国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/06/08

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
  平成16年(2004)6月8日(火曜日)
           通巻 第843号
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 東シナ海の汚染が深刻、赤潮が頻発しているが対策をとらない中国
     汚水を人災で公海に輸出する中国
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 中国国家環境保護総局が近海の汚染状況や対策をまとめた年次報告書『中国海洋環境保護』を今月(6月)初旬に発表した。

 これに拠れば沿岸海域で赤潮が頻発しており、揚子江河口から東シナ海にかけて極めて悪質な海洋汚染が深刻化している。
 
 とくに赤潮の発生は2000年が29回、03年には119回、被害は1万5000平方キロメートルにも及んだ。
 原因は長江や黄河から流れ込んでくる汚水で、主として人災である。中国国内の工場の未処理排水、農薬、生活排水、養殖業の汚水排出などだ。

 東シナ海に潜水艦を航行させる能力だけあっても、環境破壊に中国はまったく無力、公害を公海に輸出していることになる。
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(これから出る拙論)
?「水不足中国に天下動乱の兆しあり」(『新潮45』、6月18日発売)
?「思想家としての村松剛」(『月刊日本』、6月22日発売)
?「正論版・地球の歩き方“インド編”」(『正論』、8月号、7月1日発売)
?「インド経済の発展ぶりのすごさ」(『経営速報』、7月初旬号)
?「北朝鮮の選択」(『自由』、8月号、7月10日発売)
     (題名はすべて仮題です)。
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(宮崎正弘の近況)

(某月某日)インドへ行く。
 成田12時発のエア・インディア301便は、デリー経由なので、ボンベイ(ムンバイ)まで13時間もかかる。直行は関西空港からしかない。
 驚く無かれ、ガラガラだった機内、デリーから国内線の乗客を乗せるので満員となった。
第一の目的地はムンバイだが、そのたおオーランガバード経由エローラとアジャンタ石窟に行く予定である。
三島由紀夫の遺作となった『豊穣の海』の第三巻『暁の寺』は文学的ストーリィ性がやや薄く、やたら難解な宗教論議が展開されるために批評家からは不評だった。
しかし、小生は四巻のなかで一番興味を持った。
南アジアから東南アジアにかけては、輪廻転生が常態として人々に息づき、日常のなかで信じられているが、その源流はインドである。
だれもが輪廻転生を疑っていない。
『暁の寺』では、主人公が本多となり、バンコックの暁の寺はもとより、月光姫が幽閉されている薔薇宮の描写も面白いが、圧巻はインドの描写である。タイで裁判で勝った本多はスポンサーから褒美にと印度旅行を招待され、ベナレスとアジャンタへ観光にでたという展開になっている。
ベナレスでは火葬された死体の灰が聖なるガンジスにまかれ、その隣で歯を磨く人、うがいをする人、沐浴をする人、排便をする人がいる。神聖にして、猥褻で、猥雑で、不潔なようで清潔な都市がインド人の人生の終着駅。遠藤周作もベナレスに衝撃を受けて、晩年に『深い河』を書いた。
とくにベナレスに小生が32年前に最初に行ったのも三島由紀夫の『暁の寺』を読んだ強い衝撃による。
 三島由紀夫はさりげなく「さるにても恐るべきインドだった」と書いた。
しかし、インドはどの程度に恐ろしいのか、ベナレスへ行って確かめたかった。結局、わたしはベナレスへ二回行っている。(これについては拙著『三島由紀夫はいかにして日本回帰したのか』のなかでも詳しく書いた)。
さて、今回のインド行きは別の目的もあり、主な取材をムンバイですませた小生は向きを変えた。インド経済の繁栄ぶりについては『正論』(04年8月号)をご参照あれ。
 アジャンタとエローラの石窟へはオーランガバードまで、汽車で七時間半。ムンバイから一日二本があるが、一等車のみ冷房が入る。
エローラは殆どがヒンズーとジャイナ教の石窟で壁画はない。オーランガバード市内から一時間たらずで到着する。市内で一泊。
翌日はアジャンタへ。やはりオーランガバード市内からバスで一時間半、そこでバスを乗り換え、峡谷へ向かう。殆どが仏教の石窟で、壁に鮮やかな壁画がのこる。
 「また会おうぜ、滝の下で」と言い残して夭折した松枝清顕の、その滝はアジャンタの石窟のはずれ、あれこそが清顕が行った滝ではないのか、と考えた本多繁邦が慄然とする場所である。
 今回、このアジェンタへ這うようにして、辿り着けた。
アンドレ・マルロオは若き日にアンコールトムに感動し、永遠の微笑といわれた仏教の祠の石像を盗み出したが、エローラにも同じ石仏が方々にちりばめられている。だからマルロォは、どちらかといえば隣のエローラ石窟に興味を覚えたが、三島は徹底して仏教壁画が残るアジャンタのみに惹かれたのである。
いずれ、この感動は別の機会に綴るだろう。


