ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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日本のモノづくり、あれもこれも

2006/08/25

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

《93》 ブランドネームの熱いお灸

「モノづくり」の世界で、ブランドネームは命だ。

通常、有名なブランドネームは、使用する企業などが、商標として特許庁に登録し、
商標権を確立している。そうなると、他人が無断で使用することは許されない。
にも拘わらず、特定の社名やブランドネームが有名になり、商品の通称になって
しまう例がある。

かって、「味の素」がそうだった。半世紀も前のことだが、食材の量も種類も少なく、
質も劣悪で、貧しい食生活を強いられたわたしたち日本人は、「味の素」を珍重した。
戦後のドサクサから解放されるにつれ、ささやかな贅沢を「うまみ」に求め、卓上に
置かれた「味の素」をやたらと振りかける風景があった。戦後から5年が経った19
50年頃、「味の素」が市場をほぼ独占していた時代のことだ。振りかけの容器の
穴を秘かに大きくし、売上げを伸ばしたなどという、よからぬうわさもあった。当時、
公共放送のNHKの料理番組で、「化学調味料を少々加えて、、」などというので
奇妙に聞こえたものだ。やがて、消費量がウナギ昇りに増えたようで、「旭味」や
「いの一番」などの競合品が現れ、一社独占が崩れた。不思議なことに、食生活が
安定し豊かになるにつれて「化学調味料」は卓上から消えた。「隠し味」に徹する
脇役が身分相応だったのだろう。
「仁丹」も一社独占の商品だが、NHKならどのようにいうのだろう。

「シャープペンシル」は不動の地位を占めていて、別称でのいいようがない。
液晶技術で今や有名なシャープの創業社長が考案したという。しかし、これほどに
育った商品だが、本家のシャープが、とっくに製造をやめてしまっているのが面白い。

「セロテープ」は、NHKなら「セロハンテープ」という。新しいものでは、
いい替えを知らないが「ホカロン」や「ウオークマン」、「写るんです」などがある。
「宅急便」も商標登録してあるそうで、「宅配便」なら特定のものを指さないという。
外来の製品では、「キャタピラ」や「ジープ」、「ポラロイド」などが知られている。
少なくともわたしが接したアメリカ人たちは、いわゆる「ティッシュペーパー」を、
必ず「クリネックス」といったものだが、キンバリー社の商品が通称になった。同じく、
「セロテープ」を「スコッチテープ」といったのは、3M社の商品に由来する。

余談だが、「ティッシュペーパー」は、日本初登場の1960年代から、2枚重ねだ。
会社の同僚が笑って話したことを思い出す。彼の父親は、この2枚を必ずはがし、
1枚ずつ使うというのだ。たかが薄紙1枚といえども、「もったいない」という思いが
走り、「少ないなかの工夫」が身についた世代の人だったのだろう。

自社の商品が通称にまで育つことは、それだけ世に知られた証拠であり、その所有者は
喜ぶ。便乗して使わせてもらっても、構わないだろうと思ったりもする。しかし、
そうはいかない。利害に関わりない人々が、会話のなかで使う程度なら見過ごされるが、
うっかりビジネスに使えば容赦なく訴えられ、ひどい目にあう。「ウオークマン」の例で、
恐ろしい新聞記事を見たことがあった。店名を「ウオークマン」としていた靴屋さんが、
ソニーの露見するところとなり、早速、同社の商標権を侵害したとして巨額の損害金を
請求された、というものだった。恐らく街の小さな靴屋さんのこと、「ウオークマン」の
イメージを大きく損ねたはずもない。請求された金額が予想外に大きく、天下のソニーに
しては大人気なく冷血に過ぎる振る舞いと思えた。しかし、海外通のソニーだからこそ、
国際基準に照らして容赦ない手段を採ったともいえる。商標権という通行手形を得た
ブランドネームの場合、商標法によって固く保護され、他人の使用が許されない。つまり、
命にも代え難い永遠のものなのだろう。 この報道は、ロゴマークの図案屋をやり、
商標に神経を使う習慣になっているせいで、とりわけ印象に残った。

無意識に目にしているブランドネームだが、ビジネスで関わる場合は、少なくとも、
商標法についての少々の知識が必要になる。大会社から、急に熱いお灸をすえられる恐れが
ないとはいえない。逆も真なりだ。

つづく

さぶみごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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