国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/03/02

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004年)3月2日(火曜日)
          通巻 第776号
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ラムズフェルド国防長官がカザフスタンを訪問
 米国は隠れた「対中石油戦略」を発動へ
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 米国の中央アジアの裏側への取り組みは妙である。奇妙にして老獪老練である。

 ラムズフェルド国防長官は、2月25日にカザフスタンを訪問した。これは02年5月に続いて二回目の訪問である。前回は勿論、9・11テロ事件直後のカザフの軍事協力体制についての打ち合わせが表向きの理由だった。
 93年以来カザフスタンは米国主導の「脅威削減プログラム」に協力し、核兵器(小型核)を廃棄(ロシアが接収)した。

 加えてイラク戦争ではポーランド軍の指揮下でカザフ軍が参戦した。米国に極めて協力的なのである。
「イラクの嫌々ながらの武装解除とは対照的にカザフスタンは自主的に脅威の廃絶に動いた」とラムズフェルド国防長官は絶賛した。
 03年に米国は4200万ドルの軍事援助をカザフスタンに対して行ない、このなかには軍事訓練のほか、武装ヘリ、C130輸送機などの供与が含まれる。

 アクメトフ首相、カシムゾマルト外相、アルテンバエフ国防相らと面談したラムズフェルド国防長官は、「米国とカザフスタンの共同軍事演習などについて意見を交換し、さらにカザフのNATO加盟問題についても話し合った」(ペンタゴンNEWS、2月26日)。

 驚きである。カザフスタンもNATOに加盟するのだ!


 ▲対カザフ軍事援助の中味

 ラムズフェルド国防長官はカザフスタンと米国との五年に亘る安保協力協定にも署名した。冷戦崩壊後、密かになされてきたカスピ海の安全保障に関して米軍が協力を継続するのである。具体的にはカザフスタンの軍事基地の一新、軍事訓練のために千二百万ドルのプログラムが供与される。
 
 なぜこうまでもカザフスタンと米国は「同盟」に近い関係を構築し、それを維持しているのか?

 第一はアフガニスタンへの抑えである。
 翌日、ラムズフェルド国防長官はアフガニスタンへ飛んでいる。就任以来、じつに六回目の訪問となった。イラクでテロリストに手をやく米国はアフガニスタンの治安維持のためにNATOからの軍増派をヨーロッパの国防相会議にでかけて約束を取り付けた。

 第二は麻薬対策である。
 アフガニスタンは世界最大の罌粟栽培地帯だが、カザフスタンに麻薬ルートが延長し、ロシア経由でヨーロッパに入り込むか、或いはイスラムのルートを経て中国への密輸されている。

 第三は、もっと大局的な問題である。カザフスタンが産出する石油をこれから如何に扱うか、である。


 ▲BTCパイプラインは完成目前

 具体的にこの問題を探る。
 現在までのところカザフの石油はロシアへのパイプラインで日量30万バレル。これに加えてカスピ海経由のパイプラインが完成すれば、137万バーレルの輸出を増大させられる。

 されに対岸バクーへのタンカー輸送は容易であり(カザフは海底パイプラインも完成目前と豪語している!)、そうなればアゼルバイジャンのバクーからグルジアのトビリシ→トルコのジェイハン港という「BTCルート」のパイプライン工事が完成した暁には15万バーレルが上乗せされる。

  BTCパイプラインとは、BPを中軸にトタル、コノコ・フィリップス、ENIの四社が参画した大プロジェクトで、日量100万バーレル。05年早々に営業を開始する。
 
 いまの計算でも2010年にはカザフの石油輸出は日量180万バーレル(現在のイラクと並ぶ)になる。

 これらに加えて石油資源に溢れるカザフスタンは、じつは輸出をもっと拡大させたい。
 そのカザフ石油の埋蔵を狙うのはロシア、欧米メジャー、そして中国である。
 現在ですら日量90万バーレルの生産余力を抱えているのに、パイプラインがないために売る当てもなく、経済的に喘いでいる。ましてや、2015年に新たに三百万バーレルの生産余力が出る。
 対照的に東に国境を接する中国は2015年に日量730万バーレルの石油輸入が必要になるだろう。

