国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/05/21

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
   平成16年(2004)5月22日(土曜日)
           通巻 第832号
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 ◎本日は土曜日スペシャル! ◎
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(今週の寄贈本)?呉善花(オ・ソンファ)『女帝論』(PHP研究所)
題名から推測できるイメージはコントロバーシャル(物議を醸しやすい)である。ところが内容は歴史紀行的な女神風土記で雑誌『正論』に連載された文章に大幅な加筆がある。
 それにしても女神伝説のある神社を日本中いたるところ取材したエネルギーには脱帽する。
呉さんはこういう。
「私は、天皇の精神文化的な権威の格にあるのは自然宗教的なものではないかと考えている。そしてその自然旧教的なもののなかには自然生命をはぐぐむ母性への信仰が、少なくとも半分はあるのではないか。内部にこの「半分」を保持し続けてきたこと、それが、いまに至るまでの延々たる皇室の持続を可能にしたのではないか、と思う」。
 また『古事記』『日本書紀』が朝鮮蔑視の記述があるという説に反駁して呉さんはこうも言われる。
 「古事記にも日本書紀にも「朝鮮列島氏、蔑視」とはおよそかけ離れた記述で、むしろ「劣等視どころか優等視、蔑視どころか尊敬や憧れすら感じ取れる。しかも朝鮮半島に残る歴史文献から知ることのできない、誇大朝鮮半島の歴史や文化や信仰や人々の交流などが、様々な形で記されている」わけで、政治宣伝につかって読みもしない「韓国にとっては、大きな損出だ」と。
 『スカートの風』でデビュー以来、次々と力作を綴られてきた呉さんの最新作は25日に発売。

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?植田樹『チェチェン大戦争の真実――イスラムのターバンと剣』(日新報道)。
 ソ連解体以後、チェチェンでおきている悲劇は石油パイプラインをめぐる凄絶な国際地政学が基礎だが、あの強桿な民族の精神的基盤はイスラムのスーフィズム(神秘主義)に求められる。
石油戦争はうわべにすぎない。カフカスをめぐるロシアとイスラムの戦闘は、じつに400年間に亘っているのだ。その宿命の戦争史を民族に焦点をあてて描ききっている。
 著者の植田樹氏はNHKモスクワ特派員、中東特派員、インド特派員とアジアから中近東情勢にあかるい。
 読み出して驚きの連続となった。個人的にはこうした戦争の実話、謀略の裏側のディテールが好きだが、ははん、やっぱりそうか、チェチェンの真実はこれまで報道されてきたこととはまるで違うのか、ということがわかる。
 モスクワの最も凶暴なマフィアはチェチェン・グループと昔から相場は決まっている。10年ほど前、日本人の誘拐をフィクション化してチェチェンを書いたのは作家の熊谷某氏。もう一人は世界的スパイ小説作家のジョン・ル・カレである。ともに読んだが、これらは第一次チェチェン戦争が背景だった。
 だからわたしも当時はイスラムの「スーフィズム」について書き、そのときの固定観念から、いまもかれらがゲリラの元締めと考えてきた。
ところがエリツィン末期からチェチェンに入り込んでいたのはオサマ・ビン・ラディン一派とワハーブ派であり、過激思想が蔓延し、イスラム各派の内戦があり、さらに言えばワハーブ派は武器も軍資金もサウジから来ていた。当時のロシアはイスラムを知らず、多くの若者がサウジへ「留学」するのを疑問視していたに過ぎなかった。彼らはサウジで狂信的ワハーブの原理を学び、しかも軍事訓練を受けて帰ってきたのだ。
チェチェン戦争は「第一次」と「第二次」とで様相がまったく異なる。
民族差別、拷問、レープ、くわえて無差別攻撃を展開するロシア兵に対抗するチェチェン・ゲリラが、誘拐をビジネスにしている実態もよくわかる。それをプーチンはKGB出身だけに謀略情報を派手に展開して勝利を演出し、しかも9・11事件以後の西側のテロリスト批判を駆使し、便乗し、いかに汚い戦争をやってきたか、あますところなく、恬淡として描写している。頻発する外国人誘拐による軍資金は、ゲリラ各派(30組織もある)に上納される。
イラクのゲリラの手法はチェチェンに源流をもとめることが出来る。
このような裏面をえぐりながらチェチェン戦争の歴史的パースペクティブを追求してゆく。まさしく本書は、労作中の労作といえる。
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★宮崎正弘の最新刊  
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
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『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円プラス税)
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(宮崎正弘の近況)

