ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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 《84》 メカを捨てないドイツ人

2006/01/30

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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        --浪費なき日本の繁栄のために--

  《84》 メカを捨てないドイツ人

日本がモノづくりで一目置く国はドイツだろう。

過日、ドイツを駆け足で旅行しながら、「技術大国」のゆるぎない歴史を思い起こした。
そして、エレクトロニクスなど新技術の採り入れかたで、日本との微妙な違いに気づいた。

戦争に関わる暗い開発の歴史を思い起こして残念だが、
ドイツから世界に発信した過去の大型技術で卓越していたのは、初期のロケット技術だ。
壮大な宇宙開発の基本を築き、アメリカと旧ソ連で競った衛星の打ち上げを支えたのは、
ドイツ出身の技術者たちだった。それを物語る痛烈なジョークがある。
宇宙で初めて出逢った両大国の衛星が、「やっとドイツ語で話せるね」といったという。

これに似て、商社での興味深い体験がある。
30数年も前、ソ連製の精密光学測定機(産業用顕微鏡)を輸入していたときだ。
輸入価格が安い上に性能がたいへんよく、ソ連製品の評判とは違って引っ張りだこだった。
日本製品を輸出すると、見返りにソ連製品を輸入する「バーター取り引き」が義務づけられ、
その見返りの有力なアイテムとして重宝した。商売を開拓した先輩に製造元について聞くと、
実はドイツ人の技術でつくられているという。ソ連が第二次世界大戦でドイツに勝つと、
ZEISS(レンズ製品の有名メーカー)の、どこかの工場の設備と技術者を手に入れ、
レニングラード(当時)近くに移設し、生産をはじめたというのだ。 
余談だが、この商売の売れ筋モデルは、何故かソ連側の輸出価格の設定が明らかに低く、
間違っていた。しかし、官僚的なシステムの影響か、モスクワの輸出公団当局も、
品川のソ連通商代表部(当時)も一向に訂正する気配がない。
そのため、大儲けをさせてもらった。

評価が高いZEISSのレンズと相まって、ドイツの精密技術の水準の高さが、
高性能なカメラを生みつづけた。優れたクルマの生産も、その精密技術の延長線上にある。

そのクルマで、前から不思議に思っていることがある。ドイツの街を歩くと、ベンツも、
BMWも、フォルクスワーゲンも、乗用のクルマがマニュアル操作のものばかり。
地形が全体的になだらかで、半クラッチなどのやっかいな操作が少ないことも考えられる。
マニュアル全盛の理由を聞いてみると、オートマは、操作が簡単な割りに燃費を食う、
と固く信じている。しかし、エレクトロニクス技術がクルマにも積極的に導入され、
最近では、エンジンの内部の燃料噴射が最適に制御されるようになった。つまり、
オートマの燃費もかなり改善されたはずだが、ドイツ人の間では認知されていないようだ。

さらに、昔から「技術大国」といわれるだけあって、伝統技術に重い価値を認め、さらに、
無類のメカ好きを貫いているということも大きく影響しているように思う。メカ派の目では、
エレクトロニクスというのは仕組みが見えず、今一つ確信がもてないということもある。
クラッチなしでは、ドライブの妙味がないともいう。確かに、手足を巧みに動かしながら、
意のままの反応をスポーツライクに楽しむマシーン操作も捨て難い。

そんなせいもあってか、デパートでびっくりすることがある。
日本で絶えて久しい、ゼンマイ式の目覚まし時計を売っていることだ。
おみやげに、JUNGHANS社のものを買って帰ったが、コチコチと音がするのが煩わしく、
おまけに、巻くのを忘れると3日と待たずに止まるのでメンテがたいへんだ*。
かって、そんなことを苦にもしないでゼンマイ式を使っていたはずなんだが。
http://www.wur-japan.com/siryo/temaki.htm

オートマやクォーツを早々に採り入れる日本人、やや頑固と思うほどメカに固執するドイツ人、
何か日本人と対照的に違うドイツ人のライフスタイルが見えてくる。

ドイツは、世界に先んじて環境保全に熱心に取り組んでいる。
日本と違うライフスタイルが、環境先進国の支えになっているとすれば興味深い。
ドイツの進む先に注意を払わないといけない。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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