国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2004/01/06

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
    平成16年(2004年)1月6日(火曜日)
通巻 第734号
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  排日・反日は中国共産党の失政をごまかす露骨な手段だが、
   戦前の陸軍省調査部は中国を如何に正確に分析していたか
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 日中関係は「歴史の鏡」を基礎にすべきだとか、「新思考外交でのぞめ」とか、これらはすべて中国側から一方的に飛び出してきた政治用語である。つねに中国が日本より一歩高いという潜在的な中華意識から発せられている。

 ところが日本側の反応は意識において位負けしているせいだろうが、中国とは正面からの歴史論争を避けがちで、「中国人の犯罪」「治安悪化」「やはり遅れた国」「モラルがないシナ」などと表面的な反論に流れやすい。小泉首相の突然の靖国神社参拝にしても、つねに抜き打ち的で、なんとなく「正々堂々」としていない。

 中国に進出した日本企業が一番悩むのはトラブル発生時に、前後の脈絡と関係なく無く、中国側が交渉が不利になると、いきなり「歴史認識」を持ち出してくることだ。しかも日本側が適切な反論が出来ないため立ち往生するケースが目立つ。これは主として日本人の歴史学習不足に起因する。


 ▲陸軍省調査部の報告書は現代にも通用する

 満州事変直後の1933年、陸軍省調査班が「中国国民党の輪郭」という調査報告書を出している。(外務省の無能連中はこれを読みなおした方がいい)。

 これは国民党の「北伐」なるものは蒋介石の軍事成果と喧伝されたが、実態は馬賊や豪族、軍閥と妥協し、買収し、懐柔して「征伐」などと宣伝された戦術効果でしかなく、逆にそれによって国民党は志気を喪い急速に堕落していった。その過程が陸軍によって正確に分析されているのである。

 曰く。
「中国の排外・排日は、軍閥政客が愛国運動に名を借りて自己の政治的立場を有利に運ぼうとしたり、あるいは人民におもねってその地位を高めようとしたり、もしくは国民の関心を外国に向けて国民党の失政を隠蔽しようとする策略にほかならない」

 つまり「排日は日本側に問題があるのではなくて、中国の特殊な内政的事情に原因がある」と当時の日本は中国における反日を正確に分析し、総括している。
 この基本構造は現在もいささかも変わっていない。ただし「国民党」の箇所を「共産党」に置き換えて読めば、今日の中国における排日・反日の原因はますますよく理解できる。
  
 三年ほど前だったが、或るシンポジウムで莫邦富氏と隣り合った。
 莫氏は「戦後、私が日本と最初に接触した頃、(文明的に経済的に)日本を見上げる目線だった。その後、中国は経済的に発展し、いまや日本をみる中国人の目線は”対等”になった」と発言したので、わたしは「そうではなく、見下げる目線ではないのか」と苦言を呈しておいた。

 中国側の対日批判の根底にある「上位意識」は、病的な中華思想から噴出するもので、いまも昔も中国が世界の中心であり、日本は東の夷(えびす)というのが数千年の間に徹底的に中国人の潜在意識に染みこんでいる。
 したがって反省しなければならないのは日本だけ、意見を述べることが出来るのは中国人だけ、という閉鎖的な言語空間が生まれる。夷どもから偉大な中華が批判される筈があろうか、と中華意識まるだしの皇帝の言辞と変わらない、傲慢な言葉が次々と飛び出してくることになる。
 

 ▲「見下げる目線」で日本を評価し始めた中国

  現代中国は信じられないほど一方的な視点から日本をさかさに見ている。
 知日派とされた楊振亜・元駐日大使も「中国青年報」(共青団機関誌)とのインタビューに応じて、「中日両国は『歴史を鑑として未来に向かう』という精神に基づき、原則を堅持し、中日友好という大局の維持に努力し、各分野の交流に歴史問題の影響が出ないようにしなければならない。不健全な民族主義を防がなければならない」と発言をしている。

 楊振亜・元大使はさらに続けた。
 「03年は対日関係に関する大量の言論がインターネット上に現れた。斉斉哈爾(チチハル)で発生した旧日本軍の遺棄した毒ガスによる死傷事件では被害者への賠償を日本に要求する大規模な署名運動がネット上で展開され、北京―上海間の高速鉄道への日本の新幹線の採用に反対する署名運動もネット上で行われた」

 これらは「ネット利用者が自分たちの考え方を正常な形で発表する一方、民族主義的な情緒を帯びた言論、極めて無責任な言葉も現れ、扇動的であり、中日関係にとってマイナスの影響を生み出した」とした。
 インターネット上での反日論調を「無責任」「煽動的」「マイナス」と言ってのけたのは、共産党の上層部が最近の反日現象を「まずい」事態と考え始めた証拠である。
 
