小説

猿まじの自作小説

僕が書いた自作小説を送りするメルマガです、ジャンルはファンタジー系から戦争系です。

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第325回配信!!

2008/02/27

1、sarumajiからの言葉
 2、今回の一言
 3、連載
      ◎『カルディア戦記』
   ◎『死神の仔』
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☆sarumajiからの言葉

週末、湯河原に梅の花を見に行きました。
まだまだ冬を感じさせる山梨とは異なり、湯河原では春を感じました。
春一番も吹き、暦は確実に春に向かってるんですねぇ。

☆今回の一言

「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」『孟子』

事業を成功させるには三つの条件がそろう必要がある。
一、天の時
二、地の利
三、人の和
『孟子』は人の和こそがもっとも大切だとする。

☆連載

『カルディア戦記』

2 出港
大陸暦七八九年六月二十二日
崖の上に築かれたレシュティアーク城。
川面に面した崖は断崖絶壁で、とても人が攀じ登れる物ではない。
降りる事も不可能だ。
兵を登らせて攻撃を仕掛けることなどもっての他と言うしかなく、故に、アルザス皇国軍も崖からではなく、プラクシテア河を渡河し、背後に回り込んで陣を構えている。
川の流れは穏やかだったが、崖の際は複雑な河床の影響で複雑な水流が形成され、あちこちに渦を巻く荒々しさだった。
昼間の暑さも夜ともなれば河風の冷気に冷やされる。
対岸からは見通す事のできない岩陰に、ひっそりと横穴が開いていた。
おそらく、知る者はレシュティアークの城内にさえほとんどいないであろう、秘密の洞窟である。
その洞窟の奥にまで水が入り込み、穏やかな舟隠しとなっていた。
見る者が見れば、この洞窟が天然のモノではない事が分かっただろう。
壁面には鑿の後も生々しく、明らかに人の手が加えられた形跡が見受けられる。
秘密のベールに包まれて横たわる、一艘の小型木造船。
それは非常時に城主が用いる事を想定して隠されている舟だった。
長い間、闇に包まれていた舟隠しに、揺れる灯りが、幾つかの足音と共に降りてきた。
「こんな所に舟が隠されてるなんてな」
感心とも呆れとも尽かぬ声を吐き出したのはリオだった。
「城主が逃げ出すための舟か。用意周到だな」
微かに嘲笑するような雰囲気を滲ませつつ、ケインが一瞥を投げたのはランディア伯爵だった。
伯爵は穏やかな風貌に、老練な微笑を浮かべ、
「その通り。ただし、使うのは今回が初めてだ。それも、逃げ出すためではない。幸いな事にね」
「これを使えば、気付かれずに港に潜入できる訳ね」
舌なめずりさえしそうなほど瞳を輝かせて、レオナが船縁を叩く。
べきっ………。
「え」
響いた不吉な音に、思わずレオナが硬直する。
彼女が叩いた船縁が、抉り落ちたのだ。
「ひ、姫様!?壊しちゃ駄目っすよ!」
ラファエルが目を剥く。
「べ、別に壊そうと思って壊した訳じゃないわよ!」
「姫様が手甲で殴るからじゃないっすか!その馬鹿力で!」
「うっ、そんな事言ったって、まさかこんなに脆いなんて………」
さすがに自分に非があるためか、ラファエルの非難に対して反論するレオナの声音は弱かった。
「どうやら、長年放置されている間に朽ちてしまったようですね………」
木材を調べながら、ユバが首を横に振る。
建造されてから長年、この舟隠しに停泊していたのだろうが、木材は大分腐ってしまっているようだ。
「そんな………」
