小説

猿まじの自作小説

僕が書いた自作小説を送りするメルマガです、ジャンルはファンタジー系から戦争系です。

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第318回配信!!

2008/01/09

1、sarumajiからの言葉
 2、今回の一言
 3、連載
      ◎『カルディア戦記』
   ◎『死神の仔』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
☆sarumajiからの言葉

大学も残す所一ヶ月あまりとなりました。
うーん、長いようであっという間の四年間でしたね。
多くの事を学んだ、そして学び足りない四年間だったと思います。
社会人になっても、メルマガは頑張って続けたいと思いますので一つ宜しく
お願いいたします。

☆今回の一言

コレド(Korred) 
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【分類】

 妖精伝説(Fairy legend)

【解説】

 コレドはフランス西部ブルターニュ地方の、ケルト人が遺したメンヒルやドルメンといった巨石遺跡の地下に住んでいるという。
 全身毛むくじゃらで、しわだらけの黒ずんだ顔をしている。
 コリガンとはいくつかの類似点があり、両方とも巨石遺跡の下に住み、月の輝く下で歌い踊り、未来を予知する能力をもっている。
 コレドは鍛治に長け、貨幣まで自分でつくっており、財布の中は金貨で一杯だが、人間がその中を見ても髪の毛やハサミしかみつからない。
 コリガンより小さく、コリガンよりも踊りが好きで、夜になるとドルメンの周りで大勢で踊っていることがある。その踊りを見た人間はむりやりコレドの踊りに参加させられ、一晩中踊らされた挙句に疲れ果てて死ぬこともあるという。だが、そのパーティで彼らに喜ばれる芸を披露できれば素晴らしい報酬をもらうことができる。