 そうだ。中国指導部にとっても行きすぎた、情緒的な「反日」はまずい事態なのだ。

 さらに「相互の理解と信頼を妨げる障害にいかに対応するか」として楊大使は「多くの分野で障害の要因があろうとも、両国関係にまつわる主要問題は台湾問題と歴史問題だとし、?日本”帝国主義”が中国を侵略したのは半世紀以上前の過去だが歴史問題は今日まで絶えず現れ続けており、?日本は戦後、ドイツのように軍国主義の罪行を徹底的に清算することなく、後遺症を残したが、米国の対日政策の誤りが原因である。?冷戦終結後、歴史を理解していない戦後育ちの日本の若い世代が登場し、解決はますます難しくなった」とまとめている(「人民網日本語版」03年12月30日)。 

 国際派のインテリからは若干の反省の言も見られる。
 見直しの契機となったのは馬立誠・人民日報評論員と時殷弘・中国人民大学教授で、それぞれが発表した論文を要約すると「歴史問題で日本に過酷な要求をすべきではなく、また米国を牽制するためにも日中の提携が必要」というのだ。

 なんのことはない。米国のネオコン連中が「日本に核武装させよ」とした歪(いびつ)な提案の底流には「そうやって中国を牽制する材料にせよ」と日本をカード化したゲーム論であったように、中国側も「日本カード」を温存し対米国外交の武器とせよ、と提案しているに等しい。

 しかし日本で評判となった馬、時両氏の「新思考」は、中国内で”異端”扱いされ、すさまじい批判と反発を呼んだ。

 毎日新聞03年6月1日付けは次のようにまとめた。
 「中国では新政権発足と前後して、対日関係改善を訴える論文が相次いで発表された。中国人民大学の時殷弘教授は(03年)4月の論文「中日接近と外交革命」で、国益に根ざした戦略的な日中関係構築を提唱。人民日報の馬立誠・論説委員も昨年(02年)末、民族主義的な「反日」を批判した論文を発表して論議を呼んだ。両氏とも日本専門家でないことや、「日中の過去」より「世界の変化」を重視するスタンスが似通う。(原文改行)二つの論文は、発表時期や経緯などから外交当局の意向を反映したものとみられている。米同時多発テロ、イラク戦争後の国際情勢の急速な変化を受け、中国でも外交政策の全体的な見直しが進んでいるからだ」。

 胡錦濤・国家主席が中南海に颯爽と登場して以来、日中関係における微かな変化はと言えば、江沢民前総書記時代のあからさまな反日姿勢が薄まり、それよりも「実務」「現実の国益」が前面にでてきたことである。

 インターネット上での反日論調は、反主流派の意見と見なすことも可能だが、つまりは胡錦濤執行部に「異論」を抱える守旧派が或る勢力を”しそう”して、バーチャルな組織で中国外交をどちらかに曲げようとしているからであろう。


 ▲ネット上の「反日」は「反政府」の記号ではないのか?

 なぜならインターネット上であらゆる言論は国家公安部(中国版KGB)が二十四時間モニターしており、ここに「言論の自由」があるはずはなく、ましてや、言論が監視されているからこそ、「反日」をなにかの「記号」に使っているのである。

 筆者は繰り返し述べてきたように中国のいまの若い世代は反日の原体験がなく、実際、日本人への直截な憎しみもなく、言葉だけの反日を言い募る理由は、教育の影響もあるだろうが、所詮はバーチャルな観念の産物なのだ。
 つまり中国における「反日」は「反政府」の記号として利用されている側面が大きいということである。
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<<宮崎正弘のロングセラーズ>> 
 「ネオコンの標的」(二見書房、1500円 プラス税)
 「拉致」(徳間文庫、590円 プラス税、以下同)
 「ザ・グレート・ゲーム」(小学館文庫、476円)
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「いま中国はこうなっている」(徳間書店、1500円)
 「本当は中国で何がおきているのか」(徳間書店、1600円)
 「迷走中国の天国と地獄」(清流出版、1500円)
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http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_result_book.cgi/3f31f0f307f4a0103739?aid=&srch=4&st=&auid=110000964320000
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(読者の声1)小泉首相の靖国参拝で、またもや中国、韓国、北朝鮮が激烈な批判をし、中止と謝罪を求めている。凡そ靖国神社は戦争の死者の霊を祭るところである。そして小泉首相の参拝もA級戦犯を祭るために参拝している訳ではない。あくまでも国家の犠牲になった兵士の霊を慰めるために参拝しているのである。
明治以来の慣習により確かに靖国にはA級戦犯の遺骨が安置されている。がすでに彼等は戦争責任の罪に問われ、絞首刑に処されているのである。A級戦犯に罪があったとしても、その罪は国際法廷の場で贖っているのである。また戦争被害による損失は、日本は戦後一貫して賠償や経済援助などで贖っているのである。
日本政府や外務省は戦後一貫してこれらの諸国に謝罪し続けてきた。それにもかかわらず中国、韓国、北朝鮮が何かとあれば靖国問題を持ち出し、日本に永遠の贖罪を求め続けることは、いわば国家間の平等で対等な関係を拒否し続けることを意味し、こういった度を越えた自国の優位性の主張や、不平等関係の継続維持を繰り返し強制することは国際的常識からみても極めて不当である。我々はあくまでもこの論理に立ち、論理を尽くして対処すべきである。  
(MI生)