ランタンを持ったティナが絶句する。
「おいおい、大丈夫なのか?」
眉を上げつつ、リオが肩を竦める。
「伯爵、他に舟はないのですか?」
アランフェスがランディア伯爵を振り返って尋ねると、彼も予想外の事態にやや深刻そうな面持ちになっていたが、やがて首を横に振った。
「いや、残念ながらこの一艘だけです」
「となると………」
アランフェスは一同を眺め渡し、
「どうする?」
「これで行くしかないでしょ」
今度は壊さないよう慎重に船縁に手を突き、レオナは事も無げに言う。
「これでって………正気っすか、姫様!?」
「当たり前よ。だって、他に舟ないんでしょう?」
「それはそうっすけど………」
ラファエルは両手をわきわきさせて、
「そんな腐った舟に乗ったら、港に着く前に沈んじゃうんじゃないっすか!?」
「う〜ん………なんとかなるんじゃない?」
「こ、根拠ないっすね………ユバさぁん」
「私は姫様に賛成です」
「え!?」
予想外にユバが賛意を示した事で、驚いたのはユバだけではなかった。
「おいおい、自棄にでもなってんのか?」
「なってませんよ」
リオの言葉に苦笑し、
「一つの賭けです」
「それを自棄って言うんだろうがな」
リオは苦笑を浮かべ、
「港まで保てば勝ち。沈めば負けって訳か?」
「はい」
「気に入ったわ、それ」
「勝算はあるんすか?」
「大丈夫よ。片道だけ保てば良いんだし」
「はは、面白いな、あんたら」
ケインは笑みを零し、
「なぁ、そう思わないか?皇子?」
アランフェスに話を振る。
彼も少し目を細めて微笑を浮かべ、
「本当に。まるで全ての事は容易だと思えるな」
「と言う訳で、俺達も賛成だ」
「うー」
「何、あんたはここに残る?」
「意地悪っすねぇ、姫様は。俺も行くっすよ」
「全員一致ね」
レオナは満足そうに笑みを浮かべ、
「それじゃ伯爵。行って来るわ」
「御武運を、確信しております」
「任せといて」
伯爵と握手を交わし、
「さぁて。まず、全員乗れるのかしらね」
首を傾げつつ、舟を見やる。
「乗った瞬間にいきなり底が抜けたりするんじゃないすか?」
「後ろ向きに考えてると本当に悪い方向に傾きかねないから、ポジティブに考えなさいよ」
「申し訳ないっす」
「と言う訳で、ラファエル、乗りなさい」
「………は?」
「は、じゃないわよ。言葉わからない訳?」
「いや、言葉はわかるっすけど、なんで俺なんすか!?その何処がポジティブ!?」
「ラファエルなら落ちても大丈夫じゃない」
「酷っ。信じられないっす」
「良いから、早く乗りなさいよ」
拳をにぎにぎさせて、笑みを浮かべる。
「ぼ、暴君っす………」
目の端に涙を浮かべつつ、ラファエルは恐々と舟に乗り込む。
「うわ、揺れ………」
小さな舟は新たな負荷に悲鳴を上げるように軋みを上げる。
しかし、危惧したような崩壊はなかった。
「大丈夫そうね」
「なら、次は俺が行く」
そう言って前に出たのはリオだった。
「閣下………」
「ん?」
ティナに声をかけられて、肩越しに振り返る。
そして、眉を顰める。
「なんて情けない顔してやがるんだ、おまえは」
「も、申し訳ありません」
「俺の代わりに『白鎧剣士団』を指揮するんだぞ?そんなんでどうする」
「は、はい!……あ、あの、御武運をお祈りしてます」
「ああ。おまえもな」
ティナの頭をぽんっ、と叩いて颯爽と舟に乗り込む。
「お。結構揺れるな」
「もっと慎重に乗ってくださいっすよ〜」
中腰の体勢でバランスを取るラファエルは少し涙目だったが、リオは仁王立ちでバランスを取りつつ、
「なんとか大丈夫そうだぞ」
「じゃあ、次は………」
レオナの視線がケインとアランフェスの二人に向けられる。
「お先にどうぞ」
肩を竦めつつ、アランフェスがケインに微笑を向ける。
