国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/09/21

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
    平成16年(2004)9月22日(水曜日)
          通巻 第914号  
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 また文化弾圧 シンガポール流行歌手の中国興業を禁止
     シンガポール新首相=李顕龍が台湾訪問に嫌がらせ的な報復
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 中国はシンガポールを属国と考えているようだ。
 同国を代表する流行歌手の孫燕姿(女性歌手、小泉今日子似)、阿杜、林俊傑(ともに男性歌手、長髪・コメディアン風)の三人が、それぞれ天津、保定、太源などで予定していたコンサートが直前になって禁止された。
 とくに孫燕姿は、16日に予定されていた湖南省・長沙での公演が前日になって急遽キャンセルとなった。

 これはシンガポール新首唱の李顕龍(リーカンユーの息子)が二ヶ月前に台湾を電撃訪問したことへの報復ではないか、と台湾の有力紙『自由時報』(9月15日付け)が報じた。

 共産党は歌と踊りで大衆を扇動する詐術に長けているだけに、流行歌手、映画俳優などの国内的な影響力に敏感である。
過日も台湾の国民的歌手=アーメィが、陳水扁支持というだけの理由で「緑色芸人」と呼ばれた上、興業をキャンセルされてしまった(「緑」は言うまでもなく台湾独立のシンボル)。

 その前にも歌姫テレサ・テンに対して中国は過剰なほどの嫌がらせを行った。それはテレサが89年天安門事件に前後して、自由民主を唱えた学生達を熱烈に支持したからだった。
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<<今週の寄贈本>>

?遠藤浩一著『小沢征爾 日本人と西洋音楽』(PHP新書)

遠藤さんは政治論で革新的な分析を大胆に展開する著作を次々とものにされるかと思いきや、一方では福田恒存を論じた演劇論から、こんどはクラッシック音楽! なんと「芸域」の広い人だろう。
はじめ「なぜ?」と遠藤さんの真摯な風貌を思い浮かべながら、不思議な驚きがあり、小生、しばし本書の表紙をじっと見つめていた。もっとも、小生は古典音楽にはなじみが薄く、黛敏郎氏とは親しかったが、音楽論を一度もやったことがない。
小沢征爾の父親は小沢開作氏である。この人物、現代史に出てくる有名人。じつは小生が学生時代まだ存命しておられ、かなり世話になったことがある。父親は満州建国時代の立て役者の一人で、小生らがやっていた反共・保守の学生新聞を林房雄、三島由紀夫らとともに熱く支援してくれた。
ロマンティストでマキャベリストにはなれない人物だった。
昭和四十五年、三島由紀夫氏自決の二日前か、三日前になくなり、胸騒ぎを覚えた記憶がある。
板垣征四郎の「征」と石原完爾の「爾」をとって「征爾」と名付けた。徹底して満州精神、それも一貫してロマンティストなのである。
 ワシントンから小生の知り合いのドイツ系アメリカ人が、たまたまやってきた。かれはウィーン生まれの音楽通で、なぜか、小沢氏のCDを土産に持ってきて、小生にも呉れた。
一体どういう因縁なんでしょうか? 小生が昔、征爾の名前の由来を説明したからなのか。そのCDは本書で絶賛されている、2002年ウィーンでの収録(NEW YEAR CONCERT)で、世界的ベストセラーでもあるそうだ。
 さて本書の要諦は「本居宣長のからごころ」と小沢の「西洋音楽の訓読」である。
 だから三島由紀夫が小沢の演奏を聴いて感動し、「そら、御覧、小沢征爾も日本人だ!」と言わせた経過もよく理解できるのだ。
 福田恒存は「からごころ」を「洋意」と比喩した。
 遠藤さんの小沢論の肯綮は「小沢の音楽的才能は、日本人であるという自意識の上に立脚している。それは日本人として音楽の基礎文法を徹底的に習得したこととともに、譜面の読み方、作品の解釈の仕方が、西洋音楽の悪い伝統に引きずられないという意味で、極めて日本的なのである」(本書20ページ)。
 なるほど本書は小沢を通して語る遠藤浩一的世界、つまり日本文化論である。


