国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/09/12

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
    平成16年(2004)9月13日(月曜日)
          通巻 第910号  
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 北京の異常な物価高、庶民はどうやって暮らしているのか?
 都市と農村の所得格差、さらに不公平に、さらに顕著に
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 最貧地帯と言われる東北三省(旧満州の大部分)のなかでも黒竜江省と隣接する内モンゴル自治区は、最も経済状態が悪い。
農村部へ行くと昼間から手持ちぶさた、することがないのでバス停あたりに屯するか、トランプ、将棋の賭け事をして時間を潰している。要するに大量の失業者である。

 吉林、遼寧および内モンゴル各省のあちこちの田舎町に、筆者は今月初旬、ちょうど一週間居た。

 一カ所に滞在ではなく、長春からバスで通化へ入り、北朝鮮国境の集安でボートを借りて鴨緑江をとばして北朝鮮すれすれまで行って、それから長距離バスで瀋陽を経由し、錦州へ。さらに炭坑町で有名な阜新を見学してから夜行寝台で赤峰へ、という具合で移動がやたらに多い旅だった。

 その恩恵(?)で都市と農村、地方都市との生活の格差を目の当たりにできた。まずは東北部の物価の安さ。北京が日本の物価の五分の一程度とすれば、その3分の一が東北三省の田舎の物価指数である。つまり日本の物価の十五分の一前後になる。

 宿泊した旅籠、招待所の類いは高くても120元,平均が50元くらい。食事は三、四品に麦酒二本が平均で十五元から20元。ホテルで食しても40元が最高だった(一元は13円50銭)。

 首都の北京へ入るまでの一週間で使った費用は宿代、食事、交通費、雑費すべてで二千五百元くらい。

 ところが北京では一日で消える。ご存じのように東京より物価が高い場所がある。一流ホテル、レストラン、ナイトクラブ。どのように節約しようとも北京であちこちに出歩き、取材のための面談をレストランで行い、三里屯というバア街に飲みに行けば、東北三省での一週間分が、僅か一日で消えるのだ。

 この南北格差、東西格差、貧富の差の拡大こそが、じつは中国政治最大最悪の問題である。「反日サッカー」どころではないのである。

 改革開放前、都市と農村の所得格差は三倍だった。
いまは十倍である。地方の人達は北京へ来ても、ホテルには高くて泊まれない。入場料が必要な諸施設へもいけない。公園やお寺の拝観料金だって八元、十元とかかる。サッカーは重慶で一般席が100元。それが払えない市民が大半だから、空席が目立つ失態を避けるため土壇場で当局はタダ券をばらまいた。
 
北京はサッカー入場料が400元だった。誰が払えるのか?なぜ、都会では満員になるのか?
  だがその北京で、一方では矛盾するかの如く夥しい乞食、およびポン引きの悪質化を目撃した。

 上海の乞食は身体障害児童を目抜き道路に配置してマフィアが「職場」を取り仕切る。
 北京は王府井(銀座)にまで乞食が大量に出没し、観光客に強引な拝み倒し、地下鉄では誰彼構わず前に立ちふさがって小銭をやるまで立ち退かない悪質なのがいる。ポン引きも逞しく復活した。昼間からニヤニヤ寄ってきて「良い娘、いるよ」。それも女性が多い。

 二年前にチベットで小銭を与えるまで足にまとわりついてきた子供には参ったが、北京では「おばはん」がからみついてくるのだ。
 北京オリンピックまでに都市格差が解消されるわけはない。
農村部からはイナゴの大群のごとき流民が北京を目指す。悪質な乞食、ボン引きは確実に増えるだろう。

(この文章は「共同ウィークリー」8月23日号からの再録転載です)。
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(おしらせ1)小誌は9月16日から21日まで休刊となります
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(おしらせ2)発売中の『現代』の拙論(中国の環境汚染)に続いて18日発売の『新潮45』には拙論「おったまげ、中国の反日陳列館」(仮題)が掲載されます。また来月1日発売の『正論』11月号には拙論レポート「通州事件の現場はいま」。
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<<<今週の寄贈本>>>