「お言葉に甘えさせて貰うよ」
そう言ってケインが、続いてすぐにアランフェスが乗り込む。
舟はみしみしと嫌な軋み音を立てつつも、まだ沈む兆候はなかった。
「じゃあ、次は私ね!」
明るく言って、レオナが無造作に乗り込む。
めきょっ………。
その瞬間、今までになく不吉な音が響いた。
「うあ。今、なんか嫌な音がしたっすよ!?」
「おまえ、太ったか?」
「な。何を言うのよ!」
二人の指摘に、顔を赤くしつつ、
「なんで私の時だけ。なんか恨みでもある訳?」
憾み節を聞かせても、声が返って来る訳もなく。
また不吉な音がした訳には浸水もなく、沈みそうな気配もなかった。
「それでは私も」
そう言いながら、慎重にユバも乗り込む。
固唾を飲んで皆が身構える中、何の変化も起こらなかった。
「大丈夫………そうすかね?」
「勝算が出てきたんじゃないか?」
「よぅし、これなら大丈夫でしょ!」
「俺達は運命共同体と言う訳だ」
「その通り」
ケインの言葉に、アランフェスも大きく頷く。
ラファエルとリオが櫂を握り、ユバが舫綱を解く。
「いってらっしゃいませ」
ランディア伯爵とティナが見送る中、ラファエルが岩を櫂で押し、舟を放す。
木造の小型船はぎしぎしと嫌な音を立てつつ、ゆっくりと舟隠しから洞窟の外へと進み出る。
「わ、岩にぶつけないでよ?」
舳先に立ったレオナが櫂を握る二人に注文を出す。
洞窟の外は長い間舟隠しを隠してきた岩場や岩礁が沢山あり、流れも複雑で所処渦を巻いている所もあった。
「じゃあ、指示をくれ」
「えっと、右!と、思ったら左!で、次は………右!と、思いきや、やっぱり右!」
「って、ちゃんとやれよ!」
「やってるけど!流れが複雑で、暗いし!……わ、右!じゃなかった、左!」
「どっちすか!?」
二転三転する船頭の指示に、漕ぎ手が悲鳴を上げる。
ごりっ。
「わ、下、擦ったっす!」
ぼこぼこぼこ………!!
「おい、水が入って来たぞ!」
岩礁に腹を擦ってしまった事で、船底が破れ、水が噴き出してきた。
瞬く間に水嵩が増して行く。
「このままじゃ沈むな」
ケインは舌打ちをし、水を掻きだしに掛かる。
「頑張って!水を掻き出して!」
レオナの指示を待つまでもなく、ユバとアランフェスも慌てて水を掻き出しはじめる。
「これ、港まで辿り着けるんすか!?」
「泣き言は聞きたくないわよ。ほら、さっさと漕ぐ!とりあえず、この岩場を抜ければ私も水の掻き出しに加われるし!ここ右!次は左、もっと!」
最初は指示を出すのに慣れていなかったレオナだったが、生来の適応能力の高さを発揮して、だんだんと的確な指示を出すようになる。
その指示に従って、リオとラファエルは懸命に櫂を操り、古ぼけ、浸水さえしている舟を岩場から抜け出させる。
ほとんど船縁を擦るようにして最後の岩の横を擦り抜け、広い川面に出る。
「ふぅ」
難所を抜けた事で安堵し、さながら一仕事終えたとばかりに額の汗を拭う。
「何やり遂げたみたいな顔してやがる!こっちを手伝えよ!」
櫂を一先ず置き、水の掻き出しに取り掛かりながらリオが怒鳴る。
「あ、あぁ、御免」
慌てて、レオナは手甲を外し、それを使って水を掻き出す作業に加わる。
「これ、港まで辿り着けるんすかね」
懸命に水を掻き出しながら、ラファエルが泣き言を口にすると、
「もし舟が沈んだら、泳いででもいくわよ」
一向に諦念を見せないレオナはせっせと水を掻き出しながら、当然の事のように言う。
武装している状態で川に入っても身体は浮かない。
ここから、港まで泳ぐのは無理ではないだろうか。
誰もがそうは思ったが、口にする者はいなかった。
「そうですね」
代わりに、ユバは頷いていた。
「でも、できれば舟で行きたいですね」