?焦国標(北京大学助教授)著、坂井臣之助訳『中央宣伝部を討伐せよ』(草思社)
 
 この本は凄まじき中国共産党への批判、それも内部からの告発である。
 なにしろ一党独裁の共産党に正面から立ち向かい、中国のメディア統制の闇を暴き、当局の言論弾圧の実態を告発するのだ。むろん、当局によってインターネット上の告発は禁止され、本人はいま厳しい監視下に置かれている。
中国の政治宣伝のあくどさは、いまさら指摘するまでもないが、中国人がそれを告発すること自体、その行為にたいへんな勇気が必要である。
すぐにも監獄行き、或いは死刑を意味する。天安門事件以来、知識人の沈黙が続き、真実は遠くなり、誰もが党の宣伝を忌々しく思いながらも長い沈黙を強いられた。だから中国の未来は絶望しかないのだ。
著者が自嘲をこめて言うには「ゲッペルスは嘘も千回繰り返せば真実になると言ったが(無知蒙昧なる)中国人は三回でたくさん」だという。
SARSの情報隠匿、情報操作を告発した軍医の蒋彦永は、一年後に報復を受け、出国停止、49日間も拘束された。
なかに「中央宣伝部の日本文部省化」なる説明が出てきた。何のことか? 小生は訝った。
 十数年前、日本の歴史教科書が「侵略」を「進出」に改竄した、などと日本の通信社が誤報した事件があったが、その後も産経新聞以外、誤報事件は日本で訂正されておらず、それが中国の若者達にもいまも影を落として「反日感情」の源泉のひとつになっている。
中国では日本の文部省の指導がそうなっていると多くが信じてしまっている! 文部省の怠慢である。
中国の宣伝部は、怠慢、汚職、腐敗、堕落の極にあり、不法がのさばっている。日本の文部省どころではない。中国にいずれ災いをもたらすであろう、と焦助教授は正論を吐いている。
 また中国のジャーナリズムも当局に迎合し、堕落がすすんでしまった、と鋭い告発が同時に行われる。
たとえば36名が死んだ山西省の炭坑事故で取材にいった新華社の記者十一人が「我々が報道しなければ何もなかったことになる」と言って経営者から賄賂をせしめるという滅茶苦茶な“言論統制事件”が起きた。一年後に告発されたが、ジャーナリストの腐敗を象徴して余りある。
なにしろ地方幹部の腐敗を報じるのは命懸けであり、取り締まる正義の味方である共産党の一握りの幹部は、暗殺を恐れて防弾チョッキを着用しているという漫画的世界が、いまの中国であるのだから。
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(読者の声)江沢民の辞任のニュースが日本で「臨時ニュース」の形で流されることとは思いませんでしたが、メディアは権力移転の内容について読みきれない報道振りです。宮崎正弘先生の”読み”を期待しておりますが、「解任」や「追放」でなく「退任」という穏健な形式が取られ、中央軍事委が11名に拡大されたうえ主席の胡錦濤以外すべて軍人で占められたことなどから江沢民の院政への序章と捉えるのか、曽慶紅の副主席昇格が今回も否定されたことで、実質的な棚上げが進んだのか。いずれにせよたとえ穏健派といわれる胡錦濤でもチベット人殲滅の功績によって抜擢された経歴者だけに、本質に変化はないだろうと思ってみています。ということは日本政府の朝貢ODAにも変化はないということなのでしょうね。 
 (HS生、豊橋)
 

(宮崎正弘のコメント)江沢民は形式だけかも知れませんが、まだ「国家軍事委員会主席」として、来年3月の全人代まで居残ります。この形骸としてのポストを曾慶紅が嗣ぐというシナリオはまだ消えておりません。政治局トップ九人のなかで、唯一の「知日派」として、曾コネクションを頼りの日本外務省はどういう感慨で見ているのか、それも気になるところです。
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『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円+税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)ほか。
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