国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

全て表示する >

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/01/20

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004年)1月21日(水曜日)
通巻 第745号
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
「地質学の帝王」=新プーチン大統領の本質
   ユコス、ガスプロムなど十社からの税収が国庫の半分ちかくを占める異常さ
 ***************************************

 ロシアは世界第二位の産油国にして、世界第一位の石油輸出国(昨年第四・四半期には瞬間的にサウジアラビアをぬいた)となった。
  ガスも世界埋蔵の三分の一はロシアにある。そのうえ、近年のパイプライン敷設により、全ヨーロッパのガス需要の30%は、じつにロシアがまかなっているのである。

 こうして石油とガス産業は全ロシア経済の20%を占め、産油製品の55%以上は輸出に回されている。

 ユコス、ガスプロムなど大手エネルギー産業の十社からの税収だけで、国庫の半分を占める異常さである。ユコス会長だったホドルコフスキー逮捕で、不法な脱税を摘発し、おおいに税金を絞り上げるとプーチンが言ったら、国民は大歓声を挙げた。 
 
 だから西側の政治学者は言うのだ。
「プーチン大統領は地質学の帝王。政治的決定はイデオロギーではなく、ジオロジー(地質学)で世界戦略も決められる」って。

 「だがナイジェリアもベネズエラも多くの中東産油国と同様に石油を経済繁栄に転嫁できず富の分配が機能していないのはなぜか。ロシアもそうなるのではないのか」(モイゼス・ナイム論文「喪われたリンク ロシア石油の将来」、「フォーリン・ポリシー」誌、04年2月号所載)。

 そう言えば産油国の多くは経済がひ弱で失業者が都会に溢れ、スラムを形成し、石油技術や流通での雇用は高が知れている。ナイジェリアでは部族対立が続き、悲惨な内戦が終息せず、シャバス独裁のベネズエラには大統領辞任を求める民衆のデモを武力で弾圧し、キューバから治安維持部隊を二万人いれてコロンビア国境に展開しているとする情報もある。ベネズエラの石油の富は大統領一派が独占している。

 ロシアでも就労6700万人口のうちに、エンジニアを含む石油・ガス労働者は、200万人でしかない。

 98年のロシア金融危機は石油価格が1バーレル20ドルを割り込んだときに起きた。

ロシアの国内景気を国際的レベルで、石油低価格が直撃するからだ。地質学の帝王、つぎの石油価格暴落のとき、いったいどうするのか?
            ◇  ◇  ◇
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
南太平洋は中国秘密宇宙基地、キリバスからトンガへ
  宇宙訓練基地を設置し、米軍のミサイル試射をスパイする拠点を移動
****************************************

 キリバスと台湾が外交関係を結んだことは何回か紹介した。
 地政学的変動は直後から起きた。

 キリバスには97年以来、中国の宇宙船訓練基地が置かれていた。またミサイル実験を観察する中国軍の諜報基地が密かに建設されていた。そのキリバスが台湾と国交を開き、北京を袖にしたから大変だ。

  中華思想を鼓吹してきた北京としては、異常な慎重姿勢で、しばしキリバスに留まり、外交的にもそれほどの罵詈雑言をアノテ・トン新大統領に対しては吐かず、言ってみれば「沈黙」をつづけた。

理由は明白である。
第一に有人宇宙船「神負5号」を成功させた中国が、もしキリバスを失うと宇宙計画は根底的な挫折を余儀なくされる。
 代替基地をどこかに移動するにせよ時間とカネがかかる。すぐにキリバスを撤収するわけにはいかないのだ。たとえ「二つの中国」という、北京にとってみれば”屈辱的な”政治状況に耐えてでも半年ほどの時間を稼がなければならない。
 第二に米軍の防衛ミサイル試射基地のあるマーシャル諸島をスパイする衛星情報基地を北京はキリバスに保有している(マーシャル諸島とキリバス間は620マイル)。