 (ならば中国へ売れば良いではないか)
 ナゼルバエフ(カザフスタン)大統領は、時々、西側メジャーとのプロジェクトの遅れに苛立ち、ロシアへ再接近のポーズを見せたり、ついには中国ともパイプラインを建設し、石油を中国へも売却する構えを見せた。これは米国を激しく苛立たせる。

 中国は江沢民、李鵬らが矢継ぎ早にカザフスタンを訪問し、カスピ海の油田から300
0キロもの長大なパイプラインを敷設して、石油を買うと公表した。ところが、このプロジェクトを支える資金面に多くの問題がでてきた。

 スマンクロフ・カザフスタン国有石油運輸会社社長は、昨年9月に「中国へのパイプライン工事を開始する」と宣言し「完成は2006年を予定している」としたのだが、資金的目処をどうするのか、明らかにしなかった。

 カスピ海沿岸のアトイラウ油田、やや東側のケンキヤク油田から石油パイプラインを敷設して、中国へ輸出できるようになれば日量100万バーレル(総工費は30億ドルかかる)を回せる。これは中国としては陸続きに輸入できる資源になり、非常に魅力のある計画となる。


 ▲3000キロものパイプラインを敷設して採算がとれるのか?

 しかし石油業界は「3000キロにおよぶパイプラインを三年で敷設するのは不可能であり、そのうえ肝心の資金集めも不可能で、絵空事ではないのか」と疑惑の眼差しである。ましてヨーロッパ復興債権銀行も世界銀行も丁寧にカザフー中国間のパイプラインへの融資を断った。

 ところが、部分工事を提案し、この七月にもカザフ中央部アタスから中国との国境まで1300キロのパイプライン敷設を始めることが可能とカザフスタンの当局が発言した。中国が単独で資金調達をするとしたからである。

 米国の戦略は中国海軍力の封じ込めにある。
 すでに軍事能力的には中国海軍はペルシア湾からインド洋、アンダマン海、マラッカ海峡、南シナ海、東シナ海のチョーク・ポイントをおさえこみ、ベトナム、台湾、日本への石油ルートを攪乱できる。

 「だが、ユーラシア大陸から陸続きの石油ルートを閉ざされていて中国は近未来においても原油供給が十分でない限り、中国人民解放軍が軍事行動をとれるオプションはない」と米軍筋は断定する。
 
 中国は昨年だけでも7億3300万バーレルの石油を輸入し、消費国として世界第二位の座にありながら戦略備蓄もなく、くわえて昨今は停電が相次いで20%の電力不足に陥っている。軍隊の石油が十分にあるとは考えられない。

 だからこそカザフスタンの石油パイプラインが中国へ伸びることに米国は露骨な不快感を露わにして、冒頭のラムズフェルド国防長官のカザフスタン訪問に繋がった。
 しかし米国の妨害作戦、日本の東シベリアーナホトカおよびイランのアザデガン油田開発に対してもなされており、中国のプロジェクトを覆せるか、どうか。その効果は早くも疑わしいようだ。
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(読者の声1)いつも鋭い分析に感銘しているものです。さて本日(3月1日付け)のメールで、司馬遼太郎の「空海の風景」につき批判され、三島も批判されたと述べておられます。実は小生、「空海の風景」司馬の最高傑作と思い大変な影響を受けた読者です。
ぜひ宮崎さん、並びに三島、福田等が批判されている諸点につき若干なりともご教示いただければ大変幸甚です。
(SH生)

