国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/07/15

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)7月15日(木曜日)
             通巻 第867号
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カザフスタンに吹く資源ナショナリズム
  海軍を創設し、防空システムをドイツ製に切り替えか
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 冷戦が終了したとき、まっさきに米国のベーカー国務長官(当時)が駆けつけたのはカザフスタンだった。カザフスタンは自由化の希望を抱いて、米軍と共同軍事演習まで敢行した。

 日本もカザフスタンには積極的に経済支援し、?有償資金協力に888億円、?技術協力に60億円、?無償資金協力に51億円を拠出している。

 アフガニスタンへの空爆でもカザフスタンは米軍の作戦に積極的に協力し、基地を貸与した(いまもロシア兵が若干駐留しているがカザフスタンの陸軍は二万、空軍1万五千で航空機133機を保有)。


 ▲トルコ系民族の誇りをかけて
 
 そのうえ同時並行でロシア、中国とも格段の親密さを示しながらトルコ系民族らしく独自の新しい外交関係を模索した。

 カザフスタンは日本の国土の七倍もの面積を誇るが人口は僅か1500万人。97年に首都をアルマトイから北部のアスタナに移転した(ただし日本大使館は現在もアルマトイ)。
 CISの独立達成から僅か六年で首都を移転したナゼルバエフ大統領の政治力はしたたかである。

 まず第一に中ソ対立以来、途絶えていた中国との鉄道を繋ぎ、旅客ばかりかタンク・ローリーでの輸送をはじめ、最近は石油パイプ・ラインを中国へ向けて工事を始めた。

 第二にロシアへは従来以上のペースで石油とガスを売却し、国内市場の整備に余念がなかった。
ナゼルバエフ大統領は、こうした豊富な資源貿易を背景に政治力を扶植し、現地民から「ナゼルバエフ・カーン」と呼ばれる独裁者に変貌してきた。

 第三は、これら旧共産主義国家群が対イスラム・テロリスト対策として組織した「上海シックス」にカザフスタンは主力メンバーとして加わる。
 中国の新彊ウィグルの独立を目指すイスラム過激派の拠点をカザフスタンは中国に協力してあぶり出した。多くの「東トルキスタン独立運動組織」はイスタンブールなどへ逃れた。カザフは穏健なスンニ派が多い。


 ▲独自の政治立場を確立するために

 だが、地下での動きは面妖である。
 奇妙な行為の典型は、国家安全保障面では親ロシア姿勢を崩さないかに見えるカザフスタンが、秘密裏に西側の防衛システムの導入に動いていることだ。
 むろん、モスクワは神経を尖らせる。
 ドイツのBAEシステム(防空)導入にカザフスタン国防省は熱心なため、ロシアは割引価格で同システムへの応札を決めた(予算は10億ドル)。

 ロシア主導のCIS緊急展開部隊(EUのそれを模倣)は、まだ制度としての確立を見ていないが、ロシア外交はこれを錦の御旗としてカザフスタンへ再考を迫る。
 
 またカザフスタンは独自の海軍(カスピ海防衛)建設を狙っていて、速成で幹部を養成する「海軍アカデミー」を創設し、はやくも22名の卒業生をだした。これまたロシアの神経を逆撫でしている。

 これらはトルコ系民族であるカザフ族の独立精神の発露でもあるが、ロシアとの距離を、中国と米国への接近で天秤に掛けてきた巧妙さはウズベキスタンにも共通する。


 ▲中国との文化摩擦が表面化した

 だが、八方美人型の独自路線にも綻びが見えた。
 中国との関係に亀裂が生じている。中国は980キロの石油パイプライン建設をカザフ国内でも敢行中だが、文化的な衝突が耐えないのだ。
 あの厚かましき中華思想と誇り高きトルコ・ナショナリズムが衝突するのは自然の摂理でもある。

 歴史を繙くまでもなく古代の中国北方を脅かした凶奴、フン、女真、蒙古などに加え、突厥、鉄勒などの軍事強国は、いずれもトルコ系だった。
セルジュク・トルコから数世紀おいて、オスマン・トルコという大帝国を確立した民族が、中華思想と正面から衝突するのは当然である。

 中国は石油パイプライン建設現場で、多くのカザフ現地労働者と雇用し、食文化とイスラム的宗教行為への干渉を始めた。

 即ち中国人技術者らはイスラムが禁じる豚肉を食し、その食文化さえ強要し、さらには一日五回のコーランによる祈祷の短縮を要求し、激しい文化軋轢が表面化した。

 このため「パイプライン工事が暗礁に乗りかけている」との報道がある(「ユーラシア・ニュース」など)。
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  中国、ようやく外貨準備を発表
     35・8%も増加していたが、本当の話か?
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 中国当局が13日に発表した速報によれば、現在全土の金融機関における預金残高は24兆2千億元となり、前年同期比17%の増となったという。
 
 注目の外貨準備高は、4706億ドル。じつに前年同期比35・8%もの増加。ことし上半期(04年1月ー6月)の外貨準備金増加分は673億ドルにも達していたことが分かった。
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創刊日:2001-08-18  
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