次週、「3 上陸」


『死神の仔』

第二章 挑戦
1 問い
弟子達を外に出したベルセルクは《ドラグヴァンディル》の柄に手を掛けたまま、一歩、二歩と前に進んで行く。
<止まれ>
五歩ほども進んだ所で、脳裏にドラゴンの声が轟く。
怒りではなく、疲労の感情が濃い。
闇の中に、真紅の瞳がその輝きを露にする。
<我が眠りを妨げるな>
「聞きたい事がある」
ベルセルクとて人の身。
遥かに強大な力を持つドラゴンを前にして、その身の奥底から恐怖心が込み上げてくる。
己の折れそうな心を叱咤し、さらに一歩前へと進む。
「っ………」
僅かに、守護者が身動ぎした。
それだけで、空間の空気が渦を巻き、圧倒的な気配が押し寄せてくる。
ベルセルクをして、その身を竦ませるほどの圧倒的な気配。
生唾を呑み下し、震えそうになる両足を床に押し付ける。
<聞きたい事?>
ドラゴンが僅かに瞳を細め、探るようにベルセルクを見やる。
好奇心が、睡眠の誘惑に勝ろうとしているのだ。
「そうだ」
震えそうになる喉を必死に制御し、平静さを装う。
だが、悠久の時を生きてきたドラゴンからすれば微細な人間の感情の機微など興味の対象ではないだろう。
<何を問う。我が眠りを妨げるに価する問いか>
問いながら、ドラゴンの瞳が輝きを増す。
果たしてこのように好奇心を刺激されるのはいつ振りか。
この暗闇で時を過ごすようになってから、過去一度もなかったことだ。
「ここに、白い男が来なかったか?」
<白い男?>
「ああ」
守護者は記憶を遡るかのように瞳を細めた。
しかし、さして遡る必要はなかった。
この目の前の人間の生涯に比べて、彼の人生は長い。
「ここ数日内の事だと思うんだが」
ベルセルクの言う時間など、守護者にとっては一瞬にも満たぬほどの時間に過ぎない。
<この部屋の鍵を開けた男の事か>
「だろうな。その男は《神龍の鉾−シェンロン・マオ》を奪わなかったのか」
<その者ならば鍵を開け、すぐに去った。故に我は再び眠ったのだ>
「その男………ロキは本当に《神龍の鉾−シェンロン・マオ》を狙わなかったのか?」
<くどい>
「どう言う事だ………?」
ベルセルクは自問するように空を睨み、
「やはり、試すつもりか………」
すぐにその結論に達していた。
ベルセルクを守護者と戦わせること、それこそがロキの狙いだと考えれば納得も行く。
(何故、そのような迂遠な真似を………)
<問いは終わりか>
僅かな失望を滲ませつつ、守護者が問う。
ベルセルクは思考を中断させて、守護者の真紅の瞳を見返した。
問うべきか否か、一瞬迷う。
この問いは守護者の逆鱗に触れる可能性を孕んでいる。
しかし、聞かねばこの場を去る訳にはいかない問いでもあった。
ごくりと唾を飲み込んで、ベルセルクは胸を張った。
「なら問おう。守護者よ。あの男から《神龍の鉾−シェンロン・マオ》を守りぬく自信はあるのか?」
<不遜な>
守護者は鼻で笑い、
<例え何人であろうとも………奪われるような事はあり得ない>
「そうか」
短く首肯し、踵を返す。
「邪魔をしたな」
<待て>
背を向けたベルセルクを、守護者が引き留める。
足を止め、改めて向き直る。
「なんだ?自信でも揺らいだか」
<否。我も問いたい>
「………何を?」
<人間、貴様は《神龍の鉾−シェンロン・マオ》を望んでおるのではないのか?>
「確かに、そのためにここに来た」
<ならば何故去る。怖気づいたか>
「違うな。俺の目的は《神龍−シェンロン》の復活を阻止する事にある。ロキを止めてな。ロキといえども、守護者を倒して《神龍の鉾−シェンロン・マオ》を手に入れられないのであれば、目的は達せられたも同然」
<その者は、何故《神龍−シェンロン》を望む?>
「さあな。世界を自分の物にしたいんだろう」
<愚かな。神龍の力、人の身で操れると思うてか>
「本人に言え」
<今ひとつ>
「なんだ?」
<貴様はその者に勝てるのか?>
「………」
守護者の問いに対し、ベルセルクの眉間に深い皺が刻まれる。
<気配を感じる。《神龍の印璽−シェンロン・インツァン》と《神龍の宝珠−シェンロン・パオズウ》だな………その者か?>
「………そうだ」
重苦しい物を感じながら頷く。
<既に二つ。そして、《神龍の鉾−シェンロン・マオ》を狙ってきたか>
守護者は僅かに目を細め、
<案ずるな。我が居る限り、奪われる事はない>
ベルセルクは深く深呼吸したのち、背中の《ドラグヴァンディル》を抜き、床に突き立てた。
<何の真似だ?>
「この剣、どう思う」
<眠っておるな。それも深く。覚醒の兆しも見えぬ>
「やはりか………」
精霊具である《ドラグヴァンディル》が眠りに就いている以上、覚醒している《レーヴァテイン》を操るロキに対して勝ち目はない。
しかし、ベルセルクには《ドラグヴァンディル》を覚醒させる手段など皆目見当も付かなかった。
「どうすれば………この精霊具を覚醒させられる?」
<その者と戦うためにか>
「あいつも、精霊具を持っている。覚醒した状態でな」
<ほう………>
守護者が僅かに感心の篭った吐息を漏らす。
「教えてくれ。あんたならわかるんじゃないのか?」
<分からぬな>
ベルセルクの期待を、守護者はあっさりと打ち砕いて見せた。
<興味もない>
「………そうか」
落胆し、肩を落とすベルセルクを真紅の瞳で見下ろし、
<ただし………>
「ん?」
<それを知るかも知れぬ方ならば知っておる。未だ存命ならば、だが>
一瞬期待を抱いたが、守護者がこの遺跡で眠っていた時を考えると望み薄に思えた。
「その方とは人間なのか?」
<ドラゴンじゃ。古代竜、と我々は呼んでいた>
古代竜………。
ベルセルクなどの感覚からすれば、守護者自身も十分古代竜と呼ばれるに相応しいように思えたが、その守護者が古代竜と呼ぶ存在なのであれば一体どれほどの時を生きた存在なのであろうか。
「その古代竜ならば精霊具を覚醒させる手段を知っているのか?」
<博識な方じゃからな>
「その古代竜は何処に居るんだ?」
<ドラゴンズ・ガーデン>
「ドラゴンズ・ガーデン………」
確かに、ドラゴンズ・ガーデンには今でもドラゴンが生息し、竜を信奉する巫女の一族によって護られていると聞く。
ドラゴンズ・ガーデンならば守護者の言う古代竜とやらが今でもまだ生存しているかも知れない。
「分かった。尋ねてみよう」
<そうするが良い>
踵を返すベルセルクを、守護者は見送り、やがて瞳を閉じて眠りに戻るのだった。

