ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《55》

2004/05/31

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《55》 とばっちりで受けるリスク

経済の世界には、リスクという予見できないワナがある。

なかんずく、とばっちりで受けるリスクは恨めしい。
予見が難しい制度の変更など、不可抗力と思える要因が働く。
商社に入社し、まだ鉄鋼部門の経理を担当していた最中に経験した。
1970年頃、チクロ事件というのがあり、ブリキ板が売れなくなった。
営業課は、各々が取り扱う商品単位で組織され、独立採算制を敷いていた。
その結果、ブリキ課の月次決算の数字が落ち込み、課長が真っ青になった。
明らかな原因は、化学甘味料のチクロが、使用禁止になったことにあった。
チクロは、砂糖に代わる価格が安い新甘味料として大量に使われ、当時、
ブリキ缶に入れられた粉末飲料が大人気だった。コップに入れた水と混ぜ、
半自家製のジュースにして飲む。まだ貧しさが残る時代だったのだろう、
ささやかながらも贅沢気分を不思議と満喫させてくれた。ところが、突如、
厚生省(当時)が、チクロに発癌性の疑いがあるとして使用禁止にした。
需要が激減、砂糖では採算が取れず、多数の粉末飲料メーカーが倒産した。
そして、缶の原料に使うブリキ板の出荷量も減った。

同じ頃、PCB事件というのも経験した。
「燃えない油」として、トランスやコンデンサの絶縁油に使用されていた。
ところが、カネミ油症事件*が起こり、それを契機に使用禁止になった。
体内から排出されない特徴があり、利便性とは裏腹の有害物質と分かった。
その結果、トランスやコンデンサに使われる電磁鋼板という鉄鋼商品が、
PCBの代替え品を使いはじめるまでの一時期、出荷量が減った。
電磁鋼板課は売上が激減し、ブリキ課と同じ痛手を負った。
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=444

商社の場合、取り扱う商品の間口が広いからまだ救われる。
ある商品が一時不調でも、他の商品が堅調であれば屋台骨は揺るがない。
つまり、リスクが分散されているため、大きい単位では影響が小さくなる。
鉄鋼の業績が悪くても、逆に化学品や食品が好調ということもよく起こる。
リスクの分散により、不利益を大きな器の中で吸収できる。

とばっちりとしては、連鎖倒産がもっとも恨めしい。
企業は、ヒト、モノ、カネ、情報を下敷きに運営されている。とりわけ、
カネの有無が、企業の生命を左右する。材料費や人件費などの支払いは、
見合う資金が手許にあるからこそできる。手持ち資金に余裕がない場合、
売掛金の回収に滞りが出たり、受取手形が不渡りになれば、収支が狂う。
懇意の銀行に急に駆け込んでも、融資を不足なく受けられるとは限らない。
入金予定先の裏切りと自社の資金不足を恨みつつ、連鎖して倒産する。
とばっちりで受けるリスクほどバカらしいものはない。

経済の世界にはリスクがつきもので、避けて通れない。
しかし、想像力を十分に働かせば、結果的に切り抜けられるものが多い。
連鎖倒産の防止には、相手先の日常の動静を注意深く観察し、兆候を掴む。
よくいわれるが、社長の行動や従業員の態度の変化に悪い兆候が読める。
つかず、離れずの継続的な往来を欠かさないことが重要だ。

前例のカネミやPCBとなるとリスクの予見が困難だ。
行政の意志ばかりは、業界や取引先の日常の動静からでは読み切れない。
政界にもの申す業界団体といえども、圧力だけで押し切れない領域がある。
危険分散も有効だが、商社のように器が大きくなければ機能しないだろう。
すべてを天命に委ね、万一の場合は、恨めしく思うしか手はなさそうだ。
しかし、予見のためのヒントが、少なからず転がっているような気もする。
わずかでも疑いの目を向けることが、助けになるかも知れない。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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