経緯を思い出すのだった。
 わが経済学の師・木内信胤先生は「経済政策で重要なのは「国の個性」であり、アメリカの真似をする必要はまったくない」が持論だった。西尾先生の結論も「自己本位ということが人間が生きていく生命力の鉄則です。それこそが今の日本が抱える問題の最大の鍵ではないかと思うのであります」。
満腔の賛意をいだきながらページを閉じた。


?加瀬俊一著『明治から平成まで生きた外交官』(光文社)
 半世紀以上に亘って現場にいた外交官が人生を回想した魅力に富む読み物だが、簡潔な文章のなかに希有の活力が溢れる。
 この本、本当に著者が101歳のときに書いたのだろうか? あとがきを代筆した息子の加瀬英明氏は率直に「手伝った」と言われているので納得がいった。初代国連大使、ユーゴ大使も歴任されたが、加瀬俊一氏は、戦前、松岡洋右秘書官、外務省情報部長、戦後は首相顧問もつとめられて、文字通り外交の現場をみてきた。
 チャーチルからかわいがられた話も示唆に富むが、ミズーリ号の降伏文書調印に立ち会ったときの歴史的な瞬間を映画のフラッシュバックのような方式で回想されている箇所は名文である。
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(お知らせ)小誌は海外取材のため11月19日―24日を休刊します。
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◎三島由紀夫氏追悼「憂国忌」のお知らせ 
http://www.nippon-nn.net/mishima/
 今年も11月25日、三島由紀夫氏追悼会「憂国忌」を下記要領にて開催します。三島由紀夫氏の訴えを通して祖国の未来を熟慮する機会にしたいと存じます。
         <<開催要項>>
とき         11月25日(木) 午後5時半開場 6時開会
ところ        九段会館・真珠の間(地下鉄九段下駅下車1分)
記念講演       井川一久氏(元朝日ジャーナル副編集長)「三島由紀夫と保田輿重郎」
会場分担金      2000円
 ?事前のお申し込みや予約、チケット等は必要ありません。当日、直接会場までお越し下さい。どなたでも参加できます。
?追悼会終了後、午後7時40分ごろより同階館三階「翡翠の間」において発起人の先生方を囲んでの直会を予定しています。別途会費3000円となりますが、こちらの方にも是非ご参加ください。
 お問い合わせ TEL/FAX 03-3200-2295 miura@nippon-nn.ne
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○宮崎正弘の新刊、月末発売決定!
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円、税込み)
(予約特典はまもなく締め切ります。これからも申し込みを受け付けますが、11月16日以降の申し込みにはサインが入らないことがあります。ご了解下さい。全国書店では11月27日発売予定)
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『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円+税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)ほか
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↑このサイトからも上記の本の注文が可能です(1500円以上は送料無料)。
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2004 
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