ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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《65》 アフターマーケットの苦楽

2004/12/29

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《65》 アフターマーケットの苦楽

消耗品は、値引きしないのが常道だ。

電動シェーバーの替え刃が、本体価格に近いことに驚く。
本体は、大胆に値引きされるが、替え刃部品は定価通りで売られるからだ。
いっそのこと古いものを捨て、新品に買い替えようかと思うのも無理はない。
替え刃が、シェーバーの「心臓部」という重さもあるが、それだけではない。
本体をなるべく値引きして顧客を多く囲い込み、高値の消耗部品で元を取る、
という売り手の商業政策上の計算があるからだ。消費者は少々迷いながらも、
新品への買い替えでなく、心持ち安い消耗部品の刃だけを買うことにする。
売り手が、買い手の心理を読み切っているのが分かる。

プリンターのインクも、昔から高値安定している。
替え刃と同じ商法を使い、プリンター本体と違って決してダンピングしない。
本体に占める価格の割合が替え刃ほど大きくないが、消費される頻度が高い。
数で稼いで安定した利益を得ていることは間違いない。

事務用コピー機の凄まじいシェア争いは、前に書いた。
顧客を増やせば増やすほど、トナーと用紙を供給する商機が増える。つまり、
本体を売って損しても、薄く長く稼ぐことによって損を埋めることができる。
アフターマーケット*という納入後のビジネスに重点を置いているのだ。
甘くはないが、苦から楽に転じる商法を今もつづけている。
http://www.blwisdom.com/word/key/0264.html

実は、高値安定を狙うには、独自の規格を持たないと難しい。
電動シェーバーも、プリンターも、コピー機も、他社製では代替えできない。
各社間で、形状やメカニズム、成分などの規格が、多かれ少なかれ違うため、
囲い込まれた顧客は浮気できない。ゼロックスが特許で固めていたトナーも、
今では、各社なりに特徴のある成分を加えているらしい。ダミーもあるが、
立て前では、指定外、つまり自社製以外のものは使ってはいけないという。
それを破って使えば、メンテに責任が持てないと警告する。

ところが、カメラ業界のアフターマーケットは、事情が違う。
デジタルカメラに負けず、ロール・フィルムが、今も大量に消費されている。
このフィルムには、昔から統一規格があるため、カメラのメーカーを問わず、
安心して使用できる。その単一の規格のもとで、複数のメーカーが製造し、
世界中で販売をつづけている。そこに、品質と価格の厳しい競争原理が働く。
独自開発の規格のもとで押し通すか、国際規格のもとで競争にさらされるか。
しかし、アフターマーケットへ参入するのも、囲い込み競争に勝ってこそだ。
囲い込み競争の苦を知らずして、アフターマーケットの楽を享受できない。
独自規格の記憶メディアに拘わるメーカーもあるが、独り相撲がつづく。
遅かれ早かれ、競争の洗礼を受けずにはいられないのだ。

消費者からすれば、大いに競争してもらいたい。
しかし、高値安定の消耗品も、苦の洗礼を受けているから責めるのも酷だ。
消費者は神様、というオダテを真に受けて黙認しよう。

余談だが、「アフターマーケット」は、真正な英語だという。
現役時代には、「アフターサービス」は日本語だと、繰り返し教えられた。
長く苦楽を共にした英語だが、謎が深まる。

つづく

さぶみ・ごろう


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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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