ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《56》

2004/06/21

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《56》 ISO9000を凌ぐ会社

元気一杯な社長の話を聞いた。

近くの大学が催している今月の文化講演会でのことだ。
先月は、北朝鮮の拉致問題に取り組む平沢勝栄衆議院議員が講師だった。
偶然、小泉首相の2度目の訪朝の日と重なったが、約束通りにやって来た。
しかし、お許し願いたいといい、話を30分ほど繰り上げて帰った。
目の前の聴衆よりも、TVの視聴者や選挙民のほうが大切だったようだ。
千葉県の南柏より遠い会場なら、キャンセルしたのだろうか。

今月は、モノづくりで脚光を浴びている社長が登場した。
豊橋のプラスチック成型のメーカーで、社員70名ほどの中小企業という。
海外との合弁にも積極的に取り組み、押しも押されぬ国際企業でもある。
軽妙洒脱な話し振りで、飽きる暇もない充実の2時間だった。

曰く、
1 億単位の巨費を投じ、用途のメドもない極小の製品を開発した、
2 社員は試験なしの先着順*に採るが、問題なく人材が育っている、
3 ISO9000を採り入れずとも、大企業と対等に取り引きしている、
4 タイマーを置いていないし、稟議、申請、報告といった書類もない、
5 小さい会社だが、世界を相手に確実な成長をつづけている、など。
http://www.nhk.or.jp/business21/bangumi/0404/4_09/4.html

普通の企業とは違う破天荒な話に、のっけから吸い込まれた。
名は株式会社樹研工業といい、精密成型部品から製造機械まで売るという。
以下、記憶を呼び覚まし、要旨を羅列する(文責:筆者)。

 ‐ 100万分の1グラムという極小の「パウダーギア」を開発した、
 ‐ 技術開発、品質管理、在庫管理の積年の3つの経験と知恵の成果だ、
 ‐ 極小化へのステップを進める都度、狙い通りに世界の注目を浴びた、
 ‐ 最新の設備、メンテ、技能の3つの資産も、難題の解決に貢献した、
 ‐ ISO9000を金科玉条とする風潮があるが、敢えて取得しない、
 ‐ 先を行く自前の「ジュケンシステム」が、役目を十分に果すためだ、
 ‐ 過去の製品のすべての履歴を克明にデータ化して保管してある、
 ‐ セル生産方式にも早くから取り組み、不良品の発生率は0に等しい、
 ‐ 自社開発の機械は、アフターサービスなしの条件で売るほどだ、
 ‐ 納入先が実地調査に来るが、「ジュケン」の先見性に感心して帰る、
 ‐ トヨタ傘下の企業の招きで講議を繰り返すほど、評価が高い、

 ‐ 価格、規模拡張、品揃えの3つの競争に、絶対に加わらない、
 ‐ 破たん会社は、銀行も含め、何れかに過剰に手を染めて退場した、
 ‐ 絶対の自信と競争力があるので、値引きにも一切応じていない、
 ‐ 展示会では、一般常識に逆らい、価格(正価)を隠さずに出す、

 ‐ 経営者たる者、財務・経理に精通しないで勤まるはずがない、
 ‐ イトーヨーカ堂を手本に、自己資本比率を40%以上に保った、
 ‐ ダイエーの創始者が、財経に疎かった迂闊さを嘆いたと聞いた、
 ‐ 日産がうまく再起できたのは、ゴーン社長の功績ばかりではない、
 ‐ もともと再起できる体力があったが、読み切る役員がいなかった、
 ‐ 中小企業も上場に努め、経営内容を公にすることが大切だ、

 ‐ 税務署は、無料の、最も信頼できる監査事務所と理解している、
 ‐ 税務調査を心待ちしているが、10数年もソデにされ無念でいる、

 ‐ 経済白書を精読すれば、経済の先行きを正確に予測できる
 ‐ 世の軽薄短小への移行からバブルの崩壊まで、経営に反映させた、
 ‐ 海外進出(合弁事業)については、YKKの手法を参考にした、
 ‐ しかし、14工場とも、パートナーとは口約束だけで契約書がない、
 ‐ 配当は、現地合弁の内部留保に使い、受け取らないことにしている、
 ‐ 最近の中国は、明らかにバブル破たんの危険信号を発信している、

 ‐ リストラを断行する会社は、やがて力を失うだろう、
 ‐ トヨタはリストラに走る経営を嫌い、下請けにも礼節を守る、
 ‐ 低迷する国際派の弱電系先端企業には、下請けを見下す傾向がある、
 ‐ アメリカ流の経営は、日本に馴染まないことを理解すべきだ、
 ‐ トヨタが三菱の離職者を救えば、クルマの売り上げが増えるだろう、

 ‐ 社長は、交際費を一切使わない、
 ‐ それを知る社員が、会社の資産を無駄にしなくなるのは当然だ、
 ‐ 先着順の採用に失敗がなく、人には隠れた才能が必ずあると分かる、
 ‐ 他社で不採用になった上がり症の新人が、3年で実力を発揮した、
 ‐ 中卒の工場長と議論した大学教授が、卒業大学はどこかと質問した、
 ‐ 家族的な経営が人心を安定させ、退職は結婚と妊娠ぐらいのもの、
 ‐ 最近は、主婦の復帰や、ジュニアの入社が目立つようになった。

最後に、交渉に臨む心構えについても披露した。
宿題を持ち帰らないこと、交換条件を受け入れないことの2つという。
泣く子も黙るISO9000を凌ぐ、自前の開発システムを実践する会社、
巨費を投じ、用途のメドもない先進的な製品をつくる会社、何れの場合も、
優位に立つ強いバネがあるからこその戦法だ。先回りして世の流れを待つ。
企業たるもの、余裕の大切さをあらためて思う。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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