ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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急がず、あきらめないこと

2004/10/25

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《62》 急がず、あきらめないこと

異文化がもたらす隔たりは、やっかいではあるが面白い。

日本人は、「その節は、たいへん有難うございました」という。
あらためて謝意を伝えることで、受けた恩を忘れずにいることをアピールする。
日本人の間では、1つの慣用的な挨拶になっている。

昔、本社のエレベータの中で、苦い経験をした。
取引先のアメリカ人に予期せず遭遇、世話になった古い記憶を思い出し、
謝意を伝えようとした。サンフランシスコへ出張したとき、多忙な身を顧みず、
フィッシャーマンズ・ワーフ*へ案内し、シーフードをご馳走してくれた人だ。
とっさに「あの節は世話になった、有難う」と頭に浮び、英語に置き換えた。
ところが、「Thank you、、、」の構文で、言葉に詰まってしまった。
日本流の謝意が、うまく当てはまらなかったのだ。
http://www.freefoto.com/browse.jsp?id=1215-21-0

英語力の弱さにも原因があったが、それだけではなさそうだ。
外国人とのカジュアルな会話では、過去の恩を日本流に繰り返すことをしない。
過去の時点で、謝意をねんごろに伝えていたはずだ。時を経た今となっては、
むしろ、「I enjoyed、、、」などに置き換えて意を尽くせる。
もっとも、日本流も、リップ・サービスでしかない場合が多い。

世の中には、「有難う」をいわない人々がいる。
いろいろと手助けしてあげても、何ともいわない。日本人の常識からすれば、
感謝の気持ちがない冷たい人なのだろうかと疑い、空しささえ感じる。しかし、
理由を聞けば真っ当なことが分かる。自身も「有難う」といわれるのを嫌う。
その心は、「お互いに他人行儀をやめよう」という善意から出たものだ。
軽々しい「有難う」は、リップ・サービスでしかない。

韓国人との間でも、いろいろと誤解を生む。
日本人が、友人になった韓国人を自宅に招いた。友人は、ためらいもなく、
冷蔵庫のドアを開けた。つまり、韓国流では、友人は家族の立派な一員であり、
家のものを自由に使ってよいとされる。この友人は、冷蔵庫のドアを開け、
親近感に微塵も嘘がないことをアピールしたのだ。仮に、逆の立場の日本人が、
韓国人宅を訪ねて同じことをすれば、友人の間柄の証として喜んでもらえる。
日本人なら、遠慮のなさに戸惑い、無礼としか思わない。

消しゴムの貸し借りでも、ストレスがたまる。
親しくなった日本人と韓国人の学生、日本人は軽く断わりを入れてから借りる、
韓国人は無言で借りる。日本人は、親しき者にも礼儀ありと心穏やかでない。
一方、韓国人は、なぜ親しい間柄で一々断わるのか、疑心暗鬼になるばかりだ。
親しかった関係が、やがて異文化の狭間で揺らぐ。

近年、つき合いが深まる中国人とも、隔たりがある。
中国人は、相手にものをお願いする時は、先にお礼をする習慣だ。例えば、
日本人が、食事に招かれ大歓待される。暫くして、難しいお願いをされる。
日本人は、お礼は事後にするものと考えているから、そんな意図には気づかず、
大いに狼狽する。なぜ大歓待されるのか、想像力に欠ける日本人も問題だろう。
逆に、中国人をレストランに招く。食事代がいくらだったか聞かれて答える。
すると「安いね」という。本心は、「値段以上のすばらしいご馳走を出す、
こんなよいレストランを知っているあなたは偉いね」ということだという。
異文化コミュニケーションは、やっかいで疲れる。

中国人は契約を守らない、という話を何度も聞く。
中国通によれば、中国流の「できます」は、「努力します」に近いという。
契約の条項は、1つの努力目標であっても履行条件ではないと考えるのだろう。
手抜きをする、というのもある。中国人は、指示通りの作業が総じて苦手で、
自己流の創意工夫を熱心に加えるらしい。その過程が未完成のまま露見すれば、
手抜きといわれるのも無理がない。結果が満点でも、日本人の上司は許さない。
しかし、精巧な数々の工芸品を見れば、非凡な素質がよく分かる。

異文化がもたらす隔たりは、簡単には埋まらない。
コミュニケーションの場が増えれば、疑心暗鬼も増える。忘れてならないのは、
あきらめず、善意を読み取る努力をすることだ。時間もかけなければならない。
時間をかけて裏側を読み取る中で、同じ人間なりの感動と面白さも発見できる。
異文化コミュニケーションの基本は、急がず、あきらめないことだ。

つづく

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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