国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/05/24

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
  平成16年(2004)5月25日?(火曜日、臨時増刊)
         通巻 第835号
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国際的見地からみた小泉訪朝の意義とは?
   日本の“がま口”」を狙う新たな策動が透けてみえはしないか?
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  小泉首相の二回目の訪朝成果は本当にゼロだったのか?

 二年前、外務省がお膳立てした最初の小泉訪朝のとき、米国は核兵器廃棄問題について何らの言及も圧力もかけなかった小泉の外国的稚拙さに激怒した。
「日本の抜け駆け、外交的センスのなさ」について米国の主要メディアは痛烈に批判した。

 だが5月22日の小泉訪朝は、世界からの受けが良い。核問題についてまともに話し合わず、いきなり援助のカードを切ったのに家族五人だけの帰国という無惨な結果なのに?
{ん?}

 川口外相は直後にパウエル米国務長官、中国の李肇星・外相、ロシアのラブロフ外相、韓国の潘基文・外交通商相と立て続けに電話会談を行った。
  日本では最悪の評価が並んだのに、意外にも各國の反応は良好で肯定的な評価だったというのだ。


 ▲米国、韓国が高く評価した理由

 とくにパウエル国務長官は「有意義な訪問だった。今後も6カ国協議のプロセスを通じて協力しながら問題に取り組みたい」と強調した。
 韓国の潘外相も「拉致、核問題で成果を挙げたことを評価する。この機運を維持することは日朝間のみならず、南北関係、核問題解決に向け好ましい」とした。
 
 李肇星(中国)外相は「日朝間の対話を評価する。両国ができる限り早く国交正常化することはアジアの平和と安定にも資する」と大局的な指摘をなし、日本人拉致問題(とくにジェンキンズ一家の会見斡旋)で「中国は日朝関係改善のため建設的役割を果たす用意がある」と述べ、北京での曽我一家の会見の設定を示唆した。

 だが、どの國も本心を語ってはいない。 
 今回、日本が曽我ひとみさんの夫、ジェンキンズに「人道的配慮を」などと米国に要請したこと自体、米国にとっては腹立たしい限りだが、ワシントンは激怒もせず、むしろ訪朝に「理解」を示すという百八十度の転換ぶりだった。

 しかし米国はジェンキンズの国家反逆罪を恩赦したりはしない。米国以外のどのくにでもそうだろう。国家の栄誉、名誉をけがした者を無原則的に許せば国家のメカニズムが腐食する(日本のように)。


 ▲平壌の戦略は日米の離間にある

 平壌の思惑はむしろ日本人家族をこの問題で分離させ、日本の世論を徒らに反米色に染めることだ。人質を外交の道具化しておくことは北朝鮮にとって日米離間の戦術行使となる。どうせ、いくら日本を侮っても日本が軍隊を派遣してくることはないからだ。

 小泉訪朝に際して、米国が殆どジェンキンズの国家反逆罪に触れなかった事実は過去数ヶ月に亘ってイラクに手こずり、在韓米軍さえも中東へ派遣しようとしているためであり、軍事的に窮地に立たされているためだ。
 あまつさえイラク戦争では最初から米国を支援した「同盟国」=日本への篤い答礼としての沈黙としか考えられないだろう。

 だからニューヨークタイムズは書いた。
 「小泉首相を平壌の国際空港に出迎えた北朝鮮幹部はおらず、歓迎の宴会もなく、一行は日本から持って行った弁当箱を空けた(中略)。北朝鮮のメディアは拉致問題に一言も触れず、日本が(自主的に)援助を持ってきた(朝貢に来た)と書いた」(5月23日、ジェイムズ・ブルーケ記者)。

 指摘されるまでもなく二回目の訪朝は外交儀礼的にも常識はずれである。宗主国ならともかく北朝鮮と日本は国交さえない。だから今度は彼らの答礼訪問を待って、しかるべきだった。拙速外交とのそしりを受けても当然である。 

 「人道援助」と称するコメと医薬品援助は言うまでもなく人質に支払う身代金であり、日本の抜け駆け行為だが、諸外国とくに六カ国協議の、のこり五カ国からは批判がおこらなかった。
 奇妙ではないか。

