国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/08/26

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004)8月27日(金曜日)
           通巻 第898号  
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 イスラエル、イランの原子炉先行攻撃(プリ・エンプティブ)準備OK
    中東に第二段階の危機が迫ったが
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 イランが実験に成功した長距離ミサイル「シャハブ3型」は射程が1300キロもある。
 ちなみにイランからイスラエルまで965キロ。
 この最新ミサイルは中国が秘密裏に供与した証拠がある、と米国情報筋が公表した(拙メルマガ、8月25日付け)。

 さて、シャハブ・ミサイルなんぞより、震えるほど怖い軍事的脅威は「イランの核」である。

 イスラム圏で唯一の核保有国はパキスタンだが、やはり中国の技術供与の疑いが濃厚でミサイルは北京経由で北朝鮮から来たノドンおよびテポドン改良型といわれる。

 しかしイスラム同士と言ってもパキスタンはイランに核を渡したりはしない。胴元のサウジアラビアが激怒するばかりか、宗主国中国とて妨害するだろう(サウジはペルシアの脅威を認識しているがエジプトも同じ)。
 リビアは核開発を断念したうえ、米国に白旗を掲げたため経済制裁を解かれ、石油開発は軌道にのるだろう。


 ▲イランの原子炉はロシアが支援

 イランはフランスとドイツにながらく核技術供与を迫った。国際政治上、独仏は慎重になり、この野心は果たせず、とうとうロシアからの技術導入に切り替えた。
 じつは70年代のパーレビ国王時代に、イランは西ドイツから原発の技術支援を受けた。これは79年のイラン革命によって水泡に帰す。

 84年、イラン・イラク戦争でイラク側が化学兵器を使用した。イランは慌てる。
 しかもサダム独裁下のイラクは81年まで核兵器を開発していた。そこでイランも核兵器開発に乗り出したのだ。
 
 核による平和利用、つまり発電用だと主張してドイツとフランスに接近するが、失敗。92年にロシアにスィッチしたというわけである。

 当時、イスラエルの在米および在欧ロビィストが立ち上がり、クリントン政権はイラン制裁を強化し、一方でロシアに強い圧力をかけつづけた。
 このためロシアはのんべんだらりと核技術供与に時間をかけ、スケジュールをのらりくらり遅らせる。

 IAEA査察により、イランの核開発は発電用に限定されている、とイランは何回も公式声明を繰り返した。
 イランは使用済み核燃料棒をロシアに返却すると誓って開発を続けたが、02年12月にナタンズとアラクに秘密基地を創り、燃料棒を備蓄していた事実が明るみに出た。(「ISNニュース」、8月24日付け)

 怒った米国はIEAE査察強化に乗り出すが、決定的証拠を掴めず(この過程は北朝鮮とそっくり)、いよいよ、イランの原子炉は2005年から07年にかけて完成と予測されるようになった。


 ▲米国は直接の軍事的行動を選択できなくなった

 ふたたび慌てたイスラエルと米国だが、昨年来のイラク戦争に手を焼いてイランどころではなくなった米国としては、イラン攻撃に出る可能性は極めて薄い。

 そこで先月来、急浮上してきたシナリオはイスラエルがイランの核施設を先制攻撃・破壊しても、米国は黙認するばかりか、影でイスラエルを支援するというものだ。
 つまりイスラエルが代理攻撃をするのだ。

 実績はある。81年4月、イスラエルはイラクのオシラク原子炉を戦闘機で急襲し、破壊した。オシラクはフランスが支援して完成間際まで来ていた。
 
 F16の最新鋭戦闘機が100機、つい先頃米国からイスラエルに到着した。
 イスラエル空軍は何時命令が出ても、攻撃できる能力があるうえ、訓練を怠らない。
「もちろんリビアが屈服したように国際社会が圧力をかけつづける努力が最重要だが」とイスラエル統幕議長モシャ・ヤーロン将軍は言明する。
「それでもイランが国際社会の言い分を聞かない場合、我々には”プリ・エンプティブ(先行攻撃)”の選択肢がある」。
 
 イラン側は、もし攻撃された場合、シャハブ3型ミサイルによる報復無差別攻撃を口にしている(アルジャジーラを通じて8月22日、アリ・シャムハニ国防大臣)。
 また「世界中どこでも米軍施設およびイスラエルを支援した国の目標を攻撃する」とも豪語した。


 ▲シナリオの難点はトルコ領空通過

 イスラエルの軍事的難点は、F16がレバノン領空からトルコ上空を通過する必要があることだ。
 イスラエル空軍とトルコ空軍の秘密同盟は有名だが、トルコ政治家はイラク攻撃に際して米軍の上空通過を認めなかったように、イスラエル空軍機の通過を黙認できないだろう。
 
