ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《61》

2004/10/04

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《61》 入札制度が馴染まない事業

世の常で、メリットがあれば、裏にデメリットもある。

公平の原則を標榜する入札制度にも、落とし穴がある。
役所が関わる発注業務は、原則として入札によって業者を選ぶ。
公共事業だから、大小に関わらず多くの業者に応札のチャンスを与える。
つまり、応札した業者を競わせ、最も安い価格を提示した業者が落札する。
役所としては、業者が談合で価格を水増しするような不正を厳しく排除でき、
落札価格が予算を下回れば手柄になる。業者側も文句のつけようがない。
しかし、喜べないリスクがある。安かろう、悪かろうの悪質な業者が落札し、
実際には、赤字を出さないよう手抜きの仕事をすることがあるためだ。
公平が売りの入札制度にも、油断できない裏がある。

現在の東宮御所の工事を1万円で落札した会社があった。
1958年、善意からで、手抜きを狙うものではなかったが大騒ぎになった。
入札をやり直した結果、大手ゼネコン7社が共同企業体を組んで完成させた。
最近でも、拉致被害者家族の帰国で、航空会社が似たようなことをした。
宣伝効果を考えれば、差し引きプラスになるというのだ。

大型コンピュータのソフト開発の例にも、安値落札がある。
ソフトの中味を、他社のコンピュータでは動かせないように組み立てる。
コンピュータ本体も追って必ず受注しようという、先を読んだ営業手法だ。
恐らく、あちこちの費用がかさ上げされ、最後には元を取られるのだろう。
民間相手ではOKでも、役所は慎重に構えておかしくない。

大型の公共事業に、下水道やゴミ焼却場の建設工事がある。
下水道の例では、コンサルが、役所から頼まれて全体の設計を請け負う。
下水道工事は、道路工事などに比べると、機械装置の占める割合いが大きい。
コンサルといえども、機械装置の部分はメーカーの知恵に多くを依存する。
下水を汲み上げるポンプ、付属するバルブ、ゴミをかき取って除去する装置、
その他の単体機械が機能的に動いてこそ、下水道の効率的な作業ができる。
中央指令室には、全工程を監視し、遠隔操作するコンピュータも設置される。
要所要所に、特殊なノウハウの積み重ねがあり、コンサルでは手に負えない。
役所、コンサル、機械装置メーカー/建設業者の順に力の関係が生まれる。
機械装置メーカーは、金額のシェアが小さくないため、売り込みに熱が入る。
しかも、日本独特と思われるが、横並びで実力を競うメーカーが多数ある。
役所とコンサルを相手に激しい先行争いを演じる。

コンサルも複数いて、設計の受注活動に余念がない。
有力な天下りも雇い、役所の情報を逃さず手に入れ、入札に備える。
一方、メーカーは、コンサルに向け、自社開発の機械装置を絶えず宣伝する。
設計に織り込んでもらえれば、他社の追撃をかわして優位に立てるからだ。
コンサルと好関係を維持する傍ら、役所にも同様な宣伝活動を怠らない。
役所が採用を決め、コンサルに自社を指名してくれれば、鬼に金棒になる。
設計図面に「○○社製○○、型番○○」などと指定されるのが、営業の夢だ。
つまり、「天の声」が轟くとなれば、競合する他社もコンサルも文句がない。
問題は、切磋琢磨はよいが、受益者の視点が損なわれていないかだ。
過去、納税者の利益も忘れた公共事業が多く指摘された。

知人から、入札に馴染まない典型的な例を聞いた。
離職者やフリーター*の就職を支援する公営のセンターの場合だ。
公営の事業として落札した民間の就職支援会社が、カウンセラーを派遣し、
ビジネスマナーや履歴書の書き方まで個別に指導する。来訪者の中には、
肉体面や精神面で複雑な問題を抱え、カウンセラーの職務もなかなか重い。
指導期間は、相手によって長期になるものもあり、双方の深い信頼関係が、
目的の達成を早める。請け負い期間は1年で、入札を繰り返す方式だから、
現在のカウンセラーが翌年も指導するとは限らない。来訪者の立場でいえば、
気に入ったカウンセラーに出逢っても、最後まで見てもらえる保証がない。
つまり、もっと安く請け負う会社が、つぎの期間を落札すれば交代になる。
センター依存症も困るが、カウンセラーも職務を全うできない。
http://www.be.asahi.com/20041002/W13/0044.html

入札制度が金科玉条とはいかず、馴染まない事業も確実にある。
安値だけで決める入札制度は、役所の自己満足でしかない。

つづく

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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