国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/09/02

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
    平成16年(2004)9月3日(木曜日)
          通巻 第904号  
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 イスラム・テロと三島由紀夫を同一視する危険な三島論
  千種キムラ・スティーブン著『三島由紀夫とテロルの倫理』をめぐって
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 三島由紀夫の諫死事件以後、三島を論じた作品論だけで1000編はかるく越える。単行本だけでも300冊を越えるだろう。

 人物論、伝記、文学論、武士道論から、はてはセックス論にいたるまで多彩でもある。単行本のなかには村松剛、佐伯彰一、徳岡孝夫、伊達宗克、日沼倫太郎、林房雄、竹本忠雄、松本徹らの一級資料もあるが、野坂昭如、松本健一、古林尚、橋川文三、野口武彦、奥野健男、石原慎太郎、橋本治などの大幅な曲解、もしくは一部見当違いな三島論も多い。猪瀬直樹『ペルソナ』は、その中間くらいかな。

 さるにても外国にいる三島研究者(? 日本文学研究者)が、時代環境の雰囲気を後追いして、文献取材だけで三島論を書くとどうなるか。右も左も混交するのは、まあ仕方がないにしても当時の文壇の論争ムードや、文士同士の距離感などの細かなニュアンスは、さっぱりと捨てられる。

 だからとんでもない誤解をやらかすのではないかという懸念はあった。

したがって外国から三島研究家(と称するひとも含めて)からインタビューを求められると、小生は無理に時間を作ってでも会うし、会ってきた。

 最近でた千種キムラ・スティーブン著『三島由紀夫とテロルの倫理』(作品社)は、まさに典型的な、時代の価値観を混同させて牽強付会に、あるスタイルの評論を勝手に築きあげた見本のような書物である。

 つまりイスラム・テロルと三島の義挙を同列におくのだ。
 
 9・11テロの時に米国のジャーナリズムの多くが「真珠湾攻撃」と対比させた。保守主義の論客らは猛烈に怒った。

 昨今はイラクのテロと日本の特攻隊を比較して、暴論を吐く政治論が目立つ。
 どこかどう違うのか、という説明は不要である。日本に流れる愛国者の行為には「敗北の美学」という美意識を理解しないと、こういう浅薄な文学文明論が成立してしまうのである。

 まして千種キムラ・スティーブンの著作には拙著『三島由紀夫はなぜ日本回帰したのか』(清流出版)からの引用が、じつに九カ所もあり、さらに驚かされたのは、その引用が正確ではない上に、小生の当時の肩書きを「『論争ジャーナル』編集長」と誤認するなど(事件当時は『日本学生新聞』編集長)、精密な評論をはじめから疑わしくさせる学究的態度もおおいに気になる。

 この一冊をあげつらっているのではない。

 イスラム・テロとかれらのいう「聖戦」と、無辜の市民を巻き添えにせず自己完結型の「憂国の諫死」「精神のクーデタ」は明らかに異質である。ところが、911以降のテロリズムと三島由紀夫とが同一視されて、世界に流行の議論となるのは、究極的に日本への諸外国からの誤解を固定させてしまう懸念がある。
 
そのさきにある日本理解への浅薄さが怖いのである。
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(読者の声1)貴メルマガ(8月30日号)、中国の水事情につてのレポートは、読んでいて怖くなりました。そこでふと思ったのですが、将来中国以上の人口を抱える(であろう)インドの水事情はどうなっているのだろうか、と。
いつの日かレポートがあることを期待して待っています。
          (CY生)


(宮崎正弘のコメント)インドも同様に水不足ですが、農業地図の配分が中国ほどかたよってはおらず、また工業化が急速ではないので、一部地域以外は(世界的な)問題になっていません。農業は近代化して水を大量に取り始めるとき、工業も工場が河川の取水をはじめて、全体のバランスを崩すときにおこります。
 ただしインドは騎馬民族ではないので、植林に理解があり、この一点も中国とは異なると思います。


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(読者の声2)この「読者の声」欄の在り方ですが、ご存じと思いますが西尾幹二さんのHP〔下記にアドレス〕において、宮崎正弘さんの読者欄のスタイルが、理想的である、と激賛されています。世の中には安部穣二氏のHPのように「抗議、批判はおれは嫌いだ」と表紙にうたってあるサイトもありますけれど。     
http://blog.livedoor.jp/nishio_nitiroku/
            (TR生、群馬県)


(宮崎正弘のコメント)「うっ」。返答につまりますね。
 一般的に「掲示板」の在り方が問題です。小生は、このメルマガにも、掲示板形式を用いないのは、双方向通信が別のチャンネルでいくらも行える時代に、わざわざ自らのホームページまで解放する必要がないと考えているだけです。


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(読者の声3)前号のコメントで、宮崎先生が山口淑子(李香蘭)の自叙伝を概括され「良識過剰」「強迫観念としての贖罪意識」という表現を用いておられました。
この的確無比の比喩に、思わず唸りました。
 まさしく戦後の左翼文化人とマスコミの谷間にひよった多くの文化人、教授連中は、この「良識過剰」組です。
 ついで蛇足。下記に先生の『中国財閥の正体』(扶桑社刊)の書評がでています。
http://www.m2j.co.jp/market/books.php
        (IU生、横浜)
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(サイト情報)8月31日に採択された共和党政策綱領: 2004 Republican Party Platform:
"A Safer World and a More Hopeful America"
http://www.gopconvention.com/platform/2004platform.pdf

7月10日に採択された民主党政策綱領: THE DEMOCRATIC PLATFORM FOR AMERICA:  "Strong at Home, Respected in the World"
http://www.dems2004.org/site/pp.asp?c=luI2LaPYG&b=97933
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(おしらせ)地方取材および講演旅行のため9月6日,8日―10日付けの小誌は休刊の予定です。
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(今月〜来月の拙論)
?「強引で侵略的な石油争奪策をとる中国“資源パラノイア”度と“反日”」(『エルネオス』、
9月号、巻頭レポート)
?「凄まじき中国環境汚染」(『現代』、10月号、9月5日発売)
?「おったまげ“反日陳列館”をゆく」(『新潮45』、10月号、9月18日発売)
?「反日サッカーのパラノイア」(『自由』10月号、9月10日発売)
?「通州事件現場のいまを歩く」(『正論』、11月号、10月1日発売)
?「中央アジアの政治経済情勢」(『修親』、11月号)
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◎宮崎正弘のロングセラーズ◎
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円+税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『胡錦濤 中国の新覇権戦略』(KKベストセラーズ、1460円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
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◎宮崎正弘のホームページ http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2004 
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創刊日:2001-08-18  
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