 日本の拉致家族会、議連の怒りは別のところにあるが、やや情緒的であり、パワー・ポリティックスの原則から言えば核兵器廃棄が主眼であるべきだ。

 北朝鮮崩壊を懼れるのは韓国、中国の順であり、渋々同調しているのは米国である。ロシアはその次ぎあたりだろう。
 六カ国協議を中国の主導にゆだねている米国として選択肢の手詰まり、北朝鮮の陰謀の跋扈を観て見ぬ振りをする以外、現在のワシントンは手がない。


 ▲北の崩壊を中国、韓国、露西亜が望まない

 北が崩壊し、難民が押し寄せる悪夢は韓国、中国に共通である。だから韓国、中国は金正日体制の維持を望み、そのことに汲々として共闘していると考えてみた方が良い。

 同じ日の「ワシントンポスト」紙は、一行の小泉訪朝評価がないかわりに北朝鮮の経済実状のルポがある。
 それは38度線に隣接する工業パークに韓国企業の投資が大々的に行われており、すでに千名余の従業員が働いていること、また新義州近辺の皮革工場の賃金もドルで支払われており、四十倍に跳ね上がったコメの価格に耐えられること。
 平壌では携帯電話の普及が2万台と見積もられ、中国の電化製品、スペインからのオレンジなど外国からの物資がめだっている由。

 これらが示唆することは何か。
 中国、韓国は北朝鮮の崩壊を回避するための経済協力を無言のうちに推進する一方で、日本の”がま口”もそのために貢献させる。それを米国も黙認し、ロシアも同調しているのが国際政治の構造なのである。 
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(読者の声1)ピョンヤン会談では幼稚園の児童が先生に行儀よく 整列させられるように 小泉は 金正日を迎える 位置など北朝鮮の係員に詳しく指示され、(あたかもここから一歩も動かず、じっと待てといわているようだった)そこに 金正日が現れ 金正日は見下すように小泉に握手の手を差し出した。
  今回の会談では 金正日は はじめから小泉に視線を合わせず、見下す態度だった。この比較映像は見事だった。
  前回は 金正日は相当困り果てているな、という姿だった。 心の不安・動揺を隠すことができなかった。拉致の事実を告白する前の緊張と弱みが感じられた。しかし、今回は余裕綽々・・・・・・。
 かつ 別れ際は部屋から出るのも小泉が先(本来は金正日が先に出て先導すべき)で廊下で金正日は一秒の別れの握手。小泉は 去りゆく 金正日を実に17秒も直立不動で金正日の姿が消えるまで見送った!(23日夕方の日本TV報道から)(17秒は日本TVの計測による)
  そもそも 日本の政治家には国際交渉をする能力があるとはおもえない。はじめから気合負けしている。小泉には拉致家族救出より、参議院選挙のことが頭を占めているように思える。朝青龍の気合がまったくない。
  あの山崎官房副長官って何だ!  あの程度の人士がのこのこついて行くのは国辱です。
  もっともすべての段取りは田中均などが朝鮮当局と事前打ち合わせたシナリオ、演出、脚色どおり行われたもので、それを納得の上訪朝した小泉がどうこうすることはできなかっただろうが、それにしても不甲斐ない。
 多くの外国人との交渉をやってきた小生の眼には 彼らの 外人折衝の無能さ、経験不足は驚くばかり。
            (KT生、世田谷)
 

(読者の声2)この度の小泉首相の訪朝の成果ですが、一つ注目すべき点があります。それは、国民もマスコミでさえもこの程度の成果では満足せず、代償なしに全員無条件帰国という当然の要求を当然のこととするようになったことです。
これは数年前までは全く考えられないことでありました。日本国民の意識という面でとてつもなく大きな本質的な変化です。この点を見逃した議論は、的を射ているとはいえないと断言します。そういう意味で小泉首相の訪朝は小泉氏個人の努力の成果とはいえないかもしれませんが、とてつもない大きな日本の歴史の転換点を引き起こすきっかけになったといえると思います。そうです、小泉氏ではなく、国民全体が創った転換点だからです。まさに第二の肇国が起こりつつあります。(ST生、神奈川)
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