国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/02/17

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004年)2月18日(水曜日)
               通巻 第764号
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 核兵器の”ブラック・マーケット”にようやく国際的捜査のメスが
  北朝鮮の核はパキスタンからの「流出」だけか?
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 AFP通信は2月2日、パキスタンの「核開発の父」(核開発機関・元所長)のアブドル・カディール・カーン博士がイランとリビア、北朝鮮への核技術流出にかかわったと自供した旨を報道した。
 
 前日にパキスタン政府は予防的な記者会見を行い、核技術流出の経緯を説明した。
 とどのつまりはパキスタンの軍部は関係がなく、アブドル・カディール・カーン博士とその部下の科学者らが罪を認めたとした。カーン博士は、直後にテレビで国民に”謝罪”し、ムシャラフ大統領はすぐさま恩赦を与え、この事件の幕引きをはかった。
 
  そんなことで済むのかな。まさか、個人が核兵器プロジェクトを推進し、しかも個人の責任で別の国に売っていた?


 ▲リビアにも渡っていた核技術

 パキスタンからイラン、リビア、北朝鮮へ流れたとされる核技術は「ウラン濃縮用高速遠心分離機」とその設計図、「核弾頭の設計図」と関連部品などだ。

 流出期間は、イランが89年から91年、リビアが91年から97年、北朝鮮には91年から2000年までとされた。
 
 カーン博士はリビアの科学者とカサブランカやイスタンブールで秘密裏の会合を持ち、またイランの科学者とはカラチで、北朝鮮の科学者とはマレーシアでそれぞれ会合した。
 北朝鮮にはカーン自身が10回以上、直接訪問し指導した。
 これらはCIAが事前に確認している。

 自供内容を記した報告書は、パキスタンのムシャラフ大統領に提出されたが、「自供」の内容には米国情報機関が把握し、米国の報道機関にリークされて、報じてきた核拡散疑惑と矛盾する点が幾つかある。

 第一にミサイル技術と交換に核技術を移転した北朝鮮との取引を、ニューヨーク・タイムズは「02年夏まで続いた」と報じたが、カーン博士の自供と異なる。

 第二に核ミサイルが絡んだ北朝鮮との取引は、パキスタン政府がまったく関与していないなどと言われても、世界の誰もが信じないことである。

 核兵器の闇市場は、米国や国際原子力機関(IAEA)の手で明らかになっているが、ムシャラフ大統領自身が会見で、「闇世界の根は広がっており欧州人やパキスタン人もかかわった。その中心地はドバイ」とした。
 また「我々も闇市場を通じて核兵器を作った。必要な部品や材料は公然と買ったのではない」として、核の入手の際には政府総掛かりで闇市場を使ったことを認め、その一方で核拡散においてはパキスタン政府の関与を否定した。これも矛盾である。
 パキスタンのはなし、要するに矛盾だらけだ。


 ▲部品の一部は日本製だった

 IAEAのエルバラダイ事務局長は、「パキスタンのカーン博士の事件などは『核の闇市場』の氷山の一角にすぎない。核技術の部品は或る国で製造され、別の国で組み立てられているわけで、関与して儲けた企業や個人が西側にも存在する」と語った。「別な国」の中には日本も入っている。

 2月4日付けニューヨーク・タイムズは「カーン博士を中心とした核兵器闇市場ネットワークを通じて、遠心分離器の部品がマレーシアで製造され、他の部品はドイツや日本で調達されていた」と伝えていた。
 
 「南ドイツ新聞」はカーン博士が名前を挙げた欧州における「仲介人疑惑」のドイツ人やオランダ人、英国人ついて詳細を報じている。
 
 マレーシアについては同国首相の息子が経営にかかわる工場が、ドバイを拠点とするスリランカ人ビジネスマンを仲介者としてリビア向けに遠心分離器の部品を輸出した疑惑があるとされる。

 ワシントン・ポストは2月15日になって「中国からパキスタンに」流出した核爆弾製造技術が「核の闇市場」を通じてリビアに流れていた、と報じた。

 リビアが核開発計画を放棄し、提出した資料には、弾道ミサイルに搭載できる核弾頭の組み立てに必要な部品の設計図、弾頭製造の精密なプロセスが記述され、文書の一部は中国語だった。
 設計および構造は中国が60年代に製造していた核弾頭だった。これはリビアがIAEAに提出した設計図の分析で分かった。
 ただしこの設計図はパキスタンから闇市場を通じてリビアに売られた可能性もある。 
 