☆連載

『カルディア戦記』

3 皇子と共に
レオナがユバやラファエルと共にクデナを出立していた頃―――。
カルディア王国南部、プラクシテア河に面した要衝レシュティアーク城は夕暮れを迎えようとしていた。
城郭部、港湾部、市街地の三つに分かれているレシュティアークは中央の港湾部をアルザス皇国軍に奪われ、城郭部と市街地は分断され、連絡も取れぬまま、それぞれが孤立状態で抗戦を続けている状況だった。
戦線は膠着し、長期化の様相を呈していた。
昼間、前線で指揮を執っていたリオが、埃に塗れた軍装のまま、城の通路を歩んでいる。
「着替えてから行くべきだったんじゃないですか?」
上官の姿を一瞥し、そう尋ねたのは副官のティナだった。
「別に良いだろ。それにすぐに来てくれって事だったんだしな」
リオはさしたる注意も払わずにぞんざいな口調で答える。
彼等の行く先に、大きな扉が現れ、その扉を守っていた兵士達がリオの姿を見つけて扉を開ける。
「ご苦労」
兵達を労い、リオは歩く早さを緩める事もなく部屋の中に入った。
「遅くなって申し訳ない」
「いや、構わんよ」
挨拶を交わし、席に就く。
室内には大きな円卓が鎮座し、リオとティナの他に二人の人物が座っていた。
一人はこのレシュティアーク城の城主にして、カルディア王国南方の守護を司るランディア伯爵。
もう一人はまさに今交戦しているアルザス皇国の皇族にして、先の戦いで捕虜となったアランフェス=アルザス第二皇子だった。
皇子はアルザス皇国皇族の特徴である白亜の瞳で、リオを見やり、微かに笑みを浮かべる。
「苦戦しているようだな、ヴィネス卿」
「あぁ、お蔭様で」
リオは皮肉気な笑みを浮かべて答え、視線を伯爵に向ける。
「それで、今日は?雑談のために呼び出した訳ではないんだろう?」
「ああ」
ランディア伯爵は頷き、
「殿下の要望について、カルシファにお伺いを立てていたんだが、先ほど返答が届けられた」
「ほう」
興味深げに、リオが目を細める。
アランフェスは既に知らされているのか、それとも推測しているのか、いずれにせよ、自分の希望が叶えられると達観しているようだ。
「が、その前に。カルシファからの報せなのだが」
「ん、何かあったのか?」
妙なところで言葉を切る伯爵に、リオは眉をぴくりと動かす。
伯爵の眉間に、僅かながらに憂いの気配が浮かぶ。
「双子の女神都市同盟の海軍が、カルシファを襲撃した」
「………何だと?」
一瞬反応が遅れた後、リオは険しい顔つきで聞き返した。
ティナはハッと息を呑み、アランフェスも驚きを隠し得ないようだ。
三人の反応を予期はしていただろうが、伯爵は嘆息を漏らし、眉間の皺を消そうとするかのように指を当てた。
「北斗七星の一人、《紫紺の破軍》クルナ=クルエンティスの率いる艦隊が王国海軍を破って上陸したとのことだ。幸い、上陸した敵部隊に関してはシリウス=フォーディア元帥やリフ=マーウェン少将の活躍によって撃退され、被害は最小限に抑えられたようだが、未だに敵艦隊は沖合いに遊弋し、海上封鎖を続けている」
「……てめぇっ、これを知ってたのか!」
リオの怒りは真っ直ぐアランフェスに向けられた。
椅子を蹴って立ち上がり、身を乗り出す。
しかし、アランフェスは真摯な表情で首を横に振り、
「いや、知らなかったよ」
「皇族なのにか!同盟の艦隊はアルザス皇国を援助するためにカルシファに攻撃を仕掛けてきたんじゃないのか!」
吼えるリオは、さながら手負いの獣の如き迫力に満ちていた。
カルディア王国を代表する猛将として名高い彼の眼光を、アランフェスは真っ向から受け止めた。
「同盟の意図はわからないし、皇族と言えども全てを承知している訳ではない。いや、むしろ―――」
