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山の話・軟弱登山のすすめ

登山やアウトドア、渓流釣り専門の古本屋「軟弱古書店」店長の山日記。山の行けない休日や雨の日は水割りでも舐めながら山の古書にひたりませんか?新着古書情報もぜひご覧ください。

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軟弱登山番外編Vol.8 〜仙人池の鉄人?〜

2001/12/06

         軟弱登山番外編Vol.8 〜仙人池の鉄人?〜

  剣岳を目指したときのこと、剣山荘に着いて、小屋の主人らしき白髪の男性に「す
いません、泊まりです」と声をかけた。その男性はまわりにいた若者との話をやめ、
大きな声で小屋の奥に「お客さんだよ!」とスタッフを呼んでくれた。どこから見ても小屋の主人のように見えるのだがどうやらこの小屋とは関係ないようだ。でも小屋になじんでしまっていて古くからの住人のように感じてしまうのだ。ジャージにTシャツ姿で登山客と話しかけてリラックスしている姿はどう見ても主人の知人か、古くからのお客、といった風情だ。私にも「さあ荷物をおいてゆっくりしな、晩飯前に風呂があるよ」と話してくれた。夜、同部屋となったが、荷物は少なそうで、ぶかぶかのザックに観たところ雨具、水、ビスケットの他はちょっとした小物が入っているぐらいか。かなり山慣れた感じだ。
  
 翌日は剣を往復し、剣沢を下って仙人新道から仙人池ヒュッテに向かう予定、長丁
場だ。朝食を終えて出発の時、このオヤジが「今日はどこまでだい?」と声をかけてきた。「剣を往復して仙人池まで」と答えると「それじゃおれといっしょだ、もっと
もおれは元気もないし剣に登らずに先に仙人池に行くがね」「着いたらあんたが来ること言っといてやるよ」 剣を往復し剣沢を下り、仙人新道の取り付き(二股)に着いたのは午後二時半ごろ。いい加減今日は歩いたのでしばし休憩。目の前に巨大な近
藤岩が剣沢の流れに逆らうかのごとく立ちはだかり、三の窓の雪渓から流れ落ちる水は九月にもかかわらず峻烈きわまり、疲れた体にその水はとても美味かった。しばらくこの黒部の奥深い景色、空気、音などを楽しみ、仙人新道の急登を進みはじめたが雨が降りはじめ道は滑りやすくなった。がむしゃらに登ったが途中で息切れがし、仙
人池ヒュッテの自家発電の音が聞こえるころにはフラフラの状態。久しぶりにバテ
た。小屋に着くなりここの名物おかみに「まあまあ大変だったね、お茶をお飲み」。
そのあと、入り口に荷物を放りだしたままとるものもとりあえず風呂に入れという。
普通の小屋ならまずは手続きを済ませ、寝場所を確保して、という段取りなのだが。あのオヤジはあいかわらずこの小屋でも雰囲気の一部に溶け込んでいる。食事時、「今日はきつかったろう、この仙人新道はコースタイム以上にきついんだ。」なる
ほど。「春に来ると剣沢はおしりですべれるから、早いんだ」などとおかみと笑っている。多分このオヤジは若いころはこの黒部の奥深くを4〜50キロのキスリングを担いで走り回っていたにちがいない、そのスジのOBだと。
 その夜また同じ部屋になった。疲れからぐっすり眠りこけたが深夜に物音で目が覚めた。オヤジが窓際に立っている。目覚めた私に「ごらんよ、小窓の上に月が出てるよ」と話してくれた。時計は午前2時、月明かりにシルエットとなって剣岳がそびえていた。
 
翌日この仙人池の鉄人オヤジと名物おかみに見送られ出発。仙人湯、阿曽原温泉と秘
湯めぐりをして帰途についたのだった。

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軟弱登山のすすめ   http://www5b.biglobe.ne.jp/~hh69/
軟弱登山わいわい広場 http://hh693711.hoops.ne.jp/
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創刊日:2001-05-31  
最終発行日:  
発行周期:隔週  
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