国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/02/24

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004年)2月24日(火曜日)
          通巻 第771号
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 ジョン・ケリー候補が当選する条件は「副大統領候補」の善し悪し
   もし民主党の党内が一本にまとまると接戦を演じうる可能性が出てきた
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 米国大統領選挙のジンクス。与党が分裂しない場合、現職が有利というのは基本原則である。
 人気の高いブッシュに挑む民主党は分裂選挙を回避できない情勢だ。

 現在、党内予備選のトップを走るのはジョン・ケリー上院議員。リベラルの巣窟=マサチュウセッツ選出である。それだけでも党内保守派からは総スカンの趣き、くわえてケリーは性格が傲慢なので誤解されやすい。

 ジョン・ケリーは、1943年生まれだからすでに60歳となる。ブッシュより老けている。「若々しさ」「新鮮さ」というイメージを競うテレビ選挙でもあり、このイメージはプラス要素になるとは考えにくいのである。
 
 ケリーはエール大学卒業後、JFKの履歴にあやかって海軍に入隊した。東部エスタブシシュメントは、しかしながら南部穏健派からは好かれない。中国でも上海人がほかの地方から嫌われるように。


 ▲JFKかぶれは女性遍歴にもあらわれた

 ベトナム戦争中、銀星章、青銅星章、およびパープル・ハート勲章を三回(戦闘で負傷した将兵に与えられる)。ところがベトナム帰還後、反戦運動家へと転向した。そのことで彼の政治生命は終わるはずだった。
 ケリーは幸運に恵まれた。マサチューセッツ州の副知事(当時の知事はブッシュに惨敗したデュカキス)に抜擢された後、1984年に上院議員になった。

 ケリーの父親は外交官で、ボストンの名家の出身。だからフランス語を喋るのが大好き。
 初婚相手は、ジュリア・ソーン、12年続いた結婚生活で二人の娘がいる。
 再婚相手のテレイザ夫人は5歳年上。しかも再婚同士だ。テレイザ夫人は大金持ちである。夫人の初婚相手はハインツ・ケチャップ財閥の当主、ペンシルバニア州上院議員だったジョン・ハインツ三世である。ただしハインツは91年に飛行機事故で死亡した。ケリー夫妻はともにカトリック信者。


 ▲ケリー当選にはこれだけの条件

 さてケリー上院議員が大統領に当選するとすれば次の条件が必要であろう。

1) あのラフフ・ネイダーを降ろす
 環境問題に取り組みアメリカ版「緑の党」のシンボルであるラルフ・ネーダーは根強い人気がある。日本でも辻本清美やら土井たか子が、あれほど国民から嫌われても支持勢力があるように。
 しかもラルフは「第三党」を結成して、選挙戦に望む構えを見せた。
「なにしろ前回、全体の3%の得票を獲得してゴアの当選を結果的に阻み、民主党から不評をえたものの、今回は民主党穏健派に飽きたらずにディーンを推してきた左翼リベラルがラルフ陣営になだれ込む様相を見せている」(「クリスチャンズ・サイエンス・モニター」、2月23日付け)。
 もしラルフが打って出れば、民主党リベラル派からの票は激減し、ケリーの当選はたいそう難儀になるだろう。3%という票は趨勢を決める決定打にさえなる。

2) エドワードが副大統領候補
 南部穏健派からは圧倒的な人気をもつエドワード上院議員。だが民主党予備選のメカニズムが東部リベラル地域が最初に行われて緒戦の勢いがその後のレースを決めるため、民主党候補を獲得できるかは、率直に言って「奇跡」でも起こらない限り無理な情勢。
 しからばエドワードを副大統領候補とすれば、民主党が勝てるおそらく唯一の選択となるだろう。保守票を手堅くまとめるエドワードだと党内のバランスが取れるからだ。
 だが、昨日の時点(2月23日)でも二人はテレビ討論会で罵りあっていた。

3) 女性スキャンダルが出ない
 ケリーはJFKに憧れただけあって華麗なる女性遍歴もJFKと遜色がない。中でも大女優のジェーン・フォンダの不倫関係が取りざたされている。ジェーンは、名優ヘンリー・フォンダの娘である。アカデミー賞主演女優賞も何回か受賞したベテラン女優だが、過激なベトナム反戦運動で有名だった。
 その後、反戦派から華麗に転向し、CNNを創設した実業家のテッド・ターナーと再婚したものの長続きせず別居している。