「むしろ?」
「……いや、何でもない。とにかく、同盟の動きについて私は何も知らされていない。ブライ=クロコディール卿ならば知っていたかもしれないが」
アランフェスの顔にも声にも苦渋が満ち、嘘を吐いているようには見えなかった。
リオにもそれは分かった。
「三皇将の一人でしたな」
「ああ。そして、同盟と皇国の橋渡し役でもある」
「なるほど………」
アランフェスの言葉の端々に滲む苦味を聞き取って、僅かに目を細めつつ、伯爵は重々しく頷く。
「くそっ」
やり場のない怒りを吐き捨て、テーブルをどんっと叩いて着席するリオ。
「閣下………」
ティナが気遣わしげに声をかけるが、リオは半面を覆って、
「これ以後、別の艦隊が来ないとも限らないだろう。『紅の狼』と『蒼穹の支配者』だけで守り切れるのか?」
口調にも態度にも、焦燥感が漲っている。
「確かに懸念はある。が、レシュティアークから兵を動かすのは現段階では不可能。持ち堪えてくれる事を祈る他はない」
「チッ」
「一先ず、その問題は脇に置いておこう。解決策を見出すのは容易ではないだろうからな。それに、シリウス=フォーディア元帥がいらっしゃれば容易に陥落する事はあるまい」
「………分かった」
まだ納得はしていないようだったが、リオは渋々と頷いた。
「もう一つ。クデナでの反乱はほぼ鎮圧されたらしい」
「朗報だな。そっちにも同盟の関与が?」
顔を拭いつつ、リオは僅かに口元を緩めた。
「証拠はないが」
「まず間違い無し、か」
まだ弱体である連合に対して、同盟は大分干渉してくるつもりのようだ。
帝国との間の勢力は均衡状態になったまま、どちらに傾くかは定かではない。
しかし、西部辺境を飲み込む事ができれば決定的優位な立場に立つ事ができる。
逆に、連合が帝国や同盟に対抗できる第三勢力となれば、三竦みの状態で身動きが取り辛くなる。
評議会としても、手を拱いている訳にはいかないのだろう。
「って事は、レオナ達が戻ってくる訳か」
「その通り。国王陛下も交え、アランフェス殿下との会談を開く事になっている」
「望みどおりにって訳だ」
「ありがたい話だよ」
微笑を漏らすアランフェス。リオは舌打ちを打ちたそうな顔をしたが、思い留まって、
「だが、会談を何処で開く?」
「カルシファだ」
リオの問いに、ランディア伯爵は即答し、
「分かると思うが、アランフェス殿下をカルシファに護送しなければならない」
「ふむ」
リオは眉をぴくりと動かし、
「それで俺を呼んだって事は………」
「その通りだ。君に、殿下の護送を頼みたい」
「そんな、閣下がここを離れては―――」
抗議しようとするティナを片手で制し、
「それは、伯爵の判断か?」
「いや」
ランディア伯爵は首を左右に振って、
「勅命だ」
「勅っ………」
ティナの頬が強張る。
国王陛下も前線での状況を把握はしているだろう。
リオを前線から外せば、大きな穴を作り出す事になる。
ティナやカレンがいれば、運用面では大した混乱は起きないだろうが、戦闘に対する士気の面で低下は免れないだろう。
「勅命か」
リオは鼻から息を吹きながら背凭れに身を預ける。
「おそらく、会談の結果はカルディア王国やアルザス皇国の将来のみならず、連合全体、そして大陸全域にまで影響を及ぼす可能性がある。国王陛下はルフェニア王国国王陛下にも会談への招聘状を出されたそうだ」
「シルクに?………大事だな」
口元に笑みを浮かべつつ、テーブルに肘を突く。
「君も参加したいだろう?」
微笑を浮かべつつの伯爵の言葉に、リオは笑みを濃くし、
「そうだな。ここに居ても暴れられそうにないしな」
「引き受けてくれるかね」
「否とは言わせないつもりだろう?」