?田中英道著『聖徳太子虚構説を排す』(PHP)
 珍妙な説が「学者」を自称する人たちに拠ってたくさん書かれ、不思議にも軽佻浮薄の世にはびこっているが、なかには「聖徳太子はいなかった」とか「伝説でしかない」といいう非科学的な三流の推理小説のような突飛なことを言って世の衆目だけをあつめる「奇特」な人がいる。
 第一に谷沢永一なる御仁は馬鹿に付ける薬のない見本だ。
 『日本書紀』は養老四年(720)に完成したが、聖徳太子の記述のかなりの部分がフィクションであることは、江戸時代から実証されている。だからといって「いつのまにか『いなかった』まで極端に走る(谷沢某なる御仁は)とんでもないことだと言わざるを得ない」(本書112ページ)。
 田中氏は続けて言う。「聖徳太子は文献資料だけで存在するのではない。太子がたてたという法隆寺が存在し、太子のために「釈迦三尊」像までつくられている」
 第二は梅原猛らが主張する太子の怨念説の一人歩き。太子一族が山背大兄王の死とともに滅んだが、法隆寺再建がなされたのは、太子の怨霊を鎮魂するためなどとまじめに学者顔して首唱している。
 田中氏は反論する。
「梅原氏の論理は、まずそれらを怨霊のためだと決め込むことから始まっている。その仮定から出発して、すべてを其れ風に解釈する。たとえば法隆寺の偶数による建物の構成が四=死から来ているという。しかし怨霊の鎮魂なら逆にそんな数あわせをするであろうか」(本書195ページ)。
 世にはびこる妄説には、一度かような鉄槌を下ろしておくべきである。


?柘植久慶著『源平合戦 戦場の教訓』(PHP文庫)
 どうして、このような反時代的な本がでるのだろうか、題名を見て一瞬、考え込んだ。
謎はすぐ解けた。大河ドラマ市場は、すでにことしの新撰組を越えて、次の「義経」なのである。冒険作家柘植さんの戦場歩きは有名だ。
 世界のあらゆる有名な会戦場所、激甚な戦場をあるいた柘植さんだけに、こんどは源平の合戦に的を絞って、全部で23の戦場訓を丹念に解説してくれる。
 それにしても平家の覇権確立までに保元・平治の乱があり、頼朝は伊豆に流され、突如再起する。宇治の闘い、挙兵、そして石橋山と富士川合戦をたたかう間に木曽義仲が挙兵する。
 木曽義仲には倶利伽藍峠の闘いがあまりにも有名だが、ほかに市原、金沙、横田河原、水津、篠原、水島などで戦闘があった。小生は金澤生まれだから、となりの富山県との県境の倶利伽藍峠を高校時代、自転車で越えた経験がある。峻険は山々ではない。
 『源平盛衰記』などに語られた源氏側の法螺話に疑念を抱いた柘植さんは、実際に倶利伽藍峠の現場をみて、いくつかの過去の戦争パターンを思い浮かべ、通説の布陣とはことなった陣形を敷いて夜戦にもちこんだから義仲が勝ったと推測される。
 また頼朝の弟の義経は判官贔屓の日本人の感情に訴えるが、それほど大局的戦略的判断のできた指揮官とは言えまい、と柘植さんは手厳しい。
 「義経はたしかにすぐれた武将だと言える、しかしながら、大兵力の用兵、すなわち戦略的な軍事指導の能力に欠如していた点は否めない。其れが証拠には三草山夜襲をはじめ、一ノ谷合戦も屋島合戦もまた、小数を率いた奇襲攻撃での勝利なのである。将帥としての本来の役割――大舞台の指揮ぶりは、源平合戦を通じ、みられな」い、と総括されるのだ。
こののち源氏は一ノ谷、屋島、壇ノ浦と流れ込んで大勢を変え、ついには無敵を誇った平家を滅亡に追いやり、あげくに頼朝は衣川に奥州藤原氏を滅ぼし、鎌倉幕府の強大な政権が樹立されていく。義経は東北征伐の兄によって死ぬが、民間の信仰は遠く北方へながれ、のちにジンギスカーンとなった、などと途方もない法螺話も産まれた。
通読してなるほど、この本は「反時代」ではなく、適宜なるタイミングを選んで現代人への訓話をまぶした戦陣マニュアルになっていることに気がついた。
それにしても逞しい膂力をもつ柘植さんだけができる早業の作品である。
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(読者の声1)中国における現代三国志劇。宮崎正弘先生が8/26にお書きになった「季節外れの小平生誕百年祝賀行事のオンパレードが意味するものは、江沢民追放?」の観測に、さすが目の付け所が違うと感心していましたが、その後ニューヨークタイムズが引退説を流し、さらにあれは様子見のリークだとの説も他紙で流され、中共上層部の打々発止ぶりが伝わってきました。
  しかし、それは胡錦濤派の意図を封じ込める結果になりそうだとの9/10先生の観測を読んで、ニューヨークタイムズなどはそこまで読み込んで書いたのか、それとも単に競争で書いたのかと、報道の意図を考えたりしています。まあ今回は後者だろうと思いますが、時には意図を隠して「善意」の形でひどいこともやるのが彼らですから見極めが難しいです。
余談ですが、台湾人の一人から「薦められた宮崎正弘のメルマガ読んでいるよ。とてもいい」と電話があって嬉しく思いました。
       (HS生、豊橋)


