国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

全て表示する >

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/09/13

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
    平成16年(2004)9月14日(火曜日)
          通巻 第911号  
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
欧米を席巻する中国文学の新人ふたり
 『上海宝貝』の亜流、『北京宝貝(ペキン・ドール)』と現代版『狂人日記』の衝撃度
****************************************

 生きるべき強い人生の目標もなく、また伝統的中華文化体質からも遠い。ひたすら外国人との同棲に憧れ、フリーセックスにさほどの抵抗感もない。

 衛慧の『上海ドール』(翻訳は文春文庫)は本国で発禁処分、だからこそ世界的ベストセラーとなったが、文学的本質というより、中国新人類の生態がなまなましく描かれたことへの関心が第一の理由だった。
 
 そんな小説が中国を席巻し始めたのは過去十年ほどの特色、最近はますますポルノ化現象が凄まじい。文学の風俗化現象だ!

 日本文学が力を失い、アマゾネス元祖・山田詠美や、シンデレラ症候群の林真理子やら、中国の大きな書店で「日本文豪」のコーナーは川端谷崎三島ではなく、かの渡辺淳一センセであることを小生は何回か書いた。
渡辺氏が上海でサイン会を開催したところ、反日ムードそっちのけ、600人が列を作った。

 亜流は夥しくでて、辟易するほど高い翻訳権を吹っかけて日本にも上陸したが、極めつけの亜流は『北京ドール』だ。

 作者はチュン・シュー(音訳不明)。十七歳の多感な少女の登場である。入れ墨、パンクの芥川賞作家もびっくり。この点では中国人のほうが先を走るんですよ。

 現在十九歳の彼女、赤く毛髪を染め、タバコを燻らせ、手には携帯電話。意味不明のお喋り。登校拒否の経験だけは豊富。

 物語はロール・コースターのごとき変貌はげしい現代中国のゼイテガスト(時代精神)を追求するもの。
 通学を嫌い、パンク喫茶や音楽バンド、ファッションへの異常な興味、なにしろ大音響が鳴り響く喧噪な場所が好きで、学校教師の忠告なんぞまったく耳に届かない、と来ている。
(ホント、これが中国の新人類の生態。20年前からの日本と同じです。)


 ▲魯迅を彷彿とさせる有力新人も

 一方まじめな小説もでた。
 このほど英訳され、TIME(9月13日号)が大きく取り上げた中国の新小説は現代版『狂人日記』風の作品だ。

 資本主義市場へ邁進する中国の「特急列車から落ちこぼれ組」を描く。
 ラン・チェン(音訳不明)が描く『プライベート・ライフ』(中国語の原板は96年にでている)は、時代の変化の波に追いつけず、精神病院に送られた少女が、娑婆にでてみれば、おおや、文革時代とは様変わりの中国で高速道路、ショッピング・モール、西側ディスコ、カラオケ、携帯電話の若者、パンク文化。

 26歳の主人公ニーニュイは回想する。
 たしかに改革開放によって、中国の資本主義は物質的な豊かさを運んだ。
 ところが、作品では主人公の父は家族を捨てて出奔、先生は彼女をセクハラで責め立て、火事でレスビアンの相手を失い、さらにボーイフレンドに捨てられ、母は病気に倒れ、北京の男は狼、かといって若者達は過酷な受験地獄に陥り、覇気を失い、絶望が絶望を襲う日々ではないのか、と。

 虚ろな眼でぼんやりと北京市内を歩いていたニーニュイを弾丸がかすめる。天安門事件の設定である。
 
 傷は深刻なものではなかった。が、主人公は知るのだ。天安門事件は学生への弾圧ばかりではなく、あれを契機として、中国は無機質な、物質オンリーの世界に埋没してしまったのではないのか。

 TIMEは、この作品を魯迅の『狂人日記』に並ぶほどの高い評価を与えている。
         ◎ ○ ● ○  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(おしらせ)小誌は9月16日から21日まで地方講演などにより休刊となります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(おしらせ2)発売中の『現代』の拙論(中国の環境汚染)に続いて、9月18日発売の『新潮45』には拙論「おったまげ、中国の反日陳列館」(仮題)が掲載されます。また来月1日発売の『正論』11月号には拙論レポート封切り版・「通州事件の現場はいま」が掲載される予定です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ♪
(読者の声)宮崎正弘先生の講演を一度拝聴してから,欠かさず読ませていただいています。時期遅れでもありますが,先頃の中国でのサッカー(毬蹴り?)アジア大会を見ていての感想です。
先生はたかが毬蹴りとおっしゃいますが,されど毬蹴りです。サッカーは世界中に単独競技としては最も普及しているスポーツ。かの国も国家の威信をかけてということで取り組んでいるはずです。しかし,サッカーは肉体的な優位性(肉体的鍛錬)だけが決定的な要素ではなく,刻々瞬時に変化する状況に柔軟に対応していくことが重要なスポーツであるため,専制国家の体制下で育成されたチームや人材では,国家として力を入れても個々の判断力・想像力等に限界があり大成しないと考えられています((1950年代のハンガリー,70年代のポーランドなど共産体制が緩んだときは強豪チームでした。90年代はユーゴ,ルーマニア等東欧勢の躍進も・・・)そんな流れで見ますと,主力を欠いた1.5軍の日本チームに成すすべがない状況は中国の体制的欠陥をまざまざと証明しているようで滑稽でさえありました。かの国は,たかが毬蹴りでさえ90年代以降,あれよあれよという間に日本・韓国に立場を離され切歯扼腕しているはず。先頃の北京での我が国に敗戦するという結果は,先生の中国の情報や分析の正しさの証明の一部です。
       (KS青森)


(宮崎正弘のコメント)「毬蹴り」と小生がたびたび表現しておりますのは、半分以上ジョークです。スポーツを馬鹿にしているわけではなく、ただ文武両道時代の日本の尚武のこころ、と現代のスポーツ精神とがあまりにかけ離れている現実への嘆きも半分入っていますが。或る会合でスポーツライターの二宮清純という人が言っていました。「オリンピックのメダル16個は(ひとつをのぞいて)全部個人。団体としての日本は野球に象徴されるように、全部金メダルを逃がした。なにが原因なのか」と。
それを真剣に考えたいと思います。
ところで昨年は青森市内の他、弘前、八戸など四回ほど講演しておりますが、どこでお目にかかりましたでしょうか? 弘前では講演のあと、十数人の参加者とビルの屋上でビールをのんで談笑したことを覚えていますが。(苦笑)。 
☆   ☆  ☆
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
◎宮崎正弘のロングセラーズ◎
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、売り切れました。)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
      □ ◎ □ ◎ □ ◎ □ ◎ □
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
小誌の購読は下記で登録できます(↓無料です)
http://www.melma.com/mag/06/m00045206/a00000060.html
(↑この左欄をクリックされると過去4年分の小誌バックナンバーが閲覧可能です)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2004 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-08-18  
最終発行日:  
発行周期:ほぼ日刊  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。