国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/06/23

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)6月24日(木曜日)
           通巻 第855号
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 “ロシア版OPEC”は着々と進捗している
  プーチンはやがて”石油・ガス大統領”と異名をとるだろう
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 プーチン大統領は”ロシア版OPEC”を作り上げる野心に満ちているようだ。
 ユコス(昨年まではロシア第二の石油メジャーだった)のホドルコフスキー前会長を巧妙に世論操作して、不正蓄財と脱税で逮捕。裁判にかけた。

 これでライバルとしての政治的行動を封鎖し、ついでにユコスを倒産寸前に追いやった。
 これはロシアの国益に損にはならず、土壇場で代替のロシア資源企業が受け継ぐ態勢だから「ロシア経済の闇」は、やっぱりマフィアが寡占しているのだ。同時に石油利権をプーチン派が独占するためである。

 近年、プーチンの資源戦略は国営「ガスプロム」に力点を移した。最大の資金源である。

  ユコスに34億ドルの追徴金を掛けて、同社の資産を凍結し、案の定、プーチンは倒産寸前になって「ユコスを解体させることはロシアの利益にならない」(6月17日)と言いだし、一番おいしいところをガスプロムが吸収することとなった。

 ガスプロムはこれでロシアの全エネルギー・ビジネスの一割を取り扱う。

 ユコスの解体的買収入札は、形式的にロシアのエネルギー省が開催し、怪しげなオークションにかけられる。
 残りの部門をアメリカ国籍のロシア人石油商のボリス・ジョルダンが買う。かれはクレムリンに近い御用商人のひとり、新型のアーノルド・ハマーだ(故ハマーは冷戦時代、ニクソンに楯突いてロシア石油を手がけたオキシデンタル石油社長)。
 さらに残る部門をエクソン・モービル、ロイヤル・シェル・ダッチ、BPが狙う。

 さてトルクメニスタンの天然ガスは米国メジャー「ユノカル」が着目し、タリバン時代からアフガニスタンと秘密交渉をもった。その過程については拙著『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫)にも触れた。

 トルクメニスタンの天然ガスをアフガニスタン経由でパキスタンの港まで南下させ、諸外国へ輸出しようという、全長1560キロのパイプライン・プロジェクトは一昨年に米国、トルクメニスタン、アフガニスタン、そしてパキスタンの四カ国が合意し、正式工事を待つばかりなのである。
 またインドも、パキスタンの北側で分岐したパイプラインを敷設し、トルクメニスタンの天然ガスを欲しがっていた。


 ▲アフガニスタンは、カブールと近郊しか親米政権は支配していない

 ところが米軍のタリバン退治から三年が経つのに、アフガニスタン東南部は依然として旧タリバンの天下、カブールにいる親米派カルザイの統治が及ばず、プロジェクトは宙に浮いたまま。これだと工事現場は襲撃されるだろう。

 プーチンは克明にこの状況を観察していた。そして最近、何をしたか?
 トルクメニスタンの天然ガスを「ガスプロム」のパイプラインを駆使して、ヨーロッパへ輸出するプロジェクトを稼働させた。さすがの欧米メジャーもこれを指をくわえてみているしかない。
なぜなら欧州へ輸送するパイプラインはガスプロムしか持っていないのだ。

 2004年中に400億立方メートルの天然ガスを西欧に輸出し、さらに2005年には500億立法キロメートルにあげる。
 トルクメニスタンの天然ガスを2007年には600億に。ともかく25年の長期契約だ。

 ニヤゾフ(トルクメニスタンの独裁者)は、このほかにカザフスタン経由で新規のパイプラインを敷設し、ウクライナへ年間360億立法キロメートルの輸出を交渉中だ。

 トルクメニスタンの天然ガスは無尽蔵ではないもののクエートに匹敵すると言われ、またドイツ、スイス、英国のコンソシアムが僅か15ヶ月足らずで開発した大規模な油田にも恵まれている。

 真南のイランへは細々と65億立法キロメートルの輸出が03年にもなされたが、量的にはこれ以上の発展はないだろう。

 カスビ海に海底パイプラインを敷設して対岸のアゼルからトルコを経由して地中海のセイハン港へといたる新ルートは、建設が緒についたばかりで完成の目処はまだ立っていない。

 くわえて7月7日から月末までロシアは史上空前といわれる軍事演習を行う。これはイラクで泥沼に陥った米英と対比的に、ロシア軍事大国の実力を世界に見せつけるプーチンの未曾有のショウである。“機動性2004”と銘打たれた軍事演習は極西から極東まで、ユーラシアの東西をまたぎ、ミグ戦闘機、アントノフ輸送機、イリューシンなど空軍が、大兵力をシベリア、カムチャッカへ運ぶところから開始される。