「無論だ。勅命なのだからな」
「なら、仕方ない。ティナ、指揮は任せたぞ」
「で、ですが………」
「勅命なんだから従わない訳にいかないだろう?それに、おまえならできる」
「それは………ずるいです」
「はは、悪い」
「話が纏まったようだな。宜しく頼むよ、リオ=ヴィネス中将」
美しい笑みを浮かべつつ、アランフェスが握手を求める。
「俺の案内は荒いかもしれないぞ?」
リオは獰猛な笑みを浮かべつつ、アランフェスの、女性のようにたおやかな手を握った。
「それで、どうやってレシュティアークを脱出するのかな?」
アランフェスが楽しそうに尋ねる。
この状況を楽しんでさえいるようだ。
その胆力はさすがに、自ら降伏と言う形で敵地に飛び込んできただけの事はある。
「そうだな………」
リオは僅かに考え込む。が、城から港湾部に抜ける通路は前線となっているのだからそこから出るのは論外だ。
「それならば問題はない。隠し通路がある」
「それは敵に勘付かれてないだろうな?」
「だろうな。もし発見されていたならば、今頃城の中に敵の兵士が溢れているはずだ」
「だったら、それを使って脱出するか」
「夜が更けてから動く事をオススメするよ。隠し通路の出口に馬を用意しておこう」
「ありがたい。殿下は馬に乗れるんだろうな?」
「勿論」
「城を脱出する事ができれば何とかなるだろ。見つからなければな」
「そう言う事だ。ではそれまでの間、食事でもしながら待つとしようか」
そう言って手を叩く伯爵。
彼の合図によって、部屋に料理の数々が運び込まれてくる。
グラスにワインが注がれ、伯爵はそれを掲げて、
「殿下を無事にカルシファにお連れしてくれよ、中将」
「請け負った以上はちゃんとやるさ」
「ああ、お願いするよ」
「それでは―――」
伯爵は微笑を漏らし、
「西部辺境の未来に、栄えあれ」
それに応じて、アランフェスもグラスを掲げ、
「アルザス皇国に革新を」
リオは獰猛な笑みを浮かべつつ、グラスを掲げる。
「カルディア王国に勝利を!」
ティアも控え目にグラスを掲げ、しかし何も言わない。
「なんだよ、おまえも何か言えよ」
「え?し、しかし」
「構わないよ。何でも良い」
伯爵にまで促されて、ティナはごくりと唾を飲み込み、グラスを掲げ直す。
「で、では。『白鎧剣士団』に誉れあれ」
「はは、ほんとはその指揮官に、ではないのかな?」
「なっ、べ、別にそんな………」
「初々しいな」
破顔して、ワインを一口に呑み干す。
分厚いステーキにフォークを突き刺しつつ、
「篭城中の割には豪華な食事だな」
「備蓄は十分にあるのでね。それに、隠し通路を通じての搬送もいざとなれば可能だ」
「そりゃ、戦も長引くな」
「こちらから攻めるのは難しいが、敵の攻撃に耐える事に関しては絶対の自信がある。伊達に南部の守備を任されている訳ではないよ」
「ランディア伯爵には我々も随分と苦労させられている」
自信を垣間見せる伯爵に、敵側の人間として何度も干戈を交えたアランフェスが頷く。
「だから、君は安心してカルシファに戻ってくれて構わんよ」
「そうか」
「いや、君が心配している事は負ける事ではないな」
探るような目でリオを見やり、
「安心したまえ。『白鎧剣士団』を使い捨てにするつもりは毛頭ない」
「そんな事別に心配してなんざない。むしろどんどん使ってくれ。ただ、それでくたばるような柔な連中じゃないけどな」
「なるほど。心配を跳ね返すほどの信頼か」
「羨ましいな」
「それほどでも」
リオは苦笑し、傍らのティナの髪をぐしゃぐしゃと掻き交ぜる。
「ちょ、いきなりなんなんですか!?」
「ん。別に」
そんな二人の様子を、伯爵は目を細め、微笑を浮かべて、見つめていた。