 さて中国の次の目標が定まった。
 新しく宇宙基地を建設するのはトンガだ。
付近のフィージーやニューカレドニアなどは政権不安定なため長期の契約には不向き。トンガは98年11月に国交を結び、爾後、軍事援助25万ドル、トンガ兵の軍事訓練を人民解放軍が引き受けてきた。02年度の中国からトンガへの輸出は4800万ドル。まして宇宙通信の合弁会社APT(トンガの大統領との合弁)は、香港に設立された中国軍のダミー会社で、トンガに宇宙通信基地を設置するもようである。
     ○
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

(宮崎正弘の近況)


(某月某日)兵頭二十八さんという自称「軍学者」がいる。わたしはこの人の名前をニューヨーク・タイムズ(03年7月22日)で初めて知った。
 日本に論理的な核武装を唱えるコメンテーターが現れて、おりから米国でも日本に核武装させよ、とする議論が沸騰したタイミングだったので、同紙も大きくとりあげたのだろう。
 兵頭氏はそれ以前にも「サピオ」や「諸君」にも核武装について書かれていたという。新著「ニッポン核武装再論」(並木書房)は、要するに中国の核の脅威に対処するには日本も自分で核武装するしかない、と言っている。
これは独立国家の安全保障を考えれば、自明の理で小生らも、早稲田大学に「国防部」というサークルをつくった昭和42年から主張してきた。当時、文壇でこの論理に同調してくれたのは林房雄、石原慎太郎くらいで「一定の理解」が得られたのは三島由紀夫、村松剛らの人々だった。
保守派論客はといえば、当時、高坂正堯、猪木正道らが体制御用達の弁をのべ、日本が核武装しても米国の理解は得られず世界に孤立する、とする主張がエコノミックアニマルにふさわしき路線だった。ところが時代が変わり米国の「核の傘」なるシロモノはぼろぼろとなり、他方で中国は米国東海岸にもとどくICBMを二十基以上配備した。
 日本が中国からの脅迫にしどろもどろになって土下座しているのは、率直に言って、核が無いからである。核武装こそが抑止力なのである、と兵頭さんの論理的軍学の筆は冴える。この本、じつにぶっきらぼうな文章だが、軍学者は軍学者なりに読ませる。


(某月某日)エジプトは古都のアレキサンドリアにいる木本晃氏から手紙が来た。
 木本さんは中川一郎氏ら「青嵐会」華やかなりし頃に、杉並で書道教室をやったり、産地直送運動をやっていた「杉並青嵐会」の仁木清治郎(のちに都議、故人)の事務所で知り合った。三十年以上前である。
自衛隊OBと名乗った。
ところが木本氏は海外赴任が多く、しかも長く、その後はトリニダード・トバコ、インドネシア、リビア(リビアでは官憲に拘束されたり、カダフィ大佐にあったりの経験もある)、それからカタールと渡り歩き、いまはエジプト。某重工の現場監督を務める。合計、海外20年。しかも予備自衛官だから毎年一回、自費で帰国して自衛隊の訓練を受ける。それも今年が最後のおつとめだった(予備自衛官も定年あり)。
 それゆえ、殆ど毎年、帰国した折りにお目に掛かり、色々と海外事情を聞くのが小生にとっても愉しみのひとつで、昨年師走にも或る忘年会で立ち話をした。
 文面に「不思議なことに自衛隊という官僚社会は、苛烈な愛国心や三島由紀夫の作品と好んで読む人間を嫌う無思想な世界で、国体の護持のために命をかけようと覚悟を決めた純粋な愛国者がどんどの辞めて行くのが気になります」とある。
この箇所が本当に気になった。
あれから34年、三島事件を原体験として知らない世代が国民の過半。「日本の精神」も「尚武の心」も、ますます風化していきそうである。
この憂いを共有できる、数少ない心の友。遠くエジプトで奮闘している姿が目に浮かぶ。