 ケリーが明らかに不利となるシナリオは、つぎのような場面が想定される。

1) ヒラリー・クリントンが副大統領
 ヒラリー夫人が副大統領候補となった場合、彼女の人気とケリーのそれは地域的に重複し、すなわち南部保守票は反発して「レーガン・デモクラット」のときと同様にブッシュへ流れる可能性が強い。
 民主党党大会は、みすみす負ける選択を回避するだろうから、「ケリー・ヒラリー」チケットを決定しないだろう。
 まして08年に本人が大統領を狙っているヒラリーに取ってケリーの当選は、じつは嬉しいことではない。

2) ディーンが副大統領候補
 ハワード・ディーンが予備選が始まる前までレースを独走できたのは「反戦活動家」と「左翼過激派」が支え、幾つかの労働組合がボランティア組織をつくってキャンペーンに送り込み、予備選の有力候補地などで、積極的な活動を見せたからだ。左翼の資金があつまったことも大きい。
  そのことは予備選直前までの人気に繋がったが、かえって民主党内保守派、穏健派、主流派の反発を強め、一気にポピュラリティ急落となった。
 それでも党内事情か何かでディーンを副大統領候補に選べば、ケリーの当選は完全におぼつかなくなる。


  ▲雇用が最大の選挙の論点である

 それならばゲッパート前下院民主党院内総務が副大統領候補となった場合、どうなるか。意外な善戦が期待できるのである。
 何故か。
 予備選のはやい段階でリチャード・ゲッパートはレースから下馬し、しかも政界引退を表明した。次の駐日大使か、有力国の大使を狙っての待機に入るのだが、副大統領候補として指名される可能性がある。
 なぜなら今度の選挙で最大の争点は、イラクで突発事故が起きない限りは、「雇用」となるからだ。

 ブッシュ大統領は親子して「経済」に祟られる。パパは物価を知らず、消費者の心理を逆撫でする発言を繰り返して、92年にクリントンに漁夫の利をさらわれた。
 米国経済はことし4%成長だと予測され株価も順調な推移を示しているから「なぜ不景気?」と首を傾げる向きがあるかも知れない。

 米国景気はいまのところ「雇用なき恢復」なのである。失業者の群れが増え続け、彼らは民主・共和に限らず執権党の反対票を入れる。
 雇用は構造的なものであり、しかも主因は「海外アウトソーシング」による。
 80年代から始まった海外工場移転、国内工場のファクトリー・オートメーション(FA)の進展などによって雇用が効率運用されるようになった。
 IT革命は工場に生産効率革命をもたらし、やがてITによる経営効率化はオフィスから銀行、店舗でも効率化をもたらし、雇用は減るが、景気は良くなる。海外工場移転は米国国内の雇用を減らすが企業利益はあがる、という皮肉な様相を呈する。

 ブッシュ政権の誕生以来三年間で230万人の雇用が失われた。
 「80年から2002年までの米国における人口増加は23・9%だったが、同期間の雇用は37・4%増え、就労人口は1億3800万人である」。(「ロンドン・エコノミスト」、2月21日号)。

 だが、もっとも重要なことは製造業におけるエンジニア的な従来型の職業が激減し、ウォルマートのような小売り、サービス、とくに医療、ヘルスケアでの職業が激増したことだ。
 IT産業に新雇用があっても製造業にも繊維産業にも雇用機会の増大チャンスは訪れず、職業のシフトに乗り遅れた地帯が「失業増大」をもたらす結果をうんだ。

 ソフトウエア産業とて全盛時代は米国では終焉し、雇用ブームがおわり、海外アウトソーシングの移転先は専らインドと中国へ向かった。

  「この傾向は米国の優位性を脅かさないのか?」(「ビジネス・ウィーク」、2004年3月1日号)。
 明確に脅かす。だからブッシュ政権に米国財界から強い支持の合意がないのだ。

 ならばケリー政権が出来たら雇用が増大するなどと、淡い幻想を信じる人も少ないだろう。むしろIT産業全盛のときが民主党人気の絶頂だった。シリコンバレーはクリントン政権を支えた。その人たちは、失業によってサンフランシスコから去った。

 ブッシュ政権は既に海外下請けを国家プロジェクトに関しては使わない、という行政指導を行っており、最近の議会は中国をことさら敵視して中国制裁法、ITC清楚、WTO提訴と目白押し。
 こうなれば通商問題で飛び抜けて強い指導力を発揮した男リチャード・ゲッパートが急浮上というシナリオもあり得ることになるわけだ。


   ▲ブッシュが落選する条件とは?
 