 きょうもプーチン大統領の哄笑は止まらない。
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(休刊のお知らせ)小誌は26日より7月6日ごろまで海外取材のため休刊です
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(今月の拙論)
?「水不足で中国大陸大崩壊」(『新潮45』、7月号、発売中)
?「思想家としての村松剛」(『月刊日本』、7月号、発売中)
?「正論版・地球の歩き方“インド編”――さようなら中国幻想、こんにちはインド」(『正論』、8月号、7月1日発売)
?「北朝鮮の選択」(『自由』、8月号、7月10日発売)
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(読者の声1)過日、宮崎正弘先生が金澤で講演されたおり、拝聴しました。わずか90分のなかで、かくも簡潔にして見事に中国の実態の総まとめをうかがうことができて、まさに目から鱗でした。ロビィで先生からサインをいただいた『中国経済の正体』と『中国のいま、三年後、五年後、十年後』を購い、帰ってから四日掛けてようやく全部読み切りました。
ひとこと、感動です。思えば日本のマスコミが、まるで「繁栄」「すごい」と中国の表層をつたえても、先生のように裏木戸をあけて、いきなり庶民の台所へ飛び込んで裏側から観察してきたコメントが殆ど出ません。そういう意味でも先生のこれからの活躍とご健筆を期待したいと思います。毎日のメルマガも愉しみに読ませていただいております。ときどき海外取材で長く休刊になるのが残念なくらいです。
         (HU生、石川県)


(読者の声2)台湾総統は陳水扁さんが再選され、五月20日には就任式もおわったはずですね。ところが先日、台湾へ行ったところ大学生がジャッキー・チェンの映画をみるなという騒ぎをやっていました。
というのもジャッキー・チェン(成龍)が、台湾の選挙を「巨大な冗談だ」と何回も意図的に批判したためで、台湾のあちこちでジャッキー主演映画のボイコットが大々的に起きている。あまつさえジャッキーの父親が国民党の秘密情報員だったことが暴露され、台湾におけるイメージは最悪となっているようです。
       (KY生、岡山)


(宮崎からコメント)ジャッキーは大陸のほうが商業的にうまみあり、台湾は所詮、ちいさなマーケットですから、おもわず本音を口走った。しかも外国の新聞にも同様なコメントを続けましたから「確信犯」ですね。かれは欧米でも人気あり、その政治的発言は重大です。しかし一方で北京を批判し続けるリチャード・ギア、ショーン・コネリーら親台湾派の大物俳優がぞろそろとハリウッドにはおります。


(読者の声3)公の面前で能天気扱いされ黙っておられまへん!ワテの前のシルミド賛美の補足させておくれやすぅ。あのな、坊主憎けりゃ(韓国の対北宥和政策)袈裟まで憎いとゆうのは偏狭な街宣右翼とおんなじやぁ。この映画は映画としてのスペクタクル、ストーリーテラー性は抜群であることはもとより(その辺のことはHN生氏も認めてはるようだが)、戦争とか死に対峙しているものこそ描ける『目の輝き』があるんやぁ。なによりも大切なのは韓国人が民族としての誇りと、民族の為に戦った人々への礼賛というか鎮魂歌といいうのがこの映画を見て我ら日本人が学ぶべきところなんとちゃうやろか。
あの篠田の売国、反日映画のゾルゲ、映画としての構造も貧弱ながら、卑しい日本人の堕落が日本映画界にあるんやぁ 日本の映画界は押しなべてサヨク、反日監督が跋扈してるんとちゃいますか ワテがこの映画を褒めるのは、矢張り韓国のこの民族の団結を見習えとゆうことなんやで 特攻の精神すらないがしろにして靖国にいかへん政治屋どものとのこの格差!プロパガンダ映画に載せられるな、などという貧弱な決め付けは三流週刊誌なみやなぁ。        (AO生、世田谷)


(宮崎正弘よりコメント)小生はシルミドもソナタも見ておりませんので、ノーコメント。しかし映画産業は、日本の斜陽をよそにインド、台湾、中国、香港、韓国と猛追激しく、来年のオスカーはインド映画になりそうと専門家が言っていました。
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☆宮崎正弘の最新刊  
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
http://www.fusosha.co.jp/senden/2004/046355.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円+税)
http://www.namiki-shobo.co.jp/

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『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『胡錦濤 中国の新覇権戦略』(KKベストセラーズ、1460円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
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