国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/07/06

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)7月6日(火曜日)
           通巻 第858号
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  ライス補佐官を訪中させる米国
  対中国関係に新事態か?  憶測乱れ飛ぶ東京
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 米国はコンドレーサ・ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を北京に派遣する。
 
 この時点では一応、イラクへ主権移譲の「儀式」を終え、大統領選挙寸前の態勢に入ったため、台湾海峡の安定に本腰を入れる構えを見せるのか。

 ライス補佐官は明日(7日)に前もって東京に入り、川口順子外相と意見を交換するが、大統領のメッセージを持参する特使のかたちで翌日に北京へ移動する。
 
 北京では胡錦濤・国家主席や江沢民・軍事委員会主席ら首脳と会談予定という。
 新事態の転換となるのか、注目される。
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(今週の寄贈本)

?酒井亮『台湾海峡から見たニッポン』(小学館文庫)
軍事大国・中国の「中華帝国」な部分に焦点をあて、多方面から中華意識なるものの本質を解析し、批判する文明論で、じつは小生が簡単な「解説」を書いております。
 同時に従来の日本人の固定概念的な中国人、台湾人への誤ったイメージを真正面から是正する試みになっている。
 台湾に住む人々と中国大陸に住む人々を同じ「中国人」のカテゴリィに入れるのは無謀であり、両者は根底的に文化、宗教、教育が異なる、と衝撃的な記述から本書は始まる。
 共同通信の記者を辞して台湾へ飛び込んだ酒井亮氏は、実践的感覚的に台湾の人々と日常の交流を繰り広げ、現地で実際に見聞した出来事を皮膚感覚で捉えなおしていて読み応えがある。


?田中英道『日本美術 傑作の見方、感じ方』(PHP新書)
 セザンヌやゴッホに甚大な影響を与えたのは日本の浮世絵である。そのことはゴッホをめぐっての美術論の幾つかにもでてくるが、著者の田中先生は、そんな程度の話をしているのではない。
 モナリザの微笑より数百年も以前に法隆寺の百済観音像があった。
 マグナカルタの遙か以前、我が国には憲法があった。世界最初の恋愛小説は『源氏物語』だったように。日本はどうしてこれらの輝かしい芸術、古典、これらの歴史を忘れたのか。
 そして田中氏は結論に言う。「すでに西洋美術は終焉している」と。
このあまりに大胆な結語も「思えば、セザンヌの『サン・ヴィクトワール山』の連作も、モネの『睡蓮』の連作も、或いはゴッホの風景も、ゴーギャンのクロワニズムも、すべて浮世絵の世界に含まれていた主題でした(中略)。琳派や狩野派の金地障屏画は、十九世紀末の「アールヌーボー」に影響を与え、禅画は二十世紀の「アクション・ペインティング」の素地をつくった」。
しかしピカソ以降、西洋の美術家らは、「芸術本来の役割を放棄」し、「西洋の進歩主義、ラディカリズムの末路」となった、と厳しい批判が展開されている。
大金をはたいて、欧米に持ち逃げされた日本の伝統美術をバブル時代の日本の金満家らは買い戻さないで、つまらない西洋画に何億、何十億円とつかった。こうした現代日本の馬鹿さ加減を、本書のさりげない示唆を通して私たちは教えられる。
ともかく目から鱗の力作です。 


?加瀬英明『日本を誤らせた国連教と憲法信者』(展転社)
 あ、そうか。オーム真理教の狂気と共通するのか、うまいタイトルだなぁ、と本書を手にして思わず唸った。
 日本が国際社会で子ども扱いしかされず、絶えず米国の顔色を窺いながら、一方では中国と韓国からは蛮族か奴隷のように扱われ、それでいてこの屈辱的状況に日本人はよくも平気で耐えていけると不思議に思うひとが最近は増えた。
この日本の「平和病」というたちの悪い病原菌も大本は「国連」という田舎の信用組合よりも信用のない機関に平和を仮託し、さらに米国が押しつけた憲法なるものに新興宗教の聖典あつかいしているからである。
加瀬さんはまず「国連」幻像は誤訳から始まったとして独特な語り口で、日本の戦後の欺瞞をえぐり出している。


?片倉佳史『台湾土地、日本表情』(台湾玉山社)
 翻訳とあるから、日本語版が先に出ているのだろう。台北の或る宴席で著者の片倉佳史さんご夫妻と同席したことがあるが、冒頭の酒井氏と同様に台湾に魅せられ、台湾に夫妻で住み着き、しかも台湾の知識人さえ殆ど知らない辺鄙な場所へ出掛けてルポをものにしている篤実な人である。
 本書は台湾の友人から送ってもらった。
 台湾には総統府が代表するように日本時代の由緒ただしき立派な建造物があちこちに残る。迎賓館も司法院、監察院の建物、台湾、台中などの市庁舎、駅舎も多くが日本時代からのものだ。
いつぞや、日本の観光客でにぎわう九分(ジュウフェン、「非情城市」の舞台となった)から僅か一キロくらいのところに、当時皇太子の御幸で宿泊を予定されていた日本家屋を見学したことがある。たいそう歴史的な建造物で往時を偲べるばかりではなく、これを半世紀以上の時空をへたいまも保存している現地のひとびとの努力を思った。ほかに山奥や村々の奥地に日本時代の神社跡が残る。それらを片倉さんは丹念に実地調査し、写真に撮り、この紀行ができあがった。
 挿入された夥しいカラー写真が何となくセピア色の時代を感じさせてくれる所為か、まことにあの時代が懐かしくもある。


