ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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《94》 天に向ってツバを吐く

2006/10/03

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

《94》 天に向ってツバを吐く

経済制裁など、もはや有効な対抗手段ではない。

マルチナショナルなモノづくりが促進され、相互依存型の経済が浸透した結果だ。
はるかな昔、わたしが高校生だった頃を思い起こすと、その違いに驚く。1957年
1月のこと、日本の南極観測隊が組織され、南極のオングル島に初の観測基地・昭和
基地を設営したが、観測隊のほとんどの備品が国産品で占められた。 それ以外の方法が
難しかった事情もある。初代の南極観測船「宗谷」は、戦時中に使い古した砕氷船を
探し出し、突貫工事で大改造したものだった。長い苛酷な航海と南極の厚い氷海に耐える
ためだ。基地の断熱を厚く施した組み立て式建物は、プレハブ住宅のパイオニアだった
M社、雪上車は、雪国・新潟で生産実績をもったO社、発電機は電機メーカーのM社が
担当するなど、どれもこれも、国内の会社が培った特技が支えた。越冬用の多量の食料は
もちろん、主役を務めた各種の観測機器も同様だった。ソリを引くために特訓された
「カラフト犬」は、もとはカラフト産と思えるが、北海道の篤志家が育てていた成犬を
もらい受けた。有名になったタローとジローは、そのなかの親から生まれ、幼犬ながら
南極まで同行した。翌年の交代作業では、厚い氷海と悪天候がつづき、第二次隊を残す
どころか、第一次隊を収容するのがやっと、不幸にも、親たちともども置き去りになった
タローとジローが、1年後につぎの観測隊が再び訪れると、元気で生き残っていた。
親犬たちは、人影を探して基地を後にしたのではないか、といわれた。

国産尽くしのなかで、わずかな例外があった。
人員や資材の輸送に使う輸送用の飛行機と、そのエンジンを暖める特殊な暖気装置だ。
基地の設営には、できるだけ陸側に砕氷船を寄せ、できるだけ大陸の奥深く行くことが
要求されたため、単発の輸送機を砕氷船に積んで持ち込み、空輸手段をフルに利用した。
しかし、昭和基地は、大陸外側の小島・オングル島にしか設営できなかった。50年前の
日本の装備の能力では、それが限界だったといえる。昭和基地の最初の設営のときの悪戦
苦闘振りを知るものが、今では少なくなった。

文部省が旗を振る国家プロジェクトではあったが、とにかく、日本はまだ貧しく、外貨を
使うことが容易でなかったという国情を反映している。いっぽうで、一通りのものが、
国内で揃ったという驚きもある。当時は、原材料以外の輸入は悪という雰囲気があり、
輸入コストも高くついた。その結果、すべてのモノづくりの場面で、自給自足を促す
国産化が奨励され、必然的に技術が巾広く磨かれた。

時は流れ、このようにメードインジャパンのオンパレードだった時代が去った。
外国製品であふれ、メードインジャパンといわれるものも、中味には外国製品が見られ、
真性のものはないといって過言でない。パソコンなど、エレクトロニクス製品で顕著だ。
つまり、低コスト化を追い求め、世界的な規模でモノづくりの分散化、分業化が進んだ
結果、マルチナショナルなモノづくりしか成立しないという生産構造になった。
モノづくりのボーダレス化が、どんどん進んでいる。

かっては、相手製品の輸入を制限したり、不買運動を起こした。
外国の商品が過剰に国内に流入して国産品を脅かしたり、何らかの政治的な対立が
深まったりした場合の対抗措置としてだ。しかし、今や逆で、へたをすると、相手に
ダメージを与えるつもりが、自分にも悪い影響が容赦なく降り掛かってくる。今や
意外にも、自国の製品が、相手製品の主要部分を担っていたりする。これは、日本だけの
話ではない。農産物の開発輸入が、高コストの日本の農業を脅かすのは事実だが、この
場合も、ダメージの行き先は、恩恵をもっとも受けていた日本の消費者に止まらない。
セーフガード(緊急輸入制限措置)などやれば、相手国のパートナーと組んで時間と
資金を注ぎ込み、多分の先行投資をしたはずの事業者など、身内に及ぼすダメージも
小さくない。

この時代、経済制裁の類が、天に向ってツバを吐くような政策にならないか、十分に
考えないといけなくなった。併せて、自給自足システムを捨てた手放しの外国依存が、
国の将来にとってよいのかどうか、根本のところも考えないといけない。

つづく

さぶみごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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