国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/01/15

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004年)1月15日(木曜日)
通巻 第740号
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中国の経済政策、時代錯誤の極地は「国有企業に補助金」
   旧満州貧乏物語は依然として続いている
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 過去五年間で中国の「国有企業」からレイオフされた人は2700万人。このうち25%は旧満州の国有企業再編過程でおきた。失業は東北三省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)に集中している。
  現在これら三省だけの人口が一億七百万。ほぼ日本の90%もの人口を抱え、フランスとスペインを足したほどの人口大国である。

 人口的な要素いがいの理由がある。
 重化学、鉄道、石炭、石油、機械産業は毛沢東が、従前の日本の施設を接収し、国有化したから栄えたのだ。

 60年代央まで、旧満州は中国で一番「工業化」した地域として知られ、夥しい漢族が入植してきた。
 同時に漢族へ戸籍をかえた満州族、蒙古族が多かった。

 「改革・開放」は南の広東省から開始され、台湾からの投資はついで福建省を潤したが、旧満州は置いてきぼりだった。海外華僑は上海から山を越えて安徽、河南、湖南、山西の各省へも及んだが、旧満州への投資は控えた。孫文が「あそこは中国ではない」と明言したように華僑の意識のなかでは依然として「満州」は化外の地であったからかも知れない。

 それでも改革開放の一時期は、大連への日本の投資が目立った。
 アカシアの大連という鮮烈な印象、市内の真ん中、希望広場には高層の森ビル(森茂大夏)が建ち、日本企業が周りに蝟集し、新工業地区にもメーカーが進出した。だが長続きはしなかった。

 いま、この大連から瀋陽(奉天)にかけて日本企業はなにほども目立たない。顕著な進出は韓国企業とBMW、フォルクスワーゲン合弁工場などドイツ系である。

 さはさりながら全体として旧満州は開発から完全に取り残された。
 要するに日本が残した満州国の遺産を食いつぶし、景気の良いときは「社会主義の勝利」の宣伝の道具たり得たが、政策的失敗が東北を駄目にした。

 いまや上海メガロポリスだけで中国全体のGDPの25%以上を稼ぎ出し、広州を中心の珠海デルタも同じくらい。両方で全GDPの過半を稼ぐ現実に比べても、「全体の9%の人口がいる東北三省のGDP合計はおそらく中国全体の4%、あるいはそれ以下だろう」(銀行系エコノミスト氏)。


 △大慶油田も枯渇し始めている

 大慶油田は枯渇し始め、撫順の石炭露天掘りも公害問題が騒がれ(実際、撫順市内はスモッグで呼吸困難を覚えるほど郊外に煙っている)、「車城」といわれ自動車や鉄道車両メーカーが蝟集した長春(新京)には世界自動車メーカーが殆ど進出してこなかった(港湾、輸送事情を考えれば当然だが)。
 
 ましてハルピンも吉林も裏寂れ、そこから奥地のチチハルや満州里、ハイラルなどは木材を集積し木製家具などのメッカだが、そうした一昔前の産業構造は、通信、IT、ハイテクなどと明らかに無縁である。各地は失業の増大に悲鳴をあげるに至った。

 温家宝首相は、就任以来三回、これらの地域を訪れている。
  たとえば阜新(瀋陽から西へ250キロ)や北票(そこから南へ50キロ)といった炭鉱町では半分の住民に職がない。遼寧省全体でも失業率は6・8%!
 国有企業城下町へ行くと「毛沢東時代が良かった」と嘆く老人が目立つという(「ロンドン・エコノミスト」、04年1月10日号)。
 
 温首相は阜新を視察し(3月)、つづいて大慶を視察(5月)。嘗て石炭も石油も原木もこれらは旧満州の花形、往時の東北三省だけのGDPで広東の二・五倍あった。
 資源は枯渇する。新しい産業革命には完全に乗り遅れた。国有企業の73%が、しかし依然として東北三省に残存している!

 あまりの貧困と失業に温家宝首相は深い衝撃を受けて帰京したらしく、それから出てきた施策とは、時代に逆行の「国有企業テコ入れ」だった。
 それが時代錯誤と批判される所以である。


 △合計73億ドルも投資して、やるのは国有企業のテコ入れ!

