国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/03/24

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004年)3月24日(C)(水曜日)
            通巻794号
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モンゴルをめぐる米中露の軍事的暗闘(中央アジアにおけるグレートゲーム)
   ウランバートルの戦略的価値を模索
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 モンゴルと言えばジンギスカーン?
 井上靖の「蒼き狼」は名作である。現代日本人は、しかしそんな歴史的浪漫さえ忘れて横綱・朝青龍への反感を募らせるだけかも。

 冷戦終了とともにモンゴルからロシア軍は出ていったが、替わってモンゴルに積極的に近づいているのは誰あろう米国である。

 モンゴルを巡る列強のグレートゲームは熾烈に暗黙に壮絶に展開されている。
 その実態を知らないのは日本くらいで、なにしろ「パオ(野外テント)に泊まって羊肉を食べる旅が面白そう」と椎名誠風に騒いでいるだけだから国際政治とは無関係で、天真爛漫、無邪気なものである。

 モンゴル陸軍は「コブラ・コールド作戦」に参加し始めた。
 これは米軍とタイ、フィリピン、シンガポールと米軍が毎年、合同でおこなう軍事演習で、昨年からモンゴル陸軍もオブザーバーを派遣しはじめ、ことし八月からは正式に加わる。

 反テロ訓練、火砲の共同演習などを含む「コブラ・コールド作戦」へウランバートルが参加するという事実は注目に値する。
 モンゴルはロシアと2100マイルもの長い国境線を接し、中国とはさらに遠大な2800マイルの国境線を広げる。
 戦略的価値から言えば、米軍にとってこれほど重要な地域も珍しいであろう。

 米軍は87年の国交回復と同時にモンゴルに外交戦略を絡めた武器援助を開始した。累計二億ドルに達し、貿易方面でみると、モンゴルにとって米国との商いは中国に次ぐお得意様でもある。

 2000年に米軍はモンゴルに対して事実上の軍事援助に踏み切り、01年に350万ドルを供与した。
 この援助の大半はモンゴル陸軍の通信施設網の改善に使われた。米軍による軍人教育も進み、イラク戦争ではモンゴル軍人が参加している。
 
 さて今年八月からの共同軍事訓練では米国海兵隊50人がウランバートルに入り、郊外にあるカーンクエスト基地で訓練を行う。
 ここには173部隊も派遣され工兵訓練も同時に行われる模様だと米国情報筋は伝える。

 嘗てソビエト軍が使用したモンゴルの基地を改良して、空軍基地化し、ついでに米軍機が緊急着陸が可能な工事も始まると観察される。
 そうなれば将来の北朝鮮、中国、ロシアにおきる危機に備えることが出来るわけだ。

 慌てたのはロシアである。
 旧宗主国であり、勝手な真似を米国に、しかも目の前の庭先=モンゴルで演じられることは不快極まりないのだろう。
  過去のモンゴルに対する債権110億ドルのうち三億ドルをモスクワは突如、放棄し、3月には両国の協力関係の新しい枠組み協定に署名、ロシア製武器の更新と反テロ軍事作戦への協力を申し出たのだ。

 もっと慌てたのは北京だ。
 中国は1911年の辛亥革命以来、モンゴルとは外交的な失態を演じ続けた。
  モンゴル南方を侵略し「内蒙古省」として領土に編入してしまったため、蒙古族の漢族への敵愾心は募った。それがモンゴルをしてモスクワへの接近をさせ、冷戦下では、ロシアと中国は長い国境線に対峙した。

 2000年に中国は1200万ドルをモンゴルに援助し、02年には400万ドルの援助を追加した。
 しかし中国援助の殆どは資源開発利権である。銅、鉄鉱石、ボーキサイト鉱区開発が主なプロジェクトだ。

 運輸インフラと発電所建設のためと、モンゴルは三億ドルの借款を中国に申し出て、中国は承認に踏み切る見通し([STRATFOR」、3月23日付け)。
 中国が心理的に脅威視するのは内蒙古省にいる「中国籍」のモンゴル人と、モンゴルとの合邦の動きである。

 ロシアが懼れるのは「タタールのくびき」の現代版再来である。ジンギルカーンの亡霊は現代もロシア人の潜在意識で生きつづけており、まだまだ有効な想像上の脅威であることを利用して、ウランバートルは中露の両方に天秤にかけての援助取得ゲームを続けるであろう。

