国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/08/26

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004)8月26日(木曜日)
           通巻 第897号  
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 小平の生誕100年記念行事に籠められたアンチ江沢民のメッセージ
     九月「四全中会」で劇的なゲームセット?
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 ▲小平の銅像除幕式にも胡主席が
 
 先頃、中国各地では小平生誕百年を祝う記念行事が開かれ、故郷の四川省廣安市では小平の銅像除幕式までが粛々と執り行われた。

 この銅像除幕式には、北京から胡錦濤・中国共産党中央総書記(兼)国家主席が駆けつけ、「小平同志が中国革命、国家建設、改革事業を推進した偉大な功績は永遠に歴史に残る」などと演説したあと、自ら銅像を除幕した。

  中国は墓が暴かれる習慣があるとして、小平は葬儀後の海への散骨を遺言、それに立ち会ったのも胡錦濤である。
 
 胡錦濤は除幕式で「小平同志は全党、全軍、全国各民族人民の認める卓越した指導者であり、わが党第二世代中央指導グループの核心であり、わが国の社会主義改革開放と現代化建設の総設計士であり、小平理論の創立者であり、党内外と国内外で崇高な威信を有している」(訳文は「人民網日本語版」2004年8月14日付けに準拠)と誉めあげた。

 便乗して香港の有名な貴金属店「周大福」では生誕百周年記念の純金彫刻や金製、銀製の記念コインを展示した。写真展が開かれた地方都市もある。

 北京では8月22日に記念式典を開かれ、おやめずらしや、朱容基・前首相、薄一波・元副首相、力群・元党宣伝部長などが出席した。ほかに栄毅仁・元国家副主席、宋平・元党政治局常務委員、劉華清・元中央軍事委副主席ら化石のように、忘れかけられた人達も顔を揃えた。

  この顔ぶれに注目。とくに中国財閥トップの黒幕=栄毅仁、改革派の領袖として胡の背後にまわる守護神=宋平、いまも江沢民の軍支配を快く思わない解放軍の影の実力者・劉華清の三人!

  小平が中国の最高権力を掌握できたのは人民をおさえこむ暴力装置(軍)を巧妙に抑えていたからである。


 ▲北京では江沢民も出席したが。。。

 さて22日の北京の記念式典で、またもや胡錦濤が演説した。目撃談によれば、胡が小平を誉めあげる度に、会場からどっと拍手が湧いた。
 となりの席で江沢民が仏頂面だったそうな。

 これは何を意味しているのか。
 小平は軍権を江沢民に譲っても死ぬまで「最高実力者」といわれた。
 江沢民は「中央軍事委員会」の主任と「党軍事委員会」の主任を兼ねて、法的には「最高指導者」だが、党内からも軍からもまるで尊敬が集まらない。
 民意はすでに江沢民にはない。

 なぜなら軍を掌握しているはずの江沢民には肝心の軍歴ががなく、輝かしい革命元勲のひとり、小平が生きていたときにその巨大な影響力を借用して軍長老たちに引退を迫り、つぎに依怙贔屓に次ぐ依怙贔屓で77名もの「大将」を粗製濫造し、あまつさえ誰もが欠伸を噛み殺した内容の江沢民理論「三個代表論」を発表した。

 全土には毛沢東、小平とならべて自分の顔を大看板に配させた。

 江沢民への反発は強まったが、軍をおさえた以上、オモテだった反対はなかった。

 そのうえで江沢民は軍の近代化路線を支持するという無謀な軍事予算の拡大を獲得し、故意に強硬な国防路線を堅持、そのために台湾侵攻路線を捨てきれなくなった。
 軍に阿諛追従し、つぎには軍を宥めるために江沢民が戦術として軍事力強化、強硬路線を堅持したのである。
 こうして軍の増長が再開された。
 
 すでに政治局常務委員の序列にない男が党大会などで、いまも胡錦濤より先に入場し、上海には驚くような豪邸を建て、北京の軍事委員会のビルではワンフロアをまるまる「江沢民事務所」として占拠し、こうした傲慢ぶりをみてきた民意は、すっかり江沢民から離れてしまった。

 しかし、軍事を握って離さない江沢民の存在があるため、胡錦濤は、依然として思い切った改革路線に踏み込めない。
 だからこそ小平生誕百年の式典は、江沢民をコーナーへ追い込む絶好の政治的チャンスだったのである。


 ▲「中国のゴルバチョフ」は胡か、曾か?

