国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/02/09

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004年)2月9日(月曜日)
通巻 第758号
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あのラストボロフ(KGBスパイ)が先月アメリカで死んでいた。名前を変え、結婚し、米国籍をとってCIAに協力していた。ラストボロフは日本でも多くのスパイ小説でモデルとなった。
アメリカでの仮面は「実業家」だった。四〇代の娘がいるという。
http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A20322-2004Feb6?language=printer
(ワシントンポスト、2月7日付けで報道「二つの祖国、二つの人生」)。↑

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<<<今週の寄贈本>>>

?奥克彦「イラク便り」(産経新聞社)
イラクでテロリストに襲われた熱血外交官が外務省ホームページに綴った「復興人道支援221日の全記録」である。小泉総理、川口外相の序文も添えられている。
 口絵に奥大使自らが撮影したイラクの子供たちの学校風景がある。
その写真を私は食い入るように観察した。粗末な教室で、しかしイラクの児童らの燃えるようなまなざしが実に印象的である。嗚呼、奥大使はこの熱情的で燃えているまなざしの子供たちをみて、イラク復興にかけようとしたのだ。


?安倍晋三・岡崎久彦「この国を守る決意」(扶桑社)
日本の政界に、もし安倍晋三なかりせば拉致問題はここまで発展しただろうか? 外交専門家の岡崎元大使と二人で語り合う、これからの日本の筋道だが、イラク、拉致、中国、靖国問題、日米同盟と幅広いテーマで会話も縦横無尽。テンポもはやい。
斯界の興味は若くして自民党幹事長に抜擢された人が何を考えているか、にあるのではないか。しかし安倍さんは靖国、教科書、拉致、集団自衛権など適宜、適正な発言を繰り返してきた人で思想的にはまったくぶれない。したがって違和感もない。
 とくに興味をもって読んだのは「中国とこれからどう付き合うか」という箇所だ。
「日中友好至上主義」に陥った日本の政治とマスコミの在り方を二人が論じているのだが、かの文革中に産経、毎日、西日本の特派員が追放、つづいて読売特派員も追放、日経は鮫島特派員が一年半に亘って拘束されていた。にもかかわらず「朝日新聞」だけが居残り、「林彪,健在」などと、でっち上げのごますり記事を書いた。「これは中国が悪いと言うのではなく、日本の姿勢、そして日本のマスコミが弱かった。一方的に膝を屈したからではないのか。それを反省する必要がある」と安倍さんは発言している。その通りだけど、やはり、これが発言の限界だろう。


?松本徹「六道往還記」(おうふう刊)
 「日本及び日本人」に連載されていた頃、何本か読んだ記憶がある。
 この本の主題は「うつしよ」以外に異次元の世界があるのではないか。「地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天」の六道だ。古今より、日本の信仰はそこに向けられ、各地に物語、伝承を残した。中世から近世の日本文学は六道世界をおびただしく扱かった。芭蕉も各地で発句した。
 松本徹氏は言う。
「現に生きている風土を見回すと、異次元の多様な生とこの世が露わに交差していると考えられる場所が、あちこちにあるのに気がつく」。
そこで六道を自分の足でまわる。その場での霊的な体験が、いきなり古典の世界と一緒になって、幽玄壮麗不可思議未踏の世界へ読者を誘う。訪れた場所は春日山、箱根、出羽三山。比叡山横川、京六道の辻、立山の姥堂、富士山の人穴。筑波山。そして最後が三輪山である。
富士の人穴は多いが、私は一つしか行ったことがない。松本氏は、懐中電灯を携えて真っ暗な洞窟を突き進むと、以外に広い内部に邂逅したり、地元の人が大きな懐中電灯を照らして、忽然と現れたり。瞑府魔道の入り口なのか。氏の描写には、となりに幽鬼がいるかのような凄い迫力がある。文体は中世文学の世界だ。
 出羽三山は、じつは小生も十年ほど前に登った。即身佛も何体か見た。ただ、拝観料をとるのはまだしも即身佛が着ていた衣からつくったお守りを買え、といわれたときは腹ただしくなって、説明の途中ででた。
清浄なる月山では頂上の神社で御神酒をいただき、山小屋で休んだ。神々しい光に満ちていた。松本氏によれば、いまバスは八合目まで行っているという。
 羽黒山の麓の参道には石段があり、ひときわ聳える高い杉の神々しさ。
「その下を通り過ぎた奥に五重塔が建っていた」とさりげなく書かれる。どうしてこんな山奥にこれほど立派な五重塔があるのか、私の時も、同行した秋田大学教授と訝ったのだった。往時、羽黒山は「寂光寺」と言われ、「山中三千五百坊」を誇ったという。
 松本氏の最後の旅は三輪山である。
『奔馬』の飯沼勲は、ここで滝に打たれていた。本多は松枝清顕の言葉を思い出した。
「又会おうぜ、滝の下で」(「春の雪」)。
 三島由紀夫は実際に三日間、三輪山にこもった。そして第二巻の「奔馬」に書いた。
 「本多は戦慄して、笑っている水の中の少年の凛々しい顔を眺めた。水にしかめた眉の下に、頻繁にしばたく目がこちらを見ていた」。
 松本氏はこの場所を探した。
 「このあたりは巨木が背後に退き、空がやや広く見上げられ、神殿の気は薄い。そして、無人のいまは、乾いたサンダルが三十足ほど並び、飛沫がひろがらないように配慮してか、青いプラスチックのバケツで落水をうけている」
 うつしよは、かくも文明の残骸を露わにして、神秘をとおざけてしまった。
 鬼気迫る文章、その異次元への入り口にふらっと引きこもれそうな魅力ある文体である。
 蛇足ながら、小生も事件直後に三輪山に登った。それから三十年が経って、一昨年だが、もう一度行ってみた。参詣者が夥しかった。