 その一方で米国、露西亜、中国はモンゴルの地政学的要衝をめぐるグレートゲームを展開してゆくであろう。
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(お知らせ)明日25日(木曜)発売の『週刊新潮』(4月1日号)に「宮崎正弘の台湾総統選挙ルポ」が掲載されます!
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(資料1)中国「国務院台湾弁公室」の台湾総統選挙に対する声明は以下の通り。
 「台湾当局は3月20日に、彼らが称するところの『平和的住民投票』を強行、中台関係を刺激し、国家を分裂させようと画策したものの、住民投票は無効という結果に終わった。これは不当な行為が人心を得ることはできず、台湾を中国から独立させようとするいかなる行為も失敗に終わるということを証明するものである」
 また総統選で陳水扁再選され、連戦・国民党主席が選挙の無効を要求していることについては「事態の進展を今後も注目していく」とした。
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(資料2)
台湾大統領選挙結果 各県市得票数と得票率
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県市名  陳水扁得票数 %  前回比%  連戦得票数  %     票差
全国   6,471,970(50.1)+10.8   6,442,452(49.9)+ 29,518

台北市   690,379(43.5)+ 5.9     897,870(56.5)−207,491
台北県 1,000,265(46.9)+10.2   1,130,615(53.1)−130,350
基隆市    90,276(40.6)+ 9.8     132,289(59.4)− 42,013
宜蘭県   147,848(57.7)+10.7     108,361(42.3)+ 39,487
桃園県   448,770(44.7)+13.0     555,688(55.3)−106,918
新竹県    92,576(35.9)+11.1     165,027(64.1)− 72,451
新竹市    96,818(44.9)+11.1     118,924(55.1)− 22,106

苗栗県   123,427(39.3)+12.5     191,059(60.8)− 67,632
台中県   440,479(51.8)+15.3     410,082(48.2)+ 30,397
台中市   564,193(47.3)+10.4     297,098(52.7)− 30,003
彰化県   383,296(52.3)+12.2     350,128(47.7)+ 33,168
南投県   146,415(48.8)+14.3     153,913(51.3)−  7,498
雲林県   243,129(60.3)+13.3     159,906(39.7)+ 83,223

嘉義県   199,466(62.8)+13.3     118,189(37.2)+ 81,277
嘉義市    85,702(56.1)+ 9.1      67,176(43.9)+ 18,526
台南県   421,927(64.8)+11.0     229,284(35.2)+192,643
台南市   251,397(57.8)+11.7     183,786(42.2)+ 67,611
高雄市   500,304(55.7)+ 9.9     398,769(44.4)+101,535
高雄県   728,202(58.4)+11.3     302,937(41.6)+122,328
屏東県   299,321(58.1)+11.8     215,796(41.9)+ 83,525

花蓮県    53,501(29.8)+ 8.4     126,041(70.2)− 72,540
台東県    40,203(34.5)+11.3      76,382(65.5)− 36,179
澎湖県    22,162(49.5)+12.7      22,639(50.5) −    477
金門県     1,701( 6.1)+ 3.0      26,433(94.0) − 24,732
連江県       248( 5.8)+ 4.0        4,060(94.2) −  3,812
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 中国に残存していた毒ガス及び化学兵器が「日本の責任」と言われ、「日本の費用」で処理・解体作業が進んでいる。総額一兆円。ほかに民間人が補償の裁判を起こしている。だが国際法上、当時の日本軍はソ連に降伏し、武装解除を行った。毒ガスおよび化学兵器はソ連軍が接収したものであり、管理責任はソ連とそれを受け継いだ中国にある。
「諸君」4月号に「毒ガス兵器を遺棄したのは日本軍に非ず」を発表し大反響を呼んだ著者がこの政治課題の真実に迫る“

        記
とき     4月14日(水曜日)午後7時―8時半
ところ    JR高田馬場駅前 大正セントラルホテル 3階大会議室
講師     佐々木俊夫(衆議院議員政策秘書、元日本安全保障研究センター事務局長)
演題     「中国の化学兵器は日本の責任ではない」
おひとり    2000円
お問い合わせ  三島由紀夫研究会 (TEL 03-3200-2295)
E-MAIL     miura@nippon-nn.net

☆5月の講座は5月19日「続ノモンハン事件の謎」と題して茂木弘道氏の予定。☆
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2004 ◎
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