 前々から米国は、中国のパキスタンへの核開発支援を疑ってきた。「その劇的な証拠だ」(ワシントン・ポスト)と米国メディアは報じた。
 だが、米国は中国の疑惑については不問とする模様である。
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 <新刊予告>宮崎正弘著「中国のいま、三年後、五年後、十年後」(並木書房、予価1600円)。★二月下旬刊行予定。ご期待下さい!
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(読者の声1)フジモリ元ペルー大統領のことがでてきましたので、そこで大勢に無關係な閑話を一言もうしあげます(小誌16日付け「某月某日」)。
  フジモリ氏が日本に滯在できるのは日本國籍を有するからと思つてをります。さすれば、フジモリ氏の姓呼稱は「フジモリ」が適當でありませうか。もともとの御先祖は「藤森」或いは「藤盛」か分りませんが、さうであるなら正統表記の片假名は「フヂモリ」でなければなりません。いや、日本人・フヂモリ氏は姓を漢字で綴るのが全うであると思ひます。
  日系二世の上院議員にイノウエ氏がゐます。その御先祖の姓表記は 「井上 ゐのうへ」でせうから、英語表記を Winouhe とすべきであつたとのではないでせうか、またこのはうが Inoue より遥かに發音しやすく、また現實の發音に近いと思はれるのですが。
  さて、國語問題協議會の會則が改訂されることになりました。第一條に、正統表記の復權と普及の實現を目的とすることが明示されます。部分的に公開してをりますのご覽になつていただければ幸ひです(「協議會だより」欄)。疾うに鬼籍に入られた三島由紀夫氏も小林秀雄氏もすべて、みな役員でした。諸先達の熱い思ひを受けて、正統表記を復活させなければならないと思つてをります。  (KW生、千葉)
 <正かなづかひ+縱書き電網核>: http://www5b.biglobe.ne.jp/~kokugoky/ 
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(宮崎正弘のコメント)フジモリ元大統領は、お目に掛かった感じではたいそう健康的で、復帰に意欲的でした。かれの第一の工作対象は米国議会です。リベラルな米議会を、どうやって説得し、米国の支持を取り付けるかに掛かっており、また日本での活動もそれに絞られている。現大統領が不人気なのは百も承知ですが、祖国復帰の可能性は、上記工作が済めば比較的容易と考えておられる様子でした。
映画「ラスト・サムライ」が西郷隆盛をモデルとして、神風連もでてくるという話題をこのとき初めて知り、見なければいけないと思いつつ。
          ◎○