 ブッシュ大統領が再選を果たす可能性についても具体的に検討しておこう。
 今のところ、共和党は党内が安定し、内部の敵が居ないので、基本的に有利である。そこで再選をより確実にするためには副大統領候補にチェイニー続投で臨むのか、それとも、ほかの人物を当てるか、に焦点が移ってくる。

 現職のディック・チェイニー副大統領が続投となれば、民主党およびリベラル色の濃い米国マスコミは”ハリバートン・スキャンダル”を暴き出して、ネガティブ・キャンペーンの前面にチェイニー攻撃をだしてくる可能性が高い。

 ハリバートンはイラク復興の主契約ゼネコンである。政権入りする前の同社社長をチェイニーがつとめていたことは良く知られる。
「2002年のハリバートンの契約は5億ドルだった。2003年、同社の契約額は39億ドルに跳ね上がり、さらにはナイジェリアにおけるガス開発プロジェクトにおいて1億8千万ドルの不明瞭な支払いが問題化している」(前掲エコノミスト誌)。

 共和党選挙対策本部では副大統領候補の選択作業も同時に開始されており、有力な声が囁かれているのはコンドレーサ・ライス(大統領補佐官)が副大統領候補になる、もしくはコリン・パゥエル(国務長官)が副大統領候補というアイディアまで浮上している(「NEWSMAX」のインタビューに答えた選挙名人のディック・モリスら)
 
 まだ八ヶ月も先の話だが、米国が世界最大の軍事経済政治国家だけに、目が離せないのだ。
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(読者の声1)「The Last Samurai」の著者Mark Ravina氏はエモリー大学の準教授ですが、江戸時代の諸藩の藩政改革に関する学術書もだしている日本近世史の専門家です。NTT出版から翻訳も出ています。
 ところで武士道の欧米への影響に関して多くの人が書いていますが、巨大な影響が忘れられています。
19世紀末から20世紀初頭に活躍した米国の哲学者Josiah Royceが武士道に影響され「The Philosophy of Loyalty」を書いています。彼は以降、Loyaltyをその研究・施策の中心にすえています。彼は、William JamesのHarvard大学の哲学教授として同僚で当時のそして米国哲学史全体でも非常に大きな存在です。彼を通じての武士道の欧米特に英米思想への影響は大きなものではないのでしょうか。
    (ST生、神奈川)


(読者の声2)ゾルゲで思い出しましたが、春に行なわれるゾルゲに関する講演会では以下の点もカバーしてくださるようお願いします。一回で無理ならミニシリーズででもやってください。

(1)上海でのゾルゲの諜報活動。
  ゾルゲは上海でスメドレー交流があったが、その交流の内容、またGHQのウィロビー少将は上海でのゾルゲの活動に関心を持って大量の資料を集め著書も書いている。彼の関心を持った背景とその調査結果。

(2)エドウィン・ライシャワーは戦前上海で対日諜報活動を行なってきたが、彼の活動とゾルゲの活動のかかわり。

(3)Time誌初代共同編集長のヘンリー・ルースは戦前国民党及び中国共産党幹部と親交を結び“反日・親シナ”の姿勢をとった。彼が国民党及び中国共産党の胡散臭さに気付かなかったとは思われない。にもかかわらず反日・親シナの姿勢をとった理由及び背景。
 それにしても戦前、対日諜報活動を行なっていた人物を後に駐日大使に任命するとは米国政府は日本政府と日本人をなめきっている。ひどいものである。
      (ST生、神奈川)
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(お知らせ)小誌は明日2月25日から27日付けまで休刊します。
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