次週、「4 レシュティアーク脱出」


『死神の仔』

2 場違いなる二人
遺跡の中は灯明も何もないにも拘らず、朧気ながら空間全体を照らし出していた。
壁面、天井、床板全てが仄かに光を放っている。
だが、それでも薄暗い事には変わりなく、人間精神の根源にある恐怖心を呼び覚ます。
それもまた古代人が遺跡を守るために施した技術の一端なのであろうか。
永の年月を地中に埋もれながら、現代に蘇ったこの遺跡には各所に古代人の息吹を感じる事ができる。
この遺跡の中には千年前と同じような空気が流れているのかもしれない。
そう思えば、ロマンスを駆られ、感慨に耽る者もあろう。
が、この二人はそのような事を考えるようなタイプの者達ではなかった。
「兄貴ぃ」
「なんだ!情けない声を出すな!」
弟分を叱り、振り返るドゥマ。
サリエルは目をしょぼしょぼさせながら、
「ここは何処っすか?」
「アウァラナ遺跡だろうが!」
「いや、それは分かってるっす」
「じゃあ、何がわからないと言うんだ?」
「あの、軍人さん方は何処へ行ったっすか?」
「何?」
「何って…兄貴、あの軍人さん達の後に付いて行けばお宝に辿り着けるって言ってたじゃないっすか!」
「言ったか?」
「言った………と、思うっす」
「自信はないんだな?」
「そう言われるとなくなってきたっす」
「じゃあ、おまえの勘違いだろう」
「そうっすか?」
「そうだ」
ドゥマははっきりと頷く。
それを見て、サリエルも納得したらしい。
「わかったっす。勘違いだったっす」
「気にするな、サリエル。誰にもミスはあるものだ」
「さすがは兄貴!心が広いっす!」
「ふはは!大洋のような男と呼べ!」
偉そうに胸を反らし、大声をあげる。
「でも、さっきの化け物はなんだったっすかね。慌てて逃げ出したから良く分からなかったっすけど」
「きっとあれだろう、俺達の同業者だ」
「同業者っすか!?」
「そうだ」
「そんな…!いつから、化け物稼業に―――」
「違う!」
「え、違うっすか!?」
「同じ化け物稼業と言う事じゃない。同じ傭兵だと言う事だ」
「傭兵っすか?」
「ああ。多分な」
「で、でも、明らかに人間とは違うっぽい姿をしてたっす!」
「着ぐるみだろう」
「着ぐるみっすか!?予想外っす!」
「古代の遺跡にはきっと古代の化け物がいるはずだと言う子供達の夢を壊さないために、傭兵達も必死なんだろう」
「い、良い人達っすね!」
「ああ。実に見習うべき所のある連中だ。だが、俺達は前へと進まなければならない!」
力強く握り拳を作り、ドゥマは明後日の方角を睨み付ける。
「おお!なんか格好いいっす!」
「当たり前だ!この遺跡に眠るお宝こそ、俺達のこれからの人生を左右する事になるんだからな!」
「うっす!頑張るっす!」
「よし!その意気だ!」
二人は士気も高らかに、遺跡の奥へ奥へと歩みを進めて行く。
それから、どれぐらいの時間が経っただろうか。
二人が押し黙ると遺跡も沈黙する。
何も音のしない空間に、自分達の足音だけが響くと言うのも気まずさを助長させるものだと言う事をまざまざと考えさせられた頃―――
「それで、兄貴」
口を開いたのはサリエルだった。
「なんだ?」
ドゥマはやや不機嫌そうに聞き返す。
だが、それは本当に不機嫌なのではなく、会話が生まれた事に対する安堵感を押し隠そうとするものだった。
「お宝は何処なんすか?」
「それを今探しているんだろうが!」
「でも、さっきから同じ場所を何度も通ってるっす!」
「そ、そんな訳ないだろう!」
「今度は勘違いじゃないっす!ここの角、通るたびに傷を付けていたっす!」
そう言って、サリエルが指差した壁には刃物で付けた傷が四本あった。
そこへ、五本目の傷を付ける。
「ここを通るのはこれで五度目っす!」
「…………」
サリエルの指摘に思わず沈黙するドゥマ。
二人の間に、何とも言えず気まずい空気が流れる。
「こ、これはだな………」
何とかうまい言い訳を考えようとするドゥマだったが、
「迷ったっすね?」
「う………」
真正面から見据えられてはっきりと告げられて、言い返す事ができなかった。
「迷ったっすね?」
「………だからどーした!」
開き直り、声をあげる。
「別にどーもしないっすけど………食糧もないのに迷ったら、下手したら餓死っすよ!」
「その前にお宝を見つけて脱出すれば問題ないだろう!」
「でも、現実として迷ってるっすよね?」
「馬鹿野郎!」
ドゥマの鉄拳が唸る。
「ぐあ!?な、なんで殴るっすか!?」
「どうしておまえはいつもいつも悲観的にしか物を考えられないんだ!俺は悲しいぞ!」
「あ、兄貴………?」
「俺達はどうして村を出たんだ!?言ってみろ!」
「え…借金を返せなかったから―――」
「違う!俺達は夢を追うために村を出たんだろうが!」
「それは―――」
「それはなんだ!」
「それは、現実を見てないだけっす!」