?中川洋一郎『暴力なき社会主義?』(学文社)
ちょうど三島由紀夫原作「サド公爵夫人」の芝居(久保亜津子主演)を見て、フランス革命を背景の貴族と庶民と、理想と現実とを後景としたセリフに酔って帰宅したところ中川先生から『暴力なき社会主義?』が到着していた。
小生はこの時代のフランスについて殆ど無知で、筑波大学の中川八洋教授からフランス革命の欺瞞性、暴力主義、リベラルのまやかしなど、耳にたこができるほど聞いていたのだが、具体的なケース・スタディによる経済学的視点からのアプローチは本邦初ではないだろうか。
本書を通読してクレディ・モビリエがユダヤ系であった事実に興味が湧いた。またロスチャイルドとの対立があったことも初めて知った。
 著者の中川さんは中央大学教授。
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(読者の声1)いつもながら「読者の声」の質問に、短く的確に答える先生のコメント、胸がスーとして読ませていただいております。それにしても直接取材の質と量、膨大な読書量と情報摂取量、それを分析取捨する手際のよさに神業的才能を感じます。くれぐれも健康保持を心がけ、深酒はお慎みくださいますよう。
       (HS生、豊橋)

(読者の声2)中国を旅行されていて、盗聴とか監視とかの心配はありませんか?拉致される心配は無いのですか?
      (TT生、神奈川)

(宮崎正弘のコメント) ご心配有り難うございます。よく同様の質問をいただくのですが、この種の心配より、怖いのは交通事故です。毎日、最低三件、多い日には五件、事故を目撃します。したがって中国へ行くときだけは保険をかけて、しかも大型バスを選んで旅行しております。
 宿泊するのはビジネスホテルか木賃宿ですから、盗聴の心配はありません。それでも通信には気をつけますし、持ち込む書物も無難なものばかりを選んで、ともかく細心の注意はしております(苦笑)。

 

(読者の声3)台風7号の影響は山東半島には及ばなかった模様で幸いでした。実はおなじ期間中に私は金曜に上海から帰国しましたので影響はありませんでしたが、台湾華僑たちは母国への影響を心配していました。
さて自動車の販売台数について面白い話を聞きました。上海で数ヶ月前にナンバープレートに課している高額な税金(4万元!!)を前触れなく急に半分の2万元に引き下げたので自動車を買おうとする人々はこれがさらに下がると予想して買い控えに入っているとのことです。
こんな高い税金を獲っているのは上海市ぐらいで北京はゼロだそうです。上海市民の買い控えがどの程度のインパクトを全体に及ぼしているのかわかりませんが、予測不能、勝手気侭のシナ行政を象徴していて興味深いのです。外資自動車メーカーの何らかの工作を受けて上海市がナンバー税を引き下げたのなら、うまくいかなかった訳でお笑いものです。尚ほぼ100%の輸入税についても大幅引き下げが囁かれているようです。

それから『正論』の御高文を拝読しました。某商社の某取締役が10年近く前にシナの次のビジネスチャンスはインドにあると呼号しておりました。
言うに事欠いて花火を打ち上げているな、と下から冷ややかに上を眺めていました。私が入社当時、インド華僑商人相手に取引していてあまりいい印象が残っていないことが遠因になっています。個人的にシナ人には嫌悪感はありませんが、国家体制や歴史的な因縁を考えればシナよりもインドと友好関係を築くことほうが日本にとって有益なのかも知れません。
インド人が日本人と仲良しになりたい気持ちがあるならば。今のインドの政治指導者にはチャンドラ・ボースのような親日家がいるのでしょうか? ビジネスマンはどう日本を観ているのでしょうか?
貴論文からインドのポテンシャリティを考えれば日本政府は遠交近攻策をとり、日本経済界は積極的にF/Sを行いビジネスの可能性をさぐる努力をすべきですね。日本のことは多分ほとんど知らないでしょうから、まず日本を彼らに知らしめることが肝要でしょうね。
    (しなの六文銭)

(宮崎正弘のコメント)いつも貴重な情報を有り難うございます。
インドには親日派が多いのですが、日本政府の宣伝活動が致命的に不足しています。
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(今月の拙論)
?「三通、金門島の現場では」(『共同ウィークリー』、6月28日号)
?「水不足で中国大陸大崩壊」(『新潮45』、7月号、発売中)
?「思想家としての村松剛」(『月刊日本』、7月号、発売中)
?「さようなら中国幻想、こんにちはインド」(『正論』、8月号、発売中)
?「中国のバブル崩壊は始まっている」(『DAILYTIMES』、7月号、発売中)
?「インドはどこまで発展するか」(『経済速報』、7月5日号、発売中)
?「北朝鮮の選択」(『自由』、8月号、7月10日発売)ほか。
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☆宮崎正弘の最新刊  
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
http://www.fusosha.co.jp/senden/2004/046355.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円+税)
http://www.namiki-shobo.co.jp/
☆宮崎正弘の好評ロングセラーズ
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『胡錦濤 中国の新覇権戦略』(KKベストセラーズ、1460円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
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