ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《48》

2004/01/05

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--


 《48》 カレンダーと手帳が結ぶ絆

今年も、新しいカレンダーと手帳で新年を迎えた。

つつがない年であってほしいと願いながらめくる。
どの企業も、工夫を凝らしたカレンダーと手帳をつくり、年の瀬になると、
広く顧客に配る。不景気になれば、当然のように量が少なくなる。
わたしが商社に就職したのは、40年も昔の古い話になってしまったが、
日本経済が伸び盛りだったせいか、顧客に配る習慣が当時から盛んだった。
銀行が相手の財務部門で仕事をしていた時期には、年末に近づくと、
たくさんのカレンダーと手帳が取り引き先の銀行から持ち込まれた。
そのことが、年の変わり目を強く意識させた。

当時の銀行は、銀行協会で細かい規格を設けていた。
豪華なもので競い合い、お互いが過当競争に陥ることを防ぐ目的だった。
したがって、どれも似たようなつくりで、ありがた味に欠けていた。
山と積まれたものの、引き取り手を探すのに苦労した。

その頃、手帳の表紙が、例外なく本皮だったのも懐かしい。
表紙の文字と側面に金色を使い、豪華に見せるつくりが特徴だった。
1970年代になって合成皮革(ビニール装)*の手帳が出現したが、
それまで当たり前に使われていた本皮と見違えるほどの精巧さに驚いた。
表紙の臭いを嗅ぎ、同僚と本皮かどうか真面目に議論した覚えがある。
何と、合成皮革とはいえ、毛穴の跡まで模様づけしてあった。
http://www.kaken.or.jp/study/gousei/index.html

わたしの会社のカレンダーと手帳は、不思議に人気があった。
手帳にカラー刷りの世界地図を綴じ込むなど、商社らしい工夫が受けた。
超小型で表紙が赤い海外向けの手帳もあり、愛好者が国内にも多かった。
銀行が、カレンダーと手帳を気前よくたくさん持ち込んできた裏には、
お返しもたくさんもらいたい、という下心が見えた。わたしの古巣は、
今も変わらず同じデザインの2種類の手帳をつくり、配りつづけている。
もしも商品にしていたなら、ロングセラーの大ヒット商品になったと思う。
非売品のままでは惜しいほど、使い手の評判がよかった。

海外向けのカレンダーは、和服姿の日本女性が定番だ。
スイスのカレンダーが、マッターホーンなどの美しい山々の風景を載せ、
企業PRの役目を果たしている。それに似て、わたしの会社だけでなく、
海外と取り引きする企業なら、多くが、ほぼ例外なく和服女性を起用する。
人気が抜群で、かっては、送り先に届く前に荷抜きされる被害が起きた。
消えたカレンダーが、街角で堂々と売られていたという話をよく聞いた。
まだ地球全体が、物心ともに貧しい時代だった。

営業担当になってから、おもはゆい経験もした。
懇意にしていた国内の機械工具商で、小さいが成長著しい会社だった。
年末になると、その会社には、カレンダー20枚と手帳40册を届けた。
ワンマン社長の方針で、カレンダーは事務所のもっとも目立つ場所に掲げ、
手帳は営業マン全員に持たせた。社長の狙いは、小さい会社とはいえ、
大手商社との絆が深いことを対外的にアピールする作戦にあった。
事務所を訪れる顧客や銀行員が、カレンダーのロゴを見る。営業マンは、
手帳の表紙のロゴをさり気なく顧客に見せ、通行手形のように使った。
絆を上手に利用してもらうのだから、悪い気はしなかった。

その会社の本社は、今も秋葉原の電気街の一角に健在だ。
わたしが担当替えになり、没交渉になったのはすでに大昔のこと、以来、
かっての深い絆も、世の移り変わりに合わせ、消滅したと人伝てに聞いた。
商品の供給元が、同業に吸収合併され、商社の手を離れた結果だった。
カレンダーと手帳が結ぶ絆も、世の移り変わりにはとても勝てない。
せめて、あの手帳とあの会社は、変わりなく健在でいてほしい。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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