(某月某日)久しぶりに中村彰彦と飲んだ。
 自然とNHK大河ドラマの話になる。今年は新撰組がテーマだが、近藤勇と坂本龍馬が友人だったり、どうして新撰組の屯所に木戸孝充があらわれるのか、でたらめ、奇想天外な筋運びは別にして、事実のほうはどうだったのか。
戊辰戦争を京から甲府、小山、会津、長岡、二本松、函館まで闘った新撰組の生き残りが明治をどう生きたのか。そこには華々しい斬り込みや戦死とは無縁の自決や病死があったが、一方で寂しい遁世もあった。
 テレビドラマにも出てこない幾多の主人公らの「その後」の人生を戊辰戦争から半世紀ほどして子母澤寛が遺族、関係者を訪ね歩いて書いたのが、「新撰組始末」である。一部に創作が混ざりもっと本当の後日譚を知りたいと思った読者が多かった。
 たとえば新撰組を預かった会津藩の松平容保公の「その後」の人生は? 新撰組と最後まで戦った佐川官兵衛は警視庁の前身に旧藩士を率いて応募し西南戦争を壮絶に戦って阿蘇山中で戦死した。
会津旧藩士およびその末裔からは薩長新政府の弾圧と差別に抗いながら、多くの軍人、学者が輩出した。会津と兄弟の桑名藩からも日露戦争を指揮した優秀な軍人がでた。
 近年、新しい資料の発見などで薩長史観が覆った。こうした後日譚の第一人者が直木賞作家の中村彰彦なのである。
 デビュー作は函館戦争以後の新撰組隊長を仰せつかった青年武士が伊豆流刑ののち、赦免され、それから切腹するという秘話(「明治新撰組」)。直木賞受賞作は会津旧藩士が第一次大戦後のドイツ人捕虜を板東収容所で、いかに人間的に扱ったかを書いた「二つの山河」だった。本邦初の「第九交響曲」演奏はかれらドイツ人捕虜たちによる。
 中村彰彦とは国内温泉旅行にとどまらず一緒に外国へも何回か行った。かれの「桶狭間の勇士」という作品では、信長の奇襲の成功だが、一番の功労者は今川義元の場所を知らせた古参幹部。ついで一番槍を入れた服部小平太、首を討ち取った毛利新介のふたりである。
 中村彰彦は、この殊勲賞に輝く両名がその後、いかなる数奇の運命をたどったか。着想から実に14年をかけて仕上げた。いやはや「その後」に焦点を合わせた作風は意外感を伴い、面白いと同時に哀れもさそう。
 中村は加賀百万石、金沢にも取材して後日譚を書いている。郷土の人さえ忘れているが、明治維新後に忠誠武士の典型の事件が起きた。本多遺臣団による仇討ちという忠烈藩士を描いたのが「明治忠臣蔵」だった。
 これほど「後日譚」の名手ならば、と知り合って二十年近くも経って、打診したのが三島由紀夫の「楯の会事件」後日譚だった。
 それも、事件のもう一人の主役、「楯の会」学生長だった森田必勝のことで私の親友だった。出生から小、中学校時代、初恋、浪人、大学受験など森田の人生を精密に辿りながら実兄や、恋人や、森田を囲んだ同士たちの「その後の人生」を知りたい。三島由紀夫についてはすでに語り尽くされており、なにを隠そう私自身二冊の本を書いている。
 三年掛けてできたのが『烈士と呼ばれる男』(文春文庫)。
そして「後日譚」の名手は言うのだ。
「あの三島事件の真相はむしろ森田必勝氏が三島由紀夫さんを引っ張った結果ではないか」と。
歴史的事件には、分からないことが多すぎる。
 秋に会津の悲劇、「斗南(となみ)藩」の跡地を青森から北海道にかけて、一緒にまわろうということになった。
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