(読者の声2)台湾の総統選挙の行方は明らかに日本の国益と絡み、日本としては中国の台湾吸収を進めるような事態はなんとしても食い止めようとするのが常識的な外交感覚だと考えます。
 しかし本日の「早読み」でも、テレビ討論後の世論調査で連戦圧勝というのは、台湾国民には「中国併合」の危機感がないことを物語っていることの表れだと思わざるを得ません。台湾のマスコミが外省人グループに握られ、最近の中国の「ソフト化路線」の意を汲んで報道内容が一般国民への危機感を薄くさせるものになっていることも大きいでしょうが、拝金の中国人文化が日本と同様にすっかり根付いているんでしょうね。
 同時に感じるのは、総統候補としての陳水扁氏の力量と人気への疑問です。哲人李登輝さんのあとを埋めるには、あまりに酷な要求かもしれませんが、彼には大きさとか信頼感とかいう建国に不可欠なオーラがなく能吏の印象が強いのです。(彼の苦難の経歴にもかかわらず) これが中間派をして今一歩支持に結びつかないのではないかと懼れます。
 翻ってわが日本は、国の大小こそあれほとんど台湾とまた韓国と同様の”勘違い”をしているように見えて仕方がありません。隣国中国の「経済発展」に目を奪われて草木もなびく有様です。とくに経団連の会長(トヨタ奥田碩氏)自らが新幹線の売り込みに行く姿からは、かつての’政治のご意見番’の気概と見識を見ることはできません。上から下まで利己主義と拝金思想とが大手を振ってまかり通る感じです。
 こうした拝金と利己の思考には、ごく初歩的な地政学的常識さえも欠如してしまうのでしょうか。この数年間の中国の動き方は、チベット、ウイグルへの侵略はもとよりベトナム、ビルマへの侵食や南シナ海南沙群島の領有化紛争そして尖閣諸島への示威行動と進み、日本列島周辺の海域調査まで我が物顔で版図拡大を狙うさまが明らかです。核とミサイルの技術は中国発で後進の専制政治国へ流れ、自らはいっそうの軍備増強を図っています。農村の貧困など内なる難問は海外からの”人道援助”ODAなどを要求する道具にすらされているのではないでしょうか。
  この実態を台湾でも日本でも権力につながる有力者たちが知らないはずはありません。しかしそれでも中国に靡く。先日来アメリカのブッシュやパウエルが「台湾の国民投票に反対する」といい、また「東アジアの駐留米軍のシフトを再検討する」とも言うのは何を意味するのか。私には、これは台湾問題に限らず日本と韓国(この国には望むところかもしれませんが)に向けて、日米(韓)の同盟は切り捨てる選択もあり、との強烈なメッセージに聞こえます。
その意味でも、いま日本と台湾は、ともに中国を仰ぐ属国となるか自由主義国にとどまるかの岐路に立っているとの認識が必要なのではないでしょうか。
 しかし、いつのときも敵に力を売るような”売国の徒”はいるものなんですね。「ペイラントの自由」の教訓は、いつになっても”教訓”でしかありえないのでしょうか。
 
(「ペイラントの自由」の信奉者たちとは、1651年、英国は、アジア、アフリカ、アメリカの産品は外国船(当時はほとんどオランダ船)で輸入されてはならない、などと、オランダを狙い撃ちした航海条例を制定した。これをきっかけとして、翌年、第一次英蘭戦争が勃発する。ブルジョワ政治家たちは、戦争の危機を叫ぶと、軍事指導者モウリッツ公を利するという判断から、事態をわざと甘く見て、英国との戦争にはならないと主張した。英国を圧倒する造船能力を持ちながら、海軍増強には金を使おうとはしなかった。これら政治家も、私利私欲のためには国家全体の危機も省みないという、「ペイラントの自由」の信奉者であった。
    1665年の第二次英蘭戦争の前には、すでにオランダ船200隻が拿捕されていたにも関わらず、オランダ商人は英国に大量の軍艦用資材を売りつけて、倉庫は空だったという。これまた「ペイラントの自由」である。政敵を利すまいと国家の危機にも目をそむける政治家と、儲けのためには、敵国にも資材を売る商人たちと、国中に「ペイ ラントの自由」の信奉者がはびこっては、さしもの経済大国オランダにも勝ち目はなかった。英国は西アフリカや北アメリカのオランダ植民地を次々と奪取していった。ニュー・アムステルダムが、ニューヨークとなったのも、この時である。これを契機にオランダの海上覇権も失われ、世界貿易の中心はアムステルダムからロンドンに移っていく。)
      (HS生、豊橋)
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三島由紀夫研究会「公開講座」のご案内
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 嘗て「朝日ジャーナル」という週刊誌があった。全共闘世代のバイブルなどと言われたが、三島事件で山本議長が「敗北宣言」。爾来、路線に修正が加えられるのも時代の変遷で読者が離れ、廃刊となった。ところで1975年に同誌は「三島由紀夫は蘇るか」を特集したが、そのなかに保田譽重郎への珍しいインタビューもある。この企画から保田へのインタビューをこなしたのが当時編集部にいた井川一久氏である。井川氏はベトナム特派員などを経験し、朝日路線との距離を発見し退社。現在評論家。
             記

とき    3月15日(月曜日)午後7時―8時半
ところ   大正セントラルホテル 3階大会議室
講師    井川一久(元朝日新聞記者、評論家)
演題    「三島由紀夫と保田譽重郎」
おひとり  2000円(会員および学生1000円)
お問い合わせ 三島由紀夫研究会 TEL 03-3200-2295
E-MAIL    miura@nippon-nn.net
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2004 ◎
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