(読者の声2)最近の金の値動きがおかしい。昨年8月くらいまではドルが円に対して安くなっているのにほぼ比例して値上がりしていた。つまり金の値上がりというよりは、ドル安であった。しかし以降は、円での金価格も値上がりしている。
もっとすごいのは白金とパラジウムの値上がりである。通常、金の一割り増し、時には金より安くなることもある白金が金の二倍もする。通常金の半額から六ないし七割くらいのパラジウムがなんと金の五割増しである。金の値上がりが遅いのを先食いしているようにも見える。今まで排ガス規制のゆるかった東欧諸国が本格的に排ガス規制に動き、そのための触媒需要が伸びているということだけでは説明がつきがたい。
この状況に関して以前から気にかかっていることがある。最近二百年くらいの間で、金の価格が世界的大暴騰した局面は、常に長期の景気低迷から景気回復に向かう時であった。逆に下がる場合は、ゴールドラッシュの時の供給急上昇の場合のように例外がある。しかし、大暴騰では例外はない。長期の不況で経済社会全体の信用創造能力が減退しているところで景気回復にむけて信用(通貨供給)の増大が強く求められる。そんなとき、金価格が上昇すれば、同じ量の金保有でより多くの信用(通貨供給)が得られる。そこで、金価格上昇圧力がかかるのである。
不況中期のデフレによる金価格低下圧力とは逆になる。1980年には金1トロイ・オンス800ドルまでいった。米国のインフレを考えれば、現在の2000ドルくらいであろう。最近の415ドルという価格ではまだ大暴騰とは言いがたい。しかし、じわじわと長い帰還にわたって継続的に上昇していることから、単に投機筋の短期的投機が原因とは考えがたい。500ドルを超えるようなことになれば、その可能性もあるのではないのであろうか。ただし、素人に金の先物取引は禁物である。あえてやるなら、景気連動性の強い大型日本株への投資であろう。
        (ST生、神奈川)


(読者の声3)早速、更新されたホームページを拝読しましたが、ノモンハンの美しい光景、ほんとに「空と地面しかない」のですね。こんな台地で日本軍はロシアの大群を相手にたたかって、しかも相手に甚大な損害を与えたのですね。半藤さんや司馬遼太郎の評価が間違いというのも現場で目撃されたわけですから、説得力があります。実際に、あんな奥地まで行かれた宮崎先生のノモンハン紀行を読んで眼から鱗がおちた感じでした。ありがとう御座います。
         (YS生、石川県)
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(サイト情報)中央大学の学芸連盟、通信メディア研究会で学内行う予定だった李登輝先生の講演会ですが、突然、会場使用許可を取り消され、しかも「中央大学の所属部会の名前は使うな」と一方的に大学当局に通達された中で、なんとしてもこの講演を多くの人たちに届けようと会場を変更し開催しました。当初は2200人ホールでの開催予定が急なこともあり、かなりの規模縮小を余儀なくされてしまい、皆様にご迷惑をおかけいたしました。下記が李登輝先生講演会実行委員会のホームページです。 
 http://www.digilink.co.jp/lee/ 
 李登輝先生インターネット実行委員会
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<<宮崎正弘のロングセラーズ>> 
 「ネオコンの標的」(二見書房、1500円 プラス税)
 「拉致」(徳間文庫、590円 プラス税、以下同)
 「ザ・グレート・ゲーム」(小学館文庫、476円)
 「胡錦濤 中国の新覇権戦略」(KKベストセラーズ、1460円)
「いま中国はこうなっている」(徳間書店、1500円)
 「本当は中国で何がおきているのか」(徳間書店、1600円)
 「迷走中国の天国と地獄」(清流出版、1500円)
 「風紀紊乱たる中国」(清流出版、1500円)
◎上記などの拙著は下記のサイトから宅配便での注文が出来ます。“
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