ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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《63》 流通コストを削る包装技術

2004/11/15

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《63》 流通コストを削る包装技術

紙でつくった箱や容器には、知恵の固まりも詰めてある。

容器の中味は、気体、液体、固体ありで、千差万別だ。
裸のままでは持ち歩きにも輸送にも不都合なため、箱や容器に入れる。
気体には使われないが、例外が1つある。第二次世界大戦の末期の風船爆弾だ。
丈夫な和紙の風船にガスを注入し、アメリカ大陸へ向うジェット気流に乗せた。
物資不足の中の苦肉の策で、得意の和紙の技術が利用された。紙製の容器は、
軽い固体との相性がベストだが、重ければ重いなりの工夫がされている。
中味を安全に保つための、意外な知恵を発見できる。

ケーキを入れた普通の紙の箱も、ただの箱ではない。
分解してみると分かるが、たった1枚の平らな紙が使われている。おまけに、
糊が使われていない。紙と紙が重なる部分をうまくロックさせているだけだ。
紙も最小の大きさに裁断されて無駄がない。巨峰(ブドウ)が収まった箱も、
広げると想像以上に大きい1枚の紙だったと分かる。決して厚い紙を使わず、
幾重にも折り曲げて箱の強度を上げ、高価で重い巨峰をつぶさないように守る。
どれも1枚の紙からだが、計算し尽くして裁断された形状と薄さには驚く。
機能性と経済性を徹底的に追究し、最適に設計した結果だ。

相性が悪い液体にも、紙の容器が広く使われている。
もれないことが絶対の条件になるが、すでに確立された技術がある。例えば、
昔はガラスビンばかりだった牛乳が、紙容器を使うようになった。最近では、
日本酒や焼酎などにも、広く採用されている。紙容器なら使い捨てできるが、
ビンというのは、回収する手数が余計なコストになるため、流通量が減った。
しかし、使い捨ても、再生紙の原料として回収する仕組みを新しく生んだ。
木材資源を無駄なく有効に使う重要性が、広く認識されたのだ。

日本で使われた最初の紙容器は、「テトラパック」*だった。
ロウをまぶしたような手触りがあり、四面体(ピラミッド形)で安定感がある。
牛乳の小ビン(180ml)の代わりに普及したが、最近は見ることがない。
三角だから通い箱に並べ難いし、自動販売機に隙間なく格納するのも難しい。
つまり、収まりが悪い形状のため、直方体(六面体)に主役を譲ったのだろう。
個性的な形状が、商業政策的にはメリットがあっても、流通コストで負ける。
自動販売機の出現など、流通の変化が異形の紙容器を葬った。
http://www.tetrapak.co.jp/PRODUCTS/PRODUCTS/package_tc.html

固体であれ、液体であれ、流通コストとの闘いがつづく。
固体の場合、重量がなくても容積が目立って大きいもの、その逆のものがある。
制約があるスペースに、いかに多く効率的に収納できるかが厳しく問われる。
中味の大小に関わらず、いかにコンパクトにするかが問題だ。

数年前のこと、扇風機の包装で、興味を引く変化に気づいた。
扇風機の本体は、台座、支柱、扇から構成されている。わたしの記憶では、
昔の扇風機は、台座と支柱が一体に成型されていた。ところが、最近になって、
台座と支柱が分離した構造が一般化し、お客が自分で合体させて完成する。
分離構造になった結果、収納する段ボール箱の背丈が、著しく低くなった。
量が多いだけに、倉庫やトラックなどの省スペース化への貢献は計り知れない。
どのメーカーもならい、流通コストの大きな削減に成功した。

しかし、分離型だと、別々に成型するため製造工程が倍になる。
その分、製造コストが倍に増えるはずだ。しかも、つなぎ目を隠せないので、
やや美観を損ない、デザインにうるさいユーザーからは文句をいわれかねない。
そのリスクを承知し、製造コストより、流通コストの削減を重視したのだろう。
わたしもうるさい口だが、精巧な仕上がりのため、つなぎ目に違和感はない。
コロンブスの卵、とでもいうべき教訓的な成功例かも知れない。

この2、3年の冬場、「ハロゲンヒーター」の宣伝が花盛りだ。
まるで扇風機だが、実は暖房機で、円形の反射板が発する輻射熱で暖を取る。
わたしが知る限り、「韓流」の先駈けともいえる韓国発祥の新式の暖房器具だ。
まだ、台座と支柱が一体のようだが、何れ分離されるのも近いだろう。
それにしても、冷を暖にした逆転の発想に感心する。

流通コストを削るには、容積を最小にする努力が第一だ。
機能性と経済性を追う包装技術、そして縮小を追う製造技術に際限はない。
消費者としても、身の回りの紙の箱や容器をあらためて見直してみると面白い。
環境の改善に役立つ、知恵の固まりが見えれば楽しい。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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