(宮崎正弘のコメント)軍の中央委員会でも江沢民引退を国防部長と参謀部長が賛成し、外野ではトウ小平の次女「トウロン」が「父は定年を越えたものの一日も早い引退を常日頃から口にしていた」発言などで周囲を取り囲み、さらにシンガポールの『ストレート・タイムズ』(9月9日付け)の報道では江沢民が喉頭ガンを煩っている由(この真偽のほどは不明)。外堀はかなり埋まってますね。
ひょっとしてひょっとする事態が出来するかも。



(読者の声2)宮崎さんは、サッカーのユニホームのどこに日の丸が付いているか思い出せますでしょうか。実は袖口とストッキングに小さいのが付いています。今回の事件は皮肉なことでした。日本のサッカー協会及びマスコミは殊更に「日の丸」「日本」「君が代」を隠そうとしてきた形跡があります。しかし、ファンの素朴な応援形態からから生じてきた“熱”がその“覆い”を焼き切ってしまいました。それがW杯日本開催でした。「愛国心」、「日の丸」の認知の時でした。
     (桃太郎)


(宮崎正弘のコメント)そうですか。ほっぺたにワッペンを貼るだけかと思っていました。日頃サッカーをみない多くの人が日中決勝戦をみただけでも、巨大なナショナリズム育成効果をあげた、と確信しています。
             

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(読者の声3)その昔、「日本は浮沈空母だ」と言った総理がいた。本当にそうだったのだろうか。バブルの崩壊以後、というより、日本が戦争に負けてから以後、人の心は荒れはて、全てが金優先の世の中になり、人が人を戦争でもないのに殺し、身分の高低をとわず、なにかうまい話があったら人の物でもごまかして得をしようとする。そんなことをしているうちに、国内は大混乱に陥ろうとしている。
今の日本は、「整備不良の墜落寸前のジャンボジェット」ではないだろうか。小泉政権が離陸しようとしたとき、「構造改革」という夢のようなツアーに誘ってくれた。しかし、「もっと点検整備をするべきだ」とか、「天候が悪いから慎重にすべきだ」という忠告を無視し、無理に飛び立った。結果、操縦不能となり、海上に不時着をよぎなくされ、今まさに不時着寸前である。不時着したら、アメリカという救援隊を頼むしか方法が無いのが、今の日本の現状ではないかと思う。
しかしタイムリミットは徐々に近付いているのだ。このままでは海に沈み、我々乗客は土左衛門になるのが定めではないだろうか。(KO生、平塚)


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(読者の声4)9.11(米国同時多発テロのあった昨日)、東京の虎ノ門パストラルを会場とした新しい歴史教科書をつくる会の第7回定期総会が開催された。八木秀次新会長はじめ若い世代の新役員の承認を行い、前年度事業報告及び決算報告、そして今年度事業計画及び予算が発表された。全国から会員が集まり熱心な討議が行われたが、なかんずく関心事は東京都の動きであった。来年の採択への橋頭堡となった都立中高一貫校の採択であるが、東京支部は、静謐な採択環境の確保を旨とし、妨害勢力の逆手を取った静かなる「与信」によって、東京都教育委員会を支えた。
  わずか7件の賛同意見と世に報じられたが、斯く申す小生は、左翼側のビラ配りや陳情行動を掲載したホームページをそっくり引用して、いかに大量に反対意見の通数が寄せられようと、同工異曲否コピーであることを承知していたゆえ、惑わされるなよと、教育委員会へご注進に及んだのであった。反対勢力は、もはや外国勢力あるいは在日活動家の力を借りずして戦えないことが明らかとなった。(反対している)者は、決して「新しい歴史教科書」を読んでいないから、ぜひ教科書を持って集会に参加しよう。
  そしてどこが歪曲なのか、真実を知らせよう。
     (MK生、東京)
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緊急国民集会の御案内
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日 時   9月17日(金) 午後6時半〜8時半
場 所   九段会館(東京都千代田区九段南1−6−5 TEL 03-3261-5521)
司 会   櫻井よしこ・ジャーナリスト 
登壇予定者 主催団体各代表、横田滋・北朝鮮に拉致被害者家族連絡会代表、佐藤勝巳・北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長、平沼赳夫・北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟会長 
基調報告 西岡力・荒木和博
参加費   無料(カンパ箱を設置しています)
連絡先   「救う会」 〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
  TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 担当=平田隆太郎
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◎宮崎正弘のロングセラーズ◎
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、売り切れました。)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
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  • 消えた怨霊2006/08/22

    >第二は梅原猛らが主張する太子の怨念説の一人歩き。太子一族が山背大兄王の死とともに滅んだが、法隆寺再建がなされたのは、太子の怨霊を鎮魂するためなどとまじめに学者顔して首唱している。



    この6月に、梅原説の欠陥、というか説そのものが成り立たないことを建築家の立場から明らかにした本が出たのはご存知でしょうか?

    ちくま新書『法隆寺の謎を解く』です。具体的で大変説得力がありました。

    ご参考までに。