ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《47》

2003/12/15

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   ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃(続編)
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                       --浪費なき日本の繁栄のために--


《47》 国産品が手に負えない隙間

戦後の日本は、生産材から消費材まで国産化した。

国産化した製品を輸出し、懸命に外貨を稼いだ。
貴重な外貨を惜しみながら、日本にない原材料を海外から輸入した。
手に入れた原材料を日本の工場で製品に仕上げ、世界に向けて輸出した。
繊維製品から始まり、鉄鋼、カメラ、電気製品、船、クルマなどの輸出が、
日本の経済を支え、成長させ、世界第2位の経済大国に育て上げた。
不況を嘆く声が止まないが、身の丈を超える冒険をすれば怪我もする。
しかし、へこたれない冒険心こそが、経済大国を支える。

海外の優れた設備や技術の導入にも熱心だった。
強国を相手に第2次世界大戦を華々しく戦ったかに見えた日本にも、
紛れもない技術の遅れがあり、戦後、手に入れたものがたくさんあった。
産業の基盤になる製鉄や発電用の設備や技術などは、積極的に導入した。
当時の通産省と大蔵省が目を光らせ、導入の経済効果を厳しく審査し、
外貨の無駄な流出を防いだ。今や、乗用車の輸出大国になった日本だが、
トヨタや後発のホンダを除き、イギリスやフランスの技術を手本にした。
輸入した原材料に、最新の設備や技術で付加価値を高めて輸出する。
国産化と輸出を進める戦後の国策が、日本に大いなる活気をもたらした。
事実、身辺の品々が、これほど多くの国産品で占めた国も珍しい。

ところが、この日本にも、めっぽう強い外国製品があった。
ルイ・ヴィトン、グッチ、プラダなどの輸入高級ブランドではない。
もともと不得手な航空機や兵器などの特殊な分野を担う製品でもない。
オーストリア製の自走式の保線車両*のことで、商社にいた時代に知った。
この車両の検収の立ち会いがあり、乗せてもらった。保線車両だから、
通常、昼間は退避線で休み、終列車が通った後から出動して作業を始める。
運転台は、各種の操作レバーや計測機器、レコーダなどであふれて狭く、
車両の前後や下部には、保線に使う金属の複雑な機器が収まっていた。
1台で複合的で多種多様な保線作業を一挙に行うという。
http://www2.tokai.or.jp/hisa/kurumabaka_011.htm

国産の機械は使わないのか、と同僚に聞いた。
というのも、国鉄(当時)といえば、高い独特のプライドがあり、
外国製品を使うことに少なからず抵抗があっておかしくない、と思った。
世界に先駆けて新幹線を走らせたのも、そのプライドがあってのことだ。
機器の表示が横文字だったり、マニュアルが直訳調では、現場も嫌う。
わたしは、国鉄が国内のメーカーを募り、国産化するよう動いたはずで、
国産の競合品が疑いなくあるものと思った。しかし、同僚の答は簡単で、
このメーカーしか世界にない、というものだった。つまり、需要が少なく、
さすがの日本でも手を挙げるメーカーがなく、オーストリアのメーカーが、
驚くことに、1社独占で世界中の商売をエンジョイしているという。
国産品が占める日本、しかも国鉄にも、隙間があったのだ。

スキー場の圧雪車も、どうしたものか外国勢で占める。
日本には、雪上車の製造をつづける大原鉄工所という立派な企業がある。
南極の昭和基地が開設された最初から供給している雪上車の老舗だ。
圧雪車と雪上車では、技術に大差はなかろうと、素人ながらに思う。
しかし、この例は、スキー場に特有なファッション性に原因がありそうだ。
輸入高級ブランドを好む心理と共通するものがある。

国産化の話で、有料道路の料金徴集機械が面白い。
いよいよ日本に初の高速道路が建設され、料金徴集機械が必要になった。
最初は、商社に頼んでアメリカから輸入した。しかし、輸入頼りでは、
機械の修理や部品の小回りの利く供給などのメンテナンスに不安が残る。
当時の運輸省か、通産省かが、国産化に応じるメーカーを募った。当初、
料金所がこれほど増え、機械の需要が増えると予測したメーカーは少なく、
逃げを決めたメーカーがあったらしい。渋々手を挙げたのが三菱重工で、
やがて、随契に継ぐ随契で、1社独占のうま味を大いにエンジョイした。
技術も改良に改良を重ね、先輩格のアメリカへ逆輸出するまでになった。
逃げたメーカーが後悔し、新ためて参入を計った、という後日談もある。
日本の成長期の国産化を巡る面白いエピソードだ。

最近は、生産地のボーダーレス化が世界規模で急速に進む。
国産化を進め、輸出を奨励して外貨を稼ぐ国策は、日本ではすたれ、
原材料だけでなく、生産材や消費材も迷わず輸入するようになった。
国産品が手に負えずに逃げる隙間が、どんどん大きくなる。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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