「現実?現実だと?」
「そうっす。目の前の現実を受け入れて、その上でそれを克服するっすよ!」
「間抜け野郎!」
鉄拳が風を切り、
「うあ!?」
サリエルが壁に叩きつけられる。
その襟首を掴んで引き起こし、
「受け入れるだと?この現実をか!?借金で田畑を奪われ、村を出るしかなかった事をか!山賊としてもうだつが上がらず、暴力娘に挑むたびに叩き潰されてきた事をか!傭兵に転向しても全然仕事を依頼されることもなく食い詰めた事をか!それとも、この遺跡の奥底で、宝を手に入れる宛てもなく、それどころか道すらも分からずに迷っている事をか!」
襟首を掴み、がくがくと揺する。
サリエルは泡を吹きながら、
「そ、それ、全部っすよ」
「ふざけるな!」
手を放し、壁に叩き付ける。
「俺は認めない!俺は受け入れないぞ、そんな現実!俺は明るい未来を見て、生きて行くんだ!」
「それは現実逃避っすよ!」
苦しい喉を抑えながら、サリエルが身を起こす。
「それでも構わん!」
ドゥマは堂々と言い放ち、何者にも恥じぬ風情で仁王立ちになる。
だが、それに対してサリエルは反論しなかった。
それどころか、その視線はドゥマを捉えてすらいなかった。
「どうした、サリエル!何も言えないのか!」
「あ、兄貴………」
サリエルの声が震えている。
「?どうした?」
ドゥマはサリエルの様子がおかしい事に気付いた。
その視線はドゥマの肩越しに、その背後を見ているようだった。
その瞳には恐怖の色が浮かんでいる。
「あ、兄貴、う、後ろ………!」
「後ろ………?」
怪訝そうに、背後を振り返る。
するとそこには、先ほど軍人達を襲っていた化け物と同じ化け物が一匹、彼等の様子を窺うかのように立ち尽くしていた。
「………」
「………」
化け物とドゥマの視線が空で絡まり―――
化け物が咆哮をあげた。
涎が飛び、それがドゥマの頬にも付着する。
「おう。仕事熱心だな、あんたも」
同業者だろう相手に対し、親しげに声を掛ける。
が、化け物は彼の言葉に反応する事もなく、鋭い爪の生えた腕を振り上げる。
その瞬間、くるり、とドゥマは踵を返して走り出していた。
「あ、兄貴〜〜!!」
その後をサリエルも追う。
そして、そんな二人の後を咆哮をあげながら物凄い速度で化け物が追いかけてくる。
「兄貴ぃぃっ!!あれ、同業者なんじゃないすか!?」
「仕事に忠実なんだろぉぉ!!!」
追い縋った化け物が振り下ろした爪先が、サリエルの尻を掠る。
「ぎゃああ!!」
「どうした!?」
「やられたっす!!」
「何っ!?」
「ズボンが!ズボンが裂けたっす!」
「まだ生きてる!問題なしだ!」
「速く!もっと速く走らないと殺られるっす!」
サリエルがドゥマを追い抜き、前に出ようとする。
「待てっ!」
「ぐえっ!」
そんなサリエルの襟首を掴む。
襟が後ろに引っ張られ、サリエルの首が締まる。
それで減速したサリエルを、ドゥマが追い抜く。
そして、化け物が振り下ろした爪が、サリエルの尻を少し削り取る。
「うぎゃあああっ!削れた!削れたっす!」
「頑張れ!捕まれば殺されるぞ!」
とにかく必死に逃げる二人。
化け物はなかなか仕留められない事に苛立ったのか、ますます猛りながら猛然と両腕を振るう。
その攻撃を掻い潜りながら、二人は見た事のない広場に飛び出した。
「広っ!」
「とにかく逃げるっす!」
広場を横切りながら、とにかく化け物から逃げる。
と、その時―――。
「操嵐!」
そんな声が何処からかした。
そして、風が動くのを頬に感じた次の瞬間、ざしゅっ、と言う音が背後から聞こえ、それまで圧倒的なプレッシャーを撒き散らしながら追いかけてきていた化け物の気配が消えた。
「はうあ!?」
ドゥマが転倒し、
「おわぁっ!?っす!」
その体に躓いてサリエルも倒れる。
「あたた………だ、誰だか知らないが、助かったぜ!」
「そ。それは良かったわ」
「本当に助かったっす!」
「良かったな」
二人は、自分達を助けてくれた相手を見やって、あんぐりと口を開けた。
それは、見覚えありまくりの二人だったからだ。
「暴―――」
「暴力娘と言ったら、そいつと同じ運命を辿って貰うわよ?」
「う………」
粉々に引き裂かれた化け物の末路を思って、口を噤む。
この女ならば、有言実行しかねない事は二人も良く知っていたからだ。
「で?」
腕を組んで、ユリアが問う。
「べ、別に尾けてたわけじゃないぞ!俺達はこの遺跡のお宝を―――」
「そんな事聞いてないわよ」
「へ?………じゃあ、なんだ?」
「ここ何処?師匠知らない?てか、遺跡の奥に案内しなさい」
傲然と、全く恥じる様子もなく、ユリアは自分達もまた道を見失っている事を宣告したのだった。

次週、「3 矢印」


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