 胡錦濤・温家宝路線のホンネは、「反日路線反対」、台湾問題でも「侵攻シナリオ反対」のリアリズムに立脚する。過去数年間というもの彼らは江沢民のしかける反日キャンペーンをまったく無益なものと認識してきたと北京の情報通は言う。
 
 胡錦濤が上海育ちなのに、安徽省出身と言い張るのは全土から嫌われる「上海幇」と同一視されたくないためである。
 政治局常務委員に江沢民によって引き上げられた呉官正なども既に「上海幇」から距離を置いている。

 「中国のゴルバチョフ」になれる可能性を秘めるのは、江沢民子飼いと見られてきた曾慶紅(政治局常務委員序列第五位、国家副主席)であるともいう。

 曾は、事実上、ナンバーツーである。
 もし曾慶紅が江沢民から離れ、反日カルトの暴走を阻止し、活動家たちを拘束し、反日ならびに台湾攻撃キャンペーンを中止させ、各地の反日記念館に閉鎖を命じることができれば、日中関係は、かの小平時代にもどることができる、というのだ。
 「?」。

 九月に「第四全会」(中国共産党台16期中央委員会第4回全体会議)が開催される。
 先日の反日サッカーを苦々しく総括した胡執行部は、小平を絶賛する行為によって、事実上、江沢民を非難した。
  それがあの演説の暗喩である。

 そのことを暗黙に理解し、胡の演説に喝采を送ったのが党長老や領袖達であるとすれば、その背後にあるのは民意である。
 だとすれば、第四全会は、波乱を呼びこむ画期的な路線変更が行われる可能性が高まった。

 「いまごろ季節はずれの小平評価を展開した中国は経済の行き詰まりに、なにか精神的救いがほしいからではないのか」と表面的な分析を得々となって『ニューヨーク・タイムズ』が展開していたが、そんな浅薄な理解で、現在の北京政治情勢は説明が付かないんじゃありませんか? 
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(読者の声1)昨日付けでしたか、宮崎さんの日誌に「ミニコミ誌の『月曜評論』が34年の歴史に終止符をうって「休刊」となった。悲しくて、切ない気分になる。」とあります。
小生も雑誌に同封された突然の休刊通知に驚き、残念でなりません。理由が書かれていないのでなおさらです。松原正先生はどこに執筆されるのでしょうか。月曜評論の編集部に電話したところ、女性が出て復刊の努力をしているとのことでした。
宮崎先生はじめ有志の方々のお力で建て直していただきたい。休刊が経済的な理由であれば、募金しては如何でしょう。
      (KH生、上尾市)



(読者の声2)先週でしたが宮崎正弘さんのメルマガで旧満州のあちこちを歩かれての印象記、じつに鮮烈に、かつ衝撃的に拝読しました。新刊の『中国財閥の正体』を購い、すぐに読了、いやはや、これほど面白かった中国論は初めてです。
どうして他の中国人学者や特派員の中国論はつまらないのか、考えてみると所属するテレビ局や大学や、新聞の空気に背くまいとする自主規制がかかっているように思えるのです。その点で、まったくフリーな立場にいる宮崎さんは奥歯に物の挟まったような物言いがなくて、その分、辛辣であるがゆえに面白く、しかも深刻は事態を掌握できたのでは、と思います。
      (UY生、松山)


(宮崎正弘のコメント)過分なお褒めを頂いて有り難う御座います。しかし、89年天安門事件以降、日本の新聞記者の筆致がおおきく客観的に変わっていることに注目すべきですし、また産経新聞が北京総局を開設以来、されに日本のジャーナリズムの中国への眼が変わりました。
嘗ての歯の浮くような気色悪い中国礼賛は、跡形もなくなり、冷静な分析が目立つようになりましたね。朝日の一部の感傷的中国論と、日本経済新聞のイケイケドンドン式の中国進出推薦論は、まだまだいただけませんが。。。
 拙著『中国財閥の正体』をお読みいただいたそうで、有り難う御座います。