(某月某日)わが恩師・村松剛先生がなくなって十年が過ぎ去った。三年ほど前から村松英子さんを中心とした会(「英子会」といいます)のメンバーのあいだで「十年祭」の話がでていた。
急速に追悼会が具体化したのは三月である。或る会合の帰り、タクシーで英子さんを送るなかで、「それでは、開催しましょうか。準備にはいりますよ」ということになった。
 
奇しくも3月17日の「月命日」に有志に集合してもらった。
村松英子さん、村松剛さんの「歴史講座」を二十六回続けた苅部嘉仁氏、学生運動時代に何回も村松剛さんに講演に来てもらった佐々木俊夫氏、新潮社の冨澤祥郎氏、生前にイスラエルに一緒に行ったこともある加瀬英明氏代理として評論家の植田剛彦氏にわたしが加わった。
井尻千男氏とラジオ関東時代から「ラジオコラム」を二十年ちかく続けたときの担当・南丘喜八郎氏(月刊日本主幹)や日本会議の椛島有三事務総長ら何人かは準備会に出席できなかったので、あとで連絡を入れることにした。
 ひととき思い出話で花が咲いた。
 それから大慌てでプランを作成し、五月十七日の十周年の命日に「偲ぶ会」を挙行しようということになった。この日、参加できなかった筑波大学での教え子のグループ、村松剛さんが立教大学時代からの教え子だった人々にも連絡を取って協力をいただいた。

 出席をよびかける名簿をどう作成するかが、一番の難題となった。
三人依れば文殊の知恵ではないが、わたしの記憶する村松さんの様々な場面、「そういえばあの時に同席したのは、あの人だった。あの会合では、たしかにあの人がいた」という場面である。それぞれが記憶を出していくうちに関係者をたよって名簿作りが始まった。多くの人に協力してもらった。十二年前の氏の出版記念会(『醒めた炎』発刊記念シンポジウム)の名簿がでてきた。順子夫人が年賀状をいまも交換している人たちの名簿もいただいた。筑波大学で同僚だった人、杏林大学関係、日本会議関係、親しくおつき合いし故高田好胤師、故黛敏郎氏ら薬師寺を中心とした「まほろばの会」の関係者など。
合計800名ほどの名簿が出来てきたが、なにしろこの間に亡くなられて人、移転先不明で帰ってきたほど古い住所録もあった。十年の歳月はながい!

 ついで発起人の話となった。文壇の友人が多いが、遠藤周作も黛敏郎も開高健も逝った。
 十年前の葬儀は生前の村松さんが「遺言」で葬儀のスタイルまで指示していた。あのとき、わたしも青山斎場にもちろん出席したが、佐伯彰一、林健太郎、田久保忠衛、入江隆則、井尻千男の各氏からの挨拶があった。イスラエル大使、台湾の代表、自民党、民社党代議士の姿も参列席に見た。渡辺美智雄氏が最後までいたのが印象に残った。
 当然ながら今回も遺言を基に氏の「先輩」と「同僚」筋に発起人をお願いし、弟子筋、教え子など舞台裏をささえる人たちは世話人として仕分けすることとなった。事務局は故人が何冊かの代表作をだした新潮社にお願いした。中央公論からも多いが、その後同社から担当編集者がいなくなった。
 こうして挨拶状ができた。文面は次のようである。
 
 「歳月の流れは速く、わたくしどもの親しき友人、酒雄だった村松剛さんが亡くなられてから十年になります。この間、内外情勢は激しく流動し、想像をこえる変化を日本にもたらしました。もし村松剛さんが生きておられたら如何なる判断、どういう発言をされるかをうかがえないのが誠に残念でなりません。」云々。

 発起人=阿川弘之、石井好子、石原慎太郎、石原萌記、入江隆則、大久保典夫、加賀乙彦、加瀬英明、加藤寛、菅野昭正、北杜夫、サイデンステッカー、佐伯彰一、白井浩司、相馬雪香、田久保忠衛、塚本三郎、野島秀勝、林健太郎、フランソワーズ・モレシャン、松田博青、三浦朱門、安田暎胤の各氏に依頼(五十音順、敬称略)。
当日の司会は井尻千男、ドリット野田のお二人に決めた。