(某月某日)朝、九時まで寝てしまった。どうしてこんなことになったのか。しばし、記憶を辿った。前の日、昼間のラジオ番組を終えて、三原淳雄さんからいただいたチケットで日本橋の某デパートへ随唐の文化遺跡展を見た。
 目玉が飛び出るような武人(胡人というのは、この場合ペルシア人だろう)やら、駱駝の上に座敷をしつらえた楽団など、鑑賞すべき土器が多い。しかし唐三彩は、小生に言わしめれば、あれは中華文化ではなく、ペルシアの文化的影響が濃い。テヘランのガラス博物館でまったく同じ土器が「ペルシア五千年」の文化として展示されているのを、目撃して驚いた。その衝撃以来の確信である。疑わしい人は是非、テヘランのガラス博物館へいくべし。
さてデパートをでて、真ん前の丸善で中国関係の資料を買い求める。鞄がずっしりと重い。どうしても職業柄、最新の中国企業一覧とか、人名事典とかが必要だからだ。
それから四谷の居酒屋で評論家の植田剛彦氏と落ち合う。銘酒「土佐鶴」の辛口を少々。
 植田剛彦が今月の「Moku」という雑誌で10ページにわたり長島監督と対談をしている。アテネ・オリンピックへの豊富などを聞いていて、当然、それも話題になったが、店が混んできたので「河岸を替えよう」ということになった。
 思い出した。それから果てしなく飲み始めたのだ。
 まず六本木のジャズ・ピアノバア(植田氏、行きつけの店らしい)。ジャズの合間に当方が軍歌と演歌。場内がシラッーとしらけてきたので、また河岸を替える。今度は防衛庁横の焼き肉レストラン。といっても肉を食べず、ひたすら「焼きニンニク」をつまみにウィスキー。嗚呼、これで酔ってしまったのだ。
 帰宅後、死んだように寝た。おかげで疲れがとれた効用もあったが、起きてからまだしばし頭脳が回転せず、これまた数カ月ぶりにサウナへ行った。街に雪がちらついていた。
 この日、原稿の締切りがなくて良かった。
          ◎ ○ ◎ ○ ◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 三島由紀夫研究会「公開講座」のご案内
 @@@@@@@@@@@@@@@@@@

 三島由紀夫が若き日に憧れたイタリア人作家にダヌンツィオがいます。
「死の行進」など世界的ベストセラーで知られるダヌンツィオは、義勇兵を率い、ムッソリーニに先駆けて北イタリアのフィウメで決起しました。実に三島氏の最後の行動と酷似するのです。そこでつぎの公開講座には「ダヌンツィオの楽園」を上梓された演劇評論家の田之倉 稔氏(前静岡県立大学教授)をお招きし、両者を比較研究された成果について大いに語って貰います。 
               記
とき     1月26日(月曜日) 午後7時から8時半まで。
ところ    高田馬場「大正セントラルホテル」3階会議室
http://www.taisho-central-hotel.com/
〔↑会場までのアクセス〕
演題と講師  田之倉 稔 先生 「三島由紀夫とダヌンツィオ」
会費     おひとり 2000円
お問い合わせ 三島由紀夫研究会
169-0075 東京都新宿区高田馬場2-5-23-1205 TEL/FAX 03-3200-2295
E-MAIL       miura@nippon-nn.net
            ◎    ◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(お知らせ)取材旅行、地方講演などがつづくため本誌は1月26日まで休刊します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
         ♪ ♪ ♪
<<宮崎正弘のロングセラーズ>> 
「拉致」(徳間文庫、590円 プラス税)
 「ネオコンの標的」(二見書房、1500円 プラス税、以下同)
 「ザ・グレート・ゲーム」(小学館文庫、476円)
 「胡錦濤 中国の新覇権戦略」(KKベストセラーズ、1460円)
「いま中国はこうなっている」(徳間書店、1500円)
 「迷走中国の天国と地獄」(清流出版、1500円)
          ◇ ◎ ○ ◇ ◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◎宮崎正弘のホームページ◎
http://www.nippon-nn.net/miyazaki/
小誌の購読登録は下記サイトでできます ↓
http://www.melma.com/mag/06/m00045206/a00000060.html
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2004 ◎
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-08-18  
最終発行日:  
発行周期:ほぼ日刊  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。