ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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《92》 追いつけ追いこせの終焉

2006/08/02

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

《92》 追いつけ追いこせの終焉

日本人は、海外のブランド品にめっぽう弱い。

かっての「舶来崇拝」とは違う背景と思われるが、海外の有名商品を好む。
あれもこれもと手当たりしだいに自家製造(国産化)し、「モノづくり」で
世界を圧倒してきた日本とは裏腹の、矛盾を感じる現象だ。

1960年前後、学友が「ペンギン」のマークが胸についたシャツを着て
登校してきた。ロゴ入りシャツを着ていたのだが、メーカーの宣伝の先棒を
担いでいるようで違和感があった。香港で縫製されているといい、当時は
オシャレで珍しく、高級感を演出していた。やがてペンギンと競うように
「ワニ」や「傘」が登場すると、世は、ロゴ入りシャツで埋まり、偽物が
売られる騒ぎに発展した。つまり、ロゴ入りシャツはオシャレの象徴になり、
ステータスシンボルと化した。もっぱらノーマークのシャツで通していた
わたしは、流行に遅れるだけでなく、安物を着る不粋な存在になり果てた。
当時の日本は、まだ繊維製品の輸出大国だったが、この現象と歩調を合わせる
ように、国内の繊維産業が力を失った。

今や、多くの日本人が、外国ブランドの広告塔の役割を好んで果たしながら、
それがオシャレになっている。古い話だが、アメリカはマンハッタンの一流
企業のOLが、通勤の行き帰りにスニーカーをはくというニュースがあった。
通勤が楽になって健康的だし、新手のオシャレといえなくもない。対する
日本のOLは、上から下まで一流のブランド品で重装備しないとオシャレに
ならない。かって、若い男性社員から、彼らの合懇にやって来る女性を
観察すると、少なくともその3割がルイ・ヴィトンのバッグを下げて来たと
聞いた。

ルイ・ヴィトンの日本国内での店鋪拡張の勢いは止まらない。一説では、
広く愛用される秘密が、どんな服装にもマッチするデザインにあるというが、
それだけでは説明できないものがあるに違いない。ロゴマークの図案屋を
開業した者として、この種の有名ブランドの成長や、魅せられてしまう
心理的な背景には尽きない興味が沸く。

外貨の流出を押さえ、あれもこれもと国産を奨励し、輸入品が高関税で
高価だった30数年前、パーカーの万年筆やロンソンのライター、オメガの
時計などの小物を持ち歩く仲間がいた。親などが海外からみやげに持ち帰った
ものでせん望の的だった。当時は、日本の万年筆メーカーも多数あった。
品質は明らかに劣り、舶来品に「追いつけ追いこせ」の真っ最中だった。
しかし、一本ずつ試し書きして念入りに選ぶのだが、新品のうちは、先ず
ペン先が例外なく紙に軽く引っ掛かり、半年くらい使い込まないとスムーズな
運びにならなかった。ところが、1960年代の半ば、万年筆の輸入が
自由化されると、驚いたことに、それを契機に書き味が目覚ましく向上した。
必死の努力で技術を改良したのだろう。生き残った数社が、現在も、海外の
数ある有名ブランドに負けず健在なのはうれしい。記憶では、輸入自由化の
最初の厳しい洗礼を受けたのが、この万年筆業界と剃刀業界だった。

最近は、かってのように自立的に「追いつけ追いこせ」に固執するメーカーは
少ない。不足があれば、国産化に拘らず、海外から積極的に調達する。日本の
保有外貨が豊富になっているし、戦争の危険がほとんど失せた上、IT時代の
到来で、遠方との通信手段が低コストになり、隔絶感がなくなったことが大きい。
もはや、排他的な自給体制を放棄させるのだ。最新のビデオカメラには、
ドイツの有名レンズを搭載して競い合っているものがある。それが、立派な
セールスポイントになり、「広告塔」を演じて恥じない風潮になった。

旧来の「追いつけ追いこせ」を終焉させ、自由で開放的な共存共栄の分業社会を
容認している。日本の「モノづくり」も、ずいぶんと開放的になったものだ。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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