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日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《57》

2004/07/12

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《57》 調和を阻む超高層ビルの群

東京・新橋に「汐留シオサイト」が生まれた。

旧国鉄時代は、汐留貨物駅と呼ばれていた。
ここは、「汽笛一斉新橋を、、」で知られる旧新橋停車場*でもあった。
近年は、緑色の貨物コンテナで溢れ、積み降ろしが盛んに行われていた。
やがて、鉄道よりもトラック輸送にシフトする荷主が増え、衰退した。
国鉄の解体とともに、跡地を民間に払い下げ、再開発されることになった。
今や時代が急速に変わり、超高層ビルが所狭しと競うように建つ。
しかし、わたしには、どうも馴染めない景観だ。
http://www.ejrcf.or.jp/shinbashi/shinbashi.html

日本の高層ビルは、虎の門の霞ヶ関ビルではじまった。
新橋駅脇のガード上を山手線や新幹線に乗って通ると望見できる。
強い地震に見舞われる日本では、高層ビルは建てられないといわれていた。
しかし、鋼材を組み上げて柔構造にする工法を編み出し、問題を解決した。
地震には、ビル全体が腰を振るように横揺れして破壊力を吸収してしまう。
海外の大都市で建てかけの高層ビルを見ると、日本との違いに気づく。
日本の建築現場が、最上階まで鋼材の錆色の地肌で占められるのに対し、
鉄筋コンクリートの灰色っぽい地肌が目立つからだ。地震の危険の有無で、
ビルの構造と建築工法が変わり、鋼材とセメントの使用量が反転する。
鋼材を組み上げて柔構造にする工法のほうが、コストが高い。

柔構造の採用により、東京にも高層ビルが続々と建った。
霞ヶ関ビル(1968年4月)の完成を追うように、浜松町駅の脇には、
世界貿易センタービル(1970年3月)が完成した。新宿副都心には、
屏風のような京王プラザホテル(1971年3月)が、先ず最初に完成し、
その後、その横や先に新しい高層ビルがつづけて建ち、現在の姿になった。
偉容を誇る東京都の本庁舎は、1991年2月に完成したというから、
同じ新宿副都心で先輩格の京王プラザホテルより20年もの時差がある。
好奇心から、どれも完成して間もなく仲間と探訪した。

新宿副都心は、淀橋浄水場の跡地を利用した。
わたしの中学生時代、高校受験の模擬試験の会場に工学院大学が使われた。
校舎から広大な浄水場が一望できたものだが、1965年に閉鎖された。
東村山浄水場が、その機能を引き継いだという。

霞ヶ関ビルでは、商売の複雑さを経験した。
ビルの建築には、先ず施主がいて、設計事務所、工事を請け負うゼネコン、
ゼネコンの下請けの設備業者など、ピラミッド状の多重構造ができる。
ビルの設備の売り込みには、腰を低く全部と交渉しなければならない。
日本で初めてというゴミを圧縮して小形化する装置を売り込んだが、
先ず施主を口説いて推薦をもらい、設計事務所に設計に織り込むよう頼み、
ゼネコンの了解を取りつけ、設備業者に施工方法を細かく伝授するなど、
体力ばかりでない、濃厚な人間関係の醸成が不可避なことを知らされた。
その一連の込み入った作業を仕切る専門のブローカーまでいて驚いた。
多重構造も、日本の建築コストを必然的に高くしている。

霞ヶ関ビルは、30年目に大々的にリフォームした。
空調機器などの設備を入れ換えたところ、能力には変わりがないが、
30年の間に小型化が進み、予想外にスペースの空きができたという。
テナントに貸すスペースが増え、大喜びだったとか。

ところで、「汐留シオサイト」に馴染めない理由は何か。
各々のビルが個性的なデザインを誇るのは許せる。しかし、惜しむらくは、
施主は違えども、あれほどの広大な土地を同時進行で再開発したにしては、
全体の景観を調和させるための検討がなされたとは思えないことだ。実際、
所狭しと建つため、全体で見る景観が如何にも雑然とし、調和に欠ける。
つまり、天上天下、唯我独尊的なビルが、頭の上からかぶさって威圧する。
新宿副都心も個性的なビルばかりだが、ビルとビルの間隔に余裕があり、
一つひとつが独立して見える。対して、「汐留シオサイト」は密度が高い。
雑然さがパッケージになって襲い、神経を逆立てる。

違いを気づかせる個性は大切で、尊重されるべきものだ。
しかし、それが調和を阻み、侵食し合う関係になると話がややこしくなる。
雑然さを押え、調和を優先させることは、どの世界にも共通して難しい。
ましてや、狭い空間では、個性を減殺することなく際立たせる。
調和を生む再開発まで、つぎの100年が必要のようだ。

つづく

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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