(宮崎正弘のコメント)司馬遼太郎は乃木大将の自刃を正面から評価せず、また「日清・日露戦争は評価できるが、“太平洋戦争”は悪い戦争だった」など、大局観のない人でした。『梟の城』や「妖怪」など忍者作家としてのデビューから「燃えよ!剣」までの血湧き肉踊るようなエンターティンメントが、やがて淡々と乾いた歴史講釈になって、小説としてのおもしろさも欠くようになった。ところが「現代の坂本龍馬は小田実」と言っていた昭和40年代から、晩年には「この国のかたち」で憂国の論理を展開し始めます。
 司馬さんの小説で面白いのは「峠」「国盗り物語」。また「豊臣家のひとびと」と「覇王の家」は歴史論としてもしっかりしていると思います。「宮本武蔵」などは失敗作でしょう。吉川英治に張り合おうとして中途半端に終わりました。
詳しくは論じる時間がありませんが、「空海の風景」は精神世界の深奥を欠いていて、仏教的世界とは遠い歴史解説の雰囲気です。小生は三島四部作を読んだ後で、これを読みましたからなおさらスピリチュアルな感動がありませんでした。
そのあたりを拙著「三島由紀夫“以後”」(並木書房)のなかで「司馬遼太郎批判序説」として挿入しました。司馬さんが生前の三島、福田両氏への嫌がらせは、そうした批判への私怨にもとづくもので、とくに中央公論に福田を書かせるなとした「s」なる人物は司馬のことでしたが。。。。
司馬さんの晩年最大の功績は「台湾紀行」です。この随想的紀行文で司馬さんは左翼に決別した。公平に冷静に論ずればそういうことになるでしょうか。


(読者の声2)2月28日に、新宿で行われた「2.28台湾正名運動アピール行進」に参加してきました。途中で隊列から抜け出して、道路の反対側に廻り参加人数を数えました。大久保公園出発の当初は約700人程度でしたが、二度目に数えた新宿駅南口付近では1000人以上になっていました。(正確に一人二人・・・と数えたのではなく10,20,30といった数え方です)このことはデモ行進の途中で「見物から参加へ」と移動した人がかなりの人数に上ったことを示しています。事実、歩道に上がって見物客の中に入ってみると「すごい人数だね」「いい感じのデモだな」「そうだ頑張れ」とか好意的な声が交わされているのを随所で耳にしました。街宣車のスピーカーから流れるデモの趣旨説明が具体的な台湾民主化を支援するものだったのが効果的だったと思います。しかし見物客の中の声には「こんなことして中国から睨まれそうだね」というのもあったのが事実です。
(HS生、愛知)
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 「三島由紀夫研究会」の「公開講座」
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嘗て「朝日ジャーナル」という週刊誌があった。全共闘世代のバイブルなどと言われたが、三島事件で山本議長が「敗北宣言」。爾来、朝日ジャーナルは左翼路線に修正が加えられるのも時代の変遷で読者が離れ、廃刊となった。
 1975年に同誌は「三島由紀夫は蘇るか」を特集。そのなかに保田與重郎への珍しいインタビューがある。この企画から保田へのインタビューをこなしたのが当時編集部にいた井川一久氏である。
井川氏はベトナム特派員などを経験し、朝日路線との距離を発見し退社。現在評論家。

                 記

日時   平成16年3月15日(月曜日)午後7時 
場所   大正セントラルホテル・3階大会議室
【高田馬場駅前・ビッグボックス前、地図は↓】 
       http://www.taisho-central-hotel.com/
講師     井川一久氏(元朝日新聞記者、評論家)  
演題     「三島由紀夫と保田與重郎」
会場分担金   会員・学生 千円/一般二千円
問い合わせ   03-3200-2295/ miura@nippon-nn.netまで

なお終了後、近くの居酒屋で井川氏を囲んでの懇親会(別途会費2000円)を行います
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■■■■■■■  宮崎正弘の新刊予告(並木書房刊) ■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■   『中国のいま、三年後、五年後、十年後』  ■■■■■■
■■■■■■    3月15日発売 定価1500円     ■■■■■■
○ 予約読者への特典を三月早々にこの欄で発表します 
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<<宮崎正弘のロングセラーズ>> 
「拉致」(徳間文庫、590円 プラス税)
「ネオコンの標的」(二見書房、1500円 プラス税、以下同)
「ザ・グレート・ゲーム」(小学館文庫、476円)
「胡錦濤 中国の新覇権戦略」(KKベストセラーズ、1460円)
「いま中国はこうなっている」(徳間書店、1500円)
「迷走中国の天国と地獄」(清流出版、1500円)
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2004 ◎
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