国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/04/12

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
    平成16年(2004年)4月13日(火曜日)
            通巻 第809号
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歴史的な分水嶺に追いつめられたブッシュ政権
   米国が撤退するシナリオにも備えよ
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 イラクのファルージャにおける米国民間人四人を過激なイスラム原理主義テロリストたちが虐殺したことにより暗雲が戦雲を呼んで凶暴な戦闘状態になった。
 スンニ派の穏健派を代表するシスターニ師は、一端、停戦を呼びかけたが、直後にスンニ派とシーア派が反米色で共闘するなど、事態は流動的で混迷の度を深める。

 米国世論は「徹底的にサドル一派を葬るまで戦え」が、いまのところ圧倒的である。

 だが、一方でイラク戦争そのものへのブッシュ政権の支持率が先週はじめて逆転した。911テロ事件以来、ブッシュ政権の高かった人気に陰りが出たのだ。

 今後のシナリオ群には、大統領選挙が濃厚に絡むため、「米軍の撤退」がこれからの展望に挿入される。

 中東民主化の拠点作りとしてイラクを戦略的要衝に選んだまでは米国も意気軒昂としていた。
 米国の世論は圧倒的にブッシュのイラク民主化構想を支持した。
 一年前のシーア派は米軍のバグダッド入城を歓迎した。これには米国とイランとの密約も囁かれ、イラク南部のシーア派は対米協力路線を示し、しばらくは地域の自治拡大、ひいては独立を狙った。
 イランは当然の如く対米路線を軟化させた。

 シーア派の反米路線への急激な転換は暫定政権の憲法草案で、あまりのスンニ派優位の内容に反発したからだ。米国の計算違いである。


 ▲新カリスマを狙うサドル師が攪乱要因だが。。。

 一方、スンニ派の過激派を率いるサドル師は、殺人容疑で逃げ回っていたが、いつの間にかファルージャに舞い戻って父親の後継に居座り、過激路線に転換した。
 これは戦術的選択であり、長い目で見ればイラク大多数の支持を得られないだろう。まして「米軍専門家の分析ではサドル師の軍事組織は過激派のハマスを経由してイランから援助がきているという」(「クリスチャン・サイエンス・モニター」、4月9日付け)。

 サドル師の父親は或る時期までサダムフセインとの密月時代を経て、結局はサダムに暗殺された。影響力の拡大をサダムが懼れた為とされる。

 かくしてイラク各地での各派入り乱れての戦闘は、三河一揆、長島一揆、石山本願寺に手こずった信長の、血みどろの宗教戦争の終盤戦とパターンだけは酷似する。
 比叡に蟠踞した僧兵を壊滅させて、ようやく信長の政権は安定するのだが、同時に日本は中世の暗黒を抜け出して”政教分離”の近世への昧爽の闇を迎える。

 だがイラクに昧爽は時期尚早だった。

 近代化路線のとば口に立っていたイラクは中世に舞い戻ったのだ。
 キリスト教徒がイスラム教徒を武力で従えようとしていると、イラクの民衆の多くは従来とは異なった認識を持ち始めたからである。
 イスラムの多数は異教徒に寛容だが、原理主義は不寛容である。


 ▲大統領選と世論が複雑に絡み、戦略の一貫性を左右するだろう

 米国は世論のくにである。
 現段階で対立候補のジョン・ケリーはブッシュより激しい武力行使路線を獅子吼しているが、基本的にリベラル思想の信奉者であるゆえに大統領選挙の追い込みでくるくると世論多数派の方向へ立場を替えるだろう。

 短期的に言えば米軍は増派される。
 イスラム原理主義過激派の軍事力を徹底的に叩き、暫定政権をともかく誕生させ、それからの撤退というシナリオが、現在の米国の最大公約数的な選択肢である。だがより多くの選択肢が、「それ以後」を持っている。

 第二のベトナムとはなりにくいだろう。「第二のベトナムになる」と外野席で大声で批判しているのはテッド・ケネディくらいである。

 これはシナの泥沼に巻き込まれて抜き差しならなくなった往時の日本軍にも似てきたが、今後は「第二のレバノン化」に向かう可能性が高い。

 となれば各過激派とイランやサウジ、シリアの代理兵らが入り乱れての内戦となり、米軍は完全撤退、灰燼となって疲れ果てるまで、血なまぐさい殺戮が繰り広げられようが、究極的に漁夫の利を得るのはイランだろう。

  このシナリオを最も懼れるのはイランが地域的派遣を握る悪夢を怖がるエジプト、サウジ、クエート、シリア、ヨルダンなどアラブ諸国であり、つまりはスンニ派国家群であり、
米国の撤退を歓迎しない。

 ところがアラブの支援兵力をよそに国際的コアリッションの協力内容の現実に米国は当惑し始めた。
 軍事的にも戦闘地域での戦術的撤退を繰り返したウクライナ、助けを米軍に求めたブルガリアなど、旧東欧圏の部隊が米軍の足手まといになった。

 スペイン、ウクライナに次いでニュージーランドとオーストラリアは撤退の方針に、いずれ傾くだろう。
 韓国とポーランド、およびタイは派遣人員を減らす方向で検討中といわれる。
 