 合計73億ドル(610億人民元)を投じて「重要100プロジェクト」を選定した。
 
 この投資額のうち四分の三の事業は遼寧省に集中している。なかには瀋陽のど真ん中に高層ビルを建てたり、ともかく「ブルドーザ」中心思考がある。機械設備、加工食品、鉄鋼、原料、造船などのセクターが「近代化」のテコ入れを受ける手はず(このテコ入れは内密扱いで「ドキュメント・11号」と北京では隠語で呼ばれる)。。

 「これで発展は保証された」と考えるのは日本のエコノミストくらい。お定まりのコースは補助金を幹部が持ち逃げ、ごまかし、横領。
  だいたい瀋陽は汚職の巣と言われ、2001年には市長が逮捕、この一月にも副知事が逮捕された。金正日から初代新義州経済特区長官に任命された楊武も、インチキ商売の拠点は瀋陽だった。

 まして過去の自転車操業のため、多くの国有企業には贅肉もない。銀行は疲れ切って居る。しかも造船、鉄鋼などの国有企業は官僚制度の染みついた古い体質を持っているため、民営化反対、外国企業の買収どころか一部の資本参加さえにも反対である。
 
 2020年に「中国のGDPは、2000年度の四倍規模になる」と公言したのは一昨年の共産党大会でしたね。

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(サイト情報)バーグステイン主宰の国際経済研究所(IIE)の上級研究員Marcus Noland 著の「金正日以後の朝鮮」と題する研究報告が発表された。北朝鮮に経済制裁を加えると金正日体制が崩壊する可能性が強いと分析していて、世界的反響をよんでいるが、研究報告は100ページもあり、しかも印刷もコピィもできないような工夫がされております。閲覧しか方法がありませんが。。。
"Korea after Kim Jong-il," by Marcus Noland, Institute for Intenational Economics, January 2004, (Policy Analyses in International Economics 71)
http://www.iie.com/publications/bookstore/publication.cfm?Pub_ID=369#pdf
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(宮崎のコメント)フレッドバーグステインなる人物は相当な経済学者ではありますが、いつもセンセイショナルな発言を、絶妙のタイミングを見計らって行い物議を呼ぶことが大好き人間。著者のノーランドは東大と埼玉大学でも教えていた知日派で、大来佐武郎賞を貰った学者。要するにハト派。この点を割り引いて読んだ方が良いと思います。
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(読者からの指摘)1月11日付第737号の新興財閥経営者逮捕の記事の改訂版に「大牛集団」、「孫大牛」とありますが、これは正しくは「大午集団」、「孫大午」です。『大牛』というのは「午」が出世して頭が出たので「牛」になったということで付けられたあだ名のようです。(YK生、東京、商社員)


(読者の声1)世田谷住人様へ。あなたの「新撰組」論を読んで、私も同感です。その一方で、何をいまさら!という気持ちでもあります。十数年前にも、学徒出陣者のほとんどが戦争に行きたくなかったのだ、という趣旨の捏造番組を放映したことがあります。
戦争に行きたくなかった、という資料だけをかき集めれば、そういう番組を作ることはできるのです。本よりもNHKの放映のほうが影響力があるだけに、NHKはNHKを日本の基準と考えてきた視聴者を、じょじょに無国籍化していきます。
 もっとも内容的にはNHKは何の基準でも無くなったのです。それなのに、なぜ視聴料を払わなければならないのでしょうか? 民放で当たり番組が出現するとすぐマネをするNHK、考証をしないNHK、いうべきことを正しく放送しないNHK。レベルの低いドラマしか放映しないNHK。いまや民放を圧迫するNHKでしかない。NHKで見れる番組は数えるほど惨憺たるものです。私はNHKのドラマは絶対に見ない。レベルの低さといい加減さは目に余るものがあります。新撰組だけがダメなのではありません。
(KM生、板橋)
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(サイトから)ネオコンの代表選手チャールズ・クラウサマー(一部にクラウトハマーの表記有り)に「アービン・クルストル賞」が贈られる。歴代受賞にはキッシンジャー、レーガン、カークパトリック、グイーンスパンらが居る。
http://www.aei.org/news/newsID.19265/news_detail.asp
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(お知らせ)明日1月16日(金曜日)午後1時から3時まで「ラジオ日本」に宮崎正弘が生出演します。番組は「ミッキー安川のずばり勝負」です。関西方面のリスナーの方は午後二時まで。


(三島由紀夫研究会からのお知らせ)三島由紀夫研究会が下記に移転しました。
169-0075 東京都新宿区高田馬場2-5-23-1205 TEL/FAX 03-3200-2295
E-MAIL       miura@nippon-nn.net
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<<宮崎正弘のロングセラーズ>> 
 「ネオコンの標的」(二見書房、1500円 プラス税)
 「拉致」(徳間文庫、590円 プラス税、以下同)
 「ザ・グレート・ゲーム」(小学館文庫、476円)
 「胡錦濤 中国の新覇権戦略」(KKベストセラーズ、1460円)
「いま中国はこうなっている」(徳間書店、1500円)
 「本当は中国で何がおきているのか」(徳間書店、1600円)
 「迷走中国の天国と地獄」(清流出版、1500円)
 「風紀紊乱たる中国」(清流出版、1500円)
◎上記などの拙著は下記のサイトから宅配便での注文が出来ます。“
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_result_book.cgi/3f31f0f307f4a0103739?aid=&srch=4&st=&auid=110000964320000
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