 また過激派の存在がある。
 いまのところ、なりを潜めるテロリスト「ヒズボラ」は、イランが胴元である。かれらも、軍事的テロルを仕掛け、ユダヤ人無差別攻撃を再開するだろう。
 
 しかしイランの核はユダヤ人抹殺の恐怖のシナリオに繋がり、イスラエルは必ず原子炉を破壊する。

 その危機はいつか? 
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(読者の声1)台湾首相の沖縄立ち寄りに沖縄県副知事が歓迎と「琉球新聞」が報じています。ご参考まで。↓。
(EE生、沖縄)
http://www.ryukyushimpo.co.jp/news01/today/040825ed.html


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(読者の声2)ロシアの航空事故、当然チェチェンの反ロシア勢力のテロと考えていいでしょう。ロシアとチェチェンは民族も宗教も風俗習慣もまったく異なる訳で、もうこの辺でプーチンはチェチェンの独立を認めるべきでしょう! 
さもなければこの種のテロ事件は際限なく繰り替えされることになるでしょうし、またロシアは依然として独裁体制国家として周辺国に恐怖を与えるでしょう。ところでスターリン体制を高く評価する中国は、チェチェン問題をどう見ているか興味があるところです。
話は変わるが、ツボレフ旅客機が墜落したツーラとロストフの無限に広がるのどかな麦畑は、いずれも60数年前に数百万人の生き血を吸った独ソ戦の激戦地であり、感無量の想いでその光景を見ました。  
(MI生)

(宮崎正弘のコメント)今から十年ほど前に、今回、被害をうけたうちの一機が飛んだルートのモスクワーソチのツボレブに乗ったことがあります。ただしソチではなくて、ヤルタでしたが、あのニュースを聞いてぞっとしました。
 小生はヤルタ会議の跡をみたくて、リバディア宮殿や、一時間以上クルマでかかるほど、奥の崖地にあるチャーチルの宿舎などヤルタの街を足が棒になるほど廻りました。帰りはヤルタから汽車で十九時間かけてキエフまで出ました。当時のロシアもウクライナも貧乏で、寝台列車に近くの農民が夜中でも赤かぶなどの農作物を売りに来ていました。そんな記憶がいきなり甦ってきたのです。チェチェンのテロは国際的支援を得てから、過激になりました。


 ♪
(読者の声3)貴誌の平成16年(皇紀二千六百六十四年)8月23日(月曜日)の「面妖なり、軍が党の顔色を窺うのならともかく、党が軍に阿諛追従」で指摘された軍と党の力関係の変化は私も以前からその可能性を心配していました。
古代から中国で軍が党(王権)に対して強くなった場合、内乱がおきているからです。
しかし胡総書記と江党中央軍事委員会主席の力関係に対しては別の見方もあると考えます。最近、軍総参謀部副参謀長に呉勝利と許其亮が昇格しましたが、両者も江派とは言えないようです。
胡総書記と江党中央軍事委員会主席の間で、表向きは江氏が最高指導者であるとの対面を保つ代わりに、実質権限は徐々に胡総書記に移すという合意あるいは、江氏の諦めがあるのではないでしょうか。
ただし、<軍 対 党>という軸での力のシフトが大きくおきれば、<胡 対 江>の関係など、木っ端微塵に吹っ飛んでいくことでしょう。
     (ST生、神奈川)


(宮崎正弘のコメント)「党 vs 軍」の図式で見るとクーデタ、内乱のシナリオが描けます。しかし、それには強烈でカリスマ性を付帯した「指導者」が必要です。江沢民を凌駕する軍の指導者は、いま、不在です。
ご指摘の二人は最近の新参者。
軍副主任三人のうち、胡錦濤を除く軍人上がりの二人(参謀総長と国防部長)はテクノクラート。
つまり問題は、もうひとつあって「人民解放軍」の「自衛隊化現象」なのです。
 この自衛隊化というのは「サラリーマン化」という意味で、高級軍人と会った人達の印象がそう伝えています。立身出世と生活の安泰がサラリーマンの信条であるとすれば、軍が自ら戦争を望むでしょうか?
 劉華清や遅浩田は朝鮮戦争を記憶する、生粋の軍人あがりでした。かれらこそ、江沢民に拠って引退させられた。江沢民が軍権を掌握したのは事実ながら、一方で、軍の江沢民傾斜は同時に「サラリーマン化」でもあり、闘うイデオロギーから、装備、ハイテク重視の軍へと変質していた。それでいて、性格上は共産党に従属しなければならないという存在理由。この矛盾。いまの中国の軍隊が抱える壮大な自己撞着です。
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◎宮崎正弘のロングセラーズ◎
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円+税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『胡錦濤 中国の新覇権戦略』(KKベストセラーズ、1460円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
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