下記に掲げますのは愛知県立大学の樋泉克夫教授が書いた拙著への書評です。あわせてご鑑賞下さい。
なお同文は『日本文化』の2004年夏号に掲載された批評です。

 ◎『中国財閥の正体』の書評◎

 「木を見て森を見ない。失敗からも歴史からもなにも学ばない。さらには大局観も戦略的思考も持ちあわせていない・・・まさにないないづくし。この日本人の宿痾を臆面もなく曝しているのが、中国市場はバラ色だと喧伝するメディア挙げてのヨタ話の大合唱だ。
 「低迷する日本経済再生の道は中国市場にあり」でも眉にツバする必要があるが、最近では、いうに事欠いてか、日本は中国の下請けとして生きていくべきだなどと真顔では聞いていられないような議論までが大手を振って罷り通っている。その昔の「俺も行くから君も行け」には、まだまだ進取の心意気が感じられた。だが、「トヨタが行くから我社(ウチ)も行く」式の中国進出話には、どうにも情けなさだけが先に立ってしかたがない。 この程度の心構えで中国市場に出掛けていくのだから、その結末はタカが知れている。商戦に破れ一敗地に塗れると、彼らはしたたかだった、と泣き言をいう。だが、この現実世界がしたたかでないわけがない。ことに相手は中国の商人ではないか。
 どうも日本人は、中国経済が万国共通の経済のリクツで動いていると勘違いし、中国市場は中国の商人が動かしているという極く当たり前の事実を忘れているようだ。つまり経済、いや直截にいうならカネ儲けというものにかかわる中国社会の仕組み、企業家にとっての政治の役割、政治家にとっての企業活動の意味、政治家と企業家の人脈上のカラクリ、これを総じていうなら中国人の企業文化というものを理解しないかぎり、かつての日本軍が広大な中国の国土に不毛な消耗戦を余儀なくされた二の舞を、現在の日本企業も味わう羽目にならないともかぎらない。
 そこで、中国経済と市場の動きに関心を持つすべての日本人に読んでもらいたいのが、『中国財閥の正体 その人脈と金脈』ということになる。
本書は、なによりも著者が中国のみならず、台湾、香港までをも自らの足で歩き自らの眼で確かめて集めた膨大で詳細なデータを縦糸に、著者自身の体験を横糸にして書かれている。これこそが、中国経済をテーマとした数多くの書物と異なる最大の特徴だ。 
まず著者は基本的で客観的な数字を挙げ、中国経済を動かす原動力は中国それ自体ではなく、台湾、香港、東南アジアの華僑から投資された外資であり、「日本企業からのそれは八%にすぎない」との厳然たる事実を示した後、「海外華僑を含めた中国企業の沿革と人脈を整理して、これまで見えなかった中国経済の実態を検証」してみせる。そして確かに「近年の経済進展がめざましい一方で経済活動はてんでんばらばらの様相」をみせ、「整合性のない経済政策、通商政策の連続だから局部的にはやりたい放題」であり、それゆえに「独裁的集中的な政治力でも収拾がつかない、政府の制御能力を超えた混沌が中国に到来している」と、中国経済の現状を的確で簡潔に総括する。そして、では、そういった進展と混沌とが混在する中国市場で、誰が誰と手を組んで、誰が政治家とのコネを最大限に生かして、誰が政治のカベをいとも簡単に乗り越えてカネ儲けに勤しんでいるのかを、事実を積み重ねながら明らかにしてゆく。
 たとえば中国共産党幹部のこどもたちの実態・・・あまりにも有名な江沢民の息子はさておくとして、清廉潔癖・謹厳厳格の権化(中国式に表現するなら「清官」の典型)と讃えられた朱鎔基前首相の息子が国際金融大手の幹部だったり、共産党民主化の旗手とまで持ち上げられている胡錦涛国家主席の娘が中国語圏ポータルサイト最大手の「SINA.COM」の前CEOと結婚したり・・・その影にワシンン 人脈が見え隠れし、さらに台湾、香港、東南アジアの華僑資本が絡み合う。日本人には想像すらできない人脈のカラクリは、ぜひとも本書に当たって確認してもらいたい。
 それにしても、「外資に過剰依存する中華的体質」「国土の砂漠化、人身の荒廃化」との著者の指摘が、カネ儲けに狂奔する彼らの耳に届くことはあるのだろうか。」

(ひいずみ・かつお氏は中国研究、とくに華僑人脈の研究で第一人者です)。
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(おしらせ1)自治問題調査会 勉強会
 
 元大蔵大臣(金融大臣)の越智通雄先生をむかえて経済情勢、とくに金融政策の講座を伺います。横浜方面の方はとくに有益、交通も便利です。

  とき     9月26日午後6時
  ところ    横浜駅西口 三越うら「かながわ県民サポートセンター」
         304大会議室
  おひとり   2000円
  講師と演題  越智通雄「最近の金融経済情勢について」
  お問い合わせ (045)263−0055
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(おしらせ2)台湾研究フォーラム第65回定例会のご案内

■発表者  片木 裕一(台湾研究フォーラム副会長)
■テーマ  「台湾新幹線が抱える問題点 併:照光美麗島の『天灯』について」
      要 旨:約一年後に迫った台湾新幹線の開通、その経緯を通じて台湾のかかえる問題点や、日本との関係を論じる。また11月27日の「照光美麗島」イベントで注目の『天灯』とは一体どのようなものかを解説する。
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(かたぎ・ゆういち) 昭和31年、京都生まれ。法政大学経営学部卒業。サラリーマンの傍ら、鉄道および鉄道模型を趣味とし、新たな発見を台湾の鉄道に求めているうち、台湾そのものにハマる。現在会社勤務は卒業、日本李登輝友の会の事務局次長。
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■日 時  9月4日(土) 午後5時45分〜8時30分
■会 場  文京シビックホール3F 第1会議室 (TEL 03-5803-1100)
                  (営団丸ノ内線・南北線「後楽園駅」徒歩2分、三田線・大江戸線「春日駅」下車、徒歩3分、JR総武線「水道橋駅」徒歩10分)
■参加費  1,000円
■懇親会  定例会終了後、会場近くにて(社会人3,000円 学生1,000円)
■申し込み 出席者はできるだけ事前申し込みをお願いします(9月3日17時迄)
      Eメール⇒ taiwan_kenkyu_forum@yahoo.co.jp
      FAX ⇒03−3626−1520
■連絡先  090ー9131ー3177 
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◎宮崎正弘のロングセラーズ◎

『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円+税)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『胡錦濤 中国の新覇権戦略』(KKベストセラーズ、1460円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
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