 四月初旬に案内状の印刷ができて発送を始めると、事務局が把握していない、目に見えない人脈のあいだに次々と横の連絡網がひろがった。遠く長崎、佐賀、広島からも当日はせ参じる旨の連絡があった。
 誤算があった。十年の歳月と多くの関係者の物故。当初、わたしが予測したのは150名の参加者だった。葉書の回答はみるみる膨れあがり、220名を突破した。じつは会場は立錐の余地なくはいっても180名で満杯になる。遅れてくる人、先に帰る人などの入れ替えがあるとしても、満員で入場お断りになる懼れがでた。
 妙案がでた。民族派学生運動のOB参加者は会場予備軍として回ってもらい、むしろ事務局スタッフとしてもらおうというわけで、事情を話すと皆さん快く引き受けてくれた。
 前日に村松さんのお墓へ詣でて報告した。雨があがり、清冽な空気が流れていた。

 当日、五時過ぎには会場にはやくも佐々敦行氏らが集まりはじめ、岡崎久彦、小堀桂一郎、八木秀次、北杜夫、井沢元彦、早乙女貢、片岡鉄哉、辻井喬、小田村四郎、大久保典夫、松本徹、中川八洋、加瀬英明、加賀乙彦、粕谷一希、丹羽春喜、平松茂雄、村松暎、藤井厳喜氏らの顔が並んだ。
 政治家も椎名素夫、相沢英之、越智道雄、佐藤謙一郎、西村真悟、塚本三郎氏ら。
 六時の会場とともに参加者全員に白いカーネーションで遺影に献花をしていただく。BGMは生前の村松さんが好きだったショパン。二列でも長い列の出来る参加者となり、そうこうしている裡に石原慎太郎都知事も現れて献花。
最初の献杯はフランス文学者の白井浩司氏、ついで『新潮』に村松剛論を書かれた入江隆則氏に基調の挨拶をお願いした。入江さんは「思想として行動者としての村松さんの全集刊行が望まれる」などと言われた。つづいて佐伯彰一、石原慎太郎、三浦朱門の各氏が思い出話や村松文学の核心について触れた。佐伯さんは同人誌『批評』のころの村松さんとの交遊を、石原氏は三島由紀夫自決前後の想い出を、三浦朱門氏は「遠藤周作が、ある日村松がズボンをはかないで都電に乗ってじろじろ乗客からみられた」と『週刊朝日』に書いたがあれは嘘、停留所まで行って気づいたのです」と秘話を披露され場内爆笑となった(わたしが聞いたのは「玄関までズボン下だけ履いたまま(外へ)でようとしてきがついた」と本人からじかに聞いたことがあるが)。
そのあとに遺族を代表して村松英子さんが挨拶、舞台には未亡人の順子さん、長男の聡ご一家、次男の潔ご一家、それに甥の南日卓さんが並んだ。
献杯の音頭は作家の阿川弘之氏。その後、松久保秀胤(薬師寺長老)、サイデンステッカー、田久保忠衛、フランソワーズ・モレシャンの各氏が挨拶。イスラエル大使は「サムライの精神について」述べた。最後に『湾岸戦記』の資料提供者でもあり前の湾岸戦争のとき政府スポークスマンをつとめた森本敏(現在拓殖大学国際開発学部教授)が登壇した。
 この間、参会者どうしの懇談、故人のヴィデオ上映などがあり、閉会の辞は九時を過ぎた。厳粛な雰囲気のなかにも大盛況の偲ぶ会となった。

二ヶ月の準備のあいだ、つねに頭のどこかにこの会のことがあって自分の出版記念会でさえ味わったことのない緊張感が開会直前まで持続した。全てが終わってほっとしたとき、一気に緊張がほぐれ、二次会、三次会では日頃の饒舌にもどっていた。
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★宮崎正弘の最新刊  
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円税込み)
http://www.fusosha.co.jp/senden/2004/046355.html
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円プラス税)
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 ☆宮崎正弘の好評ロングセラーズ
『拉致』(徳間文庫、590円 プラス税、以下同)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『胡錦濤 中国の新覇権戦略』(KKベストセラーズ、1460円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
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