 となれば日本は参議院選挙結果いかんによって劇的な決断を迫られるだろう。(脱線ながら日本人の三人の人質事件はファルージャでの、右の混迷状況に迷い込んだことにより発生した失態。あくまでも自己責任である。それにしても三十過ぎの男女に親がしゃしゃり出て命乞いをする図はイスラム教徒ばかりか世界中の笑い者となった。三十余年前、生命より大事な価値がある、と三島由紀夫は檄文を残して自刃し日本の精神の覚醒を呼びかけたが、現代日本人はその意味もくみ取れない人種がはびこる国家になりさがっていた。)

 ともかく世論が支持しなければ米国が戦争を継続することは不可能に近く、ましてやイラク石油の代替にリビアが急浮上した以上、イラクへの死活的戦略性はやや脆弱となった。

 米国は分水嶺に追い込まれた。
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(今週の寄贈本)

黄文雄『中国こそ逆に日本に謝罪すべき9つの理由』(青春出版社)

 出ましたね。こういう歯切れの良い、胸のつかえがすっと降りる本が読みたいという国民の声に押された黄さんが挑んだ。
 靖国へ行ってはいけない、と中国の唐家旋(国務委員、当時外相)が「厳命(言明)」したが、小泉首相は腰砕けになって8月15日に靖国神社へは参拝出来なくなった。
 「どうして中国だけそんなにエラそうに言う権利があるのか!」、
 素朴な疑念を日本国民が抱いているが、論理的に反論できない輩が政治をやっているのだから、日本は譲歩につぐ譲歩が「外交」の中軸となった。
いっぽうで中国人の凶悪犯罪に悩まされ、挙げ句の果てにカネをむしられても感謝もされない日本。

黄文雄さんは次のように記述する。
「『中国が創作した歴史だけを(日本人は)勉強すればいい』、『勝手にそれに反する歴史教科書を作るな』というだけではない。中国政府は『中国が教科書記述を指導することを、日本人は恩義に感じ、感謝しなければならない』『日本語の使用までは許しているのだから幸いと思え』とまで考えている」。
要するに中華思想に凝り固まる連中にとって日本は属国なのである。
たしかにチベットもウィグルも漢族史観を押しつけたばかりか、北京語で教育している。香港の首長を、これからは北京が決めると公然と言ってのける。
その同じ列に日本はいる。

中国人に善意は通じない。それは中国人に「良心」がないからである、と黄さんは断言する。
「(中国人は)道徳は知っていても、良心を育むことの意義については考えてこなかった。ましてや戦乱と飢餓の拡大、再生産の中で有限資源の争奪戦を一貫して繰り広げてきた民族である。『良心』など持っていたら、我が身を守ることは出来なかっただろう。『良心ある者が孤立する』のは、人間不信の競争社会では自分がカモになるだけでなく、仲間にも被害を及ぼしてしまうからであり、その意味で『良心』は悪徳」だ、と言うわけだ。
多彩な角度から中国の言っていることが天地の逆転ほどの嘘であると力説されている。
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宮崎正弘の今月の寄稿
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?「中国文壇の価値紊乱者たち」(『日本文化』平成16年春号、発売中)
?「中国のアジア資源外交」(『月刊日本』4月号、発売中)
?「ロシア・ルート、イラン、日本の石油外交」(『自由』5月号、発売中)
?「韓国の経済と外資」(『経営速報』4月上旬号)

来月の寄稿予定
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?「台湾の近未来は危険がいっぱい」(『月刊日本』5月号、4月22日発売)
?「中国経済を牽引するのは誰か」(『正論』6月号、5月1日発売)
?「モンゴルをめぐる世界史のゲーム」(『自由』6月号、5月10日発売)
?「水不足、民族大移動」(『新潮45』、5月18日発売予定号)
 このほか『エルネオス』『北国新聞』『経営速報』など。
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 中国に残存していた毒ガス及び化学兵器が「日本の責任」と言われ、「日本の費用」で処理・解体作業が進んでいる。総額一兆円。ほかに民間人が補償の裁判を起こしている。だが国際法上、当時の日本軍はソ連に降伏し、武装解除を行った。毒ガスおよび化学兵器はソ連軍が接収したものであり、管理責任はソ連とそれを受け継いだ中国にある。
『諸君』4月号に「毒ガス兵器を遺棄したのは日本軍に非ず」を発表し大反響を呼んだ著者がこの政治課題の真実に迫る“
          記
とき    4月14日(水曜日)午後7時―8時半
ところ   JR高田馬場駅前 大正セントラルホテル 3階大会議室
講師    佐々木俊夫(衆議院議員政策秘書、元日本安全保障研究センター事務局長)
演題    「中国の化学兵器は日本の責任ではない」
会費    2000円
問い合わせTEL 03-3200-2295  E-MAIL miura@nippon-nn.net
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(お知らせ)小誌は4月14日から15日附けまで地方講演のため休刊します。
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★宮崎正弘の近刊  
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1500円プラス税)
『拉致』(徳間文庫、590円 プラス税、以下同様)
『ネオコンの標的』(二見書房、1500円)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
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『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)
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