?中村彰彦・山内昌之「江戸の構造改革」(集英社)
江戸への再評価は、左翼史観に歴史学界が横領されたこともあり、従来は少数意見だった。いや、小数意見どころか偽物も混入し、法政大学の田中某なる女性教授は「わたしは江戸も西暦で表現してます」と言う。元号を使わないで、どうして江戸の情緒や雰囲気が分かるのか、理解に苦しむ。
くわえて徳川を倒した薩長官軍史観が、明治以降は激しく徳川を貶めたために、日本に三世紀もの平和をもたらした「パックス・トクガワーナ」の真価を問うた作品は稀であった。
戦後の歴史教科書は江戸時代に限らず、記述はデタラメいいところ、だから戦後世代は日本の歴史に興味を失ってきた。
江戸は「夜明け前」ではなかった。人間が生き生きとしていた。だから江戸時代が面白いのだ。
徳川の真価は奈辺にあったのか。二人の対談のテーマである。
「鎖国とは管理された開国だった」。近代の基礎となる文化、とくに教育が深かったからこそ、維新がなり、日露戦争に勝利できた。
それにしても中村彰彦の博覧強記は知っているが、山内昌之教授はソビエトやトルコ史ばかりが専門と考えていたら、これほど日本史に関しても該博な知識をお持ちだったとは!
あまつさえ人名ばかりか、次々と文献がとびだし、或る事件を語れば、それをモデルとした小説は誰々で、題名は何なにだとか、読書の守備範囲も広い。
遣隋使・遣唐使を廃したあとも日本は中国との貿易を続けた。平家が貿易の管理権を握り、足利は朝貢し、引き替えるかのように大量の宋銭がはいった。倭寇が日本の海賊というのは間違いで中国人が殆どだった。明はあきらかに日本侵略の意図をもっていて、それを予防的防御するため朝鮮へでていった秀吉。
国際的視野をもって近世から近代をながめると、司馬遼太郎の小説なんぞ霞んでしまうほど面白い読み物でした。
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(読者の声)満州国皇帝宣統帝溥儀高に関して、岡崎久彦氏の著書「重光・東郷とその時代」に興味深い記述がある。以下に引用します。
「東京裁判のブレイクニー弁護士は『人間に良心がある限り、ウソを吐き、それを追求されるのは苦痛。・・・・・・しかし、良心をうち砕く利己心の持ち主もいることを発見した』と感想を述べている。人間はそこまで落ちぶれるものか、という慨嘆である。キーナン検事自身『帝王の威厳はさらになく、その眼には自尊の光もなかった』とメモし、重光は、その日の日誌に『哀れむべし、彼はソ連の俘虜として死命を制せられ、さらに支那側の処刑より免れんことを工夫して居るもののごとく・・・・・・かつて満州国皇帝として・・・・・・の気品風貌は毫も認めることを得ず』と記している。」
 それに反し満州国初代総理・鄭考ショ、二代目総理・張景恵の偉大さは驚愕すべきものである。シナ人にも立派な人はいるのである。
(ST生、神奈川)


(宮崎よりコメント)海南島の入り口、海口市の郊外に海瑞の巨大な墓地があります。清廉潔白な政治家は流刑されました。中国各地に包公をまつる祠、廟があります。包公は中国の大岡越前守。庶民に人気があります。いわゆる「大人」(ターレン)も歴史的には埋もれていますが、多いのは事実でしょうね。
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<<宮崎正弘のロングセラーズ>> 
「胡錦濤 中国の新覇権戦略」(KKベストセラーズ、1460円+税、以下同様)
「いま中国はこうなっている」(徳間書店、1500円)
 「迷走中国の天国と地獄」(清流出版、1500円)
「拉致」(徳間文庫、590円)
 「ネオコンの標的」(二見書房、1500円)
 「ザ・グレート・ゲーム」(小学館文庫、476円)
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 <<新刊予告>>「中国のいま、三年後、五年後、十年後」(並木書房、予価1600円)。★二月下旬刊行予定。ご期待下さい!
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