闇を越えて扉の外へ出ると、
「あ、師匠!何してたの、遅いじゃない!」
待ちくたびれたという表情で、ユリアが唇を尖らせる。
「待たせて悪かったな」
「一体何をしてたんだ?」
リュカも怪訝そうに尋ねてくる。
「少し話をしていたんだ」
「話って………」
「あのドラゴンとか!?」
ユリアとリュカが顔を見合わせ、驚きに目を見開く。
「ああ」
何でもないと言う表情で頷く。
「そうでしたか。さすがは師匠です」
ホッと安堵したように胸を撫で下ろし、レトが笑みを見せる。
「なんだ?ドラゴンに喧嘩でも売ると思っていたのか?」
「師匠ならば或いは、と」
「俺もそこまで向こう見ずではないさ」
苦笑を浮かべ、
「あの守護者と我々を戦わせようってのがロキの狙いだろうからな。思う壺に嵌る必要はないだろう?」
「その通りです」
レトは微笑を浮かべ、
「守護者が護っている限り、《神龍の鉾−シェンロン・マオ》はまず安全だと考えて差し支えないかと思います」
「そうだな。幾ら《白い月》だって、あのドラゴンを倒せはしないだろ」
「そうと決まれば、こんな遺跡さっさと出ましょうよ!御腹も減ったし」
レト、リュカ、ユリアの意見にベルセルクは頷き、
「そうだな。《神龍の鉾−シェンロン・マオ》はここに置いておくのがもっとも安全だろう」
ベルセルクも頷き、扉を振り返った。
「閉めて行きたい所だが、閉め方もわからないしな」
「放っておきましょう。開いていたとしても、問題はないでしょうから」
「そうだな」
レトの言葉に納得したように頷き、
「ならば、遺跡を出るとするか」
「道がわからないのがネックですけどね」
淡い苦笑を浮かべるレトに肩を竦めてみせ、
「歩いていれば、いずれ出口が見つかるだろう。この扉が見つかったようにな」
「そうですね」
レトが頷く。
ユリアやリュカ、清華、ウォーブルなども安堵の表情を浮かべている。
番人が徘徊し、守護者が鎮座する遺跡から早々に逃げ出したいと言う思いを全員が抱いていた。
「必要なら、考古学教会に申請してこの遺跡を埋め戻す必要もあるかもしれませんね」
「そうだな、そうすればあの守護者の眠りが妨げられる事もないだろうし」
「《神龍の鉾−シェンロン・マオ》も安全!」
「それに、このままではあの番人が外にまで出てしまうかもしれません」
清華の指摘に、皆は顔を見合わせる。
「なるほど。その可能性もある訳か」
険しい表情になったベルセルクは歩き出しながら腕を組む。
弟子達も少し険しい表情でそれに続きながら、
「あんな連中が外に溢れ出したら、大変な騒ぎになるぞ?」
「被害も出るでしょうね」
「止めなければならないね」
「って事は………」
「急ぐしかないって訳だ!」
「ちょっと!私が言おうとしてた台詞先に言わないでよ!」
「知るか。おまえがとろいからだろ」
「言ったな〜!?」
「ああ、言ったが、何か文句でもあるのか?」
「こらこら二人とも。守護者と戦わなくてよくなったからって急に元気にならないの」
「ちょっ、別にそんなんじゃないわよ!」
「そうだぞ、レト!それは俺達に対する侮辱だ!」
「おや、そうかい。それは御免ね」
「おまえら、少しは静かに歩け。番人どもが寄って来たらどうする」
騒がしい三人を、ベルセルクが注意する。
そんないつもの光景を、清華は僅かに頬を緩ませながら眺めていた。
もしあの守護者と戦うような事になっていれば、今頃この様に平和な会話をしていることなどできなかっただろう。
ロキの思惑通りにならなくて本当に良かった。
清華は心の底から、そう思っていた。
あの守護者に、ロキと言えども手は出せないだろう………。

次週、「2 ロキ 対 守護者」

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