ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《51》

2004/03/08

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

前回のコラム《50》に誤りがありました。
謹んで訂正し、お詫びします。

正: スタンフォード大
誤: UCLA


 《51》 負けずに稼いだ機械工具商

日本の高い生産性は、機械工具商の存在と無縁でない。

戦後の復興期に生まれ、全国各地の工場に出入りした。
工作機械のような高価で大きな機械よりは、電動工具や空油圧機器など、
小物の機械が得意の地味な商社で、小回りを利かせる営業が身上だ。
営業マンは、工場の購買へ毎日休まず出向き、難しい注文にも快く応じた。
成長期の工場ほど、購入品の請求が多種多彩だ。少量注文も多く、中には、
設計図面をもとに製作の依頼先を緊急に探すような特注品の請求がある。
1つ欠けても工場が動かない。ベテランの購買担当者が血眼になって探す。
現在とは違い、インターネットで情報を探す手法*など想像もできない。
最後には機械工具商が持つネットワークに頼る。事情をよく心得た彼らは、
現場とメーカーの間に立ち、技術的な難題も解決して約束通りに納入する。
やがて、購買の厚い信用のもとで、取り引きの巾を拡げて地歩を築いた。
少量の積み重ねでも、安定したビジネスに育てば採算に合う。
http://www.co-buy.net/

わたしも、商社の営業にいてお世話になった。
というのも、ほとんどの大手商社は、全く対照的に小回りが利かない。
営業マンがいて、電話もある。とはいえ、事務所を都心の一等地に構え、
配送用のトラックを自前で持つでもない。つまりは、経費がすべてに高く、
消費者から遠い川上の大きな商売には力があるが、川下は不得手なのだ。
都心から遠く離れた場所に多くの工場があるが、そこまで手足が届かない。
そこで、全国各地の機械工具商と組み、足りない機能を相互に補完する。
中小の50社近い会社と代理店契約を結んでいた。

各社とも、初代の社長の経歴がなかなかユニークだった。
軍隊にいた時代に機械いじりに興味を持ち、起業したという社長がいた。
成長が著しいメーカーの工場に出入りするうち、いっしょに成長した。
奥さんが経理の帳簿をしっかり握り、社長の交際費を厳しく見張っていた。
自動車メーカーお抱えの小さな商社もあり、目新しい商品の売り込みには、
そこを通すと話がうまく前へ進み、結論が早くもらえて有り難かった。
旧満州で手広く商売をやり、戦後に日本に帰って再出発した会社もあった。
社名に「洋行」とあり、中国にいた名残りと聞いた。

購買との好ましからざる癒着の話も耳に入った。
自動車メーカーの購買課長が家を新築する、すると納入業者が相談し合い、
例えば、家回りの工費を各社で取り引き高に応じて負担した、などという。
3年も購買を務めれば一軒家が建つ、などというまことしやかな話だった。
一方、今もめっぽう元気な自動車メーカーでは、緊迫する価格交渉の席で、
怒った購買の担当が、「こんな価格じゃ日本が滅ぶっ!」と一喝した。
激しい国際競争を繰り広げていた会社だけに、嘘はない。

新車発売の時期、ノルマの割り当てがあって四苦八苦した。
大手の商社も、鋼板を大量に売っている部門が、協力度を競わされた。
ホンダを除き、どの自動車工場も、他社のクルマの乗り入れを禁じていた。
敷地は広大だから、徒歩で購買や現場に向うのが困難なことを承知の上だ。
ホンダだけが例外だったのは、4輪で後発だった歴史のためだろう。
理不尽に気づいてか、後になって各社ともホンダに準じた。

機械工具商も、世代交替がつづき初代社長はすでにない。
親の心子知らず、跡継ぎに苦労した社長もあったが、早い会社になると、
3世の社長が活躍している。東海地方で2代目を終えたわたしの同窓は、
取引先の工場の中国シフトに苦労したが、今や月の半分をタイで暮らす。
遺跡巡りを楽しみ、歴史書のつづきをモノそうとの意気込みに燃えている。
この半世紀、地方の地味な機械